941: yukikaze :2021/01/17(日) 19:42:24 HOST:p149168-ipngn200303kamokounan.kagoshima.ocn.ne.jp
寄り道は仕方ないよねということで、ヨークタウン完成。
ヨークタウン級航空母艦
全長:230.8メートル
全幅:35.4メートル
喫水:8.9メートル
基準排水量:2万5千トン
満載排水量:3万1000トン
機関:バブコック&ウィルコックス式重油専焼水管罐9基
ウェスティングハウス式オールギヤードタービン4基4軸 12万馬力
速力:31ノット
航続距離:15ノットで12,000カイリ
武装:55口径20.3センチ砲連装装2基
25口径12.7センチ単装高角砲6基
28ミリ4連装機銃4基
12.7ミリ機関銃 単装24基
装甲:舷側 114ミリ(傾斜角なし)
水平 76ミリ(飛行甲板)
なお、格納庫甲板側面に114ミリ、格納庫甲板も76ミリ装甲が張られている。
搭載機数 1943年度で50機(露天係止含む)
同型艦 ヨークタウン エンタープライズ ホーネット ワスプ エセックス バンガー・ヒル タイコンデロガ オリスカニー
(解説)
第二次大戦開戦前にアメリカ海軍が保有していた唯一の正規空母である。
そのタフネスぶりから『マイティ・ヨーキィ』と、艦隊から絶賛されたものの、海軍行政に振り回された挙句、最後は囮として終焉を迎えるなど、その悲劇的な最期から、今なおファンの多い艦である。
東京海軍軍縮条約によって、20万トンの航空母艦の建造枠を得たアメリカ海軍であったが、実のところ、この新たな艦種については持て余していた。
ある意味当然な話で、この時期の航空機の能力を考えれば、艦艇に打撃を与えることができるかといえば難しく、偵察任務に使うにしても能力不足といった有様で、海軍としては「こんなもん貰ってもなあ・・・」という有様であった。
これに対し、アメリカ海軍において沸き起こったのが『航空巡洋艦』構想である。
彼らの主張としては「航空機なんて使えるかどうかわからんものを主兵力とするからこんがらがるのであって、巡洋艦をベースに航空機運用能力を持たせるとすれば、問題ないのでは?」というものであったのだが、この提案は予想以上に多くの海軍士官から賛同を受けることになり、実際に設計までもされるところまで行った。
これが後に『No.39計画航空巡洋艦』と呼ばれるものであったのだが、これに危機感を覚えていたのが、アメリカ海軍でも絶滅危惧種扱いされていた航空主兵派であった。
彼らにしてみれば、こんな異形の艦を作られても、砲撃戦こそが主となり、航空機が従となるのが明らかであった。
故に彼らは「まともな航空母艦」の建造を望んでいたのだが、問題は海軍航空の大ボスであるウィリアム・A・モフェット少将が好んでいたのが、「飛行船」、「小型空母」および「航空巡洋艦」であり、『No.39計画航空巡洋艦』に諸手を上げて賛同していたことであった。
このままではどうにもならないことから、航空主兵論者は、モフェットの後継を狙っていたアーネスト・キングを旗印に巻き返しを図ることになるのだが、パイロットに絶大な人気を誇るモフェットの力は強く、このままでは海軍航空が『No.39計画航空巡洋艦』と1万トンクラスの小型軽空母の2極化になるのは確実であった。
事ここに至って、キングは思い切った手を打つことになる。
彼は頑として認めなかったものの、日本海軍が建造に着手している『装甲空母』に着目し、これを「艦隊決戦時に、制空権と着弾観測を継続して行うことで、アメリカ海軍の砲撃戦を圧倒的に有利にする」というプランを、上層部に提出したのである。
キングにしてみれば「とにかく、あの『No.39計画航空巡洋艦』を潰すのが先決であり、これさえ潰せたら、あとは新型空母を基準として議論することができる」という、次善の産物であったとされるが、この提案は、大艦巨砲主義を信奉していた海軍提督達からも好意で迎えられ、何よりモフェットが、自分の後継者としてタワーズを昇進させていったことに、海軍上層部が「海軍の秩序を乱す行為」と、敬遠していたこともあって、最終的にはキングの案を基に、航空母艦の建造が進められることになる。(このことで、モフェットとキングの関係は決定的に悪化することになる。)
942: yukikaze :2021/01/17(日) 19:43:14 HOST:p149168-ipngn200303kamokounan.kagoshima.ocn.ne.jp
もっとも、キングにとっても痛恨だったのは、アメリカ海軍上層部は、キングの意見を是としながらも、あくまでこの艦については、『航空機運用ができる巡洋艦』という認識のままであったということであろう。
これが、同級において、目に見えない欠点を生み出すことに繋がる。
以下、同級について解説する。
同級最大の特徴は、航空機格納庫の重防御であった。
色々と誤解されがちであるが、同級については、蒼龍型のそれとは違い、重点とされたのは格納庫内部にある搭載機を守る事であり、飛行甲板を守ることではなかった。
無論、キング達の意識としては、「飛行甲板の装甲化による継戦能力の向上」であったのだが、海軍上層部は「搭載機を守らなければ意味はない」という認識であり、そうであるが故に、同格納庫については、日本海軍巡洋艦の主砲である15.5センチ砲相手に撃たれても十分に耐えれるようになっている。
一方、それ以外の防御については、そこまで頑丈ではなく、エレベーターも無装甲であり、格納庫部分以外の飛行甲板の装甲も38ミリ程度に留まっている。
舷側装甲については、114ミリ装甲を前後64ミリの隔壁で繋いでバイタルパートを形成。格納庫~外舷に至る水平装甲は76ミリとした。
この他機械室上面も76ミリ装甲が貼られ、艦内縦通隔壁は38ミリの厚みが確保された。
このように、直接防御については、巡洋艦に準じて頑丈であったが、水中防御については幾分問題はあった。
アメリカ海軍艦船の標準的な防御手段というべき液層防御を採用していたのだが、戦艦と比べると防御層の幅がやや狭かったこと、更に本級で初めて溶接構造を大々的に取り入れたのだが、溶接に関するマニュアルに誤りがあり、実際に計算された強度を達成できておらず、これが、同級が爆撃には強かったものの、雷撃に対して予想以上に弱かった要因となっている。(マニュアルのミスは戦後になって判明)
次に兵装であるが、巡洋艦の延長線上という考えから、アメリカ海軍巡洋艦の主砲でもある20.3センチ連装砲を2基搭載している。
艦橋の前部及び煙突の後部に載せられたこの砲塔は、4門しかないことから、水上砲戦に使うには難があり、航空機運用には邪魔であると非常に不評(しかも重心の問題から、左舷にバルジを付ける必要があり、これが速度低下につながっていた)であったのだが、「敵の小型艦艇が来ても追い払える」として最後まで撤去されることがなかった曰く付きの代物であった。
実際、この砲が使われた形跡は殆どなく、全く無意味な装備と言ってよかったのだが、アメリカ海軍でもこの問題点は重々承知していたらしく、装甲板の供給の遅れで、1944年度にようやく就役した『タイコンデロガ』と『オリスカニー』には、同砲は装備されていない。
高角砲については、当時のアメリカ海軍のメイン高角砲である25口径12.7センチ単装高角砲が装備されている。
この高角砲については、能力的に不満が多く、艦隊でも後継の38口径に変えるように陳情がなされていたものの、こちらについては、戦艦への装備が重視されていたのと、日英の艦載機を舐め切っていたこと、更に重量の問題等もあって、換装はされていない。
これについても、彼らは第二次大戦中盤から猛烈なツケとして払う羽目になる。
何より同級における最大の欠点が、航空燃料の搭載量が全搭載機(54機)に対して5回分の航空燃料しか持たず、爆弾も250kg爆弾を80発しか搭載していないというのは、航空打撃戦力として致命的と言ってよい代物であった。
これは、アメリカ海軍が航空魚雷開発に失敗してしまった(なお、その理由が、酸素魚雷開発に成功したことで、航空魚雷も酸素魚雷にしようと固執したことが原因であった。)事が大きいのだが、この航空打撃能力の弱さは、アメリカ海軍の空母機動艦隊への発展に大きなマイナス要因となってしまうことになる。
同級は、第二次大戦開戦当時、国内の混乱と、主に装甲板の供給の割り当てに失敗していたことで、4番艦までは就役、5番艦と6番艦がようやく就役間際という体たらくであった。(7番艦と8番艦は進水済み)
とはいえ、その防御力はお墨付きであり、アメリカ海軍会心の勝利と言われた『第一次ニューファンドランド沖海戦』においては、イギリス海軍をいち早く発見。イギリス空母の爆撃を受けても平然と航行し、艦隊決戦時の制空権確保に成功するなど、アメリカ海軍の想定通りの活躍を示すことになる。この時数発の爆弾を受けながらも『へなへな弾で沈むほど本艦はやわにあらず』と、『ヨークタウン』艦長が啖呵を切ったことで『マイティ・ヨーキィ』の愛称を受けることになる。
943: yukikaze :2021/01/17(日) 19:43:46 HOST:p149168-ipngn200303kamokounan.kagoshima.ocn.ne.jp
一方、太平洋の戦場は次元が違っており、ハルゼー提督が指揮するヨークタウン級2隻は、圧倒的な機数を誇る日本海軍航空隊に手を焼く羽目になる。
初戦の『パラオ沖海戦』においては、戦闘機の数がそれぞれ36機あったことで、日本海軍の航空攻撃を防ぐことに成功したものの(これは日本海軍の空母機動部隊の戦術の拙さも大きいが)、マリアナ沖海戦においては、マリアナの基地航空部隊と空母航空艦隊の波状攻撃の前に、凌ぐのがやっとという有様であった。
この時、基地航空艦隊と空母機動艦隊の連携ができれば、ハルゼーの空母部隊か、戦艦部隊の何隻かは沈んでいた可能性もあり、この一件と、戦艦部隊の砲戦によって、豊田連合艦隊司令長官が負傷したこともあって、嶋田首相及び山本海軍大臣による海軍上層部の粛清劇に繋がることになる。
その後、海軍軍令部第一部長に任命された真田少将は、アメリカ海軍に奪われたトラック基地に対して、輸送破壊作戦を命令。
マリアナ諸島からのハラスメントの爆撃から始まり、潜水艦のみならず空母機動艦隊を利用しての徹底的な輸送船狩りにより、大西洋側と比べて輸送船やタンカーの割り当てが少なかった太平洋艦隊の補給路は寸断状態に陥る。
この事態にハルゼー中将は「とにかく連中の空母部隊を叩き潰さないことにはどうにもならん」として、アメリカ海軍として初めて、空母を1隻単位ではなく、2隻まとめて運用を行い、『エニウェトク環礁沖海戦』で『蒼龍』と『翔鶴』を中破にまで追い込むも、『飛龍』と『瑞鶴』による反撃を受け、『エンタープライズ』『ワスプ』が沈められるという大敗を被ることになる。
以降、アメリカ海軍においては、空母を、攻撃の槍として使うのではなく、あくまで艦隊の防御として使うのが適当であるという認識が決定的となってしまい、『ヨークタウン』級も、専用の爆撃機ではなく、爆弾も搭載できる戦闘機を重点的に載せるようになるなど、日英の空母と比べると異端の道を走ることになる。
そして、レイキャビク沖海戦における『ホーネット』、第二次ソロモン海戦における『エセックス』の喪失により、航空機の数の暴力の差の前には戦闘機の比率を変えてもどうにもならないことを悟ったアメリカ海軍は、大型装甲巡洋艦を空母として改装した『フィリピンズ』これに生き残っていた『ヨークタウン級』4隻を集めた空母機動艦隊を編成する。
だが、このアメリカ海軍最後の空母機動艦隊は、圧倒的な戦力を誇る日英空母機動艦隊に対し、戦艦部隊への戦闘機の傘をさすこと、並びに囮役として、その打撃を受け続けるという、悲壮極まりない任務を負うことになる。
イギリス空母機動艦隊を統括するフレーザー提督並びに日本の空母機動艦隊を統括する五藤提督による4度にわたる波状攻撃により、アメリカ海軍最後の空母機動艦隊は、ミッチャー提督とともに海神の御許に送られ、スプルーアンス大将の戦艦部隊も、日英連合艦隊の切り札でもあった、大西提督率いる空母機動艦隊(大鳳級及び播磨級空母)による攻撃によって半壊。
後に『ロイヤル・ネイビーの百倍返し』と言われる、フィリップス提督指揮下のイギリス戦艦部隊によって、一方的に打ち据えられ、完全勝利を献上することになる。(ただし、海戦の最後で、別動隊であったオルテンドルフ艦隊により、あわや上陸船団に突入されそうになる一幕があり、4提督は護衛部隊を指揮していた西村提督に土下座で謝罪することになる。)
ヨークタウン級空母は、アメリカ海軍において空母機動艦隊の第一歩を踏み出せる潜在能力はあったものの、不幸なことに、アメリカ海軍の方針の間違いにより、悲劇的な最期を迎えることになる。
946: yukikaze :2021/01/17(日) 19:59:15 HOST:p149168-ipngn200303kamokounan.kagoshima.ocn.ne.jp
投下終了。元ネタはイラストリアス+レキシントン。
アメリカ海軍が『戦艦による艦隊決戦』に拘るのならばこういう艦になるだろうなあと。
史実アメリカ海軍も、割と艦隊航空どうするかは迷走しておりまして、その元凶がモフェット。
キングやミッチャーなんかを航空派に転じさせるなど精力的に活動しているんだけど、同時に小型空母や航空巡洋艦、飛行船にかなり拘っていたり、愛弟子のタワーズに対して情実人事したりと色々とアカンこともしております。
この時の確執で、キングとタワーズ、それぞれが海軍人事で色々とやらかし、正直
アメリカが日本に負けた場合、間違いなく敗因の一つに数えられるだろうなあと。
『No.39計画航空巡洋艦』については史実でも真面目に計画されていた艦です。
蒼龍原案と同じことアメリカ海軍も考えていたんだと、中身最初に見た時、苦笑いしたものです。
ヨークタウンの弱点ですが、これまんまイラストリアスの弱点です。
本級の場合は、8インチ砲弾の置き場所確保のために、航空燃料なんかが圧迫されたと思っていただければ。
なお、日本海軍はこいつらの防御力過剰に評価しており、43式徹甲爆弾(長門型の砲弾改良して、緩降下爆撃に使えるようにした代物)なんてものを採用したりもしています。
まあ50番までは確実に跳ね返しますからねえ。
フィリピンズはひゅうが氏ネタを拝借。イメージ的には大鳳ですが、予算と工期の関係から、非装甲甲板空母だったりします。まあ工作精度が甘すぎて、第一撃目でお役御免になりましたが。
2番艦として作られたサモアは、ニューヨーク沖海戦に間に合わせるための回航中に伊47によって、護衛艦ごと消し飛ばされ(なお竣工して沈没するまでの最短記録を打ち立てている)、アメリカ海軍空母部隊はほぼ終了しています。
しかしまあ・・・量で押しつぶされるアメリカ海軍っていうのは、ほんと新鮮だよなあ。
最終更新:2021年01月19日 20:44