504: 加賀 :2020/12/19(土) 11:28:33 HOST:om126156135104.26.openmobile.ne.jp
とうとう戦艦は『大和』『長門』の二隻のみとなった第二艦隊だがそれでも沖縄への歩みを第二艦隊の将兵は止めようとは毛頭考えていなかった。

『全ては沖縄の民を救うため』

 三個艦隊の将兵は全てはその一念によって奮起していたのだ。まだ立ち塞がる者がいるなら『大和』『長門』の巨砲を以て薙ぎ倒してやると意気込む者もいる。

「『武蔵』を沈めるのに魚雷26発が必要だったか……だとしたら『大和』の場合はその倍が必要だな」
「ハハハ、その通りですな」

 宇垣中将の言葉に森下参謀長が笑う。二対二でも日本はまだ余裕があった。残る『大和』『長門』を沈めようと『アイオワ』『ミズーリ』は距離を詰めようとするがその間に入り込むかのように雷巡『北上』『大井』『木曾』が割り込んだのである。

「三隻合わせて片舷10基80発の酸素魚雷だ。たらふく食らいな!!」

 口の悪い古参の兵曹長がニヤリと笑う。割り込んだ三隻に『アイオワ』『ミズーリ』は後部の主砲で対応、三斉射目で『北上』『大井』『木曾』は爆沈する。しかし三隻が発射した酸素魚雷は確実に米艦隊へ襲い掛かる。

「来るぞ!! 取舵一杯!!」
「アイサー!!」

 『アイオワ』『ミズーリ』が取舵を選択、この行動により米艦隊は折しも丁字戦法を完成させてしまい二隻は『大和』に集中して砲撃する事に成功する。

「怯むな!! 砲撃を集中せよ、突き進め!!」

 『大和』への砲撃にリーは吼える。対して宇垣も吼えていた。

「怯むな!! 我が二艦隊に退却の文字は無い!!」

 だが一発の不発弾が艦橋に命中、宇垣中将以下の二艦隊司令部を壊滅するのである。

「長官!?」

 唯一、軽傷だった森下参謀長が血の海に倒れている宇垣を抱き起こす。宇垣は腹に破片をモロに食らっており引き裂かれた腹からは大腸が露出していた。森下は直ぐに大腸を腹に戻そうとするが出血は止まる気配はなかった。

「長官、確りしてください!!」
「うむ……あまり良くはないな」
「長官……」
「最期は『大和』でか……クク……それも悪くはない」
「………」
「……我が第二艦隊は沖縄へ突入出来ただろうか?」
「はい、恐らくは……」
「突入出来たか……なら思い残す事は無いな」
「長官!?」
「森下……米艦隊との艦隊決戦で死ねるのだ。満足して死にかけている人間を今更呼び戻さんでくれ」

505: 加賀 :2020/12/19(土) 11:29:07 HOST:om126156135104.26.openmobile.ne.jp
 顔の血の気がうっすらと引いていく宇垣の表情に森下は全てを悟る。最早宇垣は助かるまいと……。

「森下、そう嘆く事もあるまい。何と言ったかな、そうそう松田が言っていたな。そう伊達と酔狂で米艦隊と戦えたのだからな。森下、私から最後の命令だ。第二艦隊は宜野湾に突入せよ……後は……任せたぞ森……下……」
「長官!?」

 0324、宇垣中将は『大和』の艦橋で息を引き取ったのである。悲しみに暮れる暇はなく、今この瞬間も『大和』には命中弾が出ている。

「………宇垣長官の命令を決行する!!」

 森下参謀長の命令を受けたかの如く『大和』は残っていた一番砲塔が砲撃を開始、『アイオワ』の艦橋を吹き飛ばしたのである。

「ウオォォォォォォォォ!?」

 艦橋にいたリー、ディヨー中将以下の将兵は全員が戦死、その隙を逃さずに『大和』は二斉射目を放ち『アイオワ』は行動を停止した。それを見た『ミズーリ』艦長は『大和』へ突撃してその行動を止める事を決意、一瞬の隙を突いて『ミズーリ』は『大和』へ突撃を開始、これにより『大和』は全ての砲塔が射撃不能となり(ただし二番砲塔の中砲のみ射撃可能)大破する。
 しかし『ミズーリ』も『長門』『高雄』以下の中小艦艇の乱打撃ちをされ構造物が粗方破壊され最後は『霞』の魚雷に仕留められるのであった。

「『大和』を雷撃処分とする」

 0536、米戦艦部隊を撃破し残波岬沖まで接近していた二水戦司令官の早川少将は『大和』を雷撃処分して介錯しようとした。しかし『大和』からの発光信号に一同は驚愕する。

『我ハ大和、大和ハ死ナズ。全艦宜野湾ニ突入セヨ。誓約ヲ果タセ。沖縄ヲ救ウベシ』

 発光信号を終えた『大和』はその直後、汽笛を鳴らした。艦隊に鳴り響く汽笛はやがてどの艦艇も汽笛を鳴らしていた。そしてグラグラと少し揺れると10ノットの速度でゆっくりと宜野湾へ向かうのである。

「全艦、『大和』を中心に輪形陣を構成!! 突撃準備に備えろ!!」

 0639、朝日に照らされる中で第二艦隊は遂に宜野湾へ到着したのである。しかし上空には米機動部隊から発艦した攻撃隊180機がいたが第二艦隊は気にしていなかった。第二艦隊の各艦艇は最大速度で『大和』を置き去りにした。攻撃隊の狙いは『大和』であるので森下は攻撃隊の全てを『大和』に集中させようとしたのだ。

「全艦突撃!!」

 爆弾×8、魚雷×6を受けつつ『大和』は宜野湾市沖合の8番岩礁に乗り上げ二番砲塔の中砲は示された地点に砲撃を開始するのである。他艦艇も『長門』や艦尾を損傷した『高雄』等の損傷艦艇を除いた艦艇は全て宜野湾へ突入して座礁、絶え間無く示された地点を砲撃、または退避しようとする輸送船団を砲撃する。
 そして神は日本に味方する。座礁した『能代』の艦橋で早川少将は一通の電文を受け取った。

「おぉ、山口中将の残存艦艇も突入するか!!」

 『金剛』『榛名』以下の第三艦隊の残存艦艇も第二艦隊に遅れながら0838には残波岬沖を通過し逃げようとする輸送船団を砲撃していたのだ。なお、輸送船団は一隻残らず護衛艦艇ごと撃沈され全滅するのである。

「全艦突撃!!」

 山口中将が負傷して代わりに司令官となった古村少将は旗艦『利根』と共に岩礁に乗り上げて座礁、輸送船団を蹴散らしてきた『金剛』『榛名』も座礁して砲撃、第32軍を支援するのである。そして橋本中将の第五艦隊も漸く到着した。

「ふむ……遅れてしまったな……俺は卑怯者と言われるだろうな……」
「そんな事はありません。我々は英太平洋艦隊を追撃していたのですよ」

 勿論、橋本が恐れるような事にはむしろ誰も思っていない。旧式戦艦の第五艦隊で新式戦艦を含むローリングス艦隊を撃破していたのだ。むしろ良くやったと誉められる事である。

「宜野湾は多すぎて突入出来なかった……が艦砲射撃は出来る。瑞雲の観測の下で艦砲射撃をするぞ!!」

 斯くして第五艦隊は宜野湾への突入を諦めて後退する米陸軍へ艦砲射撃を敢行、この艦砲射撃により米陸軍のバックナー中将は三式弾の炎に焼かれたのである。
 だがまだ沖縄沖海戦はまだ終わっていなかった。

「彩雲から報告!! 久米島方面に逃走した連合軍艦隊と米艦隊が合流、再度宜野湾方面に侵攻して来ます!!」
「……『大和』の……宜野湾に散った全ての将兵の、御霊の最後の輝きを無駄にする訳にはいかん。生き残った全艦で迎撃するぞ!!」

 橋本中将はそう判断し第五艦隊以下、離礁が出来た『長門』『瑞鶴』らの艦艇と共に最後の艦隊決戦である沖縄沖海戦第三夜戦が始まろうするのである。

506: 加賀 :2020/12/19(土) 11:33:03 HOST:om126156135104.26.openmobile.ne.jp
  • 宇垣長官(メルカッツ提督)戦死
  • 二艦隊及び三艦隊、宜野湾へ突撃成功
  • Iowa級全て沈没
  • 終わると思った?残念、まだ艦隊決戦は終わってないんだよォ!!



連合軍艦隊は意地でも第五艦隊を追撃するために艦隊決戦へ。なお、米機動部隊は予備戦力無しで一回お休み状態へ……

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最終更新:2020年12月31日 12:59