938 :YVH:2012/01/31(火) 20:35:26
フェザーン駐在の高等弁務官府から、大日本帝国と銀河帝国とのやり取りが報告されたのは
日本との基本条約妥結を目指して、議会で激論が戦わされている時だった。

報告を受けた最高評議会のメンバーの心境を表すとすればorzだった。

「何なのだ・・・なんだと言うんだっ!!この、帝国からニホンに贈られた品々はっ!!!」

帝国から日本に贈られた品のリストを見て、ある評議員が吠えた。
当たり前である。どれも同盟では逆立ちしても太刀打ち出来ない様な品々なのだから・・・

「それだけではない・・・日本から帝国に贈られた品々をリストと映像込みで
 知り合いの鑑定家に視てもらったのだが・・・あまりの価値に、彼は失神したよ・・・」

又、ある評議員はそのように述べ、頭〔かぶり〕を振った。
その件の鑑定家によれば、日本側の物品はどれを採っても美術館や博物館でメインの展示物として飾ってもいい位の品であり、
その資産価値は総額で最低でも数兆ディナールは降らないだろう、という事だった。

その話に暗鬱となった評議会メンバーだったが、嘆いてばかりもいられないと気持ちを切り替え
自分たちが送り込んだ代表の犯した失態の収拾法に付いて話し合った。

「日本は帝国とは言っても、議会制を布いている。こちらが真摯に対応すれば
 無闇に事を荒立てないのでは?」

そういう評議員がいる一方・・・

「だが、キタザト代表が礼を失したのは、彼の国の皇族だぞ?
 一概に比較は難しいが、帝国の連中を見るに、皇族に無礼を働けば徒で済むとは思えん。
 きっと、わが国に無理難題を言ってくるぞ」

そう言って、今後を憂慮する評議員も居た。

反帝国教育で育った彼らにしてみれば、これまでなら帝国的な事柄は全否定する事が出来たのだが
日本は帝国は名乗っては居ても、議会政治を採用しており、又国主たるテンノウ陛下は所謂
‘君臨すれども‘政に関しては殆ど干渉せず、自国の最高評議会に相当する内閣が、実際の政務をとっている。
此処に来て彼らは、自分たちが外交に付いて如何に偏った知識しか持っていなかったかを,思い知らされていた。
それでも、彼らは何とか謝罪に行ってもらう人物を選び出した。

当初は同じ女性が良かろうという事で,交通情報委員のコーネリア・ウィンザー女史の名前が挙がったが
彼女は性格上、キタザト氏と同じ轍を踏む可能性があるとして候補から外され、変わって人的資源委員で
次期委員長との呼び声も高いホワン・ルイ氏の名が挙がった。

「ふむ・・彼なら沈着だし、性格もこなれているか・・・
 ホワン・ルイ議員を派遣する事に賛成する方の起立を求めます」

議長の声が議場に響いた。結果は、賛成多数でホワン・ルイ氏の派遣が決まった。


続いて、謝罪文とともに彼に持って行ってもらう物品が審議された。

同盟では銀河帝国の様な真似は到底無理なので、各地域の中から厳選した物を持っていく事にした。
結果として

シロン星産紅茶

アルーシャ星産紅茶

高級蜂蜜

ヴィンテージワイン

亡命貴族から買い取った美術品数点

が、決まった。
また、これは先方へは明かされないが日本からの要請や要求には、それらが余程の無理難題で無い限り
可能な限り便宜を図る事が確認された。

こうして、特使となったホワン・ルイ議員と、キタザト氏に代わるオブザーバー役に任命された
国務委員のシャロン議員はハイネセンを旅立った。

フェザーンに着いた彼らは日本側の人員に面会、今回の不祥事を詫びた。
これに対し宮は‘気にしておりませんので、お気になさらずに‘と答え、同盟側の安堵を誘った。
同盟側の持参した品に対する返礼は

 古セーブルのビスクドール、一体

 古ウェッジウッドの花瓶、一つ

 金小札浅葱威二枚胴具足、一揃え(直江山城守所用品のレプリカ)

 金梨地菊桐蒔絵付太刀、一腰

 ナポレオン法典の写本、一冊

以上が、返礼として贈られた。使者たちへの慰労の品も用意されてはいたが、彼らは立場上受け取ることが出来ず
非常に残念がっていた。

シャロン議員との交代を余儀なくされたキタザト氏はハイネセン帰還後、エル・ファシルへの派遣が命じられ
以後、地方行政畑の人となる。

【あとがき】
これで、ひゅうが氏著「協議」関連の話は、取りあえず終わりです。
失態を演じたキタザト氏ですが、首にはなりません。
同盟に、そんな余裕はありませんから。

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最終更新:2012年02月01日 21:48