893: モントゴメリー :2021/02/10(水) 00:05:11 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
マリー大統領の思惑

フランス連邦共和国(FFR) 植民地エストシナ エスト=デ=パリ

現在、中央空港にはFFR各軍に所属する輸送機が引っ切り無しに飛来していた。
その中から降りてくるのはFFRの精鋭たち。
国家憲兵隊の「国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)」と陸軍の「第1海兵歩兵落下傘連隊」
更には外人部隊の「第2外人落下傘連隊」に所属する者たち。
FFRが誇る特殊部隊が勢揃いである。
また、宇宙軍の「第1軌道空挺連隊」も即応体制に入っていた。
彼らは、「急遽設定」された「国内における戦略機動演習」に参加してこの地に集結したのである。

そしてまた一機航空機が滑走路に進入してくる。しかし、それはこれまでやって来た軍用輸送機とは異なっていた。
民間機を改造した政府専用機である。
着陸した機体が滑走路から離れ停止し、そこにタラップが横付けされる。
タラップの下には路を作るようにFFR将兵たちが整列していた。そして、航空機の扉が開かれる。

「フランス連邦共和国軍最高司令官『代行』、大統領閣下に敬礼!!」

号令と共に一糸乱れぬ動作で敬礼する将兵たち。
その視線は、扉から出てくる女性に向けられている。
彼女、フランス連邦共和国大統領であるマリーは将兵らに答礼を返しつつタラップを降りていく。
服装は普段執務中に身に着けているスーツではなく、もちろん舞踏会用のドレス姿でもない。
…いや、彼女にとってはこの服装こそが「ドレス(正装)」であるのだろう。
今彼女が纏っているのはFFR陸軍の制服、それも式典時に着用する礼装ではなく陸軍機甲科の戦闘服である。
「現役」時代に着用していたものであるが、襟の階級章だけはFFR軍最高司令官代行を示す上級大将のそれに代えられている。
何故その服装を選んだのかと彼女に問えば、こう返ってくるに違いない。

「Notre Commandant(我らが指揮官)の御前に参陣する時に、これより相応しい服装があるかしら?」

そして彼女はその「ドレス」を一分の隙なく着こなしている。その体躯は現役を離れて久しいことなど微塵も感じさせないほど引き締まっているのだ。

「…こんな形で、またここに来ることになるなんて思ってもみなかったわ」

マリーは誰に話しかけるでもなくそう呟いた。しかし、それに応える者たちがいる。

「そりゃあ、そうでしょうね」
「我らが指揮官が降臨あそばされる。それも日本でなんて予測しろなんて無理ですよ」

補佐官たち——アデール(Adèle)とオリアーヌ(Oriane)——であった。もちろん、秘書官たるイザベルとソフィーも後に続いている。
彼女たちとはサン・シール以来の同志であり、ここエストシナで共に初陣を飾った戦友である。
思えばあの頃が一番気楽だった。戦車を操り只々セクト共を丸焼きにしたり、ミンチにしたり、踏みつぶしていれば良かったのだから。
(血に酔って油断したら、狙撃や自爆攻撃を食らうことくらいはあったが) 
だが、今の地位ではそんな訳には行かない。

「Monsieurニトベから返事は来たかしら?」
「まだです。本国を発つ直前に会談の申し入れをしたのですが、『検討する』としか」
「まあ、あちらも混乱の最中でしょうから無理もありませんが」

今回、マリー一行がエストシナ植民地を訪れた公式の理由は「戦略機動演習の観閲」である。
が、真の理由は「日本との交渉」である。
狂乱状態の国民感情を鎮めるためにこんな大掛かりな仕掛けをしたが、マリーとしては「すぐに」日本に宣戦布告するつもりはない。
…彼らがリシュリューの艦娘に危害を加えるのならば開戦の初弾を放つ覚悟であるが。

「ならば返事が来るまで待つしかないわね。このまま戦艦リシュリューに向かうのも手だけれど」

将兵たちによる路を通りながらマリーはそう言った。そして、イザベルに車を用意するように伝える。


「マリー様、どちらへ?」
「決まっているでしょう」

マリーはそう応えながらも止まることなく歩き続けた。
そうだ。私が、フランス人がここを訪れた時に真っ先に行かねばならない場所がある。

「『元帥』へ挨拶に行くのよ」

894: モントゴメリー :2021/02/10(水) 00:06:18 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
以上です。ウィキ掲載は自由です。
635氏のほうで『日ティ仏で共同首脳会議』やるみたいなんで、マリー大統領一行が今どこにいるか描写させて頂きました。
正直、その箇所読んだ時から「ヤバい⁉」と思いこっちの製作を進めていたのですが全く進展しないので必要最低限の部分のみを抽出しました。
(当初想定の1/3もないなぁ……)

リシュリューに会うため、ばっちりと「ドレス(戦闘服)」に着替えたマリー大統領たち。
リシュリューを先導する際に正装に着替えたジョルジュ君と正反対ですが、「陸軍」と「海軍」の意識の違いと見て頂ければ。
(あと「予備役」と「現役」の違い)
海軍は何だかんだと「抑止力」としての役割を求められていますが(リシュリューは特に)、
陸軍はエストシナやアフリカで(不正規戦や小競り合いが主とはいえ)多くの実戦を経験しているのも服装の選択に関わっています。

マリー様以下FFR陸軍軍人「Notre Commandant(我らが指揮官)よ、ご命令を。我ら将兵は24時間365日臨戦態勢を維持しております!!」

彼ら彼女らにとって、リシュリューの将旗が翻るべきは宮殿の如き後方司令部ではなく粗野な野戦指揮所。
もっと言えば弾雨を浴びる最前線なのです。
ドラクロワの名画の如く。

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最終更新:2021年02月13日 10:57