862: 加賀 :2020/11/21(土) 18:48:51 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp



「サイパン島より電文、敵米軍が上陸を開始しました。サイパン島は持久戦を展開する方針です」
「山口君の第一機動艦隊は?」
「タウイタウイ泊地から出撃しました。泊地周辺の潜水艦は掃討しているので十分に訓練が出来ましたよ」
「後は……待つのみか」





 翌年の1944年3月30日、復活したスプルーアンス大将の第五艦隊はパラオを空襲した。

「ふむ……パラオに敵艦艇と航空機は無し……か」
「既にソロモン諸島の作戦で不足しているのではないですか?」
(……果たしてそうだろうか……)

 スプルーアンスはかつてミッドウェー海戦で粘りに粘りを見せた母艦飛行隊の錬度を間近で見ていたのだ。そんな彼等が直ぐに壊滅したとは思わない。

(……やはり来るか)

 用心はスプルーアンスである。だが第五艦隊はまさにこの時点では海の王者となりつつあった。何せ第五艦隊は正規空母9隻、軽空母9隻を主力にし更に後方支援として護衛空母40隻の一大航空機動艦隊となっていたのだ。
 だが彼等の自信はやがて崩れていく事になる。6月11日、米第五艦隊は航空機1100機を以てサイパン島へ空襲を敢行した。しかし、彼等を待ち受けていたのはタッポーチョ山に建設されその対空電探に誘導された一航艦所属戦闘機隊と陸軍の戦闘機隊約700機だった。

「こいつは良いぞ!? どっちを向いても敵だらけだ!! 兎に角撃てば敵に当たるぞ!!」

 このサイパン島航空戦に参加した343空に所属する杉田飛曹長はそう日記に記していた。第五艦隊も攻撃隊の思わぬ被害に頭を抱える事になる。

「何なんだこの被害は……」
「イオー・ジマ攻撃に向かった第一機動群も攻撃に失敗しました」

 硫黄島攻撃に向かった第一機動群は300機余りの攻撃隊を出していたが硫黄島に進出していた横須賀航空隊(零戦と紫電改の混合隊)と301空(同上)の計150機の迎撃を受け168機を喪失して事実上、硫黄島への攻撃は失敗していた。

「それとギマラス泊地沖に潜入した潜水艦より敵機動艦隊の出撃を確認しました」
「ビアク島攻撃か?」
「今のところはまだ判明していません。何せ潜水艦との定時連絡が途絶えていますので……」

 それを意味するのは撃沈されていたからである。ムーア参謀長からの報告にスプルーアンスは顎を右手で触りながら生えてきた髭の感触を確かめつつ思案する。

(……奴等の出方が気になるな……ビアク島も散発的な攻撃しかないと聞いている……それなら……)

 スプルーアンスは決断する。

「奴等がマリアナに来る事は間違いないだろう。第一機動群は航空機の補充後、再度イオー・ジマを攻撃して航空戦力を撃滅するのだ」

 第五艦隊は喪失した分の航空機を補充後、再度攻撃を実施する。対してサイパン・グアム・テニアンの航空戦力は半減するが第五艦隊も多くの喪失を出してしまいパイロットの補充に追われるのであった。

「……まさか俺が二艦隊司令長官とはな……」

 二艦隊旗艦『大和』の艦橋で外南洋部隊司令長官だった五藤中将はポツリと呟く。

(やれやれ……まぁ三川さんや栗田が軍令部や南西方面に行ってるから俺に御鉢が回ってくるのは必然的なのかもな……)

863: 加賀 :2020/11/21(土) 18:49:44 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
二・三艦隊が糾合した第一機動艦隊はギマラス泊地を出撃後はマリアナ方面に向かっていた。なお、その艦隊は当時の主力艦艇をほぼ集結させていた艦隊である。

 第一機動艦隊(司令長官 山口多聞中将)

 第三艦隊(旗艦『大鳳』)
 甲部隊
 第一航空戦隊
 『大鳳』(紫電改四×27 天山×27 彩雲×3)
 『翔鶴』(紫電改四×27 彗星×18 天山×27 彩雲×3)
 『瑞鶴』(同上)
 第二航空戦隊
 『加賀』(同上)
 『飛龍』(紫電改四×18 彗星×18 天山×18 彩雲×3)
 第五航空戦隊
 『蓬莱』(紫電改四×27 彗星×18 天山×27 彩雲×3)
 『銀鶴』(紫電改四×36 彗星×18 天山×27 彩雲×3)
 第三戦隊
 『金剛』『榛名』『霧島』
 第五戦隊(司令官 橋本少将)
 『妙高』『羽黒』
 第十戦隊『矢矧』
 第十駆逐隊
 『朝雲』『風雲』
 第十七駆逐隊
 『磯風』『浦風』『雪風』『谷風』
 第六十一駆逐隊
 『初月』『照月』『秋月』『若月』
 付属
 『霜月』
 第三十一戦隊
 『五十鈴』『名取』『吹雪』『初雪』『叢雲』『白雪』

 乙部隊
 第三航空戦隊
 『隼鷹』(零戦×18 彗星×18 天山×18 彩雲×3)
 『飛鷹』(同上)
 『龍鳳』(零戦×21 彩雲×9)
 第一戦隊第二小隊
 『長門』『陸奥』『最上』『三隈』(各瑞雲22型×11)
 第四駆逐隊
 『舞風』『野分』『嵐』
 第二十七駆逐隊
 『時雨』『有明』『白露』『夕暮』
 第二駆逐隊
 『村雨』『五月雨』『春雨』
 第十七駆逐隊
 『浜風』

 第二艦隊(司令長官 五藤存知中将)
 第一戦隊
 『大和』『武蔵』
 第四航空戦隊
 『伊勢』(瑞雲22型×22)
 『日向』(同上)
 第六航空戦隊
 『龍驤』(零戦×36)
 『祥鳳』(零戦×21 彩雲×9)
 『瑞鳳』(零戦×21 彩雲×9)
 『千歳』(紫電改四×21 天山×9)
 『千代田』(紫電改四×21 天山×9)
 第四戦隊
 『愛宕』『高雄』『鳥海』『摩耶』
 第七戦隊
 『熊野』『鈴谷』『利根』『筑摩』
 第二水雷戦隊『能代』
 第三十一駆逐隊
 『長波』『朝霜』『岸波』『沖波』
  第三十二駆逐隊
 『藤波』『浜波』『玉波』『早波』
 付属
 『島風』

 第一補給部隊
 第二補給部隊

 母艦飛行隊
紫電改四 204機 零戦 114機 彗星144機 天山189機 彩雲42機
瑞雲66機


 基地航空隊
 サイパン 戦闘機360機 偵察60機
 グアム 戦闘機240機 偵察20機
 ヤップ 戦闘機180機 陸攻390機 偵察20機

(後は……託すのみか……)

 そう思う五藤中将だった。また第一機動艦隊でも航空機は全て新型機に交換されていた。特に戦闘機である『紫電改四』は、発動機を誉四二型(ハ45-42)にしており離床2200馬力を可能とし663キロの速度を記録していた。
 また、特記すべき事項としてはこの時空母に搭載されていた航空ガソリンは先の第二次インド洋作戦で近藤大将の第二艦隊が通商破壊作戦で捕獲した高オクタン価の航空ガソリンであり各機とも速度は更に向上していた。

864: 加賀 :2020/11/21(土) 18:50:25 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
 そして6月15日、米潜水艦『フライングフィッシュ』がサンベルナルディノ海峡を通過中の艦隊(第三艦隊)を発見するも第三十一戦隊の対潜戦闘により撃沈された。スプルーアンスはこれを確認するもスリガオ海峡から航行する別艦隊(第二艦隊)に気付かなかった。(これは『シーホース』が既に撃沈されているため)
 6月18日、トラック諸島から離陸した千早大尉の彩雲(トラック諸島の航空戦力は存在しており彩雲だけでも20機は展開していた)が第五艦隊を発見していた。第一航空艦隊司令長官の南雲中将は戦力温存のためヤップ島に展開していた陸攻隊にまだ出撃命令を出さなかった。全ては第一機動艦隊からの合図が来るまでである。
 そして遂に事態は動いた。6月19日0630、空母『大鳳』から早朝の0330に発艦した彩雲がサイパン島西部に米第五艦隊を発見したのであった。

「長官、発見しました。敵機動艦隊です!!」
「……最大出力で電文を放て」

 旗艦『大鳳』から『Z発令』の電文が放たれた。その電文を受信したサイパン島の第一航空艦隊は動き出す。また、ヤップ島に展開する陸攻隊も整備員達に見送られて離陸する。彼らは、慎重に練り上げられたタイムスケジュールに従ってマリアナ沖へと集結しようとしていた。

「ヤップ島の陸攻隊は直ちに出撃!! アスリート飛行場からも戦闘機隊と撹乱隊を出すんだ!!」

 直ちにまだ健在しているアスリート飛行場から精鋭343空の紫電改108機に零戦146機、彩雲25機が出撃するのである。

「矢は放たれた……頼むぞ」

 離陸していく紫電改を見ながら南雲中将はそう呟くのである。

865: 加賀 :2020/11/21(土) 18:57:12 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
  • パラオ空襲、されど損害は軽微
  • 海の王者第五艦隊
  • 正規空母9隻、軽空母9隻って……
  • 第五艦隊、マリアナ来襲。されど出迎えたのは精鋭343空部隊(馬鹿野郎、この野郎!)
  • 『Z発令』
  • 荒海の日本海で鍛えに鍛えられた母艦飛行隊、発艦



遂にマリアナ沖海戦の始まりを告げる『Z発令』の電文。日本海軍は定められた入念なタイムスケジュールにて第五艦隊の場所へ向かう。そして戦闘機隊共に先行する彩雲25機から投下され南の空に降り散る銀の雪。
全ては敵機動艦隊殲滅のためにである。



紫電改四は誉42型を搭載した機体です。

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最終更新:2020年11月25日 20:24