546: 635 :2020/12/27(日) 07:47:12 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島 ネタ 民俗学者が見た神崎島番外編 序ノ島 御船渡し



月明かりの元、常世の永久夜(とこしよ)の闇とも称される神崎島の深い夜の帳の中、常世神宮の本殿に大勢の人々が集っていた。

柏木真人、フェルフェリア・カシワギ・ナヨクァラグヤを始め
日本国内閣総理大臣二藤部新蔵、副総理三島太郎
駐日ティ連大使ヴェルデオ・バウルーサ・ヴェマ、駐日米国大使ジェニファー・ドノバン
自衛隊員に米軍の軍人達
大きく黒い額縁に入れられた写真を抱えた人々

そして艦娘に妖精たちに深海棲艦、そして彼の方。



その視線の先では常世神宮の本殿の前の池の水面にて篝火に照らされ一人の巫女が蛭子神、常世神の神前にて舞う。

周囲には特徴的な文様の巫女服を纏った巫女達が控え、神具たる常世鈴とも呼ばれる島の巫女鈴を手に音を奏でる。
巫女の文様は白い縄、赤い蝶、青い柊、黄の月、そして黒い鴉。
代々常世神宮に仕える巫覡(かんなぎ)の家柄の娘達だ。

そして神前に置かれた多くの桐の柩、時空の歪みによりあの時の姿のまま現在の神崎島に流れ着いたあの3月11日の犠牲者達。
その数は現在までに千柱を超える。


鈴の音と共に神前の巫女は舞う、水面にいくつもの波紋を残しくるくるくると。
そして常世神に奏上される再び水面に生まれ出ることを願う古い古い大和言葉(祝詞)。

ティ連人や米国人の多くにはそれが遠い国の古い古い御伽噺のことように思えた。
見るもの全てがぼんやりとモノクロームの様に感じ現実感がないのだ。
まるでこの場がこの世のものではないように感じる。

しかし日本人は懐かしい感覚を覚える。
幼い頃の神の内にいた頃のあの懐かしい感覚。
丑三つ時のぼんやりとした常夜灯から外れた暗い夜の闇、
逢魔ヶ時に一人で歩く誰もいない道の影、
未だ現世と人ならざる者達の世界との境界が薄い頃の感覚。

幾人かは違う光景が見えた。

そして舞い踊る巫女の周りにはいくつもの穏やかな蛍のような光が舞い、空へ昇り海の方へと去っていく。
遺族達の目尻には光るものが。


しかし懐かしい感覚も巫女の舞が進むと共に段々と薄れていく、開かれていた扉が閉じられていくように…


そして鈴の音が終わると共に全ては終わりを告げ、外国人達は現世へ戻り、日本人達は神の内から引き離された。
ただ揺らめく篝火と巫女の存在だけがそこで確かに何かが行われたことを示していた。

547: 635 :2020/12/27(日) 07:47:52 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp


若干アルコールの回った柏木は常世神宮敷地内の宿泊所の廊下を歩いていた。
寝る気が起きずスヤスヤと眠るフェルを置いて宛もなく彷徨っていた。
どれほど彷徨ったのか、これが神崎島の時間が歪むというものであろうか。


「ああ、ケラーも眠れないのですか?」


宿泊所の中庭に面した渡り廊下に腰掛けたヴェルデオに声を掛けられた。
隣には二藤部も座っている。


「ヴェルデオ大使に二藤部総理…。」

「私達も眠れませんのでね。こうして夜中に月見酒と洒落込んでるんですよ。」


二藤部は側に置いていたコップを見せた。


「ケラーも一献。」

「御同伴に預かります。」



「「「……。」」」


三人は何も言わずに月を眺めていた。
柏木は意を決して話を切り出した。


「…もしかしてお二人も島について何か見るか、聞きましたか?」

「ケラーも?」

「ええ…。」

「私は艦娘について。まさかあんな重い由来があるとは思いもしませんでした…。」

「軍艦の娘でないので?」

「ああ、所でファーダニトベは?」

「私は…今日の神事についてですね。…お二人もこのことについては知っておくべきかも知れませんね…。」

「では全員で聞いた話をするとしますか。」

「夜中に一人ずつ話す、まるで百物語ですね…。」

「空恐ろしい話ですから案外間違っていないでしょうね…。」

「ハハハ、それでは舌の滑りを良くするため追加の酒を用意するとしますカ。」

「じゃあ自分が持ってきます。」

「柏木さん、お願いしますね。」


三人は笑いあった。

548: 635 :2020/12/27(日) 07:49:21 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
今回は以上になります。転載はご自由にどうぞ。
全四回に渡りこのネタを投下します。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年12月31日 13:40