853: 加賀 :2020/11/21(土) 17:28:34 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「『イントレピッド』の鹵獲は幸いだな」
「『蓬莱』の前例があるので運用は直ぐに出来るでしょう」
「『瑞鶴』の飛行隊はまた壊滅か……」
「それは仕方ないでしょう。むしろ良くやったと褒めるべきです」
「それもだが……ギルバート、マーシャル諸島等の撤退は?」
「既に藻抜けの空で戦力の大半はサイパンやグアムに再布陣させました」
「宜しい。前回のパラオの二の舞は避けるようにしよう」
「ニューギニアの撤退も順調です。飛行第5戦隊や飛行第13戦隊の活躍で敵連合軍を足止めしています」
「雲野や戸野本とか聞いた名前があるが聞かなかった事にするよ」
「既に母艦飛行隊にも雨宮とかいますからね……」
「ところで烈風は……?」
「堀越さんが倒れたので前回同様に艦上機化は諦めて局戦化に改修しています」
「……無念だろうな……」
「陣風等も試作機ありますがあれは浦木少尉専用機ですから」
「東京湾上空戦……またあるんだろうなぁ……」





「ハッキリと言えばトラック諸島攻撃は失敗ではないのですか?」

 ハワイオアフ島の太平洋艦隊司令部で第五艦隊司令長官に就任したスプルーアンス中将はニミッツ大将にそう告げる。告げられたニミッツ大将は何故かトンプソンを整備しつつも苦笑する。

「俺もそう思っている。だが政治家にはトラック諸島空襲の戦果は必要なのだよ」

 情報参謀のレイトン大佐は無言でスプルーアンスに新聞の一面を見せる。

『合衆国海軍、ジャップの主力基地であるトラック諸島を空襲』

 一面の写真には攻撃される輸送船や沈む船が掲載されていた。

「嘘……ですか」
「一応本拠地の攻撃には成功している。その代償は大きかったがな」

 ニミッツは呟きながらも顔を歪ませる。トラック諸島空襲で米機動部隊は航空機463機を喪失、更に空母『イントレピッド』を鹵獲されるという辱しめを受けている。『イントレピッド』も先に鹵獲された『サラトガ』同様に日本軍に運用されるのは間違いないと見られていた。

「だがキング長官は差程気にしていない。来年の『フォレージャー作戦』には機動部隊は完全に復活する。そう見ている」

 来年6月に予定されている『フォレージャー作戦』ーーマリアナ諸島侵攻作戦には米海軍はエセックス級空母を9隻、軽空母9隻が勢揃いするからである。だが外側は出来ても内側は完全ではなかった。何せ、その内側を務める筈の航空戦力は先のトラック諸島で壊滅したからでありその育成にまたしなければいけなかったからである。

「長官……」
「スプルーアンス、この戦い……道を誤れば我々の負けになる。それは覚えておけ」

 ニミッツはそう言ってまたトンプソンの整備に移るのである。その一方で日本軍は各戦線の整理と部隊の撤収を急がせていた。

「それでブーゲンブィル島の第六師団は無事に引き揚げて来れたのですね」
「あぁ。橋本君らのおかげでね」

 ラバウルの外南洋部隊司令部で橋本と五藤中将はそう話していた。外南洋部隊がソロモン諸島で全力にて敵艦隊と総当たりをしていた事でガダルカナル方面の米艦隊は行動を低下させていた。それによりブーゲンブィル島からは完全撤退に成功していた。
 しかし、その代償として乙巡『川内』『神通』駆逐艦『江風』『萩風』等が戦没しており彼女達の犠牲あってこその撤退成功だった。
 また、ニューギニア方面の撤退もビアク島まで完了しており史実のような山越え等はなかった。撤退した部隊は再配置等で比島等に配置され彼等の激戦は続くのである。
 1943年12月、アメリカ軍はギルバート諸島への上陸を開始した。しかし上陸した米軍を待ち受けたのは日本軍等おらず、爆撃によって荒廃した軍施設等であった。

「奴等……何を企んでいる……?」
「維持が困難と判断して破壊工作をしてから引き揚げたのではないですか?」

 第51任務部隊司令官のスプルーアンス中将の呟きに報告者の第54任務部隊司令官ターナー少将は自身の見解を述べた。

854: 加賀 :2020/11/21(土) 17:29:40 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp

 ラバウルの外南洋部隊司令部で橋本と五藤中将はそう話していた。外南洋部隊がソロモン諸島で全力にて敵艦隊と総当たりをしていた事でガダルカナル方面の米艦隊は行動を低下させていた。それによりブーゲンブィル島からは完全撤退に成功していた。
 しかし、その代償として乙巡『川内』『神通』駆逐艦『江風』『萩風』等が戦没しており彼女達の犠牲あってこその撤退成功だった。
 また、ニューギニア方面の撤退もビアク島まで完了しており史実のような山越え等はなかった。撤退した部隊は再配置等で比島等に配置され彼等の激戦は続くのである。
 1943年12月、アメリカ軍はギルバート諸島への上陸を開始した。しかし上陸した米軍を待ち受けたのは日本軍等おらず、爆撃によって荒廃した軍施設等であった。

「奴等……何を企んでいる……?」
「維持が困難と判断して破壊工作をしてから引き揚げたのではないですか?」

 第51任務部隊司令官のスプルーアンス中将の呟きに報告者の第54任務部隊司令官ターナー少将は自身の見解を述べた。

「うむ。当初は私もそう思っていた……これを見たまえ」

 そう言ってスプルーアンス中将は一枚の航空写真をターナー少将に見せた。その写真は滑走路を撮していたが滑走路はボコボコに破壊されていた。

「……ただの我が軍の爆撃では?」
「いや、残念ながら滑走路は直ぐに使えるようにと爆撃対象からは外していてね」
「では奴等が自ら爆撃したと……?」
「私はそう思うね」
「破壊工作だからでは……?」
「いや、私はそう思っていない」
「……では?」

 早く答えを出せという雰囲気があるターナー少将にスプルーアンス中将は苦笑しつつも口を開いた。

「簡単な事だ。奴等は損耗した航空隊の錬度向上のためにマーシャルとギルバート諸島を爆撃したんだ」

 スプルーアンス中将のは的中していた。決戦部隊として編成していた基地航空の第一航空艦隊と第一機動艦隊の母艦飛行隊が撤退したギルバート諸島及びマーシャル諸島を訓練目標として爆撃していたのだ。

「雷撃は無理だなぁ」
「仕方ありませんよ」

 最新鋭空母『大鳳』飛行隊長に就任した村田中佐の呟きに空母『翔鶴』飛行隊長の鮫島少佐と『加賀』飛行隊長の橋口中佐は互いに慰めあうのである。なお、爆撃は元より洋上飛行の訓練にもなり彼等は自信を高めるのである。
 ちなみに頭を抱えたのは裏方の方であり、爆弾の使用数やガソリンの調達に一月ほど苦労するのであった。
 その後米軍はマーシャル諸島を攻略する。勿論、同諸島ももぬけの殻であり次第に米兵士達の中では慢心が少しずつではあるが積もっていくのである。

「マリアナ諸島の強化は前年度から続いているな」
「某漫画のイージス艦じゃありませんけど、岡村少佐の設営隊等が中心とした設営隊の努力で600機余りの航空隊が駐機しています」
「南雲さんの一航艦は?」
「ヤップ島等にも展開している。全ての準備は整ったよ」
「松輸送作戦が大成功しましたからね」

855: 加賀 :2020/11/21(土) 17:30:16 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
マリアナ諸島への防備強化は前年の1943年から行われていた。大量の資材や人材ーー設営隊や陸軍の第14師団(パラオ行き)や第43師団(サイパン行き)も徐々に行われておりこれらの護衛には阿部大佐(嶋田)が尽力を注いだ護衛艦隊が護衛していた。
 海上護衛総隊には一式ソナーに一式爆雷を搭載した海防艦や旧式艦艇(乙巡の『天龍』『龍田』、『夕張』に睦月型・神風型等)が移管、また就役しており近づいてきた米潜水艦を輸送船団から片っ端から追い払っていた。また、護衛総隊専門の航空隊も活躍していた。
 哨戒部隊として試製『東海』を主力とした第901航空隊に九六式陸攻等双発機を改装した第902航空隊、九七式艦攻等改装した第903航空隊等が本土~小笠原諸島~マリアナ諸島に展開して磁気探知機の『KMX』を使用しながら対潜哨戒をしていたのだ。

「次に来るとしたらマリアナ諸島だな」

 大本営(杉山達)はマリアナ諸島防衛のために陸軍は第43師団・第52師団、三個独立旅団、二個飛行師団の投入を決定。更に満州からは戦車第九連隊も投入が決定された。海軍はギルバート・マーシャル諸島等から撤退してきた陸戦隊等を糾合した陸戦隊30000名と南雲中将の第一航空艦隊(基地航空隊)が決戦部隊として布陣していた。
 また、パラオ方面には陸軍の第14師団・第35師団が展開する事が決定された。
 海軍本命の第一航空艦隊は史実のビアク島への派遣等なく(ニューギニア方面は撤退しているので派遣する意味が無い)、この時には海軍だけで戦闘機700機余り、爆撃機700機余りが集結していた。
 そしてマリアナ諸島への増員として陸軍は第43師団(主力)と第52師団を派遣する事になった。この護衛には乙巡『龍田』を旗艦とする護衛艦隊(乙巡×1 駆逐艦×7 海防艦×14 駆逐艇×5)が担当となった。
 1944年3月5日、東松輸送の第一陣となる東松一号船団の甲船団は史実通りに父島を出港、7日には乙船団も出港し両船団とも史実通りにサイパンとトラックに到着し被害はなかった。

「敵の潜水艦を発見!?」
「駄目だ!?」
「対潜戦闘ォ!!」

 二回目の東松二号船団は八丈島沖でバラオ級潜水艦『サンドランス』からの襲撃を受けるも一式ソナーの事前探知により攻撃を回避する事に成功、更に駆逐艦『野分』が爆雷攻撃を行い『サンドランス』を撃退している。
 なお、各船団は米潜水艦から必ず一回は攻撃を受けてはいるものの護衛艦隊の対潜戦闘活動により無傷で到着地に到着している。また、艦船の喪失は史実だと乙巡『夕張』駆逐艦『雷』『電』等が雷撃の喪失しているが、一連の船団攻撃で米は『ハーダー』『シーホース』『トリガー』『ブルーギル』を撃沈されており(なお、『ハーダー』はグアム島に進出していた瑞雲により撃沈されている)、三隻が中破して米潜水艦の哨戒活動を著しく低下させる事に成功した。
 ちなみにだが『ハーダー』の撃沈報告に橋本や松田等の艦これ会は大いに喜んだ。

「ハッハッハ!! 二回目もだが、これこそ!! これこそ瑞雲神による鉄槌である!!」
「良かったなぁ……良かったなぁ『雷』……」
「ハーダーをここで沈めたから『早波』や『谷風』、海防艦の『日振』『松輪』『佐渡』等も生還率は高くなったなぁ……」
「『雷』こそ私の母になってくれるかもしれない艦娘だ!!」

 酒が大量に入った松田は顔を真っ赤にしながら瑞雲の模型の前で踊っている。その隣では白石少将(嫁はちとちよ姉妹)が涙を流しながら日本酒を呷り、森下信衛(嫁は大井と榛名)がウンウンと感涙している。

「そう!! これも瑞雲のおかげなのだ!! 瑞雲こそが対米戦の切り札なのである!!」
『オオォォォ!!』

 松田の叫びに瑞雲教信者達は叫ぶのであった。

「瑞雲!! 瑞雲!! 瑞雲!!」
『瑞雲!! 瑞雲!! 瑞雲!!』
「嶋田さん……もとい阿部大佐らも引き続き輸送はお願いします」
「彼等の処置は橋本さんがしますので」
「はは、分かりました。ところで……『大鷹』を沈めたらどうやるか分かってますよね?」
「……胆に命じます」

 湊少将(嫁は大鷹)の言葉に阿部大佐は冷や汗をかきつつもそう言うのであった。

856: 加賀 :2020/11/21(土) 17:32:21 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
  • アメリカ、大本営化へ(何
  • 外南洋部隊、傷つきつつもソロモン諸島及びニューギニア方面の撤退完了させる
  • マリアナ諸島の再配置
  • 三パイロットの嘆き



そろそろ運命のマリアナが近づいてきました。なお、後半戦は前回のと似た部分が多数記載されるのはご了承ください(土下座

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最終更新:2020年11月25日 20:24