524: 加賀 :2020/12/19(土) 14:42:16 HOST:om126156135104.26.openmobile.ne.jp
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「駄目です。これ以上の維持は……」
「……やむを得んか、総員退艦せよ!」

 『沖縄沖海戦 第二夜戦』の最中、空母『加賀』は遂に力尽きて伊江島沖にその巨体を波間に没する事になる。また、『蓬莱』はその前に沈没しており『加賀』と『瑞鶴』は『蓬莱』を看取っていた。
『加賀』『蓬莱』は日中に米二個機動部隊からの攻撃を『大和』以下主力戦艦から守るために『瑞鶴』と共に自ら囮となり一身に受け大破していた。曳航しようにも傾斜が酷くなる一方であり艦長は雷撃処分とする事にしたのだが雷撃処分と決まったら『加賀』はゆっくりと傾斜し出した。それは自らで沈む事を主張するかのようだった。

「そうだ、『瑞鶴』に発光信号だ」

 転生者の艦長は『瑞鶴』に発光信号を送る。

『後ハ任セタ 一航戦』

 その発光信号に答えるが如く、『瑞鶴』は汽笛を鳴らし、2030に『加賀』は『瑞鶴』に看取られながら波間に没するのである。なお、『瑞鶴』も飛行甲板を損傷しており退避が決まっていたが整備員達から「修理をすればまだ発着艦は可能」という報告に『瑞鶴』も突撃を選択した。なお、突撃が採用されると誰もいないのに汽笛を数回鳴らすという現象が起きた。戦後世界を経験したある尉官の転生者は後にこう記した

【あの汽笛……あれは正しく『瑞鶴』が漸く宜野湾に皆と突撃出来た事を喜んだのではないかと思います。何故なら彼女はその戦後を長期に渡って日本を『長門』『信濃』と共に支えるのですから……】




「クソ、機動部隊のパイロットはどれもヒヨコばかりだ
。そこを狙ってきたか」

 空母『加賀』『蓬莱』の撃沈をもたらした攻撃隊だが、『加賀』沈没『瑞鶴』飛行甲板損傷を引きずり出すのに五波の攻撃を送る事となりしかも最目標たる『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』の撃沈すら至ってない。だが戦艦部隊を率いるディヨー中将は日本の戦艦に命中弾を与えてない事にパイロットの錬度低下を嘆きつつも戦艦同士の艦隊決戦を行う事に燃えていた。

「『ヤマト』がいようが我々は最強なのだ」

 ニヤリと笑うディヨー中将だが海戦後にディヨー中将を目撃した人物は誰一人いないのであった。
 2245、『大和』の22号水上電探改四(後期調整型)は接近してくる米戦艦部隊を探知した。

「団体さんの御付きだ。盛大に出迎えてやるぞ」

 第二艦隊は直ちに戦闘配置についた。そして2326、第二艦隊と第58任務部隊第5任務群は激突する。
 最初に激突したのは両軍の前衛隊である。米軍は乙巡二隻に駆逐艦六隻、対して第二艦隊は第四戦隊の『鈴谷』、第2駆逐隊の『五月雨』『霞』に第17駆逐隊の『雪風』『磯風』だった。
 先手を取ったのは米前衛隊だった。レーダー射撃にて前衛隊の乙巡が放った15.2サンチ砲弾が『五月雨』の魚雷発射管を貫き爆発、『五月雨』は船体が真っ二つになるも沈没するまでに一番砲が砲撃を続ける程だった。『五月雨』の轟沈に『鈴谷』は20.3サンチ砲を大鉈を振るかの如く二隻の乙巡に乱打して一隻は炎上、もう一隻を中破させた。更に『愛宕』『不知火』『黒潮』『秋雲』の増援が到着して戦力が反対となり米前衛隊は乙巡二隻、駆逐艦二隻を撃沈されて後退した。
 勢いに乗りだそうとしたがそこで米主力が到着したのである。ディヨー中将の方針はシンプルであった。
敵の巡洋艦及び水雷戦隊をこちらの巡洋艦及び水雷戦隊で抑える間に、アイオワ級4隻を以て『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』を叩きのめすというものであった。
 リー中将、ディヨー中将は彼我の経験差から、複雑な艦隊運動を行った場合、日本海軍に付けいれられると考えており、
それならばそれぞれの役割を固定することで、夜戦で必ず生じる混乱を防ごうとしたのである。


502: 加賀 :2020/12/19(土) 10:54:17 HOST:om126156135104.26.openmobile.ne.jp
「クソ、厄介だな」

 米艦隊の動きを見た宇垣中将は心底嫌そうな表情をするがその動きに乗る事にした。彼は彼らの思惑に乗ることによって、彼らの油断を誘い、一瞬の隙をついてこれを倒す。レイテ沖海戦のサンベルナルジノ海峡で見せた日本海軍の夜戦の練度に彼は賭けたのである。
 そしてその期待に応えるかのように一隻の乙巡が闇夜の海域に光りを照らした。

「じ、『神通』探照灯照射!?」
「何!?」

 見張り員の言葉に宇垣は驚く。後方から確かに一つの光ーー第十二戦隊の『神通』が敵米艦隊ーーリー艦隊をさらけ出して旗艦『Iowa』を映し出す。それに続いて同じく『神通』の覚悟を受けた姉妹艦『那珂』も探照灯を照射して自ら囮となるために最大速度で敵艦隊に突撃を開始する。また、戦艦『霧島』も『那珂』に続いて突撃、ソロモンでの借りを返すべく戦艦『サウスダコタ』に砲身を向けて砲撃を開始する。

「……済まん」

三隻の覚悟に宇垣は涙を流しつつ『Iowa』を睨み付ける。

「三隻の覚悟を無駄にするな!! 全艦敵一番艦に砲撃を集中せよ!!」

 宇垣中将の考えに呼応する形で突撃したのは『霧島』だった。『霧島』は初めから殴り合い(『サウスダコタ』)を諦めており水雷戦隊の突破口となる敵巡洋艦部隊の撃滅に乗り出したのである。この動きに米艦隊は動いた。高速の金剛型に戦場を引っ掻き回されては敵わないとみたのか『サウスダコタ』『ウィスコンシン』『ミズーリ』『ニュージャージー』『マサチューセッツ』『アラバマ』後から駆けつけた『コロラド』が『霧島』に砲撃を集中したのである。

「探照灯照射!! さぁ……ルンガ沖の借りを返そうか!!」

 『霧島』の艦橋で阿部中将は約二年半前の再来に苦笑しつつ探照灯照射を命令。探照灯に浮かび上がった『サウスダコタ』に『霧島』が砲撃を集中し更に『長門』『陸奥』の二隻から滅多撃ちされた『サウスダコタ』は行動を停止した。それを支援する形で『武蔵』が二発を叩き込んで漸く『ウィスコンシン』も行動を停止した。しかし、探照灯を照射していた『霧島』も『アイオワ』以下の戦艦から滅多撃ちにされ40サンチ砲弾が32発命中して行動を停止したのである。

「後は頼んだぞ……」

 下半身を吹き飛ばされた阿部中将はニヤリと笑いつつ息を引き取るのである。なお、三隻の最期を記載する。最初に探照灯を照射した『神通』は艦橋から下が砲撃で切断されつつも一番砲及び側面砲は沈むその時まで砲撃を『Iowa』にさせた。
 次に照射した『那珂』は瞬く間に撃沈されたが沈む前に酸素魚雷を『ピッツバーグ』に五本叩き込んで轟沈させる気迫を見せている。
 『霧島』は『サウスダコタ』『ウィスコンシン』『ミズーリ』『ニュージャージー』『コロラド』からの40サンチ砲弾を受けつつも(32発)距離6400で『サウスダコタ』の艦橋を破壊させ大破(後に『長波』の酸素魚雷で撃沈)、『コロラド』の砲塔三基を吹き飛ばし大破、『ウィスコンシン』『ミズーリ』『ニュージャージー』の各砲塔一基を破壊させてその意地を見せつける事に成功して伊江島沖に没する。
そして、『霧島』に砲撃が集中した事で『大和』『武蔵』が二隻に砲弾を叩き込んで二隻(『マサチューセッツ』『アラバマ』)も『霧島』の後を追うが如く行動を停止して波間に没するのである。あっという間に二隻を沈められた米艦隊だが焦る事なく被弾炎上している『陸奥』に砲撃を集中、『陸奥』は39発の40サンチ砲弾を受けながらも『ニュージャージー』に意地とも言える6発の命中弾を叩き込み、『ニュージャージー』は大破するのである。『陸奥』はそれを見届けながら第三砲塔から誘爆しつつ波間に没するのであった。三対三になった第二艦隊だが更なる悪夢が襲う、『高雄』以下の巡洋艦部隊との交戦を切り抜けた『クーパー』以下の駆逐艦八隻が『武蔵』に突撃したのだ。
 それでも『武蔵』は落ち着いて『クーパー』以下二隻を撃沈するも至近距離で魚雷を発射され八発が命中、大量浸水をする事で『武蔵』はガクッと速度を急激に落としてしまう。

「『ムサシ』を仕留める機会だ!!」

 アイオワ級三隻は『武蔵』に砲撃を集中、実に33発の命中をさせられた『武蔵』はそれでもなお『ニュージャージー』に三発を叩き込んで『ニュージャージー』を撃沈するも第二派の突撃した駆逐艦八隻の魚雷発射で止めとも言える14発が命中。『武蔵』はそれでも浮いていたが海戦が終わる前に伊江島沖に没したのである。

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最終更新:2020年12月31日 12:59