905: 635 :2021/02/11(木) 08:37:37 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです二十五



「各霊地準備完了!!」

「全回線繋がりました!!」


航空戦艦山城の艦橋に報告が次々と上がる。
そんな中、艦娘山城は姉の扶桑がいる沖ノ島の方を見つめる。


「姉様…。」


別れる時の姉の言葉が蘇る。


「(山城、自分のすべきことを果たして、そして必ず生きて帰ってきて!)」

「姉様、山城は必ず生きて帰ります!」




沖津宮で巫女服を着た扶桑は闇に覆われた対馬を見る。
そこは最早結界とも言える夜海ノ海に覆われていた。

扶桑は自分に掛かる重責を感じていた。
欠陥戦艦、そう呼ばれた自分が今やこの国の、いや世界の命運を握っているというのもおかしな因果だ。
しかしやらねばならない、自分の全身全霊を以て対馬へと希望を繋ぐのだ。


『全準備完了!儀式いつでも行けます!!』


その連絡を以て扶桑は告げる。


「…では始めましょうか。」



高千穂の頂で、出雲の大社で、大和の地で、富士の社で、鹿島の大社で、奥州の城の跡で、

霊地で器たる艦娘を中心に、

神官達により祝詞が奏上され、巫女により神楽が奉納され、
僧たちが経典を読み、御詠歌を歌い、
聖職者と修道士達が聖書を読み、賛美歌を歌い、

異質なものが調和し一つの音となる。
そして人々が、大和の民が祈りを捧げる。

各地の寺社仏閣教会、宗教と宗派を問わず同様の光景が見られた。



艦娘達が霊地を繋ぎ、京の都と東の都、二つの都、二つの御所、二人の天津日嗣が神代の神器で大和の民の祈りと大地の龍を束ねる。

七つの地に日本各地から光が集まり輝きが生まれ、それは光の柱となった。
そして大地の龍、龍脈も胎動を始めその流れは輝く。
大地を流れる龍脈は光の柱を繋ぐ、空から見ればそれは地上の星、地上に現れた北斗七星に見えたであろう。

その輝きは天の門、沖ノ島沖津宮へと集まっていく。

906: 635 :2021/02/11(木) 08:38:55 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp


「がっ!…ぐっ!…。」


身体に凄まじい負荷が掛かり扶桑は呻いた。
人々の祈りと日本全土を流れる龍脈をその身で受け制御する、それは日本の古名を冠する艦であっても並大抵のことではない。
航巡筑摩と海防艦対馬、そして練習巡洋艦香取はその様子を心配そうに見守る。
この程度のことが出来なくて何が『扶桑』の名か、彼女は最早意地だけで立っている。
人々の祈りと日ノ本の龍脈の力を宿し終えた扶桑は脂汗を掻き青い顔をしながらも見守る三人を安心させるように笑った。



筑摩と対馬が常世鈴を鳴らし、血を吐きながら扶桑は大祓詞を読み上げる。
身体の中で力が暴れまわり、身体全てが悲鳴を上げ、頭の中は鐘がガンガンと鳴り続けている気すらする。
心臓は破裂せんとばかりに脈を打ち、強い吐き気すら感じる。


「高山の末…うぐぅ…短山の末よ…り…くっ!…佐久那太理に落ち…多岐つ…速川の瀬に坐…す『瀬織津比売』と言ふ神 
大海原に持ち出でな…ガッ!?…む、此く持ち出で往な…ばっ!?荒潮の潮の…八百道…の八潮…道の潮の八百會に坐す 
『速開都比売』と言ふ神…カハッ!?…持ち加加呑み…てむ、此く加加呑みてばぁ…気吹戸に坐す…『気吹戸主』と…グフォ!?…言ふ神 
根底國に気吹き放ちて、む…此く気吹き放…ちてば、根國、底國に坐す『速佐須良比売』と言ふ神、 
持ち佐須良ひ失…ひて…む…此く佐須良ひ失ひ…ば…罪と言ふ罪は在…ら…じ…と!!」 


息も絶え絶えに大祓詞を読み上げ、扶桑はその場に倒れ込む。
そして隣に立つ香取は手に持った白い絹で覆われたものを取り出す。
それは柏木が石上神宮より借り受けた神器、扶桑は香取よりそれを預かり再び立ち上がる。

唇の端より血を流しながら、大祓詞により清められた沖津の宮で扶桑は神器を手に御祭文を奏上する。
天津日嗣による神に扶桑の身に降りることを願う言の葉を。



扶桑が御祭文を読み上げ、その身体より神気が溢れ場が清められる。
ここに上古の昔より幾久しく神が現世に再び降臨する、

その名は『神功皇后』。

この海を渡り大陸の者達を征したその権能は大陸の者の浅慮により夜海に覆われ閉ざされた対馬への道を開く切り札。
しかし軍神たる側面を持つ『神功皇后』であらせられようとも道を開く為に柏木が用意した神器の担い手たり得ない。


神剣布都御魂


香取の艦内神社の経津主命の神魂とも言われ生命の輝きが奉ぜられ悪しきものを断つ神器。
神武東征の折に軍を救い、大和の地への道を切り開く原動力となった神通力はこの度の状況では大きな力となる。

扶桑の艦内神社の八幡神は征韓を成した神功皇后とその子応神天皇そして航海の女神たる宗像三女神の三柱からなり、
この場で儀式をするに相応しい、しかし扶桑に降りた『神功皇后』始め香取より渡された布都御魂の担い手たり得ない。

そこで柏木は一計を案じる。


宇気比


誓約と制約による限定運用により扶桑を担い手とした。
深海の提督らの存在で有名になった物語と民衆に広まった星の聖剣の伝承、その封印を模してそれは行われる。

扶桑とその身体に降りた『神功皇后』は誓いを詠い上げる。

907: 635 :2021/02/11(木) 08:40:02 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp



「『共に戦う者は勇者である。』」――――剣取るは共に立ち上がった勇気ある者の為に

「『心の善い者に振るってはならない』」――――剣取るはただ道を切り開く為に

「『是は、誉れ高き戦いである』」――――剣取るは誉たる護国の為に

「『是は、生きるための戦いである』」――――剣取るは明日の陽を見る為に

「『是は、己より強大な者との戦いである』」――――剣取り対するは対州を覆う夜海ノ海そのもの

「『是は、一対一の戦いである』」――――剣取り相対するは島覆う夜海ノ海と自分のみ

「『是は、人道に背かぬ戦いである』」――――剣取るは人の道を守る為に

「『是は、真実のための戦いである』」――――剣取るは此度の真実を世界に問える世を残す為に

「『是は、神々との戦いではない 』」――――剣取るは神々に対してに非ず

「『是は、邪悪との戦いである』」――――剣取るは嘆きの姫を邪悪より解放せんが為に

「『是は、私欲なき戦いである』」――――剣取るは『扶桑』の名の誇りと自分に世界の命運を託した者達の願い故に



「『是は、世界を救う戦いである』!!」――――此度の一振りを以て世界を救う一助とならん




大和の民の祈りと大八十島の力を宿した布都御魂が輝き、
烈火の気合と共に扶桑(『神功皇后』)の手により布都御魂が振り下ろされる。


「『はああああっ!!』」




極光



人々の祈りと大八十島の力を宿した清廉な輝き、悪しきものを払う光が布都御魂より放たれる。
対馬を覆う夜海の闇はその輝きを飲み込まんとするがそれすらも消し去り、島を覆う夜海ノ海を吹き飛ばす。
道は開かれ希望は繋がれた。


「成功…したわ…。」


役目を終えた『神功皇后』は扶桑の身体より去り、その場に扶桑は倒れ込んだ。




「沖津宮より入電!儀式は成功せり!繰り返す、儀式は成功せり!」

「偵察機と偵察衛星の情報からも夜海が晴れた模様!」


報告を聞き、空母大鳳で儀式の推移を見守っていた柏木始め、艦隊の全員が扶桑のいる沖ノ島を向き敬礼をする。


「マサトサン!」

「ああ、フェル。行こう、対馬へ!!」

908: 635 :2021/02/11(木) 08:41:19 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2021年02月13日 10:56