257: ひゅうが :2020/12/30(水) 22:43:07 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
――1935年。ロンドンで開かれた軍縮会議は完全な決裂に終わった
アメリカの新大統領リンドバーグは、副大統領を兼務したロング総帥の言うがままに偉大なるアメリカの復活以外に興味を示しておらず、実務者交渉ですら諸外国を馬鹿にするかのように大佐クラス(チェスター・ニミッツ大佐)を送ってくるのみであったのだった
会議は、とりあえずは東京海軍軍縮条約の文面を確認するとする宣言を出すのみに終わったのだが、それすらも翌日のロング総帥の大演説で小ばかにされて終わった
彼は、代艦建造枠を行使すると称して東京海軍軍縮条約の排水量制限枠を意図的に無視して新型戦艦の建造を宣言したのである
新たに建造されたのは、「サウスダコタ」級をやや大型化させたとする「ルイジアナ」級戦艦だった
16インチ砲3連装4基12門をもって建造したとする7万トン級戦艦だったが、これにはトリックがあった
長砲身16インチ砲と称するそれは、東京海軍軍縮条約で建造が制限されていたはずの18インチ砲艦だったのである
しかものちに彼らは本級とともにひとつ前の18インチ砲艦「アイオワ」級を20インチ砲に換装していた
明らかに条約違反であったがそれを気にするものは誰もいなかった
なんといっても米国は日本の4隻の、英国の同じく3隻の18インチ砲戦艦を相手取っているのだし、非常時にメリーランド級はともかくサウスダコタ級は18インチ砲戦艦に改装できるようになっていたのであった
そのために製造されていた18インチ砲身が海軍工廠に死蔵されていることを知ったロング総帥はさっそく倒産した後で合理化と国有化を進めるカイザー造船所に見積もりを依頼
改装するよりも新造戦艦を建造する方が経済波及効果と費用対効果に優れるという結論を得るとその通りにしたのだった
もちろん、主砲口径を変更しての換装は条約違反であることは百も承知であり、練習戦艦として在籍していたテネシー級4隻の代艦と称することで相手に条約をある程度守る意思があると思わせることも彼一流のトリックであったことは言うまでもない
こうした状況において、日英およびようやく統一を回復したドイツや経済発展著しいイタリアと中央共同連合などの旧東京海軍軍縮条約参加国家は再び東京において会議を開催
実質的な軍拡条約となる第2次東京協定を締結
エスカレーター条項を採用することでアメリカが新規建造した分だけの18インチ砲艦の建造を各国に許可するに至る
当然ながら米国政府は猛烈に反発。実質的な条約の空文化とみなすと声明を発表した
だが、最後まで条約破棄を宣言しなかったことがのちに悲劇を生むことになるのである
258: ひゅうが :2020/12/30(水) 22:43:40 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
一方、1930年代の
アジア経済はいっときの躓きこそあったものの順調に推移していた
のちにケインズ型といわれる公共投資の宛はいくらでもあったし、ようやく政情が安定してきた東ロシア、すなわちエカテリンブルグ政府が中央共同連合と日本帝国に追随したことからその対象は大きく広がりはじめていた
経済的に東ロシアと繋がっているアメリカの景気ですらつられて明るくなったほどだった
1936年の東京オリンピックはそうした明るいムードの中で開催された平和の祭典だった
統一ドイツから久方ぶりに復帰した代表団が万雷の拍手で迎えられ、各国と対立を深めつつあるアメリカ代表団がローマ式敬礼をする一幕がありつつも同じく拍手で迎えられたことがこの時代を象徴するような光景として長く語られることになった
ようやく参加が実現した大韓帝国やインド帝国の代表団すらいたほどである
だが、その裏では各国ともに大建艦計画が動き始めていた
アメリカは「ルイジアナ」級6隻の同時建造を開始していたし、英国は「キングジョージ5世」級5隻を、イタリアは「ヴィットリオ・ヴェネト」級4隻を建造し始めており、その掉尾を日本の「大和」型が飾ろうとしていた
中でも最大だったのは当然ながらアメリカだった
公共投資の一環としての軍拡を選択したアメリカは、陸軍工兵隊によるパナマ運河再拡張に加えて「両洋艦隊計画(スターク・カールビンソン案)」といわれる大建艦に打って出たのである
主力艦艇数十に加えて大小1000隻を超える建艦は、彼らこそが新たなローマ帝国として海洋を支配せんとする野望のあらわれであった(と同様の演説をロング総帥は繰り返していた)
それに続くのは日本の「新八八艦隊計画」である
練習戦艦「伊勢」と「日向」の代艦にはじまり、旧八八艦隊の「長門」と「陸奥」の代艦たる合計4隻を1940年には就役させる
ついで「加賀」と「土佐」、「天城」と「赤城」を1942年までに退役させ代艦4隻を建造しようというのである
さらには使い勝手がいい超大型空母も同時4隻が建造予定であった
日本造船メーカーによるダンピングなしでの価格攻勢に敗北したアメリカ造船界からすればそれは恐怖だった
両洋艦隊計画が実現できそうにない夢想であるのに対し、今や全世界の造船需要の6割を賄っている日本人たちのそれは予算もあれば実現余地も十分にある計画だったからだ
そして、その結論はホワイトハウスに報告される
アメリカは、恐怖した。そして決断した
日英同盟はこの地上から抹殺しなければならない。まず目をつけられたのは、中興を果たしつつある彼らの故地であった
259: ひゅうが :2020/12/30(水) 22:47:13 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
というわけで追加しました
これで大和型戦艦の登場までの前説が終わりです
アメリカはルイジアナ級に、史実超大和型みたいなトリックで51センチ砲を搭載してしまおうとしております
あーあー(苦笑)
最終更新:2021年01月04日 12:06