798: ひゅうが :2020/12/22(火) 21:49:34 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
――西暦1911年。清朝は倒れた
アメリカのカリフォルニアを策源地とする諸財閥の動き、そしてそれに気づいた第一次山本権兵衛内閣、いやその裏で暗躍していた(本土に復帰したばかりの)元老伊藤博文と山縣有朋の息の合った策動が鮮やかすぎる政変を生み出したのである
その裏では、ある政治結社の策動があったとされているが、結果は慧眼であったといってよいだろう
まさに完遂寸前というそのときに革命指導者であった孫文と、北洋軍閥の長であった袁世凱が互いに暗殺者を送りあい双方ともに爆殺されるというショッキングな出来事があったのをみてとった帝国陸軍支那駐箚軍(天津駐留)は即座に行動を起こし、おっとり刀で介入を開始した仏独ら列強の前で誠実な仲買人として振舞って見せたのだから
日英同盟に基づき英国とは利権の時限的維持で合意し、裏で革命の策動をしていたアメリカには陰に隠れていた資金の流れをもとに半ば以上脅迫をしてまで行われた世紀の外交は、実ったのだ

清朝から看板を掛け変えた「中央共同体」は、宋教仁と黄興を首班とした新政府と、列強諸国で構成された7か国委員会との間に極東の憲兵日本軍が入るというバランスのもとでとりあえずの安定を見せていった
口さがないものは、まるで大政奉還だと揶揄したほどだった
こうした動きに世界情勢も味方する
7か国委員会から突き付けられた厳しい要求――列強諸国の利権地域の独立要求――は第1次世界大戦の勃発に伴い大きく緩和されたのである
議院内閣制をとり、現実主義を掲げる宋教仁の手によって旧清朝各地はいくつかの国に分かれたものの、実態は当時のアメリカ合衆国、未来の地域連合のような中央政府と地方政府の集合体に化けはじめていたのである
もちろん、軍事行動のスポンサーたる英米の当初のオーダー通りに

このころになると日本人も妙な義侠心にかぶれており、知日派揃いの新政府を大いに歓迎して有形無形の善意を施し始めていた

だが、だれにとっても幸福な結末というものは存在しない
中国大陸の安定化という大義名分をもってドイツ植民地青島を奪取すべく参戦していた第1次大戦において、ことに西部戦線において協商諸国は大量消耗をはじめていたからだった
そんな中で、英米の走狗呼ばわりされながらも実戦経験を積んでいた帝国陸軍10個師団は垂涎の的だったからである
かくて、西暦1916年、兵站がもたないと泣きつくことでまたしても金を出させることに成功した日本軍は海を渡りはじめる
完全に現地に入れ込んでしまっていたアメリカから流れ込む無尽蔵の資金は中継点である日本列島を根本的に作り替え始めており、のちに「中央共同連合」と名をあらためる新たな中国大陸の膨大な近代化需要を受けた日本経済は、将来において極東において手の付けられない怪物と化すことが確実となっていた
そんな祖国から欧州に派遣された帝国陸海軍は、地獄を経験する

西部戦線、ソンムの戦い
歴史に名高い大規模地上戦に加えて、海上で幾度も発生した(日本海軍の大規模参戦によってドイツ海軍は艦隊現存主義を放棄せざるを得なくなってしまった)大規模海戦、さらには船団護衛や海空での航空戦は日露戦争や中国革命戦争で正義の味方的な自信を深めていた日本人たちのプライドをへし折るのに十分だったのである

ゆえに――日本人は狂奔する

799: ひゅうが :2020/12/22(火) 21:50:13 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp

西部戦線における深刻な人種差別的事象から陸軍の配置がギリシャ方面へと変更されても、そして2度にわたるジェットランド沖海戦において艦隊が壊滅的な被害とともに栄光を極めても
そしておっとり刀で腰を上げたアメリカ合衆国が100万の大軍を送り、あわてた日本政府が30万の大軍でオーストリア・ハンガリー帝国を打倒したうえで負担に耐えかねたドイツ本国が自壊するという結末を迎えて大戦が終結したとき…誰もが頭を抱えた

「これからどうしよう…」と

まずもって大日本帝国は、シベリアに移転したロシア全国政府(エカテリンブルグ政府)と社会革命党政権下でウクライナの無政府主義者と果てしない戦いを繰り広げるロシア連邦政府(ペトログラード政府)という2つのロシアと共に友好関係であった
中央共同連合加盟国であるところの満州王国は英米どころか日本の庭であった
万里の長城以南の7か国(実態はアメリカの州に近い)とも友好関係である
そして欧州大戦によって、仏印や蘭印を牛耳っていた欧州列強諸国は日本にタブコールを送る立場に成り下がっていた
早い話が、太平洋の日本、ならびに頭から大陸市場に突っ込んだアメリカ合衆国は欧州列強が手の付けられないほどに強大化してしまったのだ

唐突に坂の上の雲をつかんでしまった日本政府は、目の前で積み上がり続ける富の再生産システムに半ば呆然とするか必死に手綱を握ろうとするしかなった
そして、半ば惰性で続けられていた「欧州大戦において壊滅した海軍補充計画」は、当時の「常識的な」財政規模で実施されることになるのである
そう。年間15%以上のスピードで拡大し続ける経済下における「常識」がどんなものかを彼らは知らなかった。

800: ひゅうが :2020/12/22(火) 21:51:34 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
お題は「サンクス・フェデリズム(連省主義)!」で

803: ひゅうが :2020/12/22(火) 22:20:07 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
あ。これ付け加えといてください



――そして西暦1920年。日本政府は困惑していた

自国から半径2000キロから仮想敵となりえる勢力が一掃されてしまっていたからである
ある意味では明治維新以来のこの弧状列島の住人達の宿願が達成されたともいえるのだが、めでたいとばかりに遊び惚けていられはしない
なんといっても欧州における頭のおかしな総力戦、いやそれを遂行してのけた欧米列強の国力は恐怖以上の何かだった
そして、国力の象徴たる軍事力は半壊状態
特に艦隊など、超弩級戦艦3隻とそれ以前の主力艦10隻という顔面蒼白になるには十分な有様である
それに比べれば欧州において兵器の現物支給を受けて贅沢な砲兵戦や戦車戦に慣れきってしまっていた陸軍はまだマシだったがそれだけだった
周囲から仮想敵国が消えてしまえば、このままの状態で固定されてしまう、という恐怖を陸海軍首脳が抱いたのも無理もないことだろう
そして彼らの視線は、太平洋の向こう側に向けられた

大陸に首を突っ込んでいる国の2国目、アメリカ合衆国である
ロシアにおける革命騒ぎが長期化し国家分断の悲劇によって固定された原因は、欧州戦線から転出された合衆国軍による仕業、それが理由だった
それに、アメリカは「だって、みんな戦艦持ってるのに…」という理由で大建艦計画に乗り出し始めていた
地球を半周するような長大な中国大陸航路を管制したいのだから当然ともいうべきだが、問題はその計画が日本の対ドイツ戦時建艦計画に対応したものだったことである
早い話、将来的に数が増える可能性が一番大きかったのだ
陸軍も、たとえば満州や沿海州から朝鮮半島経由で日本本土に牙を突き立てられる可能性を無視しえなかった
そのために、仮想敵国は合衆国、とされた

陸海軍の戦略目標は一致した

経済は青天井状態である
1920年度帝国国防方針は、これまでからの抜本的な転換に伴い「太平洋上での迎撃戦と機動防御」が謳われ、潤沢な予算が約束された

この時代、軍事力特に主力艦艇保有数は冷戦下の核弾頭に保有する戦略的価値を有していた
つまりは、戦艦大量建造が開始されたのである
国家総力戦を英国人と米国人の財布で戦う間に作り上げられていた工業力は、それを可能にしていた

かくて1920年、日本はこれまで戦時建艦計画によって建造されていた「加賀」型および「天城」型高速戦艦群6隻に加えて18インチ砲搭載戦艦「紀伊」型および「阿蘇」型高速戦艦群8隻を一斉に起工
米国の3年計画艦隊に遅まきながら対抗することを世界に表明することになったのだった

804: ひゅうが :2020/12/22(火) 22:23:39 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
ってわけで、地味にド級化されてた河内型以降、
そして金剛型および扶桑型は第2次ジェットランド沖で多くが散華
長門型が間に合ってなかったら大変なことになりましたとさ

カイザー?革命で断頭台の露になったよ
極東まで逃げることになったけどツァーリは元気です(´;ω;`)

805: ひゅうが :2020/12/22(火) 22:26:58 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
で、「ここまで血を流して戦い抜いたにも関わらず軍縮条約で現状固定なんて寝言いったらあとはわかってるなブリテン?」となれる世界にしてみました
みんな好きでしょ?戦艦

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最終更新:2020年12月25日 18:45