395: 弥次郎 :2021/01/20(水) 23:31:45 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
憂鬱SRW 融合惑星編SS「Battle of Mali」2


  • 融合惑星 ε世界 アフリカ大陸 マリ戦線


 ネクスト2機による奇襲が始まってから10分も経つ頃には、空の模様もだいぶ変わりつつあった。
 日企連のハイエンドノーマル主体の航空部隊が性能差と数、そして全体的な練度と疲労度合いの差が明確に表れたのだ。
数としては拮抗しているだろうが、それらの差によってブリタニア側は一転して攻勢を必死に受け止めなければならなかった。
 ここでブリタニア側の航空戦力の要ともいえるサザーランド・ジークⅡから構成されるKGF部隊とアマツミカボシの操るノース・セブンスの戦闘は激しさを増していた。
低空域で虎鶫からの支援砲撃や狙撃から逃れているKGF部隊であったが、その機動力と爆発的な攻撃力で翻弄するノース・セブンスには苦戦を強いられていた。
本来、KGFの武器はその搭載火力と巨体に見合わぬ瞬発力、そして防御力である。だが、いずれもがアマツミカボシの既知を超えるには至らない。
 連続射出される巨大なスラッシュハーケンはメイスや蹴りなどで容易くあしらわれるか回避され、弾幕として展開されるミサイルはQBの連発で明後日の方に行くばかり。
ならばと航空KMFの射撃が襲い掛かるが、それらは適当に撃った方が当たるのではないかと期待できるレベルで当たらない。
というか、だ。狙いがそもそも定められない。まともに機影の補足さえできないのだ。

<畜生、見えないぞ!>
<この、畜生が……!>
<敵はどこだ!どこにいる!>
<奴だけにかまうな、他にも敵はいるぞ!>

 そう、ノースセブンスも脅威であるが、同時にハイエンドノーマル部隊もまた脅威であった。
 ノースセブンスが注目を稼いで、回避楯となることで、敵の動きが拘束されているのだ。そしてそれは傍から見ればいい的なのである。
よって、虎鶫も合わせた集団はまさしく暴風となって前線をかき回していった。

 そして、ネクストは何も2機しかいないわけではない。地上部隊の後退の支援のため、地上にもネクストが展開したのだ。
 重量二脚型ネクスト「ファリア」。機動性をある程度下げつつも、積載量や防御力を高めたそれが躍り出たのだ。
二連装ガトリングガンとバズーカを手に、そして背部にグレネードランチャーを2つという重火力アセン。
さらには燃費の良いKPビームライフルを搭載したイクシード・オービットを展開するという大盤振る舞い。
大地に展開するKMFらを相手に一人で大量の弾幕の嵐を展開して突っ込んでいった。

『フハハハハハ、どうした、その程度か!』

 その火力を解き放って通り過ぎるだけでブリタニア軍の兵力を、まさしく破竹の勢いで蹴散らしていく「ファリア」。
 低空域での攻撃は容赦なく降り注ぎ、ブリタニアの兵力は端から消し飛んでいく。抵抗しようとする者もいるが、軽くあしらわれるにとどまる。
 そして、ファリアが切り開いた道をこれまたハイエンドノーマル部隊が押し広げていく。きわめて単純な火力と物量の展開による押し上げ。
単純かつ分かりやすく、エラーの挟まる余地がないゆえに、多少のことでは対抗できない戦術であった。
殿を務めているというのに、むしろ押し上げているというのは異常と言っていいかもしれないが。
 ともあれ、そんな強力無比な味方の稼いだ時間を無駄にすることになく、ISAFは迅速な戦力再編に移った。
兵士一人一人でさえも分かっているのだ、流れが変わり、こちらが追い風になるのだ、と。
だから、彼らは披露する身体を鼓舞して動き続ける。必ず、巻き返してやるのだと。そのためにも、と自然と体が動く。

396: 弥次郎 :2021/01/20(水) 23:33:43 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

「ぬ?」

 だが、ふいにネクストの中に納まるモンテ・クリストは空白を感じ取る。
 せわしのない戦場の中に生じる、不自然なまでの空白、あるいは間隙。
 そして、同時に走る悪寒。さらに、猛スピードでこちらに飛来する巨大な塊を拡張された五感が感知した。

  • ドォォォォン!

 果たして、それは正しかった。
 展開していたファリアらをまとめて吹き飛ばさんと、後方に控えていたG1ベースなどの陸上艦艇による砲撃。
 撤退しきれていない友軍を巻き込むことも是としてまで撃ち込まれた砲撃は、命じられるままに大地を焼き尽くした。
それは一回きりではなく、複数回にわたって全力で打ち込まれる。ブリタニア側も、押し込まれた分だけ態勢の立て直しに時間が必要だったのだ。
そして、それは多少の友軍誤射の可能性に目をつむってでも稼ぐべき時間。よって、艦砲射撃が実行に移された。
 そして、十回以上の斉射が行われたのちに、砲撃は一度停止した。
 これでどうだ、と。あれほどの猛威を振るった機動兵器とて、倒せないはずはないのだと。
 だが、爆炎の向こう側で動きがあった。

『ふ、やってくれる……!』

 PAを展開しながら飛び出すのはファリア。砲撃の嵐の中でも、そのPAと重装甲はダメージを見事に受け止め切っていた。
そも、ネクストはその性質上防御も極めて固い。それこそ、素の装甲のみでも核兵器のような戦略兵器の影響さえしのぐほどに。
ましてプライマルアーマーやその他の防御機構で身を固めているネクストにとっては、この程度の艦砲射撃など怖くはない。
 そして、一段性能が劣るハイエンドノーマルたちにしても、多少のダメージこそあれども、戦闘続行に問題はなかった。

『お返しだ』

 そして、艦砲射撃であることを理解したモンテ・クリストは砲撃を受け止めている間に後方の部隊に武装の射出を要求していた。
前線のネクストに火器を提供するシステムであり航空機V.S.Cによって迅速に運ばれてきたのは、ネクストの全長を軽く超える対艦レールガンだ。それも二丁。
 すでに砲撃を受けている間に砲弾の軌道と角度、そして爆音に交じる射撃音の方向から位置は特定している。
ならば、あとはお返しをくれてやるのみである。

『吹っ飛べ』

 手持ち武器をパージしてレールガンを両脇に抱え、狙いを定める。相手の陸上戦艦もだいぶ慌てているのがわかる。
 だが、躊躇などしてやる必要はない。ここは戦場。撃ったり撃たれたり、殺したり殺されたりする場所なのだ。
そういう意味では、ここはある種公平で平等な世界なんだと、柄にもなくモンテ・クリストは思考する。
だが、それもコンマ数秒にもならない刹那の間。次の瞬間には、レールガンが咆哮した。
一発、二発、三発……立て続けの砲撃は、安全なはずの後方に控える戦艦たちに多いな衝撃を与えた。
 そして、ある程度打ち込んだところで、モンテ・クリストは砲撃の手を止める。
 何も弾切れ等になったわけではない。まだまだ弾倉には余裕があるほどだ。
 ではなぜか?その答えは、後方から前進してきた二機のネクストにある。

『有澤重工、雷電だ。ここから先は受け持たせてもらう』
『同じく有澤重工、桜子。推してまいります』
「あとは任せよう」

 火力と装甲がネクストの形を持ったような、そんなガチタン二機の出場。それは、この戦場がいよいよを以て掃討戦に移行したことを示す証だった。



  • 神聖ブリタニア帝国軍 マリ戦線司令部

「くそ、前線が打撃を受けすぎた…!」
「司令官、G1ベース部隊が後退の許可を求めています!」
「まだ下げるな、砲撃を続行させろ!ここで撃ち負けるわけにはいかない!」

 前線司令部は怒号と指示と、無線で連絡を取り、歩き回る人間で埋め尽くされていた。
 忙しなく飛び交う声と、モニターの表示が切り替わる音と、さらには人の動く音。それらが混じりあうカオスは、正しく一つの戦場ともいえた。
 最前までは物量を投じ、集中的な突破をかけることで敵の厄介な機動兵器を押しとどめ、戦局を優位に進めていたことは確かだった。
だが、それはたやすく捻じ曲げられ、ひっくり返された。KGF部隊に甚大な被害が出ており、地上部隊は強力な砲撃と狙撃に苦しめられた。
それもたった数機の機動兵器に、だ。奇襲効果や新手ということもあって対応が遅れたことももちろんある。
それでも尋常ではないペースでこちらの戦力が大きく削られてしまい、大打撃を受けた。

397: 弥次郎 :2021/01/20(水) 23:35:21 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
 すでに予備戦力も投じて必死に止血を図っているのだが、それも間に合っているとはいいがたい。
敵は戦力を再編して改めて投じつつあり、それは明らかにブリタニア側の数こそ超えてはいないが、明らかに勢いで上回っていた。
さらにISAFの足止めを行っていた部隊が軒並みやられたことで、ISAFが息を吹き返し、攻勢に転じ始めていたのだ。
 そして、司令官の望みは、この戦場における最高戦力の動向へと託された。もし仮に成功しているならば、まだ希望はある筈。

「ナイトオブワンの部隊からの連絡は…!?」
「……途絶したままです!交戦にはいってからこちらに通信する余裕が無いとも思われますが…!」

 オペレーターの悲痛なその言葉に、沈黙の帳が降りる。
 敵前線司令部への攻撃へと送り出された部隊が、通信途絶。それの意味は自明だ。
 その場にいた人間の多くが、それを信じたくはなかっただろうし、事実オペレーターたちは必死に呼びかけを続けていた。

  • ラウンズのいる戦場に敗北はなく、ナイトオブワンのいる戦場に敗北は許されない。

 ブリタニアにおけるラウンズとは強大な国家の中でも指折りの中の指折り、上澄みの中のさらに上澄みの騎士のみが名を連ねることができる実力者集団だ。
それこそ、ただ一人でも戦局を大きく変えてしまうような、多少の戦略的不利を覆せるような、そんな化け物揃いということ。
故にラウンズのいる戦場においては負けはない、とブリタニアは豪語するのである。
 そして、ブリタニア最強の騎士が就くナイトオブワンとその部隊というのは、ブリタニア側が有する戦力でも最精鋭。
比喩でも何でもなく最強がその座に就くという、とてつもない競争率を誇っている職であるのだ。まさに騎士の中の騎士。
ブリタニア皇帝の最も傍に侍ることを許される絶大な信頼を誇る騎士。すべての騎士たちの頂点に立つ騎士。
 同時にその動向や作戦の成否、あるいは---その死は、あまりにもブリタニアという軍、そして国家に対して影響力がありすぎた。
ナイトオブワンが屈するとは、ほとんどイコールでブリタニアの武威が屈するということである。
 だからこそ、ナイトオブワンの出場した戦場においてブリタニアの敗北は『許されない』のである。

 一度、悪逆皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのナイトオブゼロである枢木スザクに破れ、しかし奇跡的に生還したナイトオブワン、ビスマルク。
かろうじて生きていた彼を、殆どサイボーグ化するかのような治療の果てに再び戦場へと戻したのも、それだけ戦局が切羽詰まっていたことである。
また、同時にブリタニアという軍、国家を支えるための精神的な主柱を欲していたことが原動力として存在していたことを表す。
 だが、それが仮に再び折れてしまったら---もはや、彼等の内面を支えることは極めて困難であった。

「まだだ……まだ、終わってなどいない」

 司令官は、何とか絞り出すように言い放った。
 まだ負けたわけではない。まだ手が打てるはず。簡単に負けるなど、ブリタニアの恥だ。考え、指示を出し、動く。それが務めだ。

「上空より、巨大な航空機…なんだこれは、要塞か!?巨大な反応あり!メインモニターに映像回します!」

 だが、それを打ち砕くように、さらなる一手が放たれた。
 それは、全てを覆い尽くすように、空から現れた。
 大きく、雄大で、どうしようもないほどに絶望。

「なんだ、あれは……!?」
「空が、空が落ちてきた…!」

 誰かが呆然とつぶやいたその言葉は、比喩でも何でもない。文字通り天蓋のごときモノが、この戦場に飛来したのだ。

398: 弥次郎 :2021/01/20(水) 23:36:41 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

『残念だが、ブリタニアは時間切れのようだな』

 機動狙撃戦を一時的に緩めて、カメラとレーダーに映る巨大な鳥を眺めた虎鶫はひとりごちた。
 無数という言葉を通り越した数の火砲を放ち、さらに艦載機を次々と展開していく超巨大な航空機。
否、航空プラットフォーム型AFであり、企業連が連合へのPRも兼ねて今回の戦場に投入した無人AF『アーセナルバード』。それがついに戦場へと展開したのだ。
 アマツミカボシと自分、そしてハイエンドノーマル部隊によって楔を穿たれたブリタニア側の制空権は、完全にこちらに傾いたと言ってよい。
アーセナルバードに致命傷を与えうるKGFの数は減らされている上に戦闘が継続したことで消耗しており、ここからさらに戦闘をするのは無茶が過ぎる。
 加えて、地上の方もアマツミカボシが空で暴れている間にだいぶ様変わりしている。切り込み役であるファリアが戦場を一度リセット。
そのあとに轟天および雷電が投入されて、ブリタニアの地上部隊を軒並み吹き飛ばしたのだ。
ガチタンという言葉がこれほどまでに似合う二機のタンク型ネクストが、その随伴機と共に火力を全面投射すれば、地形ごと消し飛ぶのが必然。
このままの勢いで機動戦力が突破をしかければ、もはや止める術を持たない。彼等にできることは、前衛部隊が持ちこたえている間に何とか撤収を図ることだけであった。

『虎鶫さん?桜子ですー』
「桜子ちゃんか。そっちの様子は?」
『順調そのものですね!ISAFも戦力の再編と補給が終わったので、攻勢に出ていますよ!
 このままブリタニア側を包囲殲滅するだけですねぇ』
「もうそこまで一気に持ち込んだか。なろう乙とか言われそうだな…」
『なろうで流行する前からハンニバルだとかソ連だとかが実行してますけどね』

 いや、その撤収さえも、ISAFと共に展開、前進、包囲を行う日企連部隊の勢いに飲み込まれつつあった。
 なまじ最前線でネクストとKGF部隊が拮抗してしまったがために、ブリタニア側はその前線の維持に拘泥してしまい、逆に身動きをとれなくなっていたのだ。
その拘泥こそ、これまでのブリタニアのドクトリン的には正しいことであり、しかし、連合のドクトリンからは包囲してくださいと言っているような判断ミスであった。
快速の地上部隊はもうブリタニア側の側面を捉えて攻撃を加えており、上空にはがっちりとアーセナルバードの蓋がなされている状況。
さほど時間をおかずにブリタニア側は後方への浸透を赦すことになり、逃げきれなくなるだろう。あとはもう、前衛部隊が潰されていくことなのだろう。
 確かに前線維持というのは重要な要素だ。押し込まれれば侵攻側であるブリタニアにとって元も子もない状況であるから。
だが、常に前進を続けられるとは限らないのだ。時に進路を変え、時に迂回や逆走も選んで柔軟に動くべきだった。
しかしながら、ブリタニア側にその余裕がなかった。彼らは知らず知らずのうちに焦りを覚えていたのだ。マリ戦線を早期に片付け、不利を避けて戦わねばと。
その焦りこそが、敗北を生み、ひいては戦略の破綻まで招いてしまうことを知らず知らずのうちに無視して。

「ともあれ、そちらは社長と桜子ちゃんに任せた。こっちはこっちで援護する」
『了解です!』

 通信が終われば、またスコープの中へと没入していく。
 既に機動しながらの狙撃は必要が無く、長距離狙撃に集中できる。
 前線では、タンクが咆哮している。いや、タンクという形をした暴虐だ。アーマードコア・ネクストという怪物が暴れているのだ。

(いや、違うな)

 これは山猫の戯れだ。本来ならば人を守るための山猫が、その力をほんの気まぐれに敵対する人間へと向けただけの事。
この戦いは、本来の戦いからほんの少しだけ外れた、幕間のような戦いであり、長い長い国家戦略のほんの一部でしかないのだ。
前世でも似たような戦いはしていたと自負はしているが、ここまでの規模の規模は早々になかった。というか、二回のリンクス戦争でねじ伏せたのだからそれも当然か。

(まったく、新鮮だな)

 そう思いながらも、虎鶫はスコープ越しに戦場を俯瞰し、狙撃を続ける。
 自分から見てももはや流れが決定づけられつつある戦場だが、もう少し、自分が絡んでも良いだろう。
 山猫の狙撃手は、戦場の終息を加速させるように、攻撃を続けて行った。

399: 弥次郎 :2021/01/20(水) 23:37:35 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
割と以前投下したネタから修正をしました。
やり直したいところがいくつもありましたしねぇ…

400: 弥次郎 :2021/01/20(水) 23:43:16 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
修正
398

×前世でも似たような戦いはしていたと自負はしているが、ここまでの規模となると初めてといっていい。

〇前世でも似たような戦いはしていたと自負はしているが、ここまでの規模の規模は早々になかった。というか、二回のリンクス戦争でねじ伏せたのだからそれも当然か。

転載時には差し替えをお願いいたします。
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最終更新:2025年02月11日 00:41