818 :YVH:2012/01/30(月) 00:30:26
銀河帝国から慰問使(謝罪の使者)が派遣された事を、レムシャイド伯から聞いた月詠宮は
ポレヴィト星域に留めていたシラサギをフェザーンまで呼び寄せる事を命じ、あわせて
本国に「レイの物」を派遣するよう依頼した。
宮に呼ばれたシラサギと護衛(兼実験)艦隊はフェザーン自治政府の許可の下、惑星上に降下し
その偉容と大きさでもってフェザーン人たちの度肝を抜いた。
降下した部隊は市街地の近くにある人造湖に着水し、ホテルに居た一行は即日其方に引き移った。
こうして、日本側の準備が整う頃、銀河帝国からの使者たちがフェザーンに到着した。
帝国の使者たちは、現地に到着するや諸準備を整え始めるのだが、一部の者(H伯爵(阿呆ではない)・F男爵)が
先方を呼び出せばよいと騒ぎ、保護者役から叱責されると言う一幕があった。
こうした騒ぎはあったが使者たちは無事、要塞艦の客となる事が出来た。
控え室に招じ入れられた彼らは、その部屋の落ち着きつつも存在感を示す調度の数々に暫し目を見張り
案内役の男爵に促されるまま、席に付いて対面の時間まで待った。
案内役が去るのと入れ違いに執事服をまとった男性と、複数のヴィクトリアンメイドたちが現れ
彼らに紅茶を饗していった。
「ふむ、これは中々。ところで執事殿、このカップはどの様な品なのかな?
帝国では、あまり見かけぬ文様だが・・・?」
紅茶を喫していたランズベルク伯が控えていた執事に声をかける。
「はい。この茶器はマイセンと申しまして、嘗ての地球時代ドイツと申します所で
作られた品でございます。皆様方がゲルマン系と伺いまして、御用意させて頂きました」
そう答え、慇懃に頭を下げる執事。聞いた帝国側はゆっくり茶を楽しむ者と、硬直してしまい
カップを持つ手が小刻みに震える者とが現れた。
因みに、付属していたティー・スプーンは、嘗て欧州で名が通っていた銀細工メーカーの物で
柄に精緻な文様が施されている逸品である。
やがて時間となり、帝国の使者たちは再び現れた案内役の男爵に案内され、謁見の間に案内された。
-謁見の間-
東儀家配下の雅楽衆が楽を奏する中、使者たちが入室して来た。
これを迎える日本側は、それぞれの位階に合った礼服を着用しており、
宮も四品・女王の礼装で使者たちを迎えた。
尚、同盟側も礼装着用で臨んではいたが、日本側礼服の中では何となく浮いて見えていた。
「銀河帝国の御使者に置かれましては、遠路の所
よく御出で下さりました。
私(わたくし)が代表を務めます。四品女王・月詠宮皐月です」
そう言って、典雅に会釈した。宮の挨拶に続いて、帝国側の挨拶が始まった。
「初めて御意を得まする。私は銀河帝国皇帝フリードリヒ四世が臣
ヨアヒム・フォン・ノイエ=シュタウフェンと申しまする、女王殿下」
そう挨拶すると公は深々と頭を下げた。随行している女婿二人、マリーンドルフ伯
ヘルクスハイマー伯、ヒルデスハイム伯(当初は出さない予定だったが、道中の様子を見て公が再考)
ランズベルク伯、フレーゲル男爵(当初は不満そうだったが、案内役だった男爵の雰囲気に圧倒され改心)も
公に習い、深々と頭を下げた。
続いて、慰労品(という名のお詫びの品)の披露が始まった。目録を読み上げるのはヘルクスハイマー伯である。
「日本帝国御使者への慰労の品
一つ、四百十年産ワイン。赤・白・ロゼ各一ダース
一つ、ゴールデン・フォックスの毛皮、五点
一つ、シルバー・フォックスの毛皮、五点
一つ、パール・ラビットの毛皮、五点
一つ、象牙細工、三点
一つ、絵画、五点
カストロプ公爵家より、絵画二点、エメラルドの首飾りが一点
以上で、あります」
伯は目録を元のように畳み、近づいてきた日本側の者に渡した。
受け取った係官・大原伯爵はそれを副使の広幡侯に渡し、侯はそれを宮にお見せした後
控えていた侍従官に渡した。
819 :YVH:2012/01/30(月) 00:31:36
続いて、日本側からの返礼の品である。最初は挨拶代わりの品だったのだが、
今回の一件でそういう理由では渡せなくなり、本国との相談の結果,返礼の品として渡す事になったものである。
こちらの目録を読み上げるのは、立花伯である。
「銀河帝国への返礼の品
一つ、古黄金十枚
一つ、梨地金蒔絵太刀、一腰(意匠は菊桐紋。中の刀身は徳川宗家より献上の古刀)
一つ、梨地金蒔絵御文具、一揃え(意匠は同上)
一つ、樽(銘酒)十樽
一つ、酒肴二種(相手側に配慮して、チーズと生ハム※御料牧場謹製)
一つ、絹織物、五反(文様は桐竹)
一つ、日本犬、十番〔つがい〕(秋田犬・二番、甲斐犬・ニ番、紀州犬・ニ番、四国犬・二番、柴犬・二番)
以上、であります」
伯が目録をヘルクスハイマー伯に渡した。続いて、使者たちへも慰労の品が贈られた。
正使たるノイエ=シュタウフェン公には
古金、五枚
樽、三樽
酒肴(チーズ)一種
絹、五反(西陣織)
古マイセンの茶器セット、一揃え
副使たる女婿二人には
古金三枚
樽、二樽
酒肴、一種(内容は正使と同じ)
又、これらとは別に妻子への「土産」として
太祖の皇女四名が愛用していたのと同じ化粧品が数点(この為にメーカーに再生産を依頼)
絹五反(加賀友禅)
マリーンドルフ伯以下の随員にはそれぞれ
古銀、五~十枚
絹、三反
が、贈られた。また、これらとは別に御上からフリードリヒ四世個人へは
ルドルフ直筆の文章(演説原稿の下書き)が黒漆塗りで蓋の表面に銀箔で双頭の鷲の意匠が施された箱入りで
贈られた。
これらの授受が済み、歓迎の宴が催された後、帝国の使者たちは帰還する。
贈られた品の価値に宮廷鑑定家が発狂し、宮廷中が大騒ぎになるのは
皇甥が両国の今後に付いての交渉の代表になり、再びフェザーンに赴いた後である。
【あとがき】
何とか、書き上がりました。
文中の黄金・金は其々、大判・小判になります。
何時頃の品かは、皆様のご想像にお任せします(笑)
漆器関係はこの時代の作で、劣化を防ぐため特殊な加工をしています。
最終更新:2012年01月30日 21:35