162: 194 :2021/01/07(木) 20:35:31 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
短編ネタ 現代日本大陸化&銀連神崎島クロスSS ある日、日本が『超』大陸と化してしまった件 番外編その39 竹島沖にて生まれし者 その3


戦争は終わった。
戦争に関するニュースは、竹島の大型家電量販店にコッソリ侵入して、見本で置いて有るテレビに流れているニュースで確認していたが、どうやら間違いでは無い様だ。
余りにも狂っているあの連中にも、人格改造刑という物が施される事もニュースで知った。幼い自分の目から見ても、狂っているとしか言い様が無いあの連中の人格が、綺麗サッパリ
消えてなくなるという。

家電量販店を出た深海竹島棲姫は、その足で竹島南方にある慰霊碑へと向かう。戦時中という事も有り、立派な施設を建てる余裕は無かったが、犠牲者の名を刻んだ石碑だけはこの戦争中に何とか間に合い、
こうして日本海を望むこの場所に、静かに佇んでいる。
その石碑に、深海竹島棲姫・・・いや、真奈美は話しかける。


真奈美「ミンナ・・・・・ヤット、ヤットコノ戦争ガ終ワッタヨ・・・。私達ヲ殺シタ狂ッタ連中ニ、天罰ガ下ッタヨ・・・」

真奈美「ティ連ノ人達ガ、連中ノ人格ヲ消シ去ッテクレルッテ。アノ狂ッタ連中ハ一人残ラズ消エ去ルッテ、ニュースデ言ッテタヨ・・・」

真奈美「ミンナノ無念モ・・・・・コレデヤット、晴ラス事ガ出来タンダヨ・・・・・」

真奈美「・・・・・・・・・・ナノニ、何デ?・・・・・何デ、涙ガ止マラナイノ?」

真奈美「ミンナノ仇ヲ討テタノニ・・・・・奴等ヘノ復讐モ・・・終ワッタノニ・・・・・・・・・・」

真奈美「・・・ウゥゥ・・・・・ウワァァァァァァァァァァ!!!!」


真奈美は石碑に縋りつきながら泣いた。ただただ、訳も分からず泣いた。復讐は終わったのに。漸く前を向く事が出来る様になったのに。なのに、何故こんなにも悲しい気持ちで一杯なのか。何故、後から後から涙が溢れ出て来るのか。
無理も無い。復讐をしている時の彼女の顔は、親や姉・友達にとても見せられない様な、感情という物をまるで感じさせない表情で、淡々と殺害していたのだ。
自らの中に未だ存在する、人としての良心。その悲鳴に耳を塞ぎ、必死で見ない様にしていたのだ。それが、復讐の終わりと共に必死に張り詰めていた糸が、ぷっつりと切れたのだ。
だが、真奈美にはそれが分からなかった。そもそも彼女は、深海棲艦と化す前は何の変哲の無い小学三年生の善良な少女だったのだ。吸収した人達の知識や記憶を身に付けているとはいえ、それを分かれと言うのは
無理という物だった。
真奈美は泣いた。ただひたすらに。日が落ち、辺りが暗くなってもなお、暫くの間ずっと泣き続けていたのだった。

163: 194 :2021/01/07(木) 20:36:06 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
ー戦争終結から三年後ー


立派な建物が建てられ、その中に収監された竹島慰霊碑。地元の人達を中心に、今も献花が絶えないこの施設に、ある親子が向かっていた。
牧川 敏雄・滝美(まきかわ としお・たきみ)夫妻と、その長女・果歩(かほ)の三人。そう、真奈美の遺族達だ。
真奈美が亡くなった聞かされた時は、家族三人で泣きに泣き、暫くの間酷く落ち込んでいたが、現在は何とか立ち直り、毎年真奈美が亡くなったこの日に慰霊と献花をしているのだ。
道すがら献花する花を購入し、車を近くの駐車場に停めて慰霊碑前の献花台へと向かう。
夏の日差しが厳しい時期という事も有り、午前中に献花と慰霊を終わらせようとしていたのだが・・・・・今回は先客がいた。
光をも飲み込む様な黒い髪をした少女が慰霊碑に祈りを捧げている。だが・・・・・肌は雪の様に白く、竹島固有の種・タケシマキツネを思わせるケモ耳が生えており、明らかに人間では無い。
神崎島に住んでいるという、深海棲艦だろうか?でも、何故こんな所に?
首を傾げる三人。後ろからなので顔を見る事は出来ないが、三人は祈りが終わるのを待った。やがて祈りが終わり、少女が立ち上がる。振り向いた少女の顔を見た瞬間、三人は固まってしまった。


果歩「まな・・・・・み・・・・・?」


あれから三年。真奈美はたった一人で生きて来た。死なない身であるとはいえ、お腹も空くし、喉も乾く。主な食べ物は海の幸。海中で捕らえた魚や、海岸で取れる貝の類。最初は生で食していたのだが、流石に火も通さないのは
どうかと思い立った彼女は、吸収した際に得られた知識を頼りに、自分で火を起こして魚を焼き、或いは海水を煮出して塩を作り、味付けに使ったりもした。
人間の時と違って、栄養バランス云々とかは考えなくてもよいのは有り難いが、変化の少な過ぎる食生活は少々堪えた。人間だった頃に食べていた母の手料理が、とても恋しかった。
それと数少ない「なってよかった」と思える事は、海中を自由自在に泳げる事だ。酸素ボンベや水中ゴーグルといった重たい装備無しに、海中を自在に泳げ、その綺麗な様子に感動した。
長い復讐の日々で傷ついていた真奈美の心にとっては、何よりも慰めとなる景色だった。
そして週に一回に、慰霊碑の前で祈りを捧げる。そんな日々を三年程続けていた。家族と出くわす事も有ったが、自分の姿を認識する事が出来ない様だった。その事に、一抹の寂しさを感じる真奈美。
だが、自分は人ならざる存在。しかも、この両手を血に染めていた身だ。仮に再会出来たとしても、家族の皆に迷惑が掛かる。ならばいっそ、最初から認識出来ない方が良い。無事でさえいてくれれば、それでいいのだから。
寂しさを誤魔化しながら、そう強がっていた彼女だったが・・・。


習慣である祈りを終えて、振り向く真奈美。すると、其処には家族の姿が。
それは別にいい。去年の同じ日にも慰霊にやって来ていたのを知っていたのだから。だが、どうも様子がおかしい。驚愕の表情でこちらを見ているのだから。
献花する花を落とした姉・果歩が茫然と呟いた。


果歩「まな・・・・・み・・・・・?」

真奈美「!?」

164: 194 :2021/01/07(木) 20:36:37 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
姉の呟きに、驚愕する真奈美。もしかして、自分の姿が見えているのか?でも、何故今更になって?
混乱する真奈美。それは家族の方も同じだった。だが、真奈美は思い直す。自分は人ならざる身。ましてや復讐の名の元にこの手を穢した存在なのだ。一緒に居たら、家族に迷惑が掛かる。
真奈美は家族の脇を抜けて、この場を立ち去ろうと走り出した。


果歩「真奈美!?」


逃げようとする少女を慌てて追いかける果歩。だが少女の足は速く、このままでは振り切られてしまう。そう思ったその時。


ドテッズサァァァァァァァ


慌てて逃げようとしたせいか躓いて転び、ド派手なヘッドスライディングをする羽目となった。


真奈美「・・・・・痛タタァァ(涙目)」


その隙に追いつき、自分の方の少女の顔を向けさせる果歩。少しして、両親も追いついて来た。


果歩「真奈美!真奈美なんでしょう!?」

真奈美「・・・私ハ、コノ島ノ死者達ノ想イガ生ンダ存在・深海竹島棲姫。・・・真奈美トカイウ少女ナド、知ラナイ・・・!」

果歩「真奈美?何を言って!?」

真奈美「・・・ダカラ私ハ、真奈美トカイウ少女デハナイ!!コノ手ヲ放セ!!」


あくまでしらを切り、果歩の手を払いのけようとする真奈美。だが・・・
彼女の特徴ある癖に、果歩は表情を和らげる。


果歩「・・・真奈美。相変わらず、嘘が下手ね」

真奈美「・・・ナ、何ヲイッテ」

果歩「今まで言わなかったけど、この際だから言うわ。アンタって、嘘を吐く時は必ず右手を頬に添えるんだもん。今も、右手を頬に添えてるし」

真奈美「・・・ナッ!?ウ、嘘ナンテ言ッテナイ!!」


そう叫びながらも、果歩が言った通り右手を頬に添えている真奈美。


果歩「ほら」

真奈美「・・・・・ア、アウゥ・・・」


姉の指摘に、言葉に詰まる真奈美。


敏雄「・・・ほ、本当に真奈美なのか?」

滝美「・・・・・い、生きていたの!?」

真奈美「・・・オ父サン。・・・オ母サン」

果歩「・・・何で深海棲艦になってるのかは知らないけど、・・・生きていて、くれてたんだね」

真奈美「・・・・・オ姉チャン」

果歩「・・・帰って来てくれて、有難う。・・・お帰り、真奈美」

真奈美「・・・オ姉チャン・・・・・ウッ、グスッ・・・ウワァァァァァァァァァン」


叶わないと思っていた家族との再会。自分を抱きしめる姉のぬくもりに、真奈美は大声で泣いた。両親も一緒に真奈美の体を抱いて、泣いていた。
あの日から三年。一度は離散した家族は、思いもかけない形で再び再会したのだった。

165: 194 :2021/01/07(木) 20:37:08 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
一しきり泣いた後、父の提案で取り敢えず自宅に引き返す事に。昼食を交えた後に今まで何をしていたのかを聞く事となった。
なお、昼食で久し振りに食べた母の手料理の味と温かさに思わず涙がこぼれ、どうしたのかと思って聞いた両親と姉が、真奈美の普段のサバイバルな食生活の実態に思わずもらい泣きする一幕も有った。

その後に語られた、真奈美の身に起きた出来事の数々や、やってきた事の話を聞く家族達。
惨たらしく殺された皆の仇を討つ為に、深海棲艦になった事。自身の姿が見えないのを生かして、関係者やそれに賛同する連中達を縊り殺して来た事。その数は、200から先は数えていない事。
戦争が終わってからは、一人でサバイバルな生活を送る一方で、週に一回犠牲者の慰霊碑に鎮魂の祈りを捧げていた事、何故姿が見える様になったのかは、自分にもわからないという事。
復讐の事を苦しそうに語る真奈美の姿に、家族もつらい思いに駆られる。本来なら、ごく普通の優しい少女である娘が、復讐の鬼と化してその手を血で染め続けていたのだ。その事を聞かされて何も感じない様では、親である資格は無いと断言出来る。


敏雄「・・・それで、真奈美。これから、どうするつもりなんだ?」

真奈美「・・・残念ダケド、ミンナトハ一緒ニ居ル事ハ出来ナイ」

滝美「な、何でだい!?」

真奈美「・・・サッキモ言ッタケド、私ハ復讐デ、コノ手ヲ穢シ続ケテキタ。ソンナ私ガ家ニ居タラ、ミンナニ迷惑ガ掛カル・・・」

滝美「そんな!!」

真奈美「・・・ソモソモ今ノ私ハ、人ナラザル身。一緒ニ居ル事ハ、絶対ニ出来ナイ・・・。ダカラ私ハ、コレカラモ一人デ・・・」

果歩「・・・そんな事、させない!!」

敏雄「果歩!?」

果歩「寂しがり屋なアンタを、独りぼっちになんてさせない!!そんな悲しい事、私が許さない!!」

真奈美「オ姉チャン・・・・・!?」

果歩「・・・かくなる上は、神崎島を頼ろう!!」

滝美「神崎島に?」

果歩「あそこには、艦娘や深海棲艦がたくさん住んでる。そこなら、真奈美の事も受け入れてくれる筈よ!」

敏雄「し、しかしいきなり連絡を入れて、受け入れて貰えるのか・・・?」

果歩「だとしても、事の重大さを考えたら無下に扱うなんて出来ない筈よ。とにかく、まずは行動に移ろう!!」

敏雄「・・・分かった。神崎島には、俺が連絡を入れよう」


かくして、方針が決まり神崎島へ連絡を入れる事に。
一方、その神崎島では・・・・・。

166: 194 :2021/01/07(木) 20:37:38 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
神崎「・・・・・か、書いても書いても書類が減らない。私が何をしたって言うんだ・・・」

吹雪「司令官。辛いのは分かりますが、現実から逃げないで下さい。私達も手伝っているんだし」


国防海軍の艦艇の艦娘の存在が発覚した影響で、様々なデータ作成等で書類処理に追われている神崎提督達。何せ700隻を超える膨大な数の艦娘達が確認されたのだ。
処理すべき書類の量も膨大であり、仕事が終わらないのも無理のない状態だった。しかも先程、米海軍からの連絡でブルー・リッジにも艦娘が居るのが確認された為、尚の事忙しくなっていたのだ。


神崎「全く・・・。日本の神とやらも、少しは自重しろよ・・・。尻拭いする現場の身にもなってみろってんだ」

吹雪「愚痴を言っても書類は減りませんよ。口の前に手を動かして下さい」

神崎「・・・俺、この仕事が終わったら提督を引退するんだ・・・」

大淀「何馬鹿な事を仰っているんですか。そんな事、私達が『絶対に』許しませんからね。諦めて、書類の処理を・・・」


バンッ!!


勢いよく開けられる執務室のドア。そこには、神崎 ホッポとピーチ 神崎(元PT小鬼)の二人が居た。


ホッポ「テートク、テートク!!」

ピーチ「大変、大変!!」

神崎「ん?どうしたんだ?二人共」

ホッポ「アノネアノネ!北ノ方ニ、新シイ深海棲艦ノ存在ヲ感ジタノ!!」

ピーチ「私達ダケカナト思ッタンダケド、他ノ皆モ感ジタッテ!!」

神崎「え?いや、まさか!?ここ、常世ではなく現世だぞ!?」


ブー!ブー!


そんなやり取りをしている時に、大淀のスマホに着信が。


大淀「あ、はいもしもし。・・・はい、・・・はい・・・・・・・・・・・・え゛!?」

吹雪「何か有ったのですか?」

大淀「その・・・竹島に住むある家族から連絡が有りまして・・・。竹島沖で死んだ娘が、深海棲艦となって生きていたと・・・」

神崎「」バタリ

大淀「て、提督!?」

吹雪「し、司令官!?しっかりして下さい!!」


「大概にしろ、日本の神よ!!!」


そんな思いを抱きながら、処理能力の限界を超えた事態にあっさりと意識を手放した神崎提督であった。

167: 194 :2021/01/07(木) 20:38:09 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
その後何とか意識を取り戻した神崎提督は、予想外の知らせに驚愕しつつも確認の為に、吹雪を伴って竹島に。その深海棲艦が保護されているというお家に伺うと、確かに居た。
今まで見た事のない、全く新しい深海棲艦の娘を。
その後、本人や家族も交えての話し合いの結果、基本的に神崎島に所属する物とする代わりに、新たに竹島での鎮魂祭にて鎮魂の儀式を行う事。これは、彼女自身の贖罪の意味も含まれている。
その儀式の打ち合わせ等の為に、自宅への一か月の一時的な帰還を認める事。この決定により、期間限定とはいえ家族と一緒に暮らす事が出来る様になったのだ。
この決定に家族は殊の外喜び、神崎提督に何度も頭を下げていた。
なおこの決定の為、現地の神道とも儀式についての打ち合わせ等もする羽目になった為、更に書類の数が増えたのはご愛敬(大本営発表)だろう。


そして一年後・・・・・。


自らが深海棲艦となったのと同じ日に行われた慰霊祭にて、彼女は地元の神社の神主さんや巫女さん達と共に考えた、鎮魂の舞を舞っていた。
厳かな空気の中、彼女は神妙な表情で舞を舞っていた。


彼女は舞う。


死んでいった者達の安寧を祈って。


彼女は舞う。


あの悲劇が、二度と繰り返されない事を願って。


彼女は舞う。


この島に住む全ての生命に、希望有る未来が齎される事を信じながら。



竹島沖にて生まれし者 終

168: 194 :2021/01/07(木) 20:38:40 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
以上です。竹島沖にて生まれし者、無事本編が完結です。何だかんだ有りながらも、無事ハッピーエンドとなりました。
え?ご都合主義過ぎる?うん、否定はしない(ヲイ)
この後の彼女ですが、竹島の守護者兼名誉観光大使としてその後の道を歩んでいきます。神崎島の面々とも仲良くしつつ、家族とも穏やかな関係を続けて行きます。
その後、ゲームの艦これ&艦これACにもボス役として出演したり等もしますが、その辺りは次回の深海竹島棲姫の設定集にて語る事となるかと(セリフも当然あります)
普段とはまた毛色が違う作品となりましたが、個人的にはとてもいい経験になったと思っています。さて、本編の方も頑張らないと。
さて、次回は上でも書いた通り設定集となります。お楽しみに。
wiki掲載は、自由です。

172: 194 :2021/01/07(木) 21:21:37 HOST:ai126215166020.78.access-internet.ne.jp
誤字を見つけたので、修正をorz

164
  • 誤 その隙に追いつき、自分の方の少女の顔を向ける果歩。少しして、両親も追いついて来た。
  • 正 その隙に追いつき、自分の方に少女の顔を向けさせる果歩。少しして、両親も追いついて来た。

wiki掲載時に、修正をお願いします。

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最終更新:2021年01月09日 18:48