28: 弥次郎 :2020/12/14(月) 23:09:40 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
憂鬱SRW 融合惑星 蒼き鋼のアルペジオ世界編SS 短編集2
Part.3 設計許容点を超えて
- 融合惑星 δ世界 日本列島 分散分散首都「札幌」郊外
あきれるほどの巨艦が複数存在していた。それも、海上ではなく、空中に、だ。
如何なる原理であろうかその巨艦は空中に浮かび、地上を各所に据えられたライトで照らし、ゆるゆると降下しているのだ。
地球連合の外交使節艦隊。表敬訪問のための艦隊。これでもこちら側、北管区の事情に合わせているのだというのだから、いったいどれほどいることやら。
また、霧の艦艇の包囲網は何も海上だけの話ではなく、空にも及んでいる。それを突破できる方法があるとは一体何なのか。
北管区の主将を務める刑部眞をして、その光景は胸躍るものだった。
デザインチャイルドとして、時には非常な判断を下すために意図的な調整の行われた眞は、それ故に感情が動かない日々を送っていた。
それが遺伝子に定められていた設計限界あるいは設計許容点。感情を意図的に抑制することにより、合理的かつ理性的な判断を下す、指導者に相応しい人材。
だからこそ、今胸の中を占めている高鳴りは、彼をして生まれて初めてかもしれないものだった。
眼前、並んでいる北管区の陸軍の兵士たちも戸惑っている。霧の包囲網が作られてからというもの、表敬訪問など途絶えて久しい。
「霧」による封鎖が始まって以来の出来事であり、自分も初めての経験。むしろ、地球連合のほうが手慣れている印象さえ受けるほどだ。
「なんともせわしないこと…」
そして、眞自身も外交使節の受け入れのためにこの臨時空港を訪れていた。
いや、正しく言えば自分が彼らに早く会いたくてたまらずに権限でごり押してここまで来てしまったのだ。
「霧」の妨害を突き抜けて、この日本を訪れた者たちを。事前に渡された資料によれば、霧と真っ向から戦える力を持つのだという。
なんとしても、自分の権力を使ってでも会いたい。言葉を交わしたい。どうしても我慢ならなかった。
融合惑星という惑星への転移という未知の状況だというのだから、いったい何が起こったのかを知らせてくれるのではないかという期待もある。
(ふふっ、たまりませんね)
もう、興奮が抑えきれない。果たして連合という組織の外交使節と顔を合わせた時、果たして自分は冷静でいられるだろうか?
勝手すぎるとは思ってはいたが、止められない。己の枷を飛び越えてあふれ出る知的好奇心や衝動はどうにもなりそうにない。
それに、だ。これだけ状況が変化したということは、これまでのままではいられないということ。
この逼塞し、膠着した世界がどう動くのだろうか、それが楽しみで仕方がない。
そして、眼前。着陸した艦艇からは外交使節団が降りてくる。
さあ、外交の時間だ。霧の包囲が始まってから止まっていた世界が動き出す、そんな音がした。
Part.4 動くものと眺めるもの
霧の艦隊の動きは、横須賀をハルナとキリシマが強襲し、撃沈されてから事実上の停滞を見せていた。
理由はごく単純、総旗艦ヤマトの発した異常事態の報が原因だ。
日本列島を中心とした領域が他の惑星へと空間転移。そして、その日本列島近海にいた自分たちはそれに巻き込まれたという。
この情報は、霧の艦艇に対して混乱をまき散らした。無理もない。彼女らをして理解不能な出来事が起こったのだから。
彼女らは転移発生時に起こった時空間の歪み、あるいは異常変動については察知はできていたが、それについて演算で理解しようとしてもできずにいたのだ。
そして、ヤマトが人間と接触してたこと、ヤマト自ら相対しその実力を認めた戦力が存在すること、霧に課せられた命令を遵守できなかったことなどが混乱を呼んだ。
多くの霧の艦艇にとっては人類は自分たちに及ばない存在であった。しかし、その常識がいきなり覆されてしまったのだから無理もない。
タイミングというのも悪かった。ハルナ、キリシマが撃沈されるという事態が発生してからさして間を置かずなのだから。
少なからず動揺というモノが発生していたし、人類の戦力を見誤っていたという意見もなくもなかった。
だが、それに上乗せされたことは言うまでもない。ことに、総旗艦とその艦隊に匹敵する戦力の出現というのは。
総旗艦ヤマト。いうまでもなく、最高戦力だ。
29: 弥次郎 :2020/12/14(月) 23:10:35 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
そこらの能力が低い魚雷艇や駆逐艦などではなく、総旗艦にして超戦艦のヤマトに匹敵する戦力。
さらには彼女が引き連れているフラッグフリートをまとめて相手取り、彼女らの攻撃をことごとくかわし、最後には超重力砲の相殺までやってのけた。
それが霧にとって未発見の粒子によるもの、というのは判明しているのだが、人間の霧の上をいかれたということがショックなのである。
さらには、その粒子が強制波動装甲に対しては高い破壊効果を発揮し、クラインフィールドさえも貫通することができると分かり、恐怖はまさに絶頂に至ろうとしていた。
転移したということと合わせれば、いつ何時自分たちを脅かす存在が襲い来るかわかったものではない。
そして、全く未知の状況に放り込まれ、この後の行動をどうすべきなのかという混乱が巻き起こったのだ。
とはいえ、である。その混乱の中であっても、自らの行動を一貫しようという動きは確かに存在していた。
『行くの、コンゴウ?』
そう、大戦艦「コンゴウ」は動きだしていたのだった。麾下の艦艇から戦力を抽出、横須賀方面へと動こうとしていた。
目標と目的は明らかだ。目標は大戦艦2隻を撃沈して出向したイ401の補足。同時に、大戦艦2隻の喪失によって生じた包囲網の補完という目的がある。
だが、その動きはヤマトをして、性急な動きと判断できるものだ。確かに霧の包囲網が一時的にしろ断たれたことは憂慮すべきこと。
しかし、人類側の動きが活発化しており、また、これまでの認識の外側から人類が行動を起こす可能性がある状況なのだ。
余りにも内側にばかり目を向けていると、外側で生じている大きな動きを見過ごす可能性がある。
「無論だ」
だが、それでもなおコンゴウは動きだすことにした。
ヤマトの言うように状況の把握に努めることも必要かもしれない。だが、霧の果たすべき任務はアドミラリティ・コードの命じることである。
すなわち、「人類を海から封鎖せよ」という基本命令を実行しなくてはならないのだ。
「ヤマト、あなたが戦った赤い機体は確かに恐ろしい。だが、その程度で動きを止めるわけにはいかないのだ」
ヤマトは無言で続きを促す。
「人類の動きが活発になることは明らかだろう。だからこそ、動きを緩めるわけにはいかない」
『それが、危険と隣り合わせでも?』
「ああ」
正直なところ、あの赤い機体については謎が多い。演算から導き出されたあの機体は「人が乗って操ることは不可能」と判断されたのだ。
だが、それが人間の操縦によるものであれ、遠隔操縦であれ、脅威なことに変わりはない。総旗艦艦隊が束になって襲い掛かって勝てなかったのだ。
『そう……なら一つだけ』
「?」
ヤマトは、優しげに微笑むとアドバイスを告げる。
『人を見てくるといいわ。外から来た、新しい人類を』
「そうか」
短い返答ののち、通信回線は切られた。
恐ろしい、危険だ。そういう事態そのものが異常だというのに、コンゴウはそれを前提に動き出していた。
つまり、メンタルモデルを持つことに積極的ではなかったコンゴウが、いつの間にやらその影響を受けて人間らしい行動原理で動いているのだ。
怖い、恐ろしい、だから何かをしていないと、不安でたまらない。察するところ、そういう感情なのだろう。
(まあ、これで私たちも動けるわ……)
しばしの行動自粛を命じたのは情勢を把握すること以外にも、どうしても気がかりなことがあったためだ。
だが、それを表立って言い出すことはできない。総旗艦艦隊の中でもごく一部にしか明かされていない機密事項。
今の霧の始まり、メンタルモデルの始まりとなった、あの場所については。動かせるとすれば旗艦直轄のイ400姉妹だろう。
彼女たちならば、人類の活動範囲に潜り込んで状況を確認してくることもたやすい。ついでに、コンタクトをとる機会があるかもしれない。
総旗艦のヤマト、そしてコトノは、静かに動きを加速させていく。その演算力を以てしても、未だ未知のあふれる未来を見据えて。
30: 弥次郎 :2020/12/14(月) 23:12:02 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
仮設定【δ世界タイムライン】
〇横須賀港防衛戦発生。
白鯨とイ401の連携によりハルナ、キリシマ撃沈。
イ401、横須賀を出港、硫黄島へ向かう。
刑部蒔絵、ハルナとキリシマと出会う。
〇転移発生。融合惑星にアルペジオ世界(δ世界)が融合する。
TF6、融合を確認、直ちに調査活動を開始。敵対的行動をとる霧の艦艇を確認する。
TF6偵察群、日本列島各地にテレポートアンカーにより着陸、現地住人との接触を開始し情報収集を行う。
〇オペレーション・ドップラー発令。総旗艦ヤマトとの接触を図る作戦が決行。
タダノ・ヒトナリ、
夢幻会の指示の元、確認されていた総旗艦ヤマトに対し相対戦を申し込み、親書を手渡す。
総旗艦ヤマト、返礼として情報を提示。新たな人類が「魂」という分野にかかわる力を持つのではと推測。
〇霧の混乱
ヤマト発の情報が共同戦術ネットワークにアップロード。転移という事態、霧に匹敵する人類の戦力、その他の情報が開示される。
連合、霧のネットワークを経由してイ401と接触。硫黄島で合流へ。
U-2501(ゾルダン・スターク)、迷子になり、欧州との通信が切れたことでイ401とのコンタクトを逃す。
タカオ、硫黄島に先回りするもヒュウガの迎撃を受ける。
〇地球連合とδ世界の接触
分散首都東京、北海道、長崎に連合の外交使節艦隊が派遣される。
連合、δ世界に対して情報を開示するとともに、物資やエネルギー、技術などの面での支援を申し出る。
〇時系列未定イベント
デザインチャイルドであり、振動弾頭の開発を行った刑部蒔絵、政争の標的に。連合の技術解析を行う駒として価値を見出される。
刑部藤十郎、上記の動きを分散首都札幌の首相である刑部眞より知らされ、ハルナらに蒔絵の保護を依頼。
ハルナ、キリシマは追跡してきた陸軍を迎撃し、蒔絵を北管区の陸軍に任せる。その後別ルートで北海道へ。
藤十郎博士、逃げることを最初から考慮に入れていたため、別ルートで保護される。よって、アドミラリティ・コードは介入する事態は発生せず。
31: 弥次郎 :2020/12/14(月) 23:12:32 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
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微速前進、ヨシ!(猫並感
最終更新:2023年06月18日 22:08