597: 635 :2020/12/29(火) 16:45:10 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその十六
ドイツ憂国騎士団、彼らは誕生した時から不幸だった。
政府が舵取りを誤らなければ彼らは誕生しなかったからだ。
彼らは他のドイツ軍から疎まれるのも不幸であった。
彼らを止められるものがいなくなったからだ。
彼らは政府から称賛されるのも不幸であった。
現実が見えなくなったのだから。
しかし最も不幸なのは神崎島という人の皮を被った巨人を相手に如何なる存在か告げられず、知ろうとせず戦いを挑んだことだろう。
それがペリシテどころかむしろティターンやヨトゥンと言った方が良い存在にも関わらず。
彼らはドン・キホーテであった。
戦力の大半を都市区画ごとゲヘナと送られたドイツ憂国騎士団部隊の司令官は焦っていた。
次々に入る自軍の損害情報、
「第二歩兵大隊、連絡取れません!」
「第二四偵察小隊より第七戦車隊壊滅の報!」
これ以上の負け戦となれば騎士団内の別派閥が自分達の切り崩しに掛かり、政府の命令を現場が勝手に違反したことから
自分は思想解放施設(ゲットー)送りとなってしまうだろう。
その前に戦闘を収めなければならない。
「さっさと全部隊に戦闘を停止させろ!!」
「ダメです!大半の部隊が情報秘匿を理由に戦術データリンクを切っています!」
そこへさらなる不幸が襲う。
「司令!後方待機中の部隊がロッテルダムへ逐次侵入します!」
「何故だ!?」
「前線高位指揮官の命令のようです!命令内容はロッテルダム侵入の他、『高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に』です!!」
「それ一番ダメなヤツじゃん!?」
598: 635 :2020/12/29(火) 16:46:07 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
ドイツ憂国騎士団はロッテルダムへと逃げ込むオランダやベルギー軍や避難民を追いドイツ陸軍と同じくロッテルダムを包囲していた。
それまでのヨーロッパ侵攻で彼らは多大な戦功を上げていた。
ドイツ連邦軍を信用していない政府により多大な支援があり第二の国軍と呼ばれるまで成長しつつあったからだ。
独自の陸上戦力、航空戦力、そして少ないが新造艦のみで編成された海上戦力。
政府直轄で動かせる戦力として多方面に投入され経験も積みつつあった。
そして一部部隊は悪名が他の国軍内部で広がりつつあった。
パルチザンや投降した軍人、民間人の虐殺、婦女暴行などアインザッツグルッペンの渾名で呼ばれる部隊もあった程である。
しかしそんな彼らはロッテルダム包囲に神崎島が介入、
政府より全軍に戦闘停止命令が発令され彼らはそれ以上の武勲を上げる機会を取り上げられた。
自分達が正義である筈なのになぜ戦闘を停止しなければならないのかと内部に不満が燻った。
傲慢
それが彼らの歩を進めた。
独断専行、現場の判断の名の下今まで行われ許されたそれらと同じ様に戦果を上げれば問題ないと。
それが神崎島とドイツ政府が妥協した侵入禁止ラインを超えさせ、非戦闘区域内で避難民に銃を向けさせた。
その瞬間彼らは爆ぜた。
9両の16式機動戦車、陸上戦艦とも呼ばれる車両による14インチ砲9門による制圧"砲撃"。
一分にも渡る鉄と火薬の暴虐の嵐、憂国騎士団の主力はこの世から永久に消え去った。
それでも少なくない数の部隊がロッテルダム港へ向けて市街へと侵入した。
しかし待っていたのは死であった。
彼らを迎えたのはロッテルダム市内部を結ぶ橋や各所に築かれた防御陣地であった。
ティ連技術によるシールドで覆われたそれらは対空、戦車ミサイルや機関砲、迫撃砲などで武装され最早トーチカと呼びうるレベルのものある。
挙げ句の果てにはロシアとの技術交流で作られた55口径120mm牽引式対戦車砲なんて代物まである。
しかも全てゼル造成品、弾薬については気にする必要はない。
そして対戦車砲を操るのは扱うべき祖国の砲を失った砲兵達、
それら陣地の多くにはドイツへの復讐に燃えるベルギー軍やオランダ軍兵士の姿もあった。
「だんちゃーく、今!」
対戦車砲が火を吹いてドイツのVT-5軽戦車が爆発し、陣地のオランダ軍やベルギー軍の兵士達は喝采を上げる。
軟弱な地盤や市街戦の為にドイツで導入された中共のVT-5であったが相手が悪かった。
VT-5は自身の主砲に耐えうる防御力を持つ立派な戦車であったが所詮対105mm砲防御、対第三世代主力戦車用の砲の前には無力であった。
戦車を支援し陣地への接近を試みるドイツの歩兵たちは擲弾銃や機関砲、機関銃による十字砲火に晒される。
しかもそれらドイツ側の情報は上空に展開するヴァルメ等により即座に収集され戦術データリンクを用いて即座に味方に伝えられる。
「ゲ!レオパルド2が来る!?しかもサソリも一緒かよ!!」
「接敵まで一分もないぞ!?」
『来たぞー!!』
崩れた建物の影に隠れたオランダ軍の偵察兵が叫ぶ。
路地から見慣れたレオパルド2の最新型2A7とドイツの開発したオランダ兵にサソリと呼ばれる多脚型機動戦車が一台ずつ姿を現す。
共に55口径120mm砲を装備それに耐えうる装甲を持つ重戦車でもある。
サソリはその見た目から日本人や神崎島から「どう見ても18式です。ありがとうございました」などと言われている。
市街戦では使いにくい筈であるが痺れを切らしたドイツ側により破城鎚として投入されたのだろう。
流石に陣地のシールドを破ることは出来ないが陣地の装備では撃破が難しい相手だ。
しかしここにいる人員はドイツによる侵攻を生き抜いた生え抜き、対処法も心得ていたが…。
599: 635 :2020/12/29(火) 16:47:04 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
「俺が爆薬持ってカミカゼします。援護を!!」
「やむを得ないか…。」
若い兵士の一人志願し上官が苦い顔をする。
対戦車火器の不足していた撤退戦で良く行われた対処法だ。
これにより何台ものサソリが撃破されている。
「その必要はありませんよ。」
オランダやベルギー軍の兵士の兵士に声を掛ける存在、この陣地を取り仕切る神崎島の士官だ。
この士官がいるからこそハイクァーンやPVMCGの恩恵の下でオランダ軍やベルギー軍は戦い続けることができるのだ。
地位こそこの場で最上位でないがその意見を無視することは出来ない。
神崎島の士官はニヤリと笑う。
「騎兵隊が来ました!」
「うわあ!?」
キュイーンとサソリの車体から伸びるマニピュレーター状のRWSが動いた。
偵察兵達が隠れた建物をRWSに搭載された重機関銃による銃撃が襲う。
そして今度は各車両の主砲が動き偵察兵達は死を覚悟し目を瞑った。
何かを弾く様な金属音が響き戦車砲の発射音と爆発音が耳に木霊する。
衝撃が来ないことに気づき偵察兵達が恐る恐る目を開けた。
まず目に入るのは破壊されたレオパルド2とサソリ、そして…
都市には似つかわしくないオリーブドラブと濃い緑の迷彩を纏い小型化したレオパルト2A7と言うべき姿の戦車が目に入る。
しかし中身は全くの別物だ。
西側第三世代最後発にして第四世代主力戦車とも呼ばれ現代戦に最適化された西側21世紀初の新型戦車。
改良のためティ連技術が大々的に投入され走攻守全てにおいて既存の戦車を全て凌駕し、
他国の140mm砲級機動戦車にすら匹敵、或いは超えると言われる化け物。
後にオランダ軍やベルギー軍兵士達に我らが守護天使と呼ばれることになる存在。
10式戦車・改がそこにいた。
10式のハッチが開き呆然とする偵察兵達に顔を出した人物が声を掛ける。
「ダッチ(オランダ人)、大丈夫か?良くぞ踏ん張った。後は俺たち騎兵隊にまかせておけ!!」
誰かがあっと指をさし、その人物はニカッと笑う。
後ろからは部下と思しき日本人がハッチから身を乗り出した10式が続く。
「パットン中将!先走りはやめて下さいよ!」
「お前もコミー共相手に貧弱な装備で一歩も引かなかったジャップの末裔ならしっかり着いて来る気合を見せろ!」
これでも期待してるんだぞとパットンと呼ばれた人物は言う。
オランダ軍やベルギー軍の兵士達はそのやり取りを見てどうにかなるかもしれないと感じた。
600: 635 :2020/12/29(火) 16:49:25 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。
転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2020年12月31日 13:43