316: 弥次郎 :2020/11/13(金) 21:34:21 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
唐突に鉄血世界のネタを2分後から投下します。
時系列は原作一期終了後。
主役は彼女です…
318: 弥次郎 :2020/11/13(金) 21:37:39 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
憂鬱SRW未来編鉄血世界 外伝「さまよえる宝石姫」
私の名前はジュリア。
もちろん偽名。傭兵としての通り名だ。
私は嘗てジュリエッタ・ジュリスと呼ばれていた。
何から語ればよいだろう。
アリアンロッド艦隊から逃がされ地球にたどり着いた日からのことか、それともギャラルホルンが解体された日からのことか。
それとも、私が、SAUに亡命していた元ギャラルホルン統制局トップにして元セブンスターズの一家ファリド家のイズナリオ・ファリドを暗殺した後からのことか。
私の、私個人のきわめて個人的な感情から行った殺し。大義のない、正道に反する行い。以前の私ならば唾棄すべきそれを、私は率先してやった。
決して何かが得られるわけではない。求められてやったことではない。まして、失われたものが元に戻るわけでもない。
それでも、それでも私は、それをなさねばならなかった。いや、したかったのだ。そうでなければ、前に進めないと思って。
今でのあの男の頭を打ちぬいた感触は覚えている。髭のおじさまの伝手を借り、可能な限りの知恵を絞り、ついに成し遂げたあの瞬間を。
そして、そのあとに訪れた、とてつもない虚無感を。
私の戦いは終わった。でも、それは次の戦いの始まり。
居場所もない、名前も捨て、身分も捨てて、一個人となった私は、当てのない旅路を歩み始めた。
そして私は世界を見た。調停者の役目を果たせなくなったギャラルホルンが消えた後の、そんな救いがたい世界を。
「あんたMSが動かせるのかい?なら歓迎だ。あたしはアリア。この町「グレイ・ストーンズ」の顔役ってやつさ」
SAUの放つ追手から逃れるようにして、そしてたどり着いた町。
アーブラウの国境沿いにある都市「グレイ・ストーンズ」。コミュニティにいられない者たちの集まる、白でも黒でもない者たちの町。
ギャラルホルンの健在だった時代から、半ば自立し、自ら武力を以て抗い続けてきたという、いわくつきの土地。
「あんたの過去には興味はないさ。暗黙の了解ってやつでね、自分の過去は言わない、相手の過去も詮索しない。
他人の便器はのぞき込むなってね」
「私にどうしろと?」
「あんたの歩き方や振る舞いは軍人のそれだ。あたしがみてきた中でも、一番上等と見た」
「……」
「取引だ。あんたの腕をあたしらは買う。代わりに、あんたはここに暮らせる。もっとも、あんたはここに居つけないかもしれないけどね」
それは事実だ。
私に居場所などない。ノーマッドだ。これまでもいくつもの街に居つこうとして、結局諦めてきた。
もう、あの場所は存在しない。アリアンロッド艦隊という私の居場所はなく、故郷もない。
それでも、生きるためにはその選択しかなかった。正義もない、大義もない、ただ生き残るために。
これまでの、ジュリエッタ・ジュリスを構築していたものは、とっくに擦り切れ、使い物にならなくなっていた。
「受けましょう、その取引」
そして、私は幾度目かの傭兵としての雇用を受け入れることにしたのだった。
ギャラルホルンの統制なき時代。それは、弱肉強食の時代だった。軍事力や警察機構をギャラルホルンに依存していた経済圏では、解体後に途端に犯罪が増えたのだ。
無論、経済圏とて自前の戦力を保有していないわけではなかった。だが、ギャラルホルンほどの働きができるわけでもない。だからこそ、MSを擁する傭兵というのは需要が存在していた。
まして、グレイ・ストーンズの立地はへき地であり、同じように荒くれ者たちが集まって街を自然形成し、諍いが絶えていなかった。
そういった事態に対し、グレイ・ストーンズの顔役たるアリアは、腕利きのパイロットたちを集めて雇用することで身を守っていた。
319: 弥次郎 :2020/11/13(金) 21:38:09 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
「最近はまずいことになってきたようだよ、ジュリア」
ただでさえ激戦のそこに最近になって介入してきたSAU軍の行動は正気を疑うものだった。
孤児やストリートチルドレンを、あるいは拉致した子供たちを、阿頼耶識の施術を施し、少年兵として仕立て上げるという方式を採用していた。
それこそ、SAU正規軍が他国の領土に踏み込んでそういった行動を繰り返すほどに、彼らは見境ない行動に出た。
いったいなぜか?ナチュラリストが多く、そういったものに忌避を示していた彼らがそうやすやすと方針を投げ捨てたのか。
その理由は音に聞く、エドモントン決戦において有用性が証明されてしまった禁忌の技術である阿頼耶識らを導入するためだった。
なぜ忌避するそれが使われるようになったのか。それはひとえに、それだけ火星連合や地球連合が恐ろしかったが故だった。
従来のMSを一蹴するスペック、技術、パイロットの差。ギャラルホルンの持つ戦力の総力がぶつけられ、たやすく蹴散らされてしまったという事実。
それだけではない。これまでの常識にとらわれない、衛星軌道からのMSの投入、超巨大MS、大型のMWなどなど、新兵器が多数投入されたのだ。
それゆえに、これまでの安寧の反動のためか、彼らは倫理観というタガをいとも簡単に外してしまったのだ。
情報をどこからともなく仕入れてきたのはアリアであり、アリアの部下たちだった。
だが、それに私は何も感じなかった。戦いのために何かを投げ捨てるという行為は私が繰り返してきたことだ。
経済圏が戦いに備える中で何かを捨てたところで、何ら不思議でもない。
「驚かないんだね」
「ええ。その程度のことなんて、ザラにあることでしょう?」
何しろ、後ろめたい商売など無法者に分類されるならば誰しもやっていることだ。私を雇用しているアリアでさえも、例外なく。
私の手は、身体は、とっくに血まみれで汚い。以前の私ならば、ジュリエッタならば激怒さえしただろう。
だが、私はすでにジュリエッタではない。それはもはや、他人をさす名前だった。
「それで、いったい私に何を見せるつもりですか?」
「腕利きにはいいMSを割り当てないとね」
そして、私はその日、それに出会った。
赤、いや、紅の色に染まったMSに。
血より紅く、宝石よりも輝くそれに。
「ちょっとした掘り出し物でね。調べてみると、なかなかどうして悪くないMSだったのさ。あんたに預けるよ」
「見るからに他のMSとは違いますが?それを私に押し付けてどうするつもりです?」
「……鵜呑みにはしないか。まあ、当然さ。正直、よくわからんMSなんだよ。
だが、乗ったパイロットが軒並み振り回されてね。あんたくらいしか使えそうにないんだよ」
「……」
問いかけつつも、私は眼前のMSから目が離せない。
美しかった。文字通り発掘されたというそれは、しかし、綺麗だった。どうしようもないほど、私を魅了した。
「いいでしょう。ただし、危険手当くらいはつけてください」
だが、すぐに現実に戻る。
こちらは明日のための金や住処や食事のために命を懸けて戦っているのだ、これくらいは要求する。
「もちろんさ、ジュリア」
正直、アリアが何を考えているかなど知らない。だが、利用されるならば利用してやるくらいの気概はある。
目の前のMSとならば、それが成し遂げられる。なぜか、そんな予感がしてならなかった。
私の名前はジュリア。
ノーマッドであり、傭兵であり、かつてはジュリエッタ・ジュリスと呼ばれた人間。
私は、ここにいる。命を燃やして、生きているのだ。
320: 弥次郎 :2020/11/13(金) 21:38:43 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
ジュリア
概要:
かつてはジュリエッタ・ジュリスという名で知られた、アリアンロッド艦隊の才媛。
ガラン・モッサによって地球に逃がされたのち、傭兵として身を立てつつ、紆余曲折を経て、SAUに亡命していたイズナリオ・ファリドを暗殺する。
しかし、その後は生きる理由を失い各地を流浪。かつての高潔すぎるきらいのあった性格や意思はすり減り、面影がかろうじて残る程度である。
それでもMSの操縦技術などは生きており、それを武器として生きている。
アリア
概要:
放浪者たちの集まる灰色の街『グレイ・ストーンズ』の顔役。事実上のギャングの頭目である女傑。
本名は不明で経歴も明らかではないが、明らかに各国に通じる伝手を持ち、情報や必要なものを仕入れる手腕やつながりを持つ。
グレイ・ストーンズの独立性を維持するため、腕利きの傭兵を集めており、ジュリアを雇用する。
【メカニック】
ヴェバロン
形式番号:(不明)
全高:16.7m
重量:25.9t
動力:エイハブ・リアクター
装甲:ナノラミネートコーティング装甲
武装:
ライフル
ロート・ブレード
シールド・トンファー
アイオーン・ウィップ
概要:
アリアがどこからともなく入手してきたMS。明らかに既存のロディ・フレームやヘキサ・フレームとは異なる造形を持つ。
他のMSよりも小柄で、さらに機体各所に設置されたスラスターによる爆発的な水力により、きわめて高い機動力や運動性を発揮できる。
半面、装甲は薄く、重量も軽いために力比べにおいては不利になりがちである。よって、テクニックや立ち回りを生かして戦うことを前提としているようである。
武装解説:
グレイズなどが用いる120㎜ライフルを流用したもの。ストックが切り詰められており、取り回しを優先している。
発掘時にMSと共に複数本発見された武装。
ブレードとは言っているが、どちらかといえばレイピアに近く、刺突による一点突破で敵機を破壊するというコンセプトのようである。
左腕に装備されたバックラーシールド。普段は防御兵装として使われ、同時に内蔵されたトンファーで攻撃も可能な複合兵装。
袖の部分に装備される鞭。どちらかといえばワイヤーアンカーに似ており、絡みつかせることで敵機の動きを妨害する
321: 弥次郎 :2020/11/13(金) 21:39:25 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
本編後のジュリエッタさんの様子を。
いや、もはやジュリエッタだったジュリア、と呼ぶべきですな。
最終更新:2020年11月15日 13:24