10: 弥次郎 :2020/12/06(日) 01:04:55 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS 「語るはオデット/オディールのトラゴイディア」
ロゥリィ・マーキュリーは、そうとは見えないのだが使徒であり、神話---この特地の場合、神の支配体制に大きくかかわる人物である。
また、その性質は主神たる死と断罪の神・エムロイの権能に影響されて人の在り方、すなわち魂に極めて敏感であった。
そのロゥリィを以てして、連合の人員たちは魂が極めて多彩だった。
魂の在り方というのはその人間の宿命や運命、生まれや育ち、考え方や価値観、過去の経歴などが極めて影響する。
むしろ、彼女らのような神々にとって人の見分けがつきやすいのは外見やら何やらよりも魂の形や在り方の方と言えるかもしれない。
聞けば、伊丹の生きる時代よりもさらに先の時代に生きる人々で、伊丹たちの想像を絶する経験を経てきたという。
なるほど、苦難や試練を乗り越えた人々の魂というのは、かくにも輝くのか納得したほどだ。誰もが魂が強いのを感じる。
特に強いのは上位の腕前を持つパイロットや傭兵たちだ。濃密な死の空気や生理的に近い恐怖を感じる者もいるが、エムロイがいたら涎をたらしそうな魂もいる。
彼女がそんな人間観察ならぬ魂観察に興じられているのもひとえに伊丹の伝手である。
炎龍との戦いを経た際に眷属としての契約を結び関係を持ったことにより大手を振って随行できるようになったのだ。
とはいえ、彼女が伊丹に対してできることは乏しかった。せいぜいが息抜きをしてやることくらいである。
何しろ、彼女は伊丹のように人型兵器を乗りこなすことはできない。そして、現れたヴォルクルスやその眷属たちは人よりもはるかに強大。ロゥリィとてどうにもできない。
そして、もっと恐ろしいことは眷属化による疑似的な不死化…ロゥリィが負傷を引き受けるという加護を活かせない可能性が高いことだ。
まず、人型兵器に乗っている限りにおいては、死因となるのはコクピットブロックの損傷からの負傷となる。
ロゥリィが引き受けられるのは軽度の怪我であり、あまりにも大きすぎる負傷が発生すると伊丹が直接傷つく。
殊更、コクピットブロックごと圧死などされては救えるはずもない。
さらに、ヴォルクルスが人の魂を飲み込む(意訳)となれば、死後に魂が回収できるかどうかも怪しいところ。
「やってらんないわねぇ……」
そして、現在の彼女はわかりやすく言えばやさぐれていた。
一大決戦が近いことは嫌でもわかる。血の匂い、戦いの匂い、魂の叫びが感じ取れる。平時と違うのは、それが強大なものに取り込まれていくことであろうか。
そんな影響力を及ぼせる存在に真っ向から殴りかかっていく。どう考えても正気ではない。
彼女もまた神の一柱。相対するであろう存在の格というか、ランク、あるいは影響力の強さはわかっているつもりだ。
果たして、本当に抗い、打倒することができるのか。そればかりが気がかりであった。
ともあれ、とロゥリィは伊丹の元に向かおうと決めた。訓練の時間とやらも終わっているはずだし。
11: 弥次郎 :2020/12/06(日) 01:06:03 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
「で、なんでその双子がいるのよぉ…」
「休憩時間で指導を受けていただけだから…」
「あらあら、なんともつれないですわね。伊丹陸尉?」
ロゥリィに対して浮気がバレた夫のような答弁をするしかない伊丹。そして追撃を面白半分に放つ少女。
それもそのはず、伊丹は双子のリンクス、オディールとオデットを連れていた。黒い鳥候補筆頭である特に伊丹は苛烈に扱かれている。
リンクスやレイヴン達による集中教育を受けているし、さらには休息の時間においてもレクチャーを受けているほど。
だが、それを差し引きしたとしてもロゥリィは面白くはない。人間で言えばヤキモチや嫉妬といったところか。
「フフ、怖いですわねぇ」
「女の嫉妬は特に、ですわ。まあ、私たちの王子はジークフリートなのですから、伊丹陸尉が恋慕をしたところでヒラリオンのごとく沼に落とされるでしょう」
「は、はぁ…」
バレエに疎い伊丹は生返事をするしかなかった。
そして、ロゥリィの興味はそんな姉妹へと移った。
「あなた達ぃ…」
ロゥリィはその目で見た。オディールとオデットの姉妹の魂を。まるで鏡合わせのように似通った魂の在り方を。
その根底にある、魂を美しく歪める狂気ともいえる何者かの感情や意思による縛鎖。ああ、この二人は、「作られた」のかも---
「のぞき見は失礼でしてよ、聖下?」
「私たちの魂の在り方に興味がおありのようですけど、無粋ではありませんこと?」
だが、それは二人の鋭い言葉によって遮られた。
ロゥリィは二重の驚愕を得た。一つは双子が自分たちの魂を覗かれたと察知したこと。
そしてもう一つが、彼女らが神々の持っている力を平然と受け入れていることだ。付き合いの長い伊丹達自衛隊でさえ信じ切っているとはいいがたい。
だが、目の前の双子らはそれがまるで常識であるかのように受け入れ、受け答えを行ったのだ。
「驚いたわぁ…あなたたちは魂の存在を認めるのかしら?」
「え、えぇ?嘘でしょう?」
伊丹としては信じがたいことだ。SFの権現ともいえる世界の住人が、魂などのオカルトやファンタジーに通じているというのは。
驚く伊丹だが、オデットもオディールも否定はしなかった。
「……まあ、私たちの世界においてオカルトというのは少なからず耳にするものですわ」
「最も、これも守秘義務に含まれることもありますので、口外なさらないでいただきたいものです」
「伊丹陸尉も、少しくらいはそういった伝承をお聞きになったこともあるかと存じますが…それについて多少は知識があります」
「聞かせてもらえるかしらぁ?」
「ええ。ではこちらに…」
続きは茶会で、と双子のリンクスたちは伊丹とロゥリィの二人をいざなう。
そして、双子のリンクスは語る。欧州に伝わる伝承---魂そして不死の伝承、都市伝説レベルで根強く残っている怪異、幾多の伝説を。
12: 弥次郎 :2020/12/06(日) 01:06:55 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
以上wiki転載はご自由に。
双子は何気になんとなくわかる、という感じで感覚が鋭いです。
まあ、彼女らに限りませんけどね。
最終更新:2023年10月11日 19:58