394: 加賀 :2020/12/06(日) 20:28:48 HOST:om126157067140.27.openmobile.ne.jp
東京湾で調印式のために艦隊が集結していた。
国防海軍のエスコートを受けつつ進む戦艦「大和」「武蔵」と続き、
「信濃」「陸奥」「伊勢」「日向」「扶桑」「山城」「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」
「ビスマルク」「イタリア」「ローマ」「アイオワ」「ウォースパイト」「クチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ」
とかつての戦争に参加した古の戦艦たちが満艦飾で着飾り、2列の単縦陣を組んで静々と、そして力強く進んでいた。
と、東京湾に入った大和はそこで驚愕する。
なぜなら、国防海軍の数々の船の中に混じって
力強く存在する戦艦「長門」と幾度となく改装されかつての姿からは変わっていた空母『瑞鶴』の姿があったからだ。
そして、その二隻の艦首には老嬢が車いすに座り、妙齢の女性がとある服装を着つつ敬礼を送っていた。
なんだかんだで調印式は無事に終わり、大和や陸奥など艦隊のみんなが艦娘の姿で駆け寄ってくる。
「皆、お帰り、また、こうして艦隊が復活し、もう一度見られるとは感慨深いものがあるぞ
雪風、久しぶりだったな。お前のおかげで東亜危機は無事に解決したぞ……ああ、この喧噪。懐かしい。あの頃によく聞いた喧噪だ」
艦娘たちは返事もできず、立ちつくんだ
なぜなら、長門の体がだんだんと薄くなっていき、彼女の魂が長くないことを悟ったからだ。
そのことに妹の陸奥、信濃、酒匂、雪風など長門と親しかった者たちは涙ぐみながら聞いていた。
と、1隻の小型船が近づく
その船には二人の男が立っていた。
その姿を確認した長門は姿勢を正す。
一人の男ーー神崎提督は敬礼しながら、大声を張り上げ
「栄ある大日本帝国海軍所属、戦艦長門!
貴艦の出撃任務は本日を以て完了とす!」
もう一人の男、かの方が声をかける。
「長きに渡る任務ご苦労様です。
朕は汝が永く日本を護ってくれたことを嬉しく想う」
長門を答礼し、答える。
「戦艦長門、帰還しました」
その言葉を最後に透明になりかけた長門の体が
光の玉が泡のように噴き出て消えかかっていった。
それをみた、艦娘、水兵、民間人、国防軍人は一斉に敬礼を送る
長門は敬礼をしたまま、車いすを残して消えていった。
同時に、戦艦長門がぐらりと傾き、ゆっくり、ゆっくり
艦尾からゆっくり沈み始めた。
その光景を見た、国防海軍は慌てだしたが
大勲位の言葉で止まった。
「彼女は長く戦い続けたんだ。ようやく肩を降ろせるようになったんだ。
母なる海と仲間がいるところにゆっくり寝かせてやれよ」
戦艦長門は渦潮も発生せず、誘爆もなく、艦首に輝かれた黄金の菊の紋章を最後に静かに沈んでいった。
その後、弔砲が各艦から捧げられ、海ゆかばの合唱となった。
だがもう一隻の空母『瑞鶴』は何も起きなかった。瑞鶴と親しい艦娘達は艦首にいる瑞鶴の元へ向かうが、決戦仕様の服装をしている瑞鶴はただ無言だった。
「五航戦、黙っていては分からないでしょう」
黙る瑞鶴に加賀は思わずかつての馴れ合いのように言うが瑞鶴はゆっくりと口を開く。
「長門は……満足して逝ったけど……私は逝けないわ」
「瑞鶴……?」
「真珠湾…インド洋…珊瑚海…ミッドウェー…ソロモン…トラック…マリアナ…レイテ……そして……沖縄沖」
瑞鶴は改めて皆を見渡す。
「私は皆の元へ行けない。だって誓ったもの、今度こそ御国の四方を守るために私は戦い続けないといけないの」
騒ぎを聞き付けた神崎提督とかの方の小型船が近づく。
「瑞鶴、君が長きに渡って日本の海を守ってきたのは敬意に値する。ありがとう」
「長門と同じく日本を護ってくれてありがとうございました」
二人の言葉に瑞鶴は微笑み敬礼をするも首を横に振る。
「神崎提督さん、陛下。その言葉、誠に……誠に感謝致します。ですが私は任務を完遂していません。故に今此処で倒れるわけにはいきません」
そして瑞鶴は立ち上がり、後に東京湾にいる全員全てが聞こえたと伝える事を告げる。
「聞けェ!! 私は大日本帝国海軍所属『翔鶴』型航空母艦二番艦『瑞鶴』!! 私の友である『長門』は満足して逝った!! だが私は此処で逝くわけにはいかない!! かつて敵国だった国は今でこそ同盟国であるが20数年前の日本が生き残るための戦いの時はその腐った魂が故に全てを失おうとした!! 大陸に存在する赤き4000年の国は己が欲望のために沖縄沖に眠る御霊の墓標を踏みにじろうとした!! 大陸に存在する凍土の赤き国はかつて日本を脅かそうと日本海に踏み入り蹂躙しようとした!! 大陸に存在する半島の国は己が満足のために日本の赤子を貶し蹂躙しようとした!! この国々がいるこそ、この国々が存在する今この時!! 私は日本を、御霊が守ってきた山河、文化、家族、愛する人、子を護るために存在する!! それこそが『瑞鶴』がこの場所にいる意義であり八百万の神々から託された使命であり人々の、御霊の願いであり私が戦う証である!!!!!!!!!!」
瑞鶴はそう宣言するのであった。
395: 加賀 :2020/12/06(日) 20:30:40 HOST:om126157067140.27.openmobile.ne.jp
荒い文章ですが投下しました。
瑞鶴版をずっと思案していて漸く投下出来たので満足しています(何
最終更新:2020年12月10日 15:22