693: リラックス :2020/11/24(火) 19:35:38 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
東南アジア向け輸出用戦艦案「(仮称)パシフィカ級」
全長 208m
全幅 29m
喫水 9.0m
基準排水量 21500t
満排水量 28000t
機関 COGAG方式
GE LM2500-30ガスタービンエンジン(21,500bhp 16.04MW))×4
速力 26ノット(公称)
乗員 360名
レーダー OPS-20
その他(先方の都合により変動)
兵装
五〇口径305mm連装砲 三基
76mm単装速射砲×2基
高性能20mm機関砲(CIWS)× 2基
Mk.41 VLS×8セル (ESSM×32発)
三連装短魚雷発射機×2基
概要
定遠級に慄く東南アジア諸国向けに日米が設計した輸出用戦艦。
このスペックが公開された時、ちょっと待て、こんなんで何と戦う気なんだ!?と主にミリタリ板などで大いに突っ込まれた。
42cmガンランチャーを搭載する定遠級と比較すると明らかに非力な305mmという主砲、イマイチ詳細が不明ながら「注文先の要望により変動する可能性有り」と出す物を出さなきゃざっくりと機能が削られることが容易に想像出来る電子兵装、26ノットというフリゲートやコルベットと共に行動するには微妙な速力、オマケに申し訳程度にしか搭載していないVLSと、
対空能力も対潜能力も個艦防御が出来ればせいぜいという内容に、もしかしてADM級に対抗する為に設計して、日の目を見ないままお蔵入りしていた戦艦の案を輸出用に引っ張り出して来たんじゃないのか(注1)、と実しやかに囁かれることになるが、日米も何も考えずにこの案を出した訳ではなかった。
計画の背景
定遠級戦艦は主に
アジア方面において大きな波紋を広げた。
強力な海軍戦力を持ち、定遠級を十分に撃沈可能な能力を有する日米露の関係者は冷静に「日本の主力艦隊がこれまで通りにしてるだけでほとんど動けんやろ」「むしろ、ふじ型も配備した日本がこれまで通りにしてるのが一番困るパターンのはず」とその実情を正確に分析していたのだが、
まともな海軍戦力を持たず、更に外に敵を求めた中国が殴りかかる先として手頃な相手と見られていた東南アジア諸国からすると、国民に不安を覚えさせるには十分過ぎる存在だった。
(何しろ、それらの国の海軍戦力と言えばAUMXの参加国数と参加艦艇数で前者の方が数が多いという事態が普通に起きる程度でしかないのである。)
ADM級のようなネタになるだけの存在でもなく、現代に蘇った戦艦として最低限のラインには達している(この点に関しては苦労した関係者の面目が保たれたとして彼らを讃える声がネット等で一時期増えたという話があるがが、それはさておき)定遠級は、この点において前世紀における戦艦と同様、戦略兵器として認められたとして良いだろう。
中国の造船関係者の功績はともかく、各国は国民からの突き上げもあり、対処に頭を悩ませることになる。
まず、彼らが考えたのは強力な海軍戦力を持つ勢力の力を借りるという基本にして王道な方法だった。
694: リラックス :2020/11/24(火) 19:36:50 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
彼らがまず目をつけたのは神崎島の戦力を考慮せずとも、ふじ型戦艦を配備したことで世界最大の戦艦戦力を保有する日本だった。
先の戦争で某半島南部に存在した国家に世界中がドン引きする程の対応をしたこともあり、「バカにする訳なんだけど日本の戦争観はWW2で止まってるw」としたり顔で言っていた連中に、
「真剣に言う訳なんだけど日本の戦争観はWW2の頃のまま維持されてる」とほぼ同じ意味の言葉を真逆の使い方をさせる程のインパクトを周囲に与えていた日本の戦艦が各国に駐留すれば中国も殴りかかるのに二の足を踏むだろう、という分析自体は間違いではなかった。
問題は、日本にその目論見に乗ってやる義理と義務がないことと、それに軍事的、政治的にメリットを見出す理由に乏しいという根本的な部分を考慮していないことだった。
ティ連という強大な後ろ盾を得た上に超大陸化した日本からすれば東南アジアがそっくりそのまま中国について喧嘩を売って来る事態になったとしても、来るなら来い、まとめて相手になってやる。という話である。
中華からの賄賂で平然と乗り換えるという真似を平然とやることからイマイチ信用に欠けることもあり、下手に味方扱いする方が厄介、強くもないからこちらの都合で敵認定が自由に行える敵寄りのグレーゾーンにしておくのが楽、日本にとって東南アジアとはその程度の存在だった。
もし、東南アジア諸国が北朝鮮(或いはかつての韓国)や台湾のように日本と中国の間に存在するような位置関係であれば話は違っただろうが、そうではないことも拍車をかけた。
東南アジア諸国がどう理屈を捏ねようとも先に述べた通り、「中国の海軍が怖いなら日本本土に主力艦艇がガン首揃えてスタンばって牽制してる方がお前ら安全やと思うで?」が結論であり、これには日本に東南アジアの安全保障を幾らか肩代わりさせたい
アメリカですら反論出来ないところであるから、日本の戦艦を回してもらうという目論見はあっさりと失敗することになる。
次に目をつけた
アメリカは流石にここまで割り切った正論で殴るような真似は出来ないことから、定期的にA・L級一隻を巡回してもらうことに成功したが、不安という曖昧ながらも根強い感情を払拭するには不足だった(注2)。
対戦艦ミサイルを大量に搭載したアサルトシップだか重雷装艦再びな艦艇だとか、対戦艦ミサイルを搭載したミサイル艇を大量に配備するといった「一周回ってとは言うが、そこまで再現するか?」と言った案や、
超大型迫撃砲を陸地に建造して配備するという「リトル○ーヴィットかよ!」と突っ込まれるような狂気の構想、ASEANに日米を加えた環太平洋連合艦隊構想という「ちょっと過去を振り返ってみような?な?」な意見等々…
日本が戦艦の保有戦力を対米七割に拘り、更にそれが不可能なことが明らかになって不足分をどうにか補おうと様々な方法が試みた気持ちが少しは理解出来るんじゃないかと言われるような意見が飛び交ったのは、戦艦という兵器の持つ戦略的効果を示していたと言えるかもしれない。
そんな中、特に支持を受けたのは日米に戦艦を注文し、自身らで運用するという案であった。
戦艦に対抗するには戦艦が必要である、と先の大戦前まで先祖返りしたような意見はこの頃、世界中の常識として返り咲いており、自前で戦艦を保有するという案が支持されるのはある意味当然だった(注3)。
そして、この話に意外にも
アメリカでは、東南アジア諸国の不安の解消という問題への対処とした場合、それなりの効果はあるんじゃないかと消極的ながら肯定的な意見が多かった。
日本の言い分は
アメリカも認めるところであり、純粋に軍事的な観点、それも対中戦略という前提で言えばA・L級は東南アジア方面を巡回させるよりも沖縄や台湾方面にでも留めておいた方が余程有意義であるというのが関係者の言い分だった。
中国の定遠級が完成したことにより、中国国内における政府の支持率が回復したという話はその筋では有名だったし、A・L級が東南アジア方面を巡回を開始する前と後で明らかに治安の良し悪しに差が出たことから、戦艦の持つ視覚的効果、精神的効果は既に証明されていたこともあり、(仮称)パシフィカ級の構想が生まれることになる。
695: リラックス :2020/11/24(火) 19:38:07 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
日本も
アメリカや東南アジアの事情は把握していたこともあり、協力する姿勢を見せたことで(仮称)パシフィカ級のプロジェクトは目出度く立ち上がることになった。
そこ、要するに、東南アジアの民心の安定の為だけにA・L級一隻でも惜しいのに、二隻も貼り付けられるのはあまりにも割に合わないと日米が意見を一致させただけじゃね?とか言わない。
「取り敢えず、万が一本当に建造することになった場合、中国に情報流されるのはもう前提として丸ごと情報流されても問題にならないラインに落とし込もう」
「コストも抑えないと買えないし運用出来ないからちょうど良かろうて、タイマンでの撃ち合いに持ち込むのがそもそも難しいんだから定遠級と撃ち合って勝つのは諦めろ」
「流石にADM級に負ける代物にして戦艦のようなものと呼ばれるのは剛腹だから主砲は十二インチくらいが望ましいな」
「なら、ADM級が登場した頃に友好国向けの輸出用に対ADMを想定して設計した305mm砲があるから、これ使おうか」
「それと張り子でも虎として仕上げる為にも、ミニイージスと同じくらいのVLSは積んどこう。潜水艦とかからの魚雷から身を守る能力も」
「エリアディフェンス能力が必要になるほどの艦隊が組める訳でもないし、それくらいでも大丈夫だな。これくらいの数なら新型にしなくても被弾した時に船体にダメージがいかないよう小細工でどうにかなるし、パクろうにも参考にはならん」
「機関はいっぱい作ったことのあるタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦のやつにしよ」
「速力が結構落ちそうだけど大丈夫?」
「無理すれば29ノット出せるから(震え声)。それにさー、どうせ一緒に行動するような護衛戦力がしっかりと用意できてる訳じゃないんだから26ノットでも良くね?」
「それもそうだね」
「それとレーダーはどうしよう?」
「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度にも対応してるから航海用レーダーはOPS-20の古めのやつで良いやろ。76mm速射砲とか20mmCIWSとか、もうほとんど使わんからこれも使おう」
「FCS用レーダーはどのくらいまで性能落としとく?」
「それは難しい問題だな。まあ、先方の懐具合によるってことで」
「せやな、電子兵装を型落ちにするだけでもかなり安くなる訳だし」
と、まあ、後に明らかになった話によると、こんな具合に設計されたらしい。
速力が足を引っ張らないのかとか、主砲の性能だとか、そもそもの仮想敵である定遠級に勝てるのか?という問いに対する答えは「仮想敵は国民の心に巣食う不安という魔物だよ、良いね?」であり、
ちなみにミニイージス並みのVLSを積むとした割には数が少なくね?という疑問を抱くかもしれないが、それに対する答えは「お前、フリチョフ・ナンセン級(注4)Disってんの?」である。
696: リラックス :2020/11/24(火) 19:40:07 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
総評
纏めると日米の「A・L級が東南アジアの安定化の為だけに何隻も拘束される状況が少しでも緩和されるなら儲け物」という政治的な事情を徹頭徹尾優先し、軍事的な性能はギリギリまで妥協(ADM級よりはマシ)した設計となっており、
皮肉にも軍事的に使い道のある物にしたいという事情から政治的な欲求をギリギリまで妥協させた定遠級こと元(仮称)アトランティカ級と(名前的にも)対称的な戦艦(注5)となっている。
この辺りの事情が明らかになると、ミリタリ板では小児科で処方される解熱薬とかバファリ○(注6)とかいうあだ名がつけられることになるが、それはさておき、
「環太平洋連合艦隊構想は現在も日米と交渉中である」
「その際に旗艦となる(仮称)パシフィカ級についても、各国と協議しつつ計画を煮詰めている」
「この二つが実現すれば我々の国防は新たなステージに立つ」
嘘は言ってない(注7)見出しの宣伝によって東南アジア諸国はある種の熱狂に包まれて不安を吹き飛ばし、日米の目論見通りA・L級が東南アジア方面に拘束される事態をある程度緩和することに成功した。
存在を匂わせるだけでA・L級が二隻も無為に拘束される事態を防いだ影響は決して小さくなく、ある意味では(仮称)パシフィカ級も戦略兵器として認められて良いだけの活躍をしたと言えるかもしれない(注8)。
注1、念のためこれは間違い。関係者曰く、だとしたらもうちょっと強くする。
注2、定遠級二番艦、或いは改定遠級鎮遠が竣工したこともあって、「A・L級がいくら強くても、一隻だけじゃバラけて襲って来たら両方に対応は出来んだろ!」という声が一定数あったのが大きいが……
注3、ちなみに件の環太平洋連合艦隊構想においてA・L級戦艦を旗艦として指名する案も提唱され、中々の支持を受けたが
アメリカもそこまで寛容ではなく、ただ一言「やだ」と拒否されたことで頓挫。
注4、ノルウェー海軍のイージス艦。Mk.41 VLS×8セル を搭載
注5、関係者曰く、下手に地名や人名にすると各国間で色々と因縁があることから東南アジア諸国で無駄に炎上するのが想像容易な為、唱えられていた環太平洋連合艦隊構想に合わせて無難な名称として太平洋の名前を引っ張って来ただけで、そうした意図ではないとのこと。
注6、小児用解熱剤は病状を良くするというより、親の精神的な安定の為に処方されることもあることから、それにかけて軍事的な意味があってというより民心の安定の為だけに計画された(仮称)パシフィカ級を皮肉ったもの。
注7、そもそも実現するのか、ちゃんと話がまとまるかが極めて怪しいという点に目を瞑ればの話である。
注8、それでもADM級より強そうなの笑えば良いのか泣けば良いのか分からないとか、きちんと戦略兵器として仕事してて草とか、ミリタリ板の住民等の間ではちょっとしたトレンドになった模様。
697: リラックス :2020/11/24(火) 19:43:01 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
以上、安上がりな小型戦艦というのに挑戦してみた
最終更新:2021年03月04日 12:18