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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその二十三



「提督お出かけですか?――――以上。」

「ああ、少し…大和を迎えに出掛けてくる。」

「左様ですか…お気を付けて行ってらっしゃいませ――――以上。」

「後、柏木君から応援を要請されたら全て応えるように。」

「承知致しました――――以上。」





闇の中を走り続ける大和。
どれ程の時間が経ったのだろう、一時間か一日か…それとも一年?
日が無く、時間の概念も無いこの場でそれは意味を成さない。

痛む脚を押し、女の手を引いて大和は走り続ける。
帰るのだ生まれ故郷へと。
倒れそうになっても走り、倒れても起きて走り出す。その繰り返し。
道も分からず唯進むしかない。


倒れ込む大和。
息が切れ今にも倒れ伏してしまいそうだった。
いつ着くのか、いつ終わるのか心が折れてしまいそうになる。
だが、


迎えに来たぞ、大和。


聞き慣れた声に顔を上げる。
鎮守府の執務室の机に向かう見慣れた背中。


ああ、迎えに来てくれた


大和は安心しその背中に抱き着き、そのまま背負われた。


時間がない行くぞ。そちらのご婦人も手を


その人物は大和を背負い、女の手を引くと走り出す。
終ぞその人物が大和達の方を振り向くことは無かった。




「!?…っと眠ってたか…。」

「居眠りデスカ?」

「夢を見てたが…あの夢が本当なら提督が顔を見ず連れ帰ることで大和と一緒にいたあの気配、あの御方も現世へ帰還、黄泉帰るのか…。」

「マサトサン?」

「すまんフェルちょっと鎮守府に確認とってくれ。」

「ナニをデス?」

「提督が大和を迎えに行ってるかどうかよ。」




長崎県長崎市、かつて戦艦武蔵が生まれた造船所で航空母艦大鳳の修理が急ピッチで進められていた。
残された時間まで24時間を切り、高速修復材やハイクァーンまで投入され作業が急がれている。
同様に呉、横須賀、舞鶴、ヤルバーンの各ドックでも同様に艦艇の修理が進められている。
神崎島まで一旦戻る余裕などありはしない。


「よ!柏木お疲れ様。」

「白木か…。」


手すりにより掛かり大鳳の修理を眺める柏木に白木が声を掛ける。

600: 635 :2021/02/03(水) 07:24:23 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

手すりにより掛かり大鳳の修理を眺める柏木に白木が声を掛ける。


「準備はいいのか?」

「ああ、今できる俺の仕事は終わり。後は各所の準備が終わるのを待つだけだ。」

「で、お前の最後の仕事は対馬に行く…か…。」

「ああ…。」


二人の間に静かな空気が流れる。


「なあ柏木、子供まで連れてお前が行く必要ないんじゃないか?」

「いや、俺とフェルじゃなきゃダメだ。」


白木はため息を吐く。


「ハア、こうと決めたら強情だな。良し!俺も着いて行く。」

「ハア!?何言ってんだ?」

「何処にいても同じだろ?それに記録する人間が必要だろ?」


ヤレヤレといった感じの白木に柏木は諦めた表情をする。
そして白木は柏木に問う。


「でだ、柏木。今回何やらかす気だ?」

「対馬への道作って、対州要塞姫を鎮めるんだよ。」

「そんなこと出来んのか?」

「出来るかじゃない、やるんだよ。」


現在対馬は更に幽世へと近づき夜海門大神、千曳の巌の封印も消えつつある。
神崎島周辺の夜海門の微かに隙間があるというレベルではない、故に八卦にて航路を指す羅針盤の効果も薄くなっている。
故に通常の方法では辿り着けぬ異界と化しつつあった。


「そのために日本各地の霊地に艦娘置いたのか?」

「ああ。」


現在少なくない数の艦娘が柏木の指示で日本各地に散っていた。


宮崎県霧島山高千穂峰 戦艦霧島、比叡、榛名、航空戦艦日向

福岡県宗像大社沖津宮 航空戦艦扶桑、航空巡洋艦筑摩、海防艦対馬

島根県出雲大社 航空母艦赤城

奈良県大和神社 戦艦武蔵

富士山本宮浅間大社奥宮 航空母艦飛龍

茨城県鹿島神宮 練習巡洋艦鹿島

宮城県多賀城跡 戦艦陸奥


大八十島のほぼ全域、南は九州南部から北は東北宮城まで。


「この配置に意味はあるのか?」

「ああ七曜星、つまり北斗七星だな。」


北斗七星、破邪と鎮護の力を持つという星。
柏木は日本各地の霊地を艦娘を通し北斗七星の形で結ぶことで日本列島そのものを破邪の陣として使うつもりなのだと言う。

そして沖津宮、北斗七星で言えばおおぐま座β星、天の門とされる巨門星に当たるその場所を通し、
戦艦大和以外では現在唯一の日本の国土の名を冠する扶桑、
本土から対馬へと渡りそこから三韓征伐を行った神功皇后とこの地の航海の神でもある宗像三女神を祀る艦内神社を持つ筑摩、
そして目的地である対馬の名を冠する海防艦対馬、各艦の名と日本全土を陣とした七曜の力を以て対馬への道を作るという。

601: 635 :2021/02/03(水) 07:24:58 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

「見てると関係が分からん艦娘もいるんだが?」

「出雲大社の赤城は艦内神社の祭神が大国主命だから、富士山の飛龍は同じく祭神が木花咲耶姫命だから、
大和神社の武蔵は戦艦大和の名代、多賀城跡の陸奥はあそこが旧律令国の陸奥国だからだ。」

「富士山は海自のふじでも良かったんじゃ?」


柏木は首を振る、海自のふじは沈んでいない、生と死の境を渡っていないからダメだと。
最悪ふじが幽世に引き込まれる。


「つまり今回の件に関しちゃ旧帝国海軍の艦艇しか無理だと…。」

「そういうこった。」


白木は頭を掻き更に聞く、高千穂はどういうことだと。
霧島と日向は分かるが更に比叡と榛名と大型艦が多い。


「コレを借りてきたからな…、その間現世の、人代の楔を肩代わりして貰わなくちゃならない。」


柏木は傍らに置いてある白い布で覆われた長い棒状のものを見せる。


「何だそれ?」

「天逆鉾、いや天沼矛と言った方が良いか?」

「ブッ!?それ引っこ抜いて大丈夫なのかよ!?」

「形代(レプリカ)はまだ高千穂にあるし、霧島さんたちに肩代わりして貰うから短時間なら大丈夫だろ?多分」

「多分て…後、形代はまだ高千穂にあるって、じゃあこいつは何なんだよ?」

「こいつは地中に埋まったままだった柄と何の因果か神崎島に流れ着いてた穂先を合わせて修理した正真正銘の本物だ。」


復興した陰陽寮に出向している島の神祇院の良妻に確認取って貰ったから間違いないという。


「コレ本物って!?」

「どうしても今回ので必要になるからな。」


さらっとシャレにならないことを言う柏木に白木は戦慄した。
この天沼矛が本物ならば現存する世界最古の神代の神器であり、国土創生と神代回帰の権能を有するというとんでもない代物だ。
逆に言うとソレを使用せねばならない状況であると柏木が認識しているということ。

絶対に捻じ曲げられた対州要塞姫を鎮めなければならない。
それは武力で制圧しようとすればとんでもない荒神を化してもおかしくないからだ。
そして柏木は他にも神器を借りているという。


十種の神宝、生太刀、生弓生矢…etc


「陛下達の口添えや託宣も貰って借りてきた。流石に三種の神器は無理だから陛下達に儀式を執り行って貰う予定だけどな。」

「マテ柏木。十種の神宝とか死者すら生き返らせられるとかいう神器じゃねえか!?」

「生太刀や生弓生矢でも出来るぞ?」

「そういう問題じゃねえ!?」


うがーとなる白木。

602: 635 :2021/02/03(水) 07:26:42 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp



「柏木さんここにいましたか!!」


そこへ二藤部や三島、ヴェルデオ達がやって来た。


「二藤部総理?三島副総理にヴェルデオ大使まで!?」

「柏木先生!神器大量に借りてきて何やらかす気だ!?神宮に陛下だけじゃなく全国の寺社仏閣にも祭祀の協力仰いだって報告上がってるぞ!」

「いくつかの艦娘の艦内神社の大本にも艦娘への神降ろしの準備をして貰ったという報告もあります。」

「ケラー、ヤルバーンにもナヨクァラグヤ様にツシマへの同行と儀式への参加をお願いしたという報告が来ています。一体どういうことですか?」

「柏木さん、貴方に全てを託しましたが…話して頂けますか?何をする気ですか?」


柏木を問い詰める二藤部達、そこへフェルやナヨ達も来た。


「柏木や。大和の国の為ならと協力を承諾しに来ましたが…如何なる状況ですか?」

「まさかフェルさんたちは知ってるのかい?」

「マサトサン、まさか話してないんデスカ?」

「…まあ準備が整うまで決行可能かどうか微妙な所だったからな。」


悪びれることもない柏木に二藤部達は鋭い視線を向ける。


「話して頂けますね?」


二藤部の言葉に頷く柏木。


「現在、戦艦大和は夜海、幽世からの帰還の途中にあります。」

「それは俺らも恐らくそうじゃないかと把握している。」


苛立つ三島に柏木はそれは事実であり提督が迎えに行っていると断言する。
そしてある御方も一緒にいると。


「ある御方?」

「…現在その明確な所在と存在が把握されている中で最も千曳の巌を閉じ、対州要塞姫を鎮められる可能性がある方です。」


そのために今回の準備を行ったという。
困惑する全員に柏木は託宣を受けた神官の如く宣言する。


「世界を超え帰還し、住む世界を超え結ばれた俺とフェル、
ある種の異界、星界の向こう側の神であり生命を終えた後に再誕し帰ってきたナヨクァラグヤ・ヘイル・サーミッサ、
そして神を降ろした艦娘、加えて天沼矛、それら全てを触媒とし陛下の祭祀の下大和の民の祈りを束ね、帰還した戦艦大和へ神降ろしを行います。」


そのための日本の国と民そして神、いや日本全ての動員。
それは大八十島に敷かれた七曜の陣、それを以て大和の民全ての祈りと龍脈を繋ぎ、天津日嗣が束ね、
神々の助力、神器と祭祀をを以て神話を覆す大召喚術式。

神代ならぬこの時代にそれをすると柏木は言う。
フェルやナヨを除き絶句する全員、三島は呻く様に問う。


「柏木さん、あんた『ナニ』を呼び出す気だ…?」


魔王とか邪神を呼び出す訳じゃないと柏木は笑う、神話を覆し『太母』ではない我らが『慈母』に御出で頂くだけだと。
全ては嘆きの姫を止める為に。

603: 635 :2021/02/03(水) 07:27:40 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2021年02月03日 19:21