337: 635 :2021/01/29(金) 07:19:14 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその二十改



星の海に揺蕩う巨大な白亜の鳥、その艦体には『 ΑΡΤΕΜΙΣ』の文字が浮かぶ。


「神崎島中央司令部より入電!『ニイタカヤマノボレ』!繰り返す『ニイタカヤマノボレ』!」

「命令書のハイクァーン造成データを受信を確認。」


未来的な表現すべきか神秘的と表現すべきか意見分かれるだろうが、ギリシャ神殿が如きと形容すべきでは意見が一致するだろう艦橋に声が飛び交う。
その艦長席に座るは月光の如き銀の髪を流す月女神の写し絵、見る人が見れば神が降臨したのかと目を疑うことだろう。
そしてこの艦、機動砲艦アルテミスの姿は架空の物語でいずれ来たる超人を冠する弓聖に撃ち落とされることとなる彼女の真体に酷似している。
だが違うのは彼女が神の守り手でなく人の守護者であるということだろう。


「艦長、間違いなく神崎島鎮守府提督、日本国内閣総理大臣、ティエルクマスカ銀河共和連合議長の署名入りの命令書です。」

「副長、ありがとう。」


艦長を務める艦娘アルテミスは副長より命令書を受け取る。
命令は、


『報復せよ』


その一言のみ。
そして、

神崎島鎮守府提督 神崎博之

日本国内閣総理大臣 二藤部新蔵

ティエルクマスカ銀河共和連合議長 マリヘイル・ティラ・ズーサ

三人の名前が重々しく並ぶ。
これは此度の報復が連合総意の下に行われる復讐、否虐殺であることを示していた。
アルテミスは艦長席を立つとメインモニターへと向かう。
そこには青い星が映る。


「貴方達が仕出かした事への報復、正当化もしなければ正義とも言わないわ…。ただ死んで頂戴、私達の為に…。」


アルテミスは人々の想像する女神の如く威厳ある言葉を言う。
某超人や某人理最後のマスターが見たら顎を落とすかもしれない。
某純潔の狩人は歓喜に咽び泣くだろうが。




「時間ですか…。」


総理官邸の執務室で時計を見ていた二藤部が窓から空を仰ぎながら呟く。
二藤部が見上げる空からはまるで天が泣いてるかのように雨が降り注ぐ。
その後ろ姿を見る柏木やフェル達には窓に映る二藤部の影が雨粒が重なり泣いているようにも見えた。



『以上です…。』

「そうかニトベは決断したか。」


駐日大使ジェニファー・ドノバンの報告を聞き終え受話器を置く合衆国大統領ジョージ・ハリソン。


「大統領、日本は?」

「報復を行う、手出し無用とのことだ…。」


部下の問いに答えハリソンもまた夜の空を見上げる。
夜空は曇り、いつもは人を導く義憤の女神(ポラリス)の輝きも今は見えない。




「もうすぐですわね…。」

「市民が、いや我々が望んで行うとはいえ虐殺は虐殺だ。相手が南コリアとはいえこれっきりにしたいものだ…。」


サイヴァルは苦い顔をし、マリへイルは自分の持つ湯呑に立っていた茶柱を無表情に見つめる。
マリへイルの見つめる茶柱はどこぞの国の最後を暗示するかのように静かに沈んでいく。

338: 635 :2021/01/29(金) 07:20:22 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp


「さあ始めましょう。」


アルテミスの声と共に艦が動き出す。


「空間加速器構築開始、重粒子砲モードへ移行。」

砲艦アルテミス下部に空間の歪みが生じ仮想の砲が生み出される。


「主機よりエネルギーライン構築、空間加速器全段直結。」

アルテミスに搭載された縮退炉が膨大なエネルギーを生み出し始め。


「重力・慣性制御開始、重力アンカー及び斥力アイゼンロック。船体固定完了。」

船体が視認出来ない重力の錨で固定される。


「重粒子、空間チェンバー内にて正常加圧中。」

砲艦アルテミスの下部に光が生まれ、


「空間加速器、仮想空間砲身安定機構回転開始。」

仮想の砲がその砲身を大地へと向ける。


「艦長、撃てます!」

「発射!」


アルテミスの声と共に光が宇宙を走る。




釜山では逃げ帰った軍を勝利の凱旋と讃え、街を上げ盛大なパレードが行われていた。
核の使用で戦艦陸奥を損傷させ自衛隊に少なからず被害を与えたからだ。
軍が対馬から叩き出され敗走したことを隠すためでもある。

誰かが空を見上げ呟く。


「あれ?そらが光…?」


閃光


その日、大韓民国第二の都市釜山は地上より永久に消滅した。

空より大地に降り注ぐ光の柱、ただただ幻想的な光景であるがそれは月女神の放つ裁きの矢、釜山は元より各地の軍事基地や艦艇も消滅していく。
陸より離れていた為に被害を免れた艦もあったが直ぐに光の柱に消えていった。



「釜山との通信途絶に続き各地の三軍の基地も次々に通信が途絶しています!!」

「一体何が起きている!?」


釜山に加え全軍との通信が途絶しつつあることもありソウルの首都防衛司令部は混乱に陥っていた。
韓国のネット上では核攻撃を受けただの新型生物兵器が日本により使用された、否韓国がいらなくなったので中共が使っただのと根も葉もない話が飛び交っている。


「日帝の攻撃のようです!緊急会見を行っています!!」


全員がテレビに釘付けとなる。




総理官邸の記者会見室には多くの報道機関が詰めかけていた。
内閣総理大臣二藤部自らの緊急発表、対馬での核兵器と思われる爆発や釜山消滅についてのものと発表と推測されていた。
二藤部が出てきた、日章旗とティ連の旗へと一礼し記者達の前に立ちゆっくりと話し出す。


「この度我が国は大韓民国による侵略を受け、第二次世界大戦以来の対人戦争を行うこととなりました…。」


以前ならばこの時に茶々を入れる報道機関も存在したが現在韓国は既に敵国だ。
この状況下で偏向報道をすればティ連の法により裁かれかねない。
故にほぼ全ての日本の報道機関が生まれたままの愛国者となっていた。
そしてこの放送は色々な者が見ていた。

339: 635 :2021/01/29(金) 07:21:06 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp



『皆様韓国の報道を見てご承知とは思いますが、彼の国は何の罪もない我が国の国民に対して虐殺を行いました。』

「満州で死んだあんたが妖精とかいうのになってまで帰ってきたのにまた戦争なんて嫌だねえ…。」


鈴を鳴らし仏壇の軍服を着た人物の写真に手を合わせる老婆は自宅のテレビの音声で知る。



『その上冷戦期の米露でさえ行わなかった愚行、三度目の核兵器の使用にさえ踏み切りました…。』

「日本の被害者面しておきながらあいつらは…お前を死なせたピカドンを使っただと…畜生…。」


原爆ドームの前でラジオを聞き、老人は若い頃の自分と女性が写る写真を眺めながら嘆く。




二藤部は目を瞑り一息置くとそこにいる全員を見渡した。


「これに対して日本、そして神崎島は韓国に対する報復攻撃として釜山を吹き飛ばしました。
そして神崎島、ティ連に加え米英露といった同盟国と会談の結果、我が国と同盟国は韓国に対し唯一の要求を行います。」


記者達がざわつく、『日本が報復攻撃を行う』今までならば考えられないことであったからだ。
東京で、大阪で、ロンドンで、ニューヨークで人々は息を呑む。


「韓国の無条件降伏、それ以外を我々は認めることは決してありません。」





『韓国の無条件降伏、それ以外を我々は認めることは決してありません。』

「日本人め…勝手なことを…だがこちらには艦娘にも通用する核がある…。おい核の準備をしておけ、次はソウルが戦場になる。」


首都防衛司令部の司令官は日本の放送を見て苛立つように部下に指示を出す。


「いえ…あの…核はここにはありません。」

「何だと!?どういうことだ!!」

「だ、大統領が急遽大邱を首都として移動させましてソウルにあった核兵器は全て大邱に移すようにと…司令官の命令と聞きましたが…?」

「私はそんな命令はしておらん!!あの馬鹿が!!」


司令官が怒鳴り声を上げたその瞬間、司令部全ての電源が落ちた。
非常灯が照らされ司令官に冷たい目が向けられる。
周囲の視線に耐えきれず司令官は中央司令室にいる全員部屋の外で調査するように指示を出す。


「「「……。」」」

「わ、私のせいではないぞ。と、とにかく電源室と外を確認してこい!日本の核攻撃の可能性もある、全員行け!!」


しばらくし全員が出ていくと司令官は安堵のため息を吐くが…。


『ガアアアアァァァァア"ア"ア"ア"aaaaAAAA――――!!!』


大気を震わせる様な声らしきものが木霊する。
中央司令室には外の音など聞こえる筈もないのに…。
司令官は焦り部屋の外に出ようとするがドアが開かない。
どれだけドアノブを回そうが、力ずくで開けようとしようともびくともしない。


「何故だ!?何故開かない!!誰か外で抑えてるのか!?今なら笑って許してやる。さっさと私をここから出せ!!」


誰かが扉を押さえていると信じ怒鳴る司令官、その背中を見る人物がいることに気づくことはない。
歪で昏い嗤い顔を浮かべる狐の耳と鬼の角の生えた巫女服の童女、その童女の影から黒く昏い夜海が溢れ出、彼女たちが現出する。
そして非常灯の明かりが突如として闇に飲まれこの世のものでないような風景となる、否既にソウルという都市自体がこの世のものでなくなっていた。

340: 635 :2021/01/29(金) 07:21:44 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

「な、何だ!?」


周囲を見回し自分の後ろに誰かがいることに気づく。
狐の耳と鬼の角の生えた巫女服の童女、深海棲艦。
司令官は日本がここまですでに攻めてきたのかと思い緊張するが童女の側に立つ者に気づき司令官の精神は限界に達した。
倒れ込み股間から液体が染み出す。
しかしそんな事を気にする余裕はなく冷や汗を流し壊れたテープレコーダーの様に同じ言葉を流し続ける。


「あ、ああああああ。まさか、まさか。そんな、そんな、嘘だ。嘘だ。嘘だ。」


その傍らに立つは血まみれで生気のない10代前半の日本人女子学生と20代の白人男性。
その瞳は虚ろであるが確かな呪詛を込めた視線で司令官を射抜く。
司令官はその二人の顔を報告書で知っていた。もう既にこの世の者でないことも。



そして司令部、ソウルに生ある存在は誰もいなくなり異界に消えた…。


だがソウルに出現した姫は本体ではない、略奪され全てソウルに集められた寺社の物品の縁を媒介とし現出し、報いる為に現れた写し身。
その本体は…。




アルテミスの艦内に警報が鳴り響く。



「!?対馬にて局地的重力変動及び空間歪曲を確認!」

「なんだこの変動値は!?空間に穴が空いて?いや!空間そのものが変質している!!」


艦橋が大騒ぎとなる中、搭載されていた電探があるものを探知する。
電探と呼ぶがそれは単なる電磁波を用いたセンサーではない。
妖精が作り上げたそれは霊子やエーテルとでも呼ぶべきものすら検知可能なティエルクマスカの技術からも外れた代物。
差し詰め霊子電探とでも呼ぶべきか。


「艦長!電探に反応、深海棲艦のもの、それも姫級と思われますが…該当する深海棲艦存在せず…位置は…対馬!?」

「対馬周辺の友軍に対比勧告を急いで!!」


アルテミスが叫んだその瞬間艦橋のモニターに映る光学映像で捉えられた対馬の周辺海域が赤黒く変色し韓国南部の海域へと向かう。
その赤黒い何かはソウルにも出現しシミが広がる様にソウルを侵食し覆い尽くす。
そして光学観測機器と霊子電探に連接されたトーラルシステムが対馬にソレを見つけ出した。


「!!システムが未確認の姫級深海棲艦と思われる存在を確認!」


画面に映るのは対馬に再建された要塞の砲にも似た艤装を背負い、対馬空港の滑走路を模した存在を従えた幼き童女。
しかしその瞳は暗く濁っている。
艦娘としてのアルテミスの一部が警鐘を鳴らす。
アレは荒ぶるモノ、現し世にあってはいけない存在と。


「未確認姫級深海棲艦を敵性存在とします!重粒子砲最大出力で砲撃!」

「艦長!?」

「早く撃って!アレは現世に出てきてはいけない存在なの!」


もう既に対馬より全ての人間は退避しているとはいえ自国の領土を攻撃するのは躊躇われた。
しかし悲鳴にも似たアルテミスの命令により重粒子ビームが放たれる。
光の柱が姫級深海棲艦へと降り注ぐ。


「目標に損害を確認!されど健在です!」

「っ!!第二射の発射を急いで!!」


再び放たれる光、だが、


「第二射防がれました!!」

「ウソだろおい!?対象の事象可変シールドの展開を確認!!弾かれました!」

「ちょっ!?目標の艤装の砲身がこちらを向いています!まさか軌道上のこの艦に砲撃を仕掛ける気か!?」

「全機関最大出力!回避運動開始!!」

341: 635 :2021/01/29(金) 07:25:03 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

アルテミスの命令で全幅1kmを超える艦体が見た目からは想像もつかない機動力を以て回避運動を開始する。
しかし地上の姫の砲身は正確にアルテミスを捉えていた。
砲身が紅い稲妻を帯び、砲身の破裂と共に砲弾が射出される。


「砲弾来ます!直撃コース!?」

「!!!艦のコントロールをこちらに回して!」


悲鳴の様な報告にアルテミスは咄嗟に艦の制御を奪う。
砲艦アルテミスの巨体がバレルロールを始め砲弾を回避、砲弾はシールドを薄布の様に貫通し艦体を掠めた。


「砲弾避けました!!」

「直に探知偽装を!」

「了解!」


砲艦アルテミスが探知偽装を行うと姫は見失ったのか何もせずしばし空を見上げ、しばらくすると興味を失ったのか視線を外す。
その様子に艦橋の人員は皆安堵の息を出す。


「まさか本艦のシールドを貫通とは…。」

「艦長、目標の損傷が修復されていくのを確認しました。」

「昔のイベント海域のゲージ回復かよ…」


アルテミスは考える仕草をしながら副長に尋ねた。


「副長、対馬要塞にはハイクァーンがあったわよね?」

「はい、補給用にあった筈です。韓国軍に奪われなかったようですが…ってまさか!?」

「恐らくあの子は対馬要塞を元にした深海棲艦、ならハイクァーンもあるわよね?」


第二射を防いだシールドも自己修復も全てはハイクァーンの存在故、
そして問題はハイクァーンに関係する。


「問題はあの子が戦闘中にシールドを展開出来るようになった。つまり自己進化したのよ。恐らくはハイクァーンを使って。」

「つまり戦えば戦う程強くなると!?」

「それだけじゃないわ。時間はあの子の味方よ?時間を掛ける程ハイクァーンで兵器が増産されるわ。」


しかも今回の戦闘が原因で航宙艦からの攻撃は意味を成さない可能性があるとアルテミスは言う。
艦橋の人員は戦慄した。


「この戦い、韓国を降伏させて終わりにはならなそうね…。」


アルテミスは呟いた。



全ての生命を否定する変色海域、世界各地で古来より言い伝えられてきた冥府とでも呼ぶべき異界"夜海"へと続く夜海ノ海の現世への出現。
人が意味も知らぬまま魂を弄び人成らざる者へ手を出すことの愚かしさと過ちに知る者達は恐怖した。
自分達が理解出来ぬものの存在に普通の者達は戦いた。
しかし、愚か者達はそれが何を齎すのか気にもとめなかったのだ。

342: 635 :2021/01/29(金) 07:26:00 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
文章量がほぼ2倍となりました。

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最終更新:2021年01月29日 23:12