510: 635 :2021/02/01(月) 06:59:56 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその二十二改
ああ…堕ちる…堕ちていく…
また……私は…帰れないの?
……提督……大和は……
「ここは…?」
大和は紅い彼岸花が静かに風に揺れる花畑で目を覚ました。
空には夕暮れ色に染まった雲が漂い、空間は穏やかな黄昏時の光に満たされている。
何故ここにいるのか、ここは何処なのか。
自分の最後の記憶は…。
「ヴァズラーが敵に回すとこんなに厄介だったなんて!!」
「蒼龍、無駄口叩く暇があったら次の機体出す!!」
神崎島の艦娘達は航空機、いや大量の機動兵器からの空襲を受けていた。
深海化したと思しきB-49、F-15JやF-2HMだけでなく、ヴァズラーや旭光Ⅱ、旭龍等ティ連技術を使用したもの、
挙句の果てには韓国に存在したのを取り込んだのかF-16やF-15K、中華製を思しき機体まで存在する。
事前にハイクァーンの存在を疑われていたが実際に合って欲しくない事実であった。
ティ連の物量戦、その根幹たるハイクァーンの恐ろしさを艦娘達は身を持って実感していた。
空母等航空艦娘達の艦載機達は性能互角、物量で勝るそれらを相手に技量を以て互角以上の戦いを演じているが、
物量差で少しずつではあるが磨り潰されつつあった。
それだけではない。
「撃てぇーっ!!」
号令と共に大和の砲弾が音速を超える速度で戦艦レ級へと着弾し撃沈する。
だがレ級一体だけではない。
これまで十隻以上のレ級を屠り、その倍以上のタ級やル級を沈めていた。
これら深海棲艦は全て神崎島の深海棲艦とは違う。
怨念や呪詛を纏う夜海濡れた魂を深海棲艦という枠に詰め込んだ肉人形、いや式神の類のものだ。
「くっ!魚雷次発装填!誰かカバーして!!」
「私がカバーに入るのです!」
雷撃により空母ヲ級を沈めた吹雪の声に電がカバーに入る。
全艦弾薬、燃料ともに消費が大きくこのまま対馬に着いても対州要塞姫とのまともな戦闘が可能かは未知数であった。
そもそもが戦闘では勝ち目などない。
だが、それでも行くしかない。
辿り着かなくてはならない、対馬へ。
「見えた!!」
誰かが叫ぶ。
艦娘の目に映るのは血のような夕陽、禍津陽が沈む大禍時の対馬。
もう既に夜海ノ海が広がっている、もうじき黒キ陽も登る。
「対州要塞姫を確認…なんだありゃ!?」
「嘘だろ…おい…。」
対州要塞姫を確認した軽巡洋艦天龍は呟き、重雷装巡洋艦木曽は絶句する。
『ァァァァァ"ァ"ァ"ァ"アアアアア"ア"ア"ア"aaaaAAAA!!!』
「この短時間で更に自己進化、いや、まさか…更に呪詛が流れ込んだのか…?」
511: 635 :2021/02/01(月) 07:00:52 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
呆然と長門が呟くその視線の先、そこにはあるのは対州要塞姫"だった"もの。
その身体は成人女性の姿まで成長し、艤装もそれ相応に巨大化している。
頭の角はビッグホーンの如く巨大化し捻じれ、狐の尾の本数も増加している。
背中に背負う二門の砲を持つ巨大な艤装、その二門の砲の一つが赤い雷を帯びる。
その照準の先には軽空母鳳翔。
大気そのものを振動させる音共に砲身が破裂し砲弾が発射された。
極超音速すら遥かに超える速度で赤い稲妻を纏う砲弾が鳳翔に迫る。
「させん!!!!」
大和型戦艦二番艦武蔵が鳳翔と砲弾の間に割って入る。
艤装が防御体勢に移行、事象可変シールドが複数展開される、しかし。
一枚、二枚、三枚、皿を割るかの様に砲弾は事象可変シールドをいとも簡単に貫通し艤装の装甲へと到達する。
しかし爆弾44発、ロケット弾9発、魚雷25本に耐えきり更に進化した武蔵の装甲の加護は深海660ミリ複合加速砲から放たれた砲弾に耐えた。
それも少しの間、武蔵の装甲が砲弾に抜かれヴァイタルパートが貫通される直前、、
「どおおりゃあああ!!」
武蔵は咄嗟に艤装を動かし砲弾を逸らす。
逸らされた砲弾は遠方に着弾し内部の電子励起爆薬が炸裂、巨大なキノコ雲を作り出す。
「グっ…。」
「武蔵!?」
「武蔵さん!?」
膝を着く武蔵に大和と鳳翔が駆け寄る。
武蔵の艤装は粉砕され、肉が抉れ骨も見えている。最早大破、いや轟沈寸前といった有様であった。
「くっ…すまない…戦闘続行不可能だ。」
「早く退避を。誰か武蔵を連れて退避『キャアアアアアアっ!!』!?」
その悲鳴に大和が振り向くと蒼龍と飛龍がいた場所を爆煙が包んでいた。
赤城が敵機の急降下爆撃を受けていた。
加賀が機動兵器の雷撃を受けていた。
翔鶴を潜水艦の雷撃が襲っていた。
瑞鶴、千歳、千代田、瑞鳳が機動兵器の攻撃より必死に回避運動を行っていた。
扶桑と山城が大量の高速艇や駆逐艦の魚雷、ミサイル攻撃に晒されていた。
かつての戦争を思わせる光景。
長門が叫ぶ。
「総員!統制攻撃!!」
「了解!!」
「分かったわ!!」
「「「「撃て―――!!」」」」
砲撃可能な艦艇全てによる統制攻撃。
5インチ、6インチ、8インチ、14インチ、16インチそして20インチ。
ディルフィルド魚雷、ミサイル、重粒子ブラスター、重力子、侵食兵器、
現在使用可能な全ての兵装による攻撃が対州要塞姫に叩きつけられる。
轟音と爆炎が包み込む。
だが、
ガコンと何かが開くような音と共に煙が晴れる。
そこに居たのは戦艦棲姫、空母棲、集積地棲姫他多数の姫級を率いる対州要塞姫。
「っ!?何っ!?」
『ァァァァァ"ァ"ァ"ァ"アアアアア"ア"ア"ア"aaaaAAAA!!!』
対州要塞姫に大きな損傷はなく、破裂した砲身も小さな損傷も直ぐ修復される。
背部艤装が展開され港湾棲姫のような陸上基地型深海棲艦の艤装へと変形していく、
そこには対馬要塞に配備されていた5基の66センチ3連装要塞砲があった。
15門の66センチ砲が火を吹くき、多数の深海棲艦と機動兵器が襲いかかる。
512: 635 :2021/02/01(月) 07:01:41 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
空母の艦載機は磨り潰され
深海棲艦の攻撃で仲間達は次々に大破していく
「キャアア――!?」
日本海軍最大の戦艦だった大和すらも大破に追い込まれる
「ああ!!八咫鏡が!?」
伊勢の声に振り向けば砕け散る神鏡
ギリッ
長門は歯が砕けるほどの強さで奥歯を噛みしめる。
「陸奥、すまん。後は頼んだ…。総員撤退!逃げるが勝ちだ!」
「長門!?」
戦艦長門は対州要塞姫だったものへと突撃を敢行する。
長門に襲いかかる砲弾と爆撃、光学兵器の嵐、だがそれら全てが見えない何かに、かつて長門の最期を支えた彼らにより逸らされていく。
そして長門はついに対州要塞姫に取り付き抑え掛かる。
「ハァァァァアアアア"――――!!!」
長門の気合の声とともに対州要塞姫だったものは抑え込まれる。
長門のその背中にはどこからか幻のような手がいくつも伸び長門を支えていた。
そして対州要塞姫以外の深海棲艦達は次々と泡のように姿を消していく。
対州要塞姫だったものを抑え込みながら長門は言う。
「総員よく聞け。かつて私を支えてくれた者達の力を借りてヤツを封印することが出来る……。
だがそれでも保って48時間程度、その間にヤツをどうにか出来る方法を探し出すんだ!!」
「でもナガート…。」
「コロラド行け!さっさと行くんだ!!」
「コロラド、ナガートの気持ちを無駄にしてはいけません…。」
「サラ…。」
長門を残し、後ろ髪引かれる思いで撤退を開始する艦娘達だが、
『GAaaaァァァァァ"ァ"ァ"ァ"アアアアア"ア"ア"ア"aaaaAAAA!!!』
「くっ!?」
対州要塞姫の絶叫と共に抑え込んでいた長門の拘束が緩み再び深海棲艦達が出現する。
が、戦艦大和が深海棲艦達の前に立ちふさがる。
「皆さんここは大和が殿を務めます。」
「大和さん!?貴女だって大破してるんですよ!?」
大和も撤退しようと言う雪風に大和は首を振る。
「推進機がやられちゃったの…だから…ね?」
いやいやと首を振り大和に抱きつく雪風を一度抱きしめると首に手刀を打ち込み気絶させる大和。
そして大和は雪風を抱き上げアイオワへと託す。
アイオワは目尻に涙を浮かべている。
「大和…。」
「アイオワさん、後はお願いします。」
「分かったわ。でも生きて帰らないと承知しないんだから!!」
「分かりました…。さあ、みんな行って!」
513: 635 :2021/02/01(月) 07:02:11 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
撤退を開始するアイオワ達、後ろからは砲撃や爆撃の音が聞こえるが振り返ることはない。
大和の意思を無駄には出来ない。
そして対馬から遠ざかり駆逐艦雪風は目を覚ます。
目に飛び込んでくるのは満身創痍の大和に襲いかかるヴァズラーや旭龍の姿。
戦艦大和が散るのを見届け、本土に帰還するしかなかったかつてを思わせる光景、
そして大和の姿は爆炎の中に消えて行った。
「大和さああああ――――ん!!!」
そう深海棲艦や機動兵器の攻撃を受けて沈んだ筈だった。
それが何故こんな所、彼岸花の花畑の真ん中に?
「起きましたか?」
優しげな母のような言葉、ハッとすると艤装を即座に展開…出来ない!?
声の主を見ると成長した対州要塞姫だった存在に良く似た姿の女が微笑んでいた。
「ここでは武器を取る必要はありません…。」
艤装を展開出来ず焦る大和の内心を見透かしたように対州要塞姫に似た女は言う。
「この身体はここに流れ着いたあの獣にも劣る者達に辱められ殺された者の身体。貴女方が対州要塞姫と呼ぶ子の依代となった幼子、その母です。」
姿が似ているのはそのためだと。
自分は他者と会うには悪影響が大き過ぎ、対州要塞姫の素体となった幼子同様大きな器を持つ幼子の母の身体を借りたと女は言う。
そして対州要塞姫は本来ならばあの者達に対する豊葦原の者達による報復、首謀者への祟り、そしてあの者達が同族により引導を渡されたことで鎮まる筈だったと言う。
しかしあの者達の浅慮により生まれた呪具により歪められ、縛られ暴走を始めてしまった。
女は涙を流す。
この身体になったせいかあの子、対州要塞姫の絶望が聞こえ悲しいと…久しくそのような感情などなかったというのに。
「もう止めて欲しい、皆を眠らせて欲しいそう切に願っています。」
夕暮れ色に染まり、穏やかな黄昏時の光に満たされた彼岸花の花畑で女言う。
対州要塞姫は己を止めてくれる者を待っていると。
だけどと大和は言う、己は轟沈し水面には戻れなず、戻れたとしても止める力がない。
一筋の涙を流す大和。
だがと女は言う、貴女はまだ沈んではいないと。
「え…?」
女は自分の掌を見せる。
そこにはその小さな身体が崩れ去り、消えつつある小さな者達の姿があった。
自衛官がいて米軍の士官がて主婦がいて漁師がいて小学生がいて、そして寄り添う女子中学生と白人男性がいた。
それは対州要塞姫の報いや日本の報復、同族による引導により怨念が晴れ、
姫を縛り捻じ曲げたあの忌まわしき核の呪縛からも辛くも抜け出せた者達、輪廻の輪へと戻ることも出来た筈の対馬の犠牲者達だ。
だが彼らは現世に残った。その想いを大和に託すために。
514: 635 :2021/02/01(月) 07:03:18 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
新しき妖精達は言う。
)))
だから…
)))
大和が受けた傷を引き受け彼らは消えて行く。
大和は自分が守れなかった者達を、それでも自分に想いを託してくれる者達を抱きしめる。
もう一度彼ら、彼女らを見る大和、
想いを継いでくれてありがとう、あの子をお願いしますと小さな新しい妖精達は大和の掌の上で多くは慣れない敬礼し笑いながら世界に溶けていく。
涙を流し大和は咏う、彼らの為に。
古い古い大和詞で綴られた再び水面に生まれることを蛭子命に願う祝詞(うた)を。
彼らを看取った大和、しばし目を閉じ大和は立ち上がる。
自分は成さねばならない自分に託された、いや自分に託してくれた願いを。
そんな大和を見ながら女は言う、大和の着ける指輪それが帰り道の標となると。
自分の薬指の指輪を眺める大和、深海大戦の折に提督が贈ってくれた指輪、飾りも素っ気もない簡素だけども愛する人と同じ時間を紡いできた絆だ。
その繋がりとそこから伸びる絆、現世で繋ぎ、築き上げてきた人々との絆、それこそが道標となる。
声が聞こえ、姿が見える。
「戦艦大和も沈んでこの国はどうなるんでしょう…。」
安全保障会議の会議室で誰かが呟く。
部屋の雰囲気が暗くなる。
「ヤマトサンは沈んでなどいないデスヨ…、ヤマトサンが沈む訳ないデスヨ!!」
「フェルさんでも…。」
「デモもヘッタクレもないデス!!ニホンが誇る戦艦ヤマトがこの程度で終わるとデモ!?」
フェルは言う柏木も大和の生存前提で次の準備を行っていると。
戦艦大和が沈む時、それは日本はおろかティ連が終わる時とまで豪語する。
「ヤマトサンは沈んでもこの国を守る為に戻ってきた大戦艦サンなんデスヨ。戦艦ヤマトは何度でも蘇るデスヨ!!」
総理官邸の記者会見室に二藤部の姿が見える。
記者が質問する。
「二藤部総理、戦艦大和が行方不明ということですが撃沈されたという認識で宜しいでしょうか?」
「いえ、戦艦大和は沈んではいません。」
記者の問いを二藤部は否定する。
「私は直接お会いしてませんが神崎提督は『大和は沈んでいない』そう仰っていたそうです。」
戦艦大和と深い絆を持つ神崎提督が言うならそうなのだろうと断言する。
大和が撃沈されているような状況であればもっと悪い方向へと状況は悪化しているだろうと、戦艦大和とはそのような存在なのだ。
そして二藤部は言う。
「どうか皆さん、戦艦大和の無事を願って下さい。それが大和が帰還する道標となります。」
小さな神社で少女が必死に神に祈っていた。
それはかつての観艦式の折、大和達の為に涙を流し、忘れないと誓った少女。
「神様お願いです。曽祖父ちゃんの乗っていた大和さんを助けて下さい!」
515: 635 :2021/02/01(月) 07:05:01 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
小さな神社で少女が必死に神に祈っていた。
それはかつての観艦式の折、大和達の為に涙を流し、忘れないと誓った少女。
「神様お願いです。曽祖父ちゃんの乗っていた大和さんを助けて下さい!」
パソコンに向かう男性。
タブレットを持ち絵を描いている。
艦娘大和の絵だ。
描いたら出るっていうなら、大和描けば復活するやろ?
そんなコメントを絵と共にツブヤイターに投稿し、他の者も大和の絵を描き始める。
東京千代田の一角、深い堀と森に囲まれた場所、そこで空を見上げる老夫婦。
「帰って来るでしょうか…。」
「戦艦大和は一度帰って来たのです。また、帰って来るでしょう。」
二人に仕える者が声を掛ける。
柏木が今回の事で頼み事があり面会に来たと。
家で、街角で、神社で、寺で、教会で、都市で、農村で、漁村で、離島で、日本の津々浦々で皆が大和の帰還を願う。
そして、
見慣れた執務室の机から立ち上がり出掛ける準備をする男性。
ふと天井を見上げる。
「大和、皆が待ってるぞ…迎えに行くからさっさと戻って来い。」
大和は一筋の涙を流し瞳を開いた。
そして自分の周りに誰かがいることに気づく。
大和が周囲を見回すと多くの妖精達がいた。
妖精達は陸軍の歩兵が、砲兵が、工兵が、航空隊がいた。
海軍の砲科、主計科、水雷科、飛行隊、陸戦隊がいた。
そして神風と書かれた鉢巻をした若者もいる。
彼らは常世へ渡らず死してなお現世に留まり続け日ノ本を、子らを見守り続けた英霊達だと女は言う。
そんな彼らの背後の大和の艤装があった。
その艤装は継ぎ接ぎだらけだった。
第三主砲は吹き飛び、艦体はリベットと溶接で無理矢理修理した後が見える。
対空火器もVLSもレーザーもCIWSもない、高角砲は12cm単装高角砲や12.7cm連装高角砲にMk.30 5inch単装砲、
対空機銃はポンポン砲に25mm単装機銃やボフォース40mm機銃混載、
レーダーも搭載していたAESAの後などなく戦時中の21号対空電探や民間用の航海レーダー等どう見て有り合わせでどうにか用意したと見えた。
専門家でなくドックもないここで彼らが頑張ってどうにか動くまで修理したのだろう。
大和は済まなそうな妖精達を見て笑ってしまった。
大和は艤装を背負い主機に火を入れる。
その主機は今は懐かしき艦本式のボイラーとタービンだ。
しかし、かつての戦争末期と違い主機は十分に整備され燃料も弾薬も十分に補給されている。
そして妖精達が大和へと乗り込む。
兵科どころか海と陸の垣根を超えて無理矢理人数を合わせたような格好だ。
皆どうにか大和を送り出そうとしている、この国を再び守る為に。
それが大和はたまらなく嬉しかった。
516: 635 :2021/02/01(月) 07:06:54 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
大和は艤装を纏い、縁に導かれ彼岸花の花畑を歩き出そうとする。
そんな大和に女は声を掛ける。
今の状態では対州要塞姫を止めることは出来ないだろうと。
「この場の物をどれか一つだけ持ち出せます。持っていきなさい、あの子を止められるでしょう…。」
女の言葉と共に幾つもの武具が姿を現す。
どれも現代科学、いやティ連の科学すら凌駕する神代の神器であり対州要塞姫を確実に葬り止められるだろうと。
しかし持ち出せるのはこの場にあるもの一つまでそれが異界の決まりごと。
しかし滅ぼして終わり、それで良いのかと思う。女の身体は対州要塞姫の母の物。
自らの子を殺すことを助けるような真似をして良いのかと大和は思う。
女の顔を見れば無表情で涙を流していた。
母である女の身体が、心が悲鳴を上げているのだ。我が子の生命を奪いたくないと。
大和は思う、兵器であった自分が言うのも烏滸がましいが殺し殺されで良いのかと他に方法はないのかと、
そう思うと無意識に大和は女の手を握る。
「何か一つだけ持ち出せるのならば、私は貴女を連れて行きます!!」
親が子を殺す、そんなの悲し過ぎるから
驚く女の手を引き大和は黄昏色に染まる彼岸花の花畑を走り出す。
517: 635 :2021/02/01(月) 07:08:03 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2021年02月03日 19:20