718: 第三帝国 :2020/11/08(日) 23:12:49 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「秘話、戦略機動演習」


整理整頓は軍人の基本である。
だがこの上司はその例外に属することをバルクホルン少佐は最近諦めと共に受け入れ始めていた。

「ハルトマンと同類か・・・」

良き戦友であり友人である金髪の少女を思い浮かべつつ独り言を零す。
深海棲艦との停戦と講和を契機に一時期軍から離れて一般社会での生活経験あるせいか、以前よりは寛容な精神と態度を身に着けたがそれでも色々言いたいレベルで酷い状態であった。
なお現状バルクホルンの執務スペースとの境、ジークフリード線は未だ健在であるが戦線崩壊は時間の問題である。

「かの撃墜王と同じとは至極感動、お褒め頂き感謝千万である」

バルクホルンの呟きに対して、
書類と参考図書の山に埋もれている真田少将が言った。
古びた和綴じの本を読んでいるため一見すれば江戸時代のくずし文字を難なく読めるインテリのように見える。
しかし、毎回読んでいる本の内容はぶっちゃエロ本なのをバルクホルンは既に知っており、昔と違いスルーする余力すら今はあった。

「演習の結果に関する報告と各方面の反応についてですが、
 本土の自衛隊とヤルバーンは良い経験になったと好意的ですが、
 一部の国とメディア、それと知識人たちからは大不評で色々言っているようです」

「ふん、安全地帯から軍師を気取って後出しに中途半端な知恵を振り回す愚か者。
 川底の小石で戦車の床がボコボコになったり、21世紀でもなお薩長閥は存在すると信じている連中の言葉など聞くだけ時間の無駄だ」

「川底の小石で戦車の床がボコボコになる?薩長閥?」

本当の話とは思わず冗談や比喩の類。
と、バルクホルンは考えた上で斬新かつ荒唐無稽な話と脳内で完結させる。
特にドイツ系日本人として何故ショーグン・トクガワ時代の制度が21世紀に関連があるのか理解不能であった。

719: 第三帝国 :2020/11/08(日) 23:14:42 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
「自分がたまたま有している知識と個人的な経験だけで民族の特性を語るような輩、自身の知識を過信し、間違いを認めず、無責任かつ党利党派でこの世を語る連中なぞうんざりだ」

真田が吐き捨てるように言う。
この上司の口の悪さやら態度のアレコレは知っているが、ここまで毒を帯びた愚痴を口にすることはなかったことに気づきバルクホルンは内心驚く。

「・・・まあ、それはさて置き、
 新たな仕事だ、依頼主はなんと我らの提督だバルクホルン少佐殿」

「残業代と手当が増えれば嬉しいですね」

探偵事務所系のドラマのようなおふざけをする上司。
このボケに乗ると延々とボケるのを学習しているバルクホルンはセメントスマイルで対応する。

「・・・共産主義大陸国家、及びその支援国家との戦争についてシュミレーションして欲しい、とのことだ」

セメントスマイル対応に傷心しつつ真田が依頼内容を言う。

「それは大西洋も含まれますか・・・?」

「支援国家」という聞き捨てならない一言にバルクホルンが口許を強張らせながら問う。
何せ『自分たちとは直接的な利害関係が少ない世界の果てのである極東』かつ『可哀そうなチャイナ』に対して色々入れ込みすぎている欧州に思い当たることが多すぎた。

「それを含めてこれから考えるのが今後の仕事だ。
 しかし、これは提督だけでなく日本政府とヤルバーンからの依頼でもある。
 ・・・どうやら高い確率で戦争が来ることを確信しているようだな、まったく」

「やはり、戦争ですか・・・」

バルクホルンがやや呆然としつつ言葉を発する。

720: 第三帝国 :2020/11/08(日) 23:16:03 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
「しかし、ありうるのでしょうか?
 唯でさえ国際的な印象が悪化しているにも関わらず」

「それは政治家が考える合理的な発想だな。
 だが『軍事しか知らないエリート軍人』が考える合理性は違う。
 『仮想敵国を打倒するために中立国を道路とする』ことを一切躊躇しない」

「・・・シュリーフェンプランですか?」

「ああ、8月の砲声のごとく。
 英国の参戦を一切考えずに『軍事的合理性から』ベルギーに進撃したフン族共のように」

心底侮蔑を込めて真田が言う。

「厄介だぞ、馬鹿は常識が通じない。
 恥を恥と思わない上に考えが読めない。
 しかも軍事しか知らない軍事馬鹿だけなら兎も角、最近は実家の太さだけが誇りな腐れ儒学者もどきもいると来た」

実家の太さが誇り、それはただの貴族社会では?とバルクホルンは内心で首を傾げる。


「まあ、もしも戦争が起こるとすれば精々10年くらい先の話になるはずだ。
 何せ相手も我々も何もかも足りていない状況だからな、気長に行こうじゃないか」

しかし、10年先どころかに某国主催のアジア信用共同主権会議の直後、後に極東事変と呼ばれる短くも苛烈な戦争が勃発するとは真田も予想することはできなかった。



おわり

721: 第三帝国 :2020/11/08(日) 23:21:20 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
以上です。

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最終更新:2020年11月10日 10:12