781: 弥次郎 :2021/01/04(月) 21:55:24 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp


憂鬱SRW 融合惑星 蒼き鋼のアルペジオ世界編SS「蒼と赤」2


  • C.E.世界 融合惑星 δ世界日本列島 硫黄島 島内基地

 千早群像率いる「蒼き鋼」の面々は無事に硫黄島へと帰還した。
 追いかけてきていた重巡タカオとの接触やら、ヒュウガが不規則言動をイオナに対して起こしたことなどはともかくとして、彼らは本命のために陸港へと向かった。
 土地だけは有り余っている硫黄島。色々と出てきそうではあるが、メンタルモデルたるヒュウガにはあまり関係の無いことであった。
故にイオナからの命令でAI搭載型作業ロボットを動員、注文されていた以上の立派な陸港を整備した。
発着スペースだけでなく、管制塔や格納庫、レーダーに通信設備に観測装置まで作ってしまったのは少々手が込みすぎているだろうか。
ともあれ、イ401クルーは体裁を整えて、会談に向かうことになったのであった。

「コイツを連れてきてよかったのか?」

 杏平が指さすのは、ここまでイ401を、群像を追いかけてきたタカオであった。
 本人曰く霧を出奔した、とのことであるが、今回の会談を霧に知られた場合のデメリットを考えると、外させてもおかしくない人物だ。

「構わないさ」

 だが、群像はこの会談に出席させることを選んだ。理由としてはいくつか理由があるが、最たるものとしてはすでに霧と連合がつながりを持っているから、である。
 霧と人類とが対等な関係になる。それは、群像が温めていて、今のところはイオナと上陰次官補にのみ明かしているプランの先にあるものだ。
そのためにわざわざ白鯨に浸食魚雷でキリシマ、ハルナを撃沈し、さらにはこの後のランデブーで振動弾頭を渡す手はずになっていた。
人類が決して霧に劣るのではなく、上になるでもなく、対等に。自分たちがイオナと関係を持ったように、人類が霧とつながりを持てるように、と。
そして、そのためにアメリカへ振動弾頭を届ける役目を白鯨Ⅲに譲る手はずであったのだ。それが消えてしまったのは置いておく。
 ともあれ、地球連合はすでに総旗艦ヤマトと情報をかわし、関係を持ったことが推測されているのだ。出なければ、自分たちに接触できるはずもない。

「霧の艦艇の持つネットワークに人が大々的に介入を許したんだ。今更、我々がコンタクトを持っても驚かれはしないだろう。それに…」
「それに?」

 言葉を転がし、ちらりとタカオを見て断言する。

「彼女たちも知りたがっているのかもしれない。外の世界がいったいなんであるかを。転移という事象にどのように対処すべきかを」

 そう、群像はヤマトの発した情報を基に地下のドッグでタカオにかまをかけたのだ。包囲すべき人類は霧の包囲の外に既にいる。
しかも、総旗艦でさえも手こずる相手が存在しており、それは人類であるが、霧はどういう行動をとるのだ、と。
 その問いかけに、タカオは答えに窮していた(群像視点)。つまり、霧の艦艇は総旗艦はともかく、末端クラスでは意思統一ができていないのだ(群像介錯)。
それは、総旗艦のもたらした情報だけでは納得していないということを如実に示している。となると、この会談が霧に影響を及ぼすかもしれない。

「試金石だ。いったい彼女たちが激変した状況にどう対応するのかをな」

782: 弥次郎 :2021/01/04(月) 21:56:22 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

 そしてもう一つ。これはもっと切実な問題だった。

「それに、我々がいったいどこを目指して進んでいくべきかを、知らなければならない」
「身の振り方、ですね?」

 群像は頷く。今後の身の振り方というのは極めて重要な問題だ。
 状況が変化し、イ401と振動弾頭を抱える自分たちは、霧もそうであるが人類からに対しても追われる身だ。
終われる理由は様々。イ401そのもののことであり、これまで何でも屋として犯してきた法のことであり、あるいは振動弾頭のこと。
 状況が変化した以上、座しているだけでは狙われかねない。
 これまでは振動弾頭をアメリカに移送するという仕事を請け負い、その関係で庇護を受けていたところが大きい。
白鯨Ⅲとの連携然り、これまで得ていた補給や情報提供然り、あるいは身柄の安全などだ。
政府の中にも、自分たち蒼き鋼のクルーを排除し、政府にイ401の所有権を戻すべき、という意見が存在しているのを知っている。
それは今のところそれは拒絶し、それが日本政府によって肯定されている状態。しかし、その仕事が実行不能となれば話は別になる。
自分たちは所詮は学生だ。イ401を動かす知識と技能があり、世の中を渡っていくすべを知っていたから何とかなっていた。
 だが、それのための前提条件が根底から覆されているならば?その時はイ401という船が座礁に乗り上げてしまうことになる。
今更振動弾頭を返却して、はいさようなら、となるとは思っていない。そして、霧の包囲を抜けられる連合との交流は自分たちの価値を大いに下げてしまう。
ここについてはすでにクルーとの間で共通認識としてあった。端的に言えば、寄る辺がない。
 短いながらも議論が交わされ、一応の一致した意見となったのが「連合への売り込み」であった。
 雇われ兵となることで、連合にバックに立ってもらう。あまりにもリスキーであり、消極的なモノ。
 だが、同時にこれしか実行に移せるプランが存在していないのだ。自分たちが霧に対してこれまで戦果を挙げ、活動してきたことをアピールするしかない。

「艦長、弱気になった?」
「……ああ、そうだな」

 再び考え込んだ群像にいおりは声をかける。
 艦長とは孤独。そう、横須賀での戦いの後自分は彼に告げた。
 艦長はあらゆることを考え、抱え込む立場だ。艦艇のこと、クルーのこと、戦いのこと、戦いの後のこと。
 そして、蒼き鋼のリーダーとして、組織のことも考えなくてはならない。ここにいるクルーはいろいろあって元の居場所を飛び出してきた。
群像というリーダーの掲げる理想に、目標に、共感し、ついていこうと決めたのだ。
 だが、その艦長が迷ってしまえば、自分たちは路頭に迷う。船頭多くして船山に上るとかいうらしいが、まさにそれ。

(はぁー……あ)

 ため息を一つ。この思いは、おそらくクルー全員に共通していること。そして、自分たち自身の無力さも感じている。
 もどかしく、苦しく、どうしようもないほどに感情を持て余してしまう。
 今もそうだ。すべてがかかる交渉が、いよいよ始まろうとしているのに、気の利いた言葉一つかけられない。

(お…?)

 そんな中にあって、イオナだけは群像の手を握っている。
 何をするというでもなく、何を言うというわけでもなく、ただ手を握っている。
 初々しいねぇといおりは思う。それをすさまじい表情でガン見しているタカオとヒュウガは知らん。

783: 弥次郎 :2021/01/04(月) 21:57:06 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
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短めですが、区切りが良いので。
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最終更新:2023年06月18日 22:09