643: 第三帝国 :2020/11/23(月) 20:28:44 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――外伝「シレイラ号事件Ⅳ」
ーーーーーーシレイラ号船内 大ホール付近
柏木がM82バレットをぶっぱなし、
フェルがブローニングM2重機関銃でドーラに対して獣狩りの夜、
ではなくドーラ狩りの夜を宣言してから戦況はヤルバーン側へと傾いていた。
それでも不意を突いたり、
弾幕射撃の雨を突破して近接戦に持ち込まれることもあったが左手に銃を、
右手にはハンマーや斧を手にした狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている良い狩人達・・・ゲホゲホ。
前衛担当のヤルバーン戦闘員達が立ちふさがる。
「はぁっ!」
シャルリはステップでドーラの攻撃を回避すると左手のバレットで銃撃によるパリィをする。
一撃でも致命的打撃を負う代物を至近距離から受けてドーラは仰け反り、膝を床につく。
この隙をシャルリは逃さず右手のパイルハンマーをドーラに叩き込んだ。
右手ごとドーラの体内へ深く、深くハンマーが突き刺さる。
内蔵攻撃の時間だ。
「臓物をブチ撒けろ!!」
電車でおんぶプレイ、
そして顔の一文字傷がチャームポイントな某ヒロインのような台詞をシャルリは叫ぶ。
ドーラの奥の奥まで突き刺さった右手を捻らせ抉り取るように手を引き抜く。
機械の破片や各種液体が派手に周辺へブチ巻かれた。
今までならこうも綺麗にドーラを狩りのごとく倒すなどできなかった。
しかし柏木がもたらした「銃」という武器が対ドーラ戦のルールを書き換えた。
「フタエノキワミ、アッー!」
「怖いかドーラよ!
己の非力を嘆くがイイ!」
「おお、
アメンドーズ、
アメンドーズ・・・。
憐れなる落とし子に慈悲ヲ・・・」
「ヒャハ、ヒャハッ
私ハやったんだあーっ!
ヒャハハハハハハァーーッ」
もはや恐れることなどない、悲壮な覚悟など必要ない。
そのせいかヤルバーン戦闘員は勝ち戦の興奮に酔っていた。
人智に及ばぬ啓蒙を得て発狂している気がするがたぶん気のせいである、たぶん。
644: 第三帝国 :2020/11/23(月) 20:29:33 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
「逃げる奴は皆ドーラ、デス!
逃げない個体はよく訓練されたドーラ、デス!ふ、フハハハハハーーーー!!」
そして遠くにいるドーラはトリガーハッピー兼、
テッポーキ○ガイと化したフェルがぶっ放すブローニングM2重機関銃で粉砕されつつあった。
- その内ベトナムの大地で「朝のナパームの匂いは格別デス! 」とか言ったりサーフィンでもしそうである。
『・・・まさかドーラをここまで一方的に圧倒スルとは』
『凄イ!凄イです!』
ティラス船長の茫然とした呟きが通信から流れると同時に、
デロニカ・クラージェが歓喜に満ちた熱狂的感情の最中にあることが伝わる。
このまま行けるのでは?
そんな楽観的な空気が流れるが・・・。
「おイ、なんか増えてないか?」
シャルリが困惑の声を叫ぶ。
最初よりも明らかに数を増しつつあるドーラに困惑を覚える。
数が多くてウンザリするのではなく表現しがたい嫌な予感と違和感をシャルリは覚える。
『・・・っ!警報!
シレイラ号船内に存在する全てのドーラ反応が向かってキマス!』
「まじか!・・・って、なんじゃありゃ!?」
デロニカ・クラージェからもたらされた警報の意味について柏木は絶句する。
それは全長2000メートル級の恒星間長距離旅客船に相応しい巨大な通路で密集隊列を組んだドーラであった。
いや、高さは天井まで届いているので壁と表現するのが適切なのかもしれない。
兎も角、柏木達の前後にてドーラは隊列を組んでおり、
この状況を一言で表現するならば、
「・・・挟まれたデス!?」
フェルの一言を合図にドーラが一斉に襲いかかる。
ヤルバーン戦闘員達は咄嗟に方陣を組んで絶え間ない銃撃の嵐、鉛の暴風雨をプレゼントするが、
「・・・ッコイツら!
数が多すぎる上に味方の屍を盾にしてやがる!」
銃撃が脅威ならば数の暴力で損害に構わず前進する。
さらに倒された味方を盾として利用することで銃撃から可能な限り防御する。
短時間の内にドーラが導きだした対策にシャルリは戦慄した。
『救助したシレイラ号の人員も含メテ、
全員ただちに強制転送回収せよ、急げ!』
『船長!
空間歪曲確認・・・。
ガーグデーラ母艦デス!
本艦とシレイラ号へ向けてポッドが射出されマシタ!』
『な、このタイミングでっ・・・!!』
駄目押し、とばかりにガーグデーラの増援が到着する。
今やシレイラ号に乗り込んだヤルバーン戦闘員だけでなく母艦のデロニカ・クラージも含めて全滅の危機へ陥る。
戦況が勝ち戦からの反転して絶望的な敗北へと変化したが、
ヤルバーン戦闘員達の士気は自衛隊で訓練されたお陰か辛うじて維持していた。
が、それも時間と共に崩壊することは誰もが想像できる未来であった。
「私達がみんなを守るんだから!
皆さん、耳を塞いで口を開けてください!」
「任セテ下サイ、ハイ!」
突然吹雪と駆逐棲鬼がヤルバーン戦闘員達の前後に躍り出る。
手には先ほどまであったPVMCGで造成した銃ではなく『軍艦の砲塔を模した代物』を持っている。
「全員耳を塞いで口を開けるんだ!
フェル!!障壁シールドみたいな物ってあるか!?」
「アリマスケド・・・一体?」
「よし、話す暇はないから急いで展開してくれ!頼む!」
645: 第三帝国 :2020/11/23(月) 20:32:16 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
吹雪達の意図に真っ先に気づいた柏木がフェルにお願いする。
知らない誰かならばフェルはこの懇願を無視し、あらんばかりの罵倒を浴びせていたかもしれない。
しかし柏木真人という人間がこれまで成し遂げた数々の実績と信頼。
何よりもフェルはこの修羅場の最中で将来の伴侶が浮かべる瞳は絶望とは真逆の物であった。
「・・・分かりマシタ。
全員防壁シールドを展開!
耳を塞いで口を開けるデスヨ!!」
フェルの命令に従いヤルバーン戦闘員は障壁シールドを展開する。
この命令について内心疑問を抱きつつも、
このままではジリ貧であることは知っていたので皆フェルの命令。
否、吹雪と駆逐棲鬼、もとい黒雨の賭けに乗る。
「願い!あたってください!」
押し寄せるドーラの大群へただ一人前に躍り出た吹雪が叫ぶ。
これを見た柏木は修羅場の最中でありながらもマジでゲームのまんまだわ!?
キタコレ!などと興奮したがそんな余裕は吹雪と黒雨の発砲と同時に即座に消え去った。
轟音と衝撃。
それに閃光が同時に発生した。
次の瞬間、
密集していたドーラから爆発音が響く。
銃よりも遥かに格上の物理的暴力。
10cm連装高角砲の砲弾が炸裂して飛び散る破片が密集するドーラを纏めてズタズタに引き裂いた。
爆発のエネルギーが足元どころか空間ごと揺らされる轟音に誰もが驚きの余り刹那の間、我を忘れた。
「私達は海だけじゃなくて、」
正面を守る吹雪が金属音を立てながら1、2歩前に踏み出す。
「コウ見エテ陸(おか)デモーーーー結構強インデスヨ、ハイ」
背後を守る駆逐棲鬼が義足、
正確には陸上歩行モードに展開させた艤装で1、2歩踏み出す。
そこにいたのは言語では表せない『何か』であった。
ただの少女であるはずだが、数百人分の意思と視線が吹雪から発せられる。
誰もがこのあり得ない事象に思考が追い付かず動きを止める。
それはドーラとて例外でなく、少なからず生き残った個体はまるで戸惑ったような仕草をしている。
646: 第三帝国 :2020/11/23(月) 20:34:04 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
「・・・っ、うぉおおおおお!!」
だが、憎たらしいドーラが一方的に倒された。
この事実と現実に思考が追い付いた時、戦場の空気が激変した。
それまでの絶望的な空気から一変して士気が天を衝かんとばかりに上がる。
対するドーラは完全に恐慌状態であり、
先ほどとは違い統制が乱れ、右往左往した挙げ句、
吹雪と黒雨達の砲撃を再度一方的に浴びてさらにその数を減らす。
そしてーーーー。
『あ、これはーーーー。
援軍デス!ダストールの援軍が来まシタ!助かった!!』
ニヨッタ副長からの通信にヤルバーン戦闘員は更に感情を爆発させる。
もはや形勢は完全に逆転して勝利は近い。
だが、未だシレイラ号の船内にはドーラが残っておりまだ終わりでない。
「さあ、反撃デスヨ!!続けぇェエエエ!!」
「うぉ!?フェル!!?」
「フェルフェリア局長と大使が突撃シテいる、遅れを取るな!!反撃だ!」
フェルがいの一番に突撃する。
柏木が慌ててフェルの後を追いかける。
これを見たヤルバーン戦闘員も続けて遅れるな!とばかりに柏木の後に続いた。
かくしてドーラとの戦いは援軍の合流と共に人類側の勝利を以て幕を閉じた。
現場にいた誰もが勝利の喜びを噛みしめ、地球人類が示した勇気と智謀に絶賛した。
めでたし、めでたし。
後日「シレイラ号事件」の顛末について知った日本と神崎島は
「ティ連すら手こずる人類に敵対的な地球外生命体の存在」に衝撃を受けると同時に強い危機感を共有し、
日本と神崎島の間で最悪に備えた準備、それもティ連にも秘匿される独自の準備が始まったのである。
おわり
647: 第三帝国 :2020/11/23(月) 20:43:38 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
以上です。
これにてシレイラ号事件の話は完結です。
皆様が投稿されたネタへの返礼として楽しんで頂けたら幸いであります。
では
追記
ひゅうが様が投稿されたとあるネタの産物が素晴らしかったので、思わず匂わせる形で書きました。
「ありうるかも」と読み手の妄想を刺激する描写には脱帽ものです、感謝乙です。
最終更新:2020年11月25日 19:49