97: 加賀 :2021/01/23(土) 19:49:01 HOST:p3009167-ipngn200201osakachuo.osaka.ocn.ne.jp


「百武さんと古賀さんは東郷さんのところか」
「権力はありませんが権威がありますからね」
「今のうちに基礎技術を作っておけば支那事変からも楽ですから」
「新見さんも来たようですし船団護衛の重要性も徐々に言われるだろうな」
「ところでスーパー瑞雲を作りましょう」
「落ち着け」






 1928年7月、アメリカが中華民国から撤兵する中で百武と古賀は東郷の私邸に訪れていた。

「では次にあると思われる軍縮には賛成の立場に回れ……とおはんらはそう言うんじゃな?」
「簡単に言えばそうなります」
「………」
「東郷元帥海軍大将も憤りは感じるのは確かです。無論、我々とてこのような賛成の立場に回りたくはありません。ですがこれが日本のためだと信じているからです」
「……続きを」
「元帥海軍大将もかつて経験した事はありませんか? 薩英戦争で、戊辰戦争で日清・日露戦争で……」
「……兵器開発の進歩か」
「その通りです」

 東郷の言葉に百武は頷く。

「薩英戦争でイギリスは最新鋭の大砲を持ち、鹿児島の町を焼き払いました。戊辰で新政府軍は最新鋭の小銃で旧式小銃の幕府軍を追い払いました。日清で海軍は探縦陣と速射砲で清海軍に勝利しました。日露で海軍は最新鋭の戦艦と装甲巡洋艦を揃えてあの日本海海戦で勝利しました……いずれも最新鋭の兵器や技術力によってです」
「……確かに。我々はその兵器と技術力によって戦争を勝ってきたでごわす」
「そして何れは起こるかもしれない戦争も新型兵器と技術力による戦争だと我々は確信しています」

 百武は何処と戦争するとはあえてぼかしたが東郷はその言葉をやんわりと受け取っていた。

「……先のワシントン軍縮条約時の反対派では駄目でごわすか?」
「残念ながら、彼等は現状で……ただ戦艦を並べて喜んで終わりの者達です」
(……ハッキリと言う……だがそれが良い)

 東郷の前でも内の全てを出しきる百武に東郷は好感を覚えた。そして東郷は……百武を信じる事にした。

「良か。おはんらの事を信じよう」
「閣下……」
「薩英の時……焼かれた鹿児島の町並みは今でも思い出す……その悲劇、繰り返すわけにはイカンでごわす」

 斯くして条約派という形で東郷が百武達の味方に付く事になるのである。
 1929年10月24日、ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落、世界恐慌の引き金となる暗黒の木曜日が発生する。その中でありながらも日本は恐慌から脱出しようにも波に呑まれてしまい身売りや欠食児童等の問題が発生するのである。
 1930年1月、橋本は一水戦の参謀で海軍中佐だったが突如古賀らに呼ばれた。

「どうしましたいきなり?」
「今月からロンドンで開かれる軍縮会議は分かるだろう?」
「はい、ロンドン海軍軍縮会議ですが……まさか……」

 古賀らの表情に橋本は察した。まさか、自分も行けという事では……。

「その通り。君も会議に参加してもらう」
「な、何故……」
「なに、社会勉強だよ。それと秘密兵器とも言える書状もある(そして戦後を見据えてな……)」

 戦後の橋本を見ている古賀らは橋本が嶋田と同じくキーパーソンになると考えていた。まぁ古賀らも社会勉強のつもりで送り出した橋本だがまさかああいった展開になるとは思っても見なかったのである。
 それはさておき、日本側は史実通りに首席全権に若槻礼次郎を、政府代表に斎藤博外務省情報局長を派遣して交渉に当たらせるのである。なお、その派遣人員の中に橋本と松田も含まれているのであった。

「何と、東郷閣下は調印に賛成とな……」
「如何にも」

 橋本は古賀からくれた東郷の書状(調印賛成の旨を記載している)を若槻に見せていた。

「宜しい。ならば早々と妥協が出来そうだ」

 荒れると踏んでいた若槻は嬉しそうな表情をするのである。なお、日本側も早々とアメリカの要望である0.025割を削る事に同意したのでアメリカ側からも好感があったようであり会議は終始アメリカが主導権を握っていたのである。

98: 加賀 :2021/01/23(土) 19:50:24 HOST:p3009167-ipngn200201osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
そして会議も終盤に入ってきた3月の下旬、その日はたまたま会議も無く閉会日であり橋本は松田と共にロンドンの散策に出ていた。

「相変わらずメシは不味いな……」
「それがイギリスですからな……」

 二人は近くの喫茶店でフィッシュ&チップスを頼んだがあまりの不味さに紅茶で無理矢理に腹に流し込み気分を紛らわすために散策をする。

「そういえば土産を頼まれていたな……」
「確か全員、チャタレイ夫人の小説を御所望でしたな……」
「家族に怒られるぞ皆……」

 やはりそういうのは誰もが欲しいと思っているようである。それはさておき、二人は近くの書店で頼まれていた小説を購入しつつ立ち読みに耽る(松田がコナン・ドイルのを見つけたので二人して立ち読みに突入)が不意に視線を感じた。隣に誰かいる。書店の店主かと思い頭を上げて立ち読みをしているのを謝ろうとした。
 だが、そこにいたのは一人の女性だった。いや、確かに女性だった。だがその女性はかつて橋本が未来の日本で過ごしていた時にパソコン、スマホでプレイしていたとあるゲームの人物によく似ていたのだ。

「……ネルソン……?」
「おぉ!?」

 思わず呟いた橋本の言葉に女性はニパッと笑う。口の左側にある八重歯が凄く印象的であった。

「流石はアドミラルハシモトだ!! まさか一発で余が判るとはな!!」
「( 'ω')ファッ!?」

 何故かフンフーンと自信満々な表情をする女性。

「そう、余こそが……」

 そこで何故か女性は一旦溜めて顔を下に向けつつも満面の笑みを橋本に向けた。

「余が『ネルソン』級戦艦一番艦のネルソンだ!! 前回と前々回か、慶良間諸島での艦隊決戦では世話になったな!!」
「「………ハアァァァァァァァァァァァァァァァ!?」」

 女性ーーネルソンの言葉に橋本と聞き耳を立てていた松田は思わず絶叫するのであった。

99: 加賀 :2021/01/23(土) 19:54:00 HOST:p3009167-ipngn200201osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
  • 東郷閣下、晩年の行いを汚さずに済みそう
  • ロンドン海軍軍縮会議、橋本と松田も参加(随伴員)
  • ネルソンとの会合(余ォォォォォォ)

ネルソンに関してはいどさんとりゅーんさんのネルソンが入り交じってます。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年01月25日 00:32