867: 加賀 :2020/11/21(土) 21:41:56 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
最初に第五艦隊上空に現れたのはアスリート飛行場から離陸した343空等の基地航空隊だった。彼等を待ち受けていたのは空母18隻から発艦した400機余りのF6F隊だった。

「全機突撃!! 母艦飛行隊が来るまで敵機を損耗させろ!!」

 飛行隊長の笹井大尉はそう発破をかける。彼等の中には笹井大尉の他にも西沢、大田、本田、羽藤等の歴戦パイロットがおり彼等は思う存分の空戦を展開していた。更に零戦隊には岩本の小隊も存在していた。

「ハッハッハ!! こいつは良いぞ!! どっちを向いても敵だらけだ!! 兎に角撃てば敵に当たるぞ!!」

 西沢はニヤリと笑いながらF6Fに一連射を叩き込み撃墜する。

「全く……『瑞鶴』の飛行隊が損耗しないように敵機を落としますか」

 岩本は小隊を率いて巴戦にもつれ込んだF6Fに20ミリ機銃弾を叩き込み撃墜する。岩本の小隊は無線機で互いにカバーをしあい彼等は撃墜される事なく帰還する。彼等は燃料の関係上、途中で引き上げはしたが紫電改17機、零戦23機の喪失と引き換えに116機のF6Fを撃墜するのである。

「母艦飛行隊が到着するまで後30分、仕事に取り掛かるぞ!!」

 第五艦隊上空に待機していた彩雲25機は千早大尉の指示で四方に分かれたのである。それを見ていたレーダー員は単なる退避行動と見ていた。そのため、スプルーアンスも第一機動艦隊が発信した海域に向けて攻撃隊を出すべく準備をしていた。各空母の飛行甲板には攻撃隊がゾロゾロと揃い始めていた。そして再びレーダーが探知する。

「北東方向に多数の編隊!!数70!!」
「南西方向よりジャップ機!!凡そ90以上!!」

 接近してきたのはヤップ島から飛来してくる基地航空隊である。ただし、正解は南西方向からである。他にも南東や北西からも探知をしていたがこれ等は彩雲隊が投下したアルミ箔『チャフ』であった。彩雲隊25機はチャフの他にも電波を出していた。全ては攻撃隊を誘導するがためである。このレーダーの故障とも言える事態に彼等が出来たのはその空域に戦闘機隊を差し向ける事だった。
 このため、第五艦隊上空に待機していた戦闘機隊はバラけるにバラけ、最終的に残っていたのは40機程度のF6F隊だった。そして幕は開けた。

『敵戦爆連合、数250余り!! 低空飛行で進行中!! 艦隊到達まで後5分!!』

 彼等はやってきた。第一機動艦隊が放った渾身の一撃とも言える母艦飛行隊の第一次攻撃隊であった。紫電改四108機 彗星132機 彩雲6機の攻撃隊の構成は南方での戦死を免れてまだ生き残っていた熟練搭乗員を主軸にその彼等に鍛えられた母艦飛行隊の若い海鷲達であった。その錬度はかのミッドウェー海戦、セイロン島沖海戦にまで匹敵していた。
 斯くして準備は整った。この時、18隻の空母の飛行甲板及び格納庫には第一機動艦隊攻撃のための艦爆、艦攻が駐機しておりその報告を聞いたスプルーアンスは旗艦『インディアナポリス』で第58任務部隊司令官のミッチャー中将は旗艦『レキシントン2』で自身の帽子を床に叩きつけたのである。

『これではミッドウェーのナグモ・タスクフォースではないか!?』

 そして艦隊上空に残っていた40機程度のF6F隊は紫電改四隊によってあっという間に蹴散らされた。それを見た彗星隊隊長の垂井少佐は『トツレ』を発信させた。

「垂井少佐機が『トツレ』を発信した!! 此方も『チャフ』を投下するぞ!!」

 第五艦隊が対空砲火を撃ち上げる中、彩雲6機が高速で侵入し艦隊上空でアルミ箔が満載した燃料タンクを投下した。燃料タンクは落下途中でパカリと半分にバラけて中からアルミ箔が散布される。

「南の空に雪が舞う……か」

 紫電改四隊の隊長である志賀少佐は散布されるアルミ箔を見てニヤリと笑う。そして対空砲火がアルミ箔で邪魔されるのを確認した垂井少佐は『ト連送』を発信した。

「全機突撃!! 行くぞォ!!」

 垂井少佐の彗星はその直後、砲弾が命中し爆発四散した。それを見た副隊長の美濃部大尉(憑依者)が指揮を取る。

868: 加賀 :2020/11/21(土) 21:45:51 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「垂井少佐が戦死された!! 代わりに美濃部が取る。全機突撃!!」

 そして彗星隊は一斉に急降下を開始した。第五艦隊は対空砲火を撃ち上げるがチャフの影響で彗星隊は其ほどの被害は出していなかった。

「ミッドウェーの仇だ!!」

 斯くして、彗星隊は投弾に成功する。空母『ホーネット2』『ヨークタウン2』は500キロ爆弾が四~五発が命中し瞬く間に大破炎上した。二空母は誘爆により艦内で大火災が発生した。
 軽空母『ベロー・ウッド』は六発が命中して轟沈。『バターン』も四発が命中して大破炎上の大傾斜をしこの時点で第一機動群は壊滅したのである。
 空母『バンカーヒル』『ワスプ2』も二~三発が命中して飛行甲板は炎上、軽空母『モントレー』も三発が命中、誘爆により総員退去が間もなく発令された。『カボット』も同様であった。回避に成功したのは空母『エセックス』『レキシントン2』『ランドルフ』『タイコンデロガ』『フランクリン』軽空母『インディペンデンス』『プリンストン』『サン・ジャシント』『カウペンス』『ラングレー』の空母×5 軽空母×5だった。
 しかし、彗星隊が引き揚げようとしていた代わりに新たに戦場に到着したのは第一機動艦隊の攻撃隊(紫電改四54機 零戦108機 天山180機 彩雲5機)と基地航空隊(一式陸攻270機 銀河120機)であった。


「先に炎上している大型空母に止めを刺すぞ」

 第二次攻撃隊総隊長の村田中佐は彩雲からの情報を元に指示を出す。まだ浮いていた『ホーネット2』『ヨークタウン2』の攻撃には基地航空の一式陸攻36機がそれぞれ向かい、護衛艦艇の対空砲火で19機を喪失するがそれぞれに四本ずつを叩き込んだ。この攻撃で二空母は瞬く間に海中に没してしまう。
 第二次攻撃隊は更に炎上している『バンカーヒル』『ワスプ2』に突撃を開始した。村田中佐も中隊を率いて『バンカーヒル』の左舷に突撃、6機を喪失するも三発が命中せしめて波間に没しさせる事に成功する。更に『ワスプ2』には江草中佐の銀河隊も群がり500キロ爆弾三発と魚雷四発が追加で命中して『ワスプ2』に止めを刺したのである。
 しかし、全てが上手くいっているわけではない。『ランドルフ』『レキシントン2』の周囲には第七機動群の戦艦『アイオワ』『ニュージャージー』『インディアナ』等が護衛をして防御を固めており二空母に突撃した天山や一式陸攻、銀河等は瞬く間に撃墜されたのである。
 それでも軽空母『プリンストン』『ラングレー』に突撃して二隻を沈める事には成功するが犠牲は大きかったのである。

「雨宮、あの空母を狙え!!」
『了解!!』

 雨宮達の天山隊18機(『隼鷹』隊)は彗星隊の爆撃で炎上している空母『フランクリン』に狙いを定めた。『フランクリン』を狙っている事に気付いた護衛艦艇は直ちに『フランクリン』の周囲に展開して対空砲火を撃ち上げ、瞬く間に4機が撃墜された。それでも14機の天山は左舷から突入を開始、距離700で魚雷を投下した。

『やりました!? 命中です!!』

 後部座席の木場一飛曹が雨宮に告げる。『フランクリン』は左舷に魚雷五発が命中し空母は元より軍艦としての機能を停止したのである。
 他にも陸攻隊が低空飛行にて突入をし先に軽空母『インディペンデンス』『サン・ジャシント』『カウペンス』を撃沈する事に成功する。
 更に陸攻隊の一部が強引に正規空母群へ突入を開始、『エセックス』『タイコンデロガ』を大破させる事に成功するも多数の喪失機を出すのである。

869: 加賀 :2020/11/21(土) 21:46:24 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「後一撃……後一撃があればなぁ……やはりミッドウェーの付けは此処で聞いたか……」

 攻撃隊を纏めて引き揚げる中、村田中佐はそう呟いた。二波に及ぶ攻撃で彼等は空母『エセックス』『ホーネット2』『ヨークタウン2』『バンカーヒル』『ワスプ2』『フランクリン』の四隻、軽空母『インディペンデンス』『カウペンス』『サン・ジャシント』『ベロー・ウッド』『バターン』『モントレー』『カボット』『プリンストン』『ラングレー』の9隻を撃沈していたが対して攻撃隊の被害は紫電改四14機 零戦32機 彗星58機 天山109機 彩雲9機を喪失していた。また、基地航空隊も一式陸攻162機 銀河45機を喪失していた。チャフによる対空砲火を削るのは効果は確かにあった。
 しかし、第五艦隊がチャフを避けるために回避をしたり風に流されたりして効果が徐々に消失、対空砲火の勢いは盛り返したのである。特に雷撃に携わった天山、一式陸攻、銀河等は第五艦隊からの対空機銃等をモロに浴びていた。
 そのため、母艦飛行隊はこの攻撃で合計213機を喪失した。また基地航空隊も攻撃機だけでも207機を喪失しておりその戦力回復には相当の時間を有するのである。
 特に雷撃隊など再建が難しいとまで判断されている。また第一航空艦隊も残存は三分の一程度であった。
 だが、まだ終わりではなかった。ミッチャー中将は空母2隻を纏め、更には後方支援に展開していた護衛空母40隻に対し第一機動艦隊への攻撃隊(約300機)を送り込んだ。

「この海戦は我々の負けだろう……しかし、タダで終わるわけにはイカン!!」

 米攻撃隊は第一機動艦隊を攻撃、対空電探で接近を探知していた第一機動艦隊は防空用の紫電改四50機、零戦80機を出して対空戦闘をするも米攻撃隊による意地の攻撃は旗艦『大鳳』に爆弾三発、『翔鶴』に二発『龍鳳』に三発が命中したがそれだけだった。
 6月21日、山口中将は作戦の完遂を確認してマリアナ諸島からの撤退を開始した。また、基地航空隊も硫黄島方面への撤退を開始。次いで22日夜半にはサイパン島の陸軍が総攻撃を開始、戦車第九連隊を先頭に日本軍(二個師団)は米軍の橋頭堡に向かって吶喊した。
 この攻撃で第27歩兵師団は司令部もろとも壊滅、第2、第4海兵師団も甚大な損害を出した。また、欧州においてもカーンの戦いにおいて激戦が開始されていた。
 この状況を踏まえて米太平洋艦隊司令部はマリアナ諸島の侵攻作戦を中止を決定。サイパンに上陸した船団は負傷した兵士等を満載して帰還するも帰還途中でハイエナの如く集まってきた伊号潜水艦隊の雷撃により五隻が沈められ更に損害を出したのである。
 また、撤退する第五艦隊にも伊号潜水艦隊が襲い掛かり大破して速度が十分に出ていなかった『エセックス』『タイコンデロガ』に必殺の酸素魚雷が命中、二隻を撃沈するのである。しかし、伊号潜水艦隊も反撃で8隻を沈められ艦隊行動に支障が出る程だったのである。
 結果的に正規空母7隻、軽空母9隻を撃沈させマリアナ諸島への防衛には成功する日本海軍だったがその代償は育て上げた母艦飛行隊のパイロットの魂だったのである。

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最終更新:2020年11月25日 20:25