304: 635 :2020/12/20(日) 17:20:17 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその十四



「助けは来るでしょうか…。」

「来るさ必ず。鎮守府もいるし今の日本政府は今までとは違うよ。」


不安げな顔をする駐オランダ日本大使に対して在オランダ日本大使館に応援に来ていた杉原千畝は答えた。
二人の周囲には大勢の人間がおり、みな一様に不安げな表情をしている。

ドイツ侵攻前、外務省に対してドイツと国境を接する欧州大陸国家の大使館を通し日本人の帰国を可能な限り秘密裏に促すよう通達がなされた。
外務省はこれまでの経験から先進国同士で戦争には至らないと楽観視し、多くの日本人が帰国しないだろうと考えていた。
しかし通達は通達なので日本人に帰国を促した。特に隠すこともせず。

しかし外務省の予想に反し多くの日本人が帰国を希望した。
これは海外に居住する日本人が戦争という危機を現実のものと認識していた左証でもあった。
また"あの日本"が帰国を促したという事実から関係各国も自国民の帰国を開始、
チャーター便の奪い合いとなり到底日本人全員を帰国させることなど出来はしなかった。

日本政府は周辺国との交渉を開始、多くの邦人がロシア、イタリアへと陸路で脱出した。
そしてフランス北部とベネルクス三国の残存邦人は海路でイギリスへ脱出予定であったが、
イギリスへの船便もまた各国によるチャーターが相次ぎ利用が困難であった。

そこで日本政府はオランダ政府とロッテルダム港の利用について協議を開始した。
ヨーロッパ最大の貿易港であるロッテルダムを利用し海路で一気に邦人全員を脱出させようと考えたのだ。
船に関しては神崎島の客船娘やリバティ船娘を動員することで可能という結果が出ていたからだ。
ドイツとの仲は相当拗れているがオランダとの関係はそこまで悪化していないので悪くない考えであった。
ドイツによる侵攻が始まるまでは。


オランダとの協議が成功し港が利用可能になり侵攻前に残存邦人全てをロッテルダムに集めることが出来た。
しかし集結したと同時にドイツが西ヨーロッパへと侵攻を開始、
フランス侵攻の道として或いはイギリスへの足掛かりとしてロッテルダム港とオランダ空軍の基地を求めオランダへも侵攻した。
そしてオランダは一週間持たなかった。

機甲部隊を持たず、対戦車火器も100基に満たないスパイク対戦車ミサイルとパンツァーファウスト3しか持たない陸軍はドイツ機甲師団に蹂躙され、
空軍は浸透していた独非正規戦部隊と空挺・ヘリボーン部隊の強襲により戦闘機を上げることもなく陥落した。
海軍の現状はお察しである。
そして残存オランダ軍主力はアムステルダムに集結、ドイツ軍相手に市街戦が展開され多くの市民が犠牲になっていた。

現在、杉原達がいるロッテルダムはドイツ軍に包囲されていたが攻撃は受けていなかった。
ドイツはイギリスとの戦争開始を伸ばしたく、日ヤと戦端を開きたくないために積極的な攻撃が出来ないからだ。


「杉原さん、このままでは何日も持ちませんよ。ここには我々日本人だけでなくオランダ人やベルギー人等もいるのですから。」


大使は杉原にそう話した。
この場には脱出の為に集まった日本人の他に戦火を逃れてきたオランダ人やベルギー人、フランス人等も集まっていた。
日本人がロッテルダムから脱出するという情報を頼りに西ヨーロッパ各地から避難民が集まっていたのだ。
もしかしたら自分達も脱出させてもらえるかもという一縷の望みを抱いて。

そして避難民達は、ある者は日本人夫婦に子供だけでも助けてくれと訴え、
ある者はドイツ軍に襲われるくらいならと日本人青年に年頃の娘を託そうとした。
それぐらいドイツ軍の蛮行が恐ろしいのだろう。
その数、十数万人現在も集まりつつあり最終的には数十万人にもなりそうであった。
だが大使の心配は杞憂であった。

305: 635 :2020/12/20(日) 17:20:52 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

ジェットエンジンの轟音が空に響く。


「っ!?ジェット機!?」


オランダ大使が空を見上げればを多数の航空機がロッテルダムの空を覆う。
日本のC-2やヤルバーンのデロニカ、アメリカのC-5、C-17、イギリスのC-17、ロシアのIl-76の姿もあった。
それだけでなくC-130のような中型輸送機の姿もある。
そしてそれらが飛行した後には白い花が空に咲いていく。


「間に合ったか!」


杉原は破顔した。


「空の神兵だ!!」




「ありがとうございました。機長によろしくお伝え下さい。」


大鷹、いや客船の艤装を纏った春日丸は乗り込んでいた在日米軍のC-17の乗員にお礼を言った。


「グッドラック、タイヨウ!リベラルナチ共の蛮行からみんなを救ってくれ!」


C-17の乗員は春日丸にサムズアップをする。
自分は今は客船春日丸なのだがと苦笑したが手を上げてそれに答えた。


「大鷹姉さん、じゃなかった。春日丸姉さん、シャルンホルスト降下準備完了です!」


春日丸の隣に立つ神鷹改め、客船娘シャルンホルストは気合いを入れてC-17の後部ハッチへと立った。
これから始める作戦は空母としての航空戦ではなく、人を運ぶという客船本来の戦いだ。
共にいる出雲丸や樫原丸も気合い十分だ。


「ハッチ開けろ!」


後部ハッチが開き風が機内に荒れ狂い、春日丸達はPVMCGでパラシュートを造成する。


「鳥になって来い!」


乗員の言葉と共に全員がハッチに向け走り出す。


「春日丸降下開始!」

「シャルンホルスト降下開始します!」

「出雲丸行くわよ!」

「樫原丸降下行くよー!」


降下する春日丸達の目にはロッテルダムの街並みと広がる北海が目に入った。

306: 635 :2020/12/20(日) 17:22:29 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

「あれは?」

「客船娘や輸送艦娘による空挺作戦だ。全員合わせればここにいる全員を運んでもお釣りが来るぞ。」


大使の問に杉原は答える。
客船娘や輸送艦娘を空挺作戦で大量投入し、迅速に他国民も含めた避難民を一時的にイギリスまで輸送する作戦だ。
そして他国民のその後についても島には策があった。

更に輸送機群の後ろにはUS-2輸送型、輸送飛行艇晴空、蒼空、ロシアのBe-200等多数の飛行艇が続く。
そして、


「何だ…あれ…。」


オランダ大使が信じられないものを見たような表情をする。
そしては杉原呟く。


「日本とロシアと島に一機ずつしかない試作機段階のアレまで投入したのか…。」



この場にいる人々の目に映るのは6基のエンジンと三胴にも見える機体構造を持つ異形の超大型飛行艇が3機。
それは1000トンものペイロードを持つBE-2500とも呼ばれた機体の改良発展型。

日本、神崎島仕様は斥力推進機関と空重力振式空間振動波エンジンを採用し更にペイロードが増加、
宇宙(そら)すら駆ける発達過程文明の生み出した神崎島の超大型輸送飛行艇蒼空すらも超える史上最大の空の女王。


それが、神崎島航空技術廠・新昭成・ペリエフ 超弩級大型輸送飛行艇「暁空」である。


多数の飛行艇を引き連れて北海の海に着水する空の女王を避難民達は歓声を持って迎えた。

307: 635 :2020/12/20(日) 17:23:43 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ!
ひゅうが氏の史実戦前神崎島、上海のオマージュでもあります。

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最終更新:2020年12月25日 13:26