29: 弥次郎 :2020/12/26(土) 18:40:26 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
憂鬱SRW 融合惑星 蒼き鋼のアルペジオ世界編SS「蒼と赤」
霧の大戦艦ヒュウガは、現状、蒼き鋼の拠点である硫黄島の管理システムを司っている。
なぜ蒼き鋼に従うか、と言えばヒュウガがイオナの麾下に置かれているからだ。本人の意思も加わっているが、キーコードを握られている以上反逆できない。
故にヒュウガはこの硫黄島に存在していたかつての施設を立て直し、修復し、再起動させ、改造した。
ただ直すだけではない。かつて撃沈された自分の船体からナノマテリアルなどを回収し、島を自らの半身として、改造しつくしたのだ。
足りない資材は地下を掘り進め、マグマからエネルギーと元素フィルターを介して資源を回収することで賄った。
暇を飽かして硫黄島の生態系の観察だとかロボット開発だとか食物植物の育成まで手を染めていたりしたが、それは些事だ。
ともかく、重要なのはこの島はヒュウガのコントロール下にあるということにある。
「……来たわね」
ヒュウガの、硫黄島の観測システムは大気圏外で動きをとる艦隊---信じがたいことだが、宇宙艦隊をとらえていた。
愛するお姉さまことイオナからの情報で、大気圏外から次元跳躍で硫黄島に客人が来るというのは聞いていた。
だから、それを確認すべく施設を構成するナノマテリアルを組み替えて急遽観測装置を作り上げ、こうして監視にあたっているわけである。
そして、その機械の瞳は間違いなくそれをとらえていた。光学測距などを警戒してなのか、光学迷彩まで展開していた。
そこにいる、と知っていなければわからないレベルのそれは、きわめて興味深かった。
しかし、メカフェチというか機械好きとして、驚愕すべきは別なことだった。
霧の対空迎撃を潜り抜けて大気圏に突入するために次元跳躍を実行する、という点だ。
霧の技術でも、戦艦クラスの大質量物体の転移は不可能だ。例えばコンゴウの持つ旗艦装備であるならば、ユニオンコア程度の質量の物体を転移できる。
だが、あくまでもそれまでだ。限界というわけではないであろうが、少なくとも実用的なのはそこまで。この島に来訪する艦隊のようにはいかないのだ。
ヒュウガとて霧のメンタルモデル、アップロードされた情報は確認している。この巨大な惑星への転移についてもだ。
だが、人類の技術が霧を超えている世界にやってきてしまったというのは驚きだ。
地対空攻撃を前提にいれていると思われる光学迷彩のことと合わせれば、明らかにこれまで自分たち霧が相手にしてきた人類とは違う。
(あの赤い機体のことと合わせれば、この惑星、ひょっとすると霧でさえヤバイ人類がいるかもしれないわねぇ)
総旗艦ヤマトを相手取って何らかの目的を果たして離脱した赤い機体。シミュレーションをしてみたが、自分では余裕で負けると分かった。
初見ではない、相手がどういう動きをとるかを分析し精査したうえでも勝てなかった。それはそうだ、あの総旗艦でさえ取り逃がしたのだから。
だが、そうだとしてもヒュウガの「自信」というモノをさらにそぎ落としたことは言うまでもない事実だった。
それを取り戻したい、というのがヒュウガの行動原理の一つでもあるが、ここまで人類に圧倒されると笑えてくるほど。
霧の技術ではない、純然たる人類の技術が霧を超えた。蒼き鋼を観察していたヒュウガは、これが人類に大きく影響すると直感していた。
「ともあれ、会ってみないと分からないことだらけね」
すでに準備は整えられつつある。土地だけはあったので、イオナ経由で送られてきた情報の通り、着陸スペースをロボットたちを動員して整備したのだ。
あとはこの島に蒼き鋼が到着し、上空のお客を迎え入れるだけ---
「あら…?」
だが、ヒュウガはそこで招かざる客が接近していることに気が付いた。
それは、人間の艦艇ではない。霧のそれだ。陸上設置型になってから故か、ヒュウガの感知範囲は飛躍的に拡大していた。
故に、真っ先に気が付いた。接近する艦艇は明らかに蒼き鋼の一行に属するものではないのだと。
「重巡洋艦タカオ…?」
接近する艦艇の霧のIFFはそれを示していた。
たしか、ピケット艦として配置されていて、イ401との交戦の結果、キーコードを奪われて外海に追いやられていたはず。
しかし、その艦艇がどうしてこの硫黄島に現れたのか?真っ先に考えられたのは、リベンジだ。いかなる手段でここを特定したかは不明。
だが、イ401を待ち受けるならばここほど適した場所は存在しない。危険は排除すべきだ。
「ともあれ、おかえり願いましょ」
ヒュウガはこの島の各所に移された己の艤装のシステムとエンゲージ。
そして、迎撃戦が幕を開けた。
30: 弥次郎 :2020/12/26(土) 18:41:47 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
- C.E.世界 融合惑星 δ世界日本列島硫黄島衛星軌道上 融合惑星衛星軌道駐留艦隊第6任務部隊
TF6は対地光学迷彩やデコイを展開しつつも、忙しげに艦隊を動かしていた。
この惑星に転移してきた新たな世界との接触が始まり、テレポートアンカーによる艦隊の派遣と接触が始まったためだ。
範囲はほかの世界でも確認されていた日本「列島」を中心とした地域のみという、他の世界から比較すれば狭い範囲であった。
しかし、その日本列島は明らかに人類に敵対的な行動をとる艦隊に包囲されており、それによるものなのか明らかに荒廃がみられていた。
また、地形の精査の結果、どうやらかなり海面上昇が列島を侵食していたようで、おそらく気候も変動していると推測された。
なるほど、そう考えればありえなくもない衰退状況だ。外洋に出られず、交易ができなくなれば途端に生活は苦しくなる。
時代が近代から現代に近づけば近づくほど、苦しさはかなりのものとなっていったことであろう。
多くのものを必要とする時代に一度浸ってしまえば、そこからグレードを下げた生活が途端に苦しくなるのだから。
故に、人道支援をはじめとした各種支援のために、各種輸送艦が物資を満載にして集合していたのであった。
そして、日本列島各地に展開する外交使節艦隊のほかに、もう一つ派遣される艦隊が着々と準備を進めていた。
そう、包囲されて不自由を強いられているδ世界において、唯一自在に動き回る勢力「蒼き鋼」との接触の派遣群だ。
「失礼します…おや、お楽しみの最中でしたか」
そして、その派遣群に交じって接触を持つことになった、おそらくC.E.世界における人類最高峰の戦力の人物、タダノは自室で優雅にくつろいでいた。
入室してきた専属オペレーターは別段驚くまでもなく、タダノの「イメージトレーニング」が終わるのを待つ。
椅子にゆったりと腰掛ける彼の手は丁度操縦桿を握っているかのように横に置かれて激しく蠢いていた。
手だけではない、足もまた、イメージ上に存在するフットペダルを踏んでいるのか休むことなく動き回っている。
それらは、とてつもなく速い。そして、それでいて適当に動かしているわけではなかった。
おそらく、とオペレーターは思う。以前激突した総旗艦ヤマトとの戦いを頭の中で再現しているのだと。
あれほどまでに全力だったのはいつ以来であろうか、と彼の動きを一番見ているオペレーターは考えを巡らせる。
彼をして強敵と判断させたのは多くはない。彼には日企連世界での経験を含め、この世界での訓練や実践が積み重なって身についているためだ。
(相当楽しかったのでしょうね)
実際に手足を動かしている、ということはMSを用いてイメージの中で戦っているのだろうか。
ナインボール=スローンズに匹敵するMSや特機はいくらか存在しているので、それのどれかだろうか。
しばらくすると、満足げにタダノの両手足はだらりと力を失う。十分に戦ったのであろう。顔をあげた彼は、こちらに気が付いていたようだった。
そんなタダノにオペレーターはタブレットを差し出した。上層部で行われたブリーフィングの情報だった。
「こちらを。準備の方は順調に進んでいます。あなたが渡りをつけた総旗艦ヤマトの望み通りに。
それと、総旗艦ヤマトからナインボール=スローンズに譲渡されたナノマテリアルですが、やはり通信機器に変化しました。
こちらからの通信はまだロックされているようですが、あちらからの通信を受信できるようです」
31: 弥次郎 :2020/12/26(土) 18:42:34 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
実のところ、あの接触は何も一方的に渡すだけではなかった。離脱直前、ヤマトの艦橋をフライパスした際にナインボール=スローンズは少量のナノマテリアルを受け取っていた。
そして、回収されたそれはオペレーターの言うように通信機へと変化した。恐らくであるが、総旗艦ヤマトとのホットラインと思われる。
だが、このままでは会談すらできないもの。しかし、その一方的な通信機の意味を推測するのはひどく簡単であった。
「おそらく霧の意思統一まで待ってほしい、そういうことかと思われます。上層部は外交ができるまで気長に待つつもりのようです」
そう、他の霧との間の連携が切り離され、限られた艦艇だけで未知の世界に放り出されて途方に暮れたわけだ。
アドミラリティ・コードによる命令で人類を海から駆逐した道具にすぎない霧の艦艇にとっては、命令系統から切り離され、何をすべきかが定まっていない状態なのだ。
それしか命じられていない以上、それ以上のことが出来ない、と言い換えてもいいかもしれない。とかく、命令にのみ従うというのは厄介なものだ。
だが、彼女らは現状、決して自己判断能力が無いというわけではない。なぜならば、メンタルモデルを持っているからである。
しかし、人のように考え、悩み、意見を持つというメンタルモデルを持ち出してまだ日は浅い彼女らはまだ自己判断というものが難しい。
まして、情報も経験も不足している状態で未知の状況に判断をせよ、とは無理難題だ。
故にこそ、人類に対してコンタクトを取りつつも、内側に干渉されることなく意思統一を図りたいというわけだ。
「彼女らを信じるしかない、というのも何とも歯がゆいですがね…一応こちらとの定期的な会談の場は設けられるそうですが」
オペレーターの言葉に対し、タダノは肯定を示した。
あくまで霧の艦隊は霧の艦隊として尊重する必要がある。こちらから促してやる必要もあるとはいえ、過度な干渉はあまり良いとは言えない。
彼女らは、人間から見れば敵対行動をとっているように見えて、実際のところは結果的にそう映っているだけなのだ。
もし彼女らが自らの判断で行動を変えるというならば、あるいは一個の生命体として意思を示すならば、それは尊重してしかるべきだった。
まあ、ひょっとするとこのリンクスの場合、彼女らが切磋琢磨し、自分に追いつこうとするのが楽しみなだけかもしれないが。
ともあれ、オペレーターは報告を終えると、一礼と共に言う。
「蒼き鋼とのコンタクトまで間もなくです、彼らと過ごせる時間は少ないでしょう。悔いのないように交流を」
それに対し、タダノはサムズアップを返す。黒い鳥となりうる可能性を秘めた彼らとの邂逅は心躍るものになると予想し、堪らなく楽しみであった。
32: 弥次郎 :2020/12/26(土) 18:43:52 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
とりあえず連合の戦力とコンタクトを取ってもらいますかねぇ。
今回はそのイントロという形です。
最終更新:2023年06月18日 22:08