625: 635 :2021/01/15(金) 23:43:44 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです 月女神に請い願う
惑星サルカスでの戦いを終えイゼイラ行きを取りやめた柏木達は緊急帰国した。
状況が状況だ仕方がない。
そして帰国直前にあの惨劇、対馬で二発の核が使用された。
陸奥が聞いたおぞましい儀式の犠牲者達の悲鳴。
サラトガが聞いた核の犠牲者達の悲嘆。
柏木達はもとよりフェル達ティ連関係者達の怒りは凄まじく、却って日本人達が冷静になる程であった。
「日本国は大韓民国に対して報復攻撃を行います。」
帰国した柏木達はもとより、ゼル通信でイゼイラのサイヴァルやティ連本部のマリヘイルも参加した安全保障会議、
二藤部は会議の面々に最初からそう告げた。
それも徹底的かつ確実に大韓民国という国家を崩壊させるつもりで、と。
「ちょ、ちょっとまって下さい、二藤部総理!なんでそうなるんですか!?」
慌てる柏木、今までの日本ならば考えつかないことだろう。
まず対話、そこから入るのが筋でないかと仲間を殺された自衛官達を除く会議の日本人達は言う。
逆にフェル達ティ連はそうだと頷き、サイヴァルやマリヘイルは安堵の表情を浮かべていた。
「もう既にその段階はとっくに過ぎています。柏木大臣。今、やらなければならないんです。」
報復をしなければ相互破壊確証で抑止にならないという地球世界の話だけで終わらないと二藤部は言う。
ことは日本だけでなく、ティ連政の今後に加え世界の存亡にすら関わってくると。
二藤部の言葉をサイヴァルが引き継ぐ。
「ケラー柏木、現在イゼイラでは日本が憲法九条を理由に報復しないのならば、
韓国に対してティ連として報復を行うべきという声が大勢を占めています。」
「え?」
「そうよケラー。本部での緊急会議でも日本が報復しない可能性を憂慮している声が多いのよ。
そしてそんな可能性がある日本政府を問題視している者もいるわ。」
マリヘイルはだからこそ二藤部の報復攻撃の発言に安堵したという。
柏木達には寝耳に水であった。
サイヴァル達の言葉を引き継ぎ二藤部は話を続ける。
最悪の場合それら急進派と民意により現政権が崩壊、ティ連は政治的混乱に包まれる可能性があり、
それらの怒りが聖地自身を守れなかった日本に向かう可能性も高い。
そして何より、
「ティ連急進派が報復攻撃を行った場合ですが、死んだ方がマシという状況にもなりかねません。」
聖地を穢しティエルクマスカの家族たる日本人を虐殺したという事実は重いと二藤部は言う。
そしてそんな事をすればティ連の歴史に暗い影を残す。
日本人が自ら報復すれば溜飲も下がり退いてくれるだろう。
そしてここからが問題だと二藤部が言う。
「今回使用された核、艦娘の加護を突破しました。」
ここにいるティ連も含めた全員がその言葉に衝撃を受けた。
艦娘の加護、それは全力ならば既存兵器はおろかティ連のブラスターや重力子兵器すら無効化するものだ。
そんなものを韓国が開発したその衝撃は計り知れない。
しかし二藤部は言う、普通に開発された兵器ならばまだ良かったと。
「どういうことです?」
「今回の核にはある種の呪詛が使われていました。それも想定しうる中で最悪の…。」
暴かれた神陵から盗掘された遺体と千人の日本人から作った蠱毒を使った呪詛、それこそが艦娘の加護を突破した正体だと言う。
柏木はあの彼岸花の花畑の女を思い出し顔を引き攣らせる。
626: 635 :2021/01/15(金) 23:45:58 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
「ちょっと待って下さい総理!?千人の死ってまさか…。」
「多分柏木さんの予想通り我が国の太母…伊耶那美命です。」
二藤部の言葉に日本人が全員顔を引き攣らせる。
骸を顕わにした上粗雑に扱う、死後の自身の姿を夫に見られることさえ厭う太母にそのようなことをすればどれほど怒りを覚えるか。
怒りから荒御魂が顕現するようなことになれば艦娘が維持してきた千曳の巌の封印が完全に破られ、最悪死と生が混じり合う神代へ戻る。
だからこそその前に決着をつけ太母の怒りを鎮めなくてはならない。
それにと二藤部は続ける。
それ以上に自分は彼らが許せない、全員がその言葉に頷く。
「しかしその手段はあるのですか?」
藤堂が問う、日本に報復するための大量破壊兵器はあるのかと。
無論政治的に使用不可能な核を除き、ティ連の広域重力子兵器すらない現状で。
「あります。神崎島にですが…。」
全て神崎島頼みで心苦しいことですがと付け加え神崎島で極秘裏に建造された艦の資料を見せる。
「神崎島でこんなもん作ってたのか…。」
「しかし火力的に大気圏内で使用する艦ではありませんな。」
「だからこそ大量破壊兵器の代替え足るか…。」
そして二藤部はこの艦の艦娘については非公開かつ他言に無用だと言った。
そして女神の姿と名を持っているがそのものではないと。
二藤部の言葉に全員が疑問に感じる中一枚の写真を見せる。
「ハハハ、これは出せないな。」
「大騒ぎ確定じゃねえか!」
「ア!この人ハ!!」
「アーチャーダナ。」
そこには背中に弓状の艦体を模した艤装を浮かべ白いドレスを纏う銀髪の女性が写っていた。
「彼女に託しましょう。私達の怒りを。」
627: 635 :2021/01/15(金) 23:46:31 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
地表より400kmの高度に存在する人工物、国際宇宙ステーション。
それは日本、神崎島、ヤルバーン、
アメリカ、ロシアらにより発達過程文明研究のために運用が続けられた。
度重なる大改修により高機能化と拡張が行われ現在では元の姿を留めていない。
東京エンターテイメントサービスの生み出した某ゲーム機の最終形態にも例えられるその姿。
その中にいる一人の日本人宇宙飛行士、つい先日、地表の小学校と交信し宇宙教室を開いていた。
しかしその小学校、対馬にあった小さな小学校との間で教室を開くことはもうない。
韓国による対馬侵攻により交信そのものが途絶、最後に見たのは爆風に吹き飛ばされ壁に叩きつけられる子供達の姿、
そして彼は宇宙から見てしまった、対馬に現れた二つの火球を。
船長のアメリカ人はそんな彼を心配ししばらくの間部屋で休ませた。
かつてと違い人工重力が働き個人に与えられた部屋のベッドで横になる。
何も考えたくない。絶望が心の中に巣食う。
いつの間に寝ていたのかどのくらい時間が過ぎただろう。
ベッドから立ち上がり部屋の窓から外を見る。
白い月が地球の稜線より夜の空に顔を覗かせる。
その月の女神は百発百中の狩猟の女神で子供らの守護者であるという。
しかし、
『月は無慈悲な夜の女王』
古いSF小説の題が浮かぶ。
月はいつでもそこにある、しかし何もしてくれはしない。
そこにあるだけだ見守ってくれさえもしないだろう。
月の女神なんている訳がない。
だけどと宇宙飛行士は両手を握り合わせ祈る。
もし、もし本当に月の女神様がいるのならばどうかあの子達の無念を晴らして下さい、と。
子供を想う宇宙飛行士の願い、
偶然が必然か女神はその願いに応えその姿を現す。
628: 635 :2021/01/15(金) 23:47:36 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
「え…?」
願ったその刹那、空間が歪み、青い星を背に輝きを纏う何かが浮かび上がった。
宇宙飛行士は慌てて船内通信機のスイッチを入れる。
「せ、船長!!そ、外を!!」
『どうした!?あれは…。』
日本人宇宙飛行士の声にISSの乗組員全員が窓からそれを見る。
その姿を見て溜息を吐く者、神に祈る者など様々だ。
「あれは…宇宙船…か…?」
「綺麗…。」
「Jesus…!」
衛星軌道上、漆黒の宇宙に陽光を浴び白亜に輝く白き舟が姿を現す。
白亜の船体には遠くイオニアの古語でその名が刻まれ、
形状は六角柱を基本とするイゼイラの船を始めとするティ連諸国や海上艦艇型の日本の船とも違う、
翼を広げた純白の鳥、若しくは巨大な白亜の弓と形容するしかない優美な姿。
一目見てそれが子供達の命を奪った者達に復讐を成す存在と分かる者はいないだろう。
そしてこの地上にこの女神の弓から逃れられる者など存在しない。
神崎島上空500km、星の大海にその身を浮かべ月女神は静かにその時を待つ。
復讐の時は近い。
629: 635 :2021/01/15(金) 23:48:29 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2021年01月19日 19:32