760: 加賀 :2020/11/15(日) 11:44:21 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「まさかトラックが空襲されるとは……」
「基地航空隊の錬成地だからな……それで被害は?」
「あるわけないだろ……と言いたいが航空隊に若干の被害が出た」
「問題は……」
「『瑞鶴』の飛行隊は空母『イントレピッド』を捕獲する武勲を挙げました……がまたしても飛行隊は壊滅状態になりました」
「己の代償の代わり……か」
「『瑞鶴』は縛られ過ぎてませんかねぇ……」
「激動の戦後を生き延びてしまった所以か或いは……」
「或いは?」
「……それが彼女が定めた宿命なのかもしれんな」
10月7日、急報を告げたのはマーシャル諸島のクェゼリン環礁からハワイ方面への偵察飛行をしようとしていた横浜航空隊の二式飛行艇からだった。
「機長、敵機動部隊です!?」
「何だと!?」
二式飛行艇が発見したのは復活した米機動部隊だった。マレー中将率いる第58任務部隊はキング海軍長官からの作戦命令発令により護衛艦艇と共にトラック諸島へ向けて航行していたのだ。
「ギルバート、マーシャル諸島への攻略ではないか?」
「それなら上陸船団がいるはず……だがいない!!」
「警戒態勢を敷け!! 敵の狙いは間違いなく此処(トラック諸島)だ!!」
「松田少将の四航戦はどうする? マーシャル諸島の撤退任務に就いている」
「彼の独自判断に任せる」
ギルバート、マーシャル諸島の航空隊は水上機部隊以外は撤退していたのでトラック諸島は直ちに警戒態勢が発令、環礁内に停泊していた艦艇は軒並みパラオへ退避する事になる。更にラバウルからも陸攻隊を呼び寄せた。そして彼女もまた、出撃準備を整えていた。
「『瑞鶴』以下の機動部隊も出撃します!!」
「奴等の横っ腹にドデカイのを叩き込んでくれ!!」
念のためとして三艦隊から外れていた『瑞鶴』は僅かな護衛艦艇と共にトラック諸島を出撃するのである。
正規空母
『瑞鶴』(紫電改二27機 彗星18機 天山27機 彩雲3機)
錬巡
『香取』
駆逐艦
『舞風』『太刀風』『追風』『文月』『秋風』『松風』『春雨』『野分』
なお、指揮官は空母『瑞鶴』の貝塚大佐(憑依者)である。貝塚大佐は一旦はサイパン方面へ北上しつつも適切な地点にて面舵を切り米機動部隊の側面から突撃する腹を見せた。
(『瑞鶴』しかいないこの状態……やるしかない!!)
10月9日、米機動部隊(『エセックス』『ヨークタウン2』『イントレピッド』『レキシントン2』『バンカー・ヒル』)はトラック諸島より約200キロの地点から500機近い攻撃隊を二波に分けて発艦させた。この時、マレー中将は勝利を確信していた。
(此処までは上手くいけた……奴等が逃げてようが敵の主力基地を叩けば合衆国の威信も更には堅牢になる!!)
761: 加賀 :2020/11/15(日) 11:45:24 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
だがその自信は攻撃隊がトラック諸島上空で途絶える事になる。
『カロリン諸島上空はジャップの新型戦闘機とジーク(零戦)が大量にいやがる!?』
トラック諸島は対空電探にて敵攻撃隊を探知しており待機していた戦闘機は全部発進させたのである。その数、凡そ400機近くである。
『紫電改及び雷電は敵戦闘機に当たれ!! 零戦隊は敵攻撃機を対処しろ!!』
またトラックには地獄のニューギニア戦線から戻ってきた飛行第13戦隊も滞在しており彼等も戦闘に参加していた。
「まさかトラック空襲に参加するとはなぁ……人生何が起きるか分からんな」
隼三型に乗る坂井はそうぼやきつつもF6Fを叩き落とすのである。第58任務部隊が自信を持って送り出した攻撃隊はトラック諸島上空で壊滅的打撃を与えられボロボロになりながら帰還するのである。(帰還100機程)
「イカン、直ちに退却する!!」
攻撃隊を収容したマレー中将は直ちに撤退を決意、最短距離で逃げる事にしたがその決意は遅かった。反転した機動部隊の西方から接近する編隊を探知したのである。
「森本さん、初の空母攻撃はじっくり見てくださいね」
『お前に言われんでも分かっているわ雨宮!!』
『瑞鶴』飛行隊は全機を以て米機動部隊に接近していたのだ。その天山隊の中には雨宮達も含まれていた。
『雨宮!! 【突・撃・セ・ヨ】だ!!』
「行きます!!」
森本の分隊は高度3メートルまで下げて突撃を開始、狙いは空母の最後尾を走る『イントレピッド』である。その上空では彗星隊が突撃を開始していた。
「小林飛曹長、行きます!!」
『おぅ、しっかりついてこい!!』
彗星隊の秋山一飛曹と小林飛曹長の機は対空砲火を避けつつ急降下、500キロ爆弾を『イントレピッド』に二発叩き込む事に成功した。そしてその隙に雨宮達の分隊が左舷に展開した。
「あ、空母が右に曲がる!?」
『イントレピッド』は雷撃を避けようと面舵を切った。だが直ぐに取舵に切った。右舷からも別の天山隊が突撃していたからだ。
『雨宮、このまま行け!!』
「はい!!」
だが対空砲火は激しく森本の分隊はあっという間に森本機だけしか生き残らなかった。それでも雨宮は距離700で魚雷を投下した。
「木場、雷跡を確認しろ!!」
『魚雷、走ってます!! 走ってます!! ……あ、当たった!? 当たりました雨宮さん!!』
雨宮はゆっくりと機体を旋回させつつ眼下を見ると『イントレピッド』の艦尾に水柱が吹き上がっていた。
「また艦尾か……」
『お前、女のケツじゃなくて空母のケツしか追えんのか』
「ひでぇや森本さん……」
彼等はそう言いつつも帰還するも攻撃隊の数は少なかった。『瑞鶴』に帰還出来たのは紫電改二24機 彗星5機 天山7機だったのである。だがその代償として『イントレピッド』の機関に深刻なダメージを与える事に成功したのである。
762: 加賀 :2020/11/15(日) 11:45:58 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「護衛艦艇を付けて『イントレピッド』を守れ。今なら大丈夫だろう」
トラック諸島からの空襲圏外は遠のいたと判断したマレー中将は11ノットしか出ない『イントレピッド』に護衛艦艇(乙巡一、駆逐艦六)を付けて自分達は最短距離でハワイに向かうのである。一応ながらマレー中将を擁護すれば最短距離で帰れと言われたのは上層部(キング長官)でありマレー中将はその命令に従っているだけである。また、ギルバート、マーシャル諸島の航空戦力は全て引き揚げていたのでキングの判断は間違ってはいなかった。『あの二隻』がいる事を除けばである。
第58任務部隊と分かれた『イントレピッド』、対空レーダーが敵機の反応を示したのは1542だった。
「まさか……」
30数機の編隊は瞬く間に『イントレピッド』上空に群がり護衛艦艇を攻撃したのである。『イントレピッド』も戦闘機を出そうとはしたが500キロ爆弾の命中で発艦不能であり対空砲火の手段しかなかったのだ。攻撃は僅かな被害であり、水上機が引き揚げた先ーー約100キロの地点に対水上レーダーが反応したのは1633であり『イントレピッド』側は顔面を蒼白させるしかなかった。
「敵艦隊です!?」
レーダー員の悲痛な叫びは直ぐに全艦に伝わるのであった。現れたのは松田少将の第四航空戦隊であった。
「全艦突撃!! 護衛艦艇を叩きのめせ!!」
僅かな艦艇しかいないが(マーシャル諸島の撤退任務中であった)それでも『伊勢』型二隻に『青葉』『衣笠』『那珂』の巡洋艦隊を主軸に砲雷撃戦を開始するのである。決着は直ぐに付いた。『イントレピッド』を守る護衛艦艇は懸命に戦うも駆逐艦二隻以外はあっという間に沈められた時点で松田少将は勝利を確信、発光信号を送った。
『空母ヲ退艦サセヨ』
その意味に気付いた『イントレピッド』艦長は幾分か悩んだが乗員の命には代えられないとして退艦を決断、1830に退艦は完了し駆逐艦二隻に移譲して撤退するのである。
無人となった『イントレピッド』の周囲に『青葉』『衣笠』が護衛し『伊勢』が曳航を開始する。その様子を見ていた松田少将はポツリと呟いた。
「鹵獲されてNTRされる『イントレピッド』って良いよな」
(意味分かりません)
副官は松田の名誉のために黙っておくのである。斯くしてトラック空襲は米軍の戦略的勝利で戦術的敗北をし『イントレピッド』は鹵獲されるのであった。
763: 加賀 :2020/11/15(日) 12:00:09 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
- 坂井無双(違う
- 『瑞鶴』飛行隊壊滅
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小林と秋山は艦爆隊の話ですね。さて『イントレピッド』も鹵獲しましたし次は……
最終更新:2020年11月20日 11:24