465: ホワイトベアー :2021/02/16(火) 17:30:39 HOST:157-14-177-16.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日米枢軸ルート 外伝 タクール・ガー山頂の戦い2


西暦2008年 グリニッジ標準時11月17日午前0時30分 
アフガニスタン・イスラム首長国 パクティア州 シャヒコト峡谷 タクール・ガー山頂付近 上空

404分遣隊とノーマッド62のガンナーが絶望的な攻防戦を繰り広げる一方で、ノーマッド61に搭乗しており、運良く撃墜を免れた109分遣隊の自動人形達は重苦しい空気に包まれていた。

「隊長、彼女らを助けに行こうよ!!」

重苦しい沈黙を打ち破ったのは肌色に近い髪色と真っ赤な目を特徴とする少女(ジドウニンギョウ)、『フォーツー』であった。彼女は今にも泣きそうな雰囲気を漂わせながら必死に助けに向かうように訴える。

しかし、隊長を務める少女(ジドウニンギョウ)からの答えは彼女の求めるものではなかった。

「あの場にいた兵力は明らかに異常でした。おそらく彼らは私達の作戦を読んで入念な準備の下に私達を待ち構えていたのでしょう。そこに何の策もなく突っ込むことはできません」

黒のセミロングと黄緑色に染められた一部の右前髪を特徴として、物静かつ優柔不断そうな雰囲気を放つ少女(ジドウニンギョウ)、フォーはその雰囲気とは裏腹に確固たる意志を込めてそうフォーツーの具申を拒否する。

しかし、フォーツーはなおも言い続ける。

「なんで!? 私達は海兵隊じゃん。仲間を見捨てない。それこそ海兵隊である私達の最も大切なことじゃない」

まるで駄々をこねる子供のように、フォーツーは涙を流しながら今も戦うな仲間たちを救いに行こうと訴える。

「安心してフォーツー。仲間は絶対に助ける。その心情を曲げるつもりはないわ。けどね、私達だけじゃあ戦力が足りなすぎる。だからこそ私達は今、あそこで何がおきているかを司令部に伝えなければならないわ。それが終わったら・・・」

そうフォーツーに言い聞かせているとそれまで黙っていた三編みと右目の眼帯が特徴的な大学生風味の少女(ジドウニンギョウ)がフォーに話かける。

「フォー、バクラム空軍基地と連絡がついたぞ」



西暦2008年 グリニッジ標準時11月17日午前0時40分 
アフガニスタン・イスラム首長国 パルヴァーン州バグラーム バグラム空軍基地 


フォー率いる《海軍海兵隊特殊偵察部隊第109分遣隊》からノーマッド62と404分遣隊の絶望的な状況を知らされた山岳機動部隊司令部は深夜であるにも関わらず、活発な活動を見せていた。

「タクール・ガーから一番近いところにいて支援可能な航空機はなんだ?」

大日本帝国陸軍の制服を着た厳つい風貌を持つ初老の男性。山岳機動部隊司令官《本田 忠久》中将は今もタクール・ガー山頂にて戦う404分遣隊を支援するために、深夜にもであるにも関わらず精力的に働くオペレーター達にそう問う。

「現在、ガンシップ、コールサイン《スプーキー01》がシャヒコト峡谷地上部隊の支援の為に展開しております」

それは《ノーマッド62》の墜落から始まった不幸のバーゲンセールの中で数少ない幸運であった。このとき、国際連盟軍は奇襲用の部隊が展開する予定の地域の安全を確保するためにシャヒコト峡谷のインド国境地域にイギリス連邦インド陸軍を中核とした地上部隊を送り込んでおり、その支援の為に大日本帝国空軍の誇る空飛ぶ砲兵こと四三式局地制圧用攻撃機(※1)が2機もこの作戦の支援の為にシャヒコト峡谷空域に展開していたのだ。

466: ホワイトベアー :2021/02/16(火) 17:31:34 HOST:157-14-177-16.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
うち1機は燃料の問題で基地に帰投させていたが、それでも1機を支援の為に送り込むことは可能であった。

「よし、スプーキー1に直ぐに無線をつなぎ4040分遣を支援させろ。それと即応待機しているレンジャーを中心として緊急展開部隊を編成し、救援の為にタクール・ガーに送り込め。偵察用の八咫烏もスクランブルさせろ」

「了解」




山岳機動部隊司令部が発したスクランブル命令は即座にバグラム空軍基地で即応体制を取っていた第1レンジャー旅団所属第5レンジャー大隊に届き、同部隊からレンジャー90名、戦術航空管制官(TACP)および空軍戦闘管制官が8名からなる即応部隊が即座に臨時編成される。

また、滑走路からは現場の情報をより詳細に得るために空軍が運用する無人偵察機である六五式無人偵察機改三 八咫烏(※2)が飛びさり、飛行場内にあるヘリコプターの待機場では救援部隊の足となる4機の三二式回転翼輸送機が急ピッチで出撃の準備を整えていた。


「急げ急げ急げ!!」

司令部からのスクランブルを受け、即応待機していたレンジャーの称号を与えらている自動人形達は取るものもとりあえず急ぎ3機の三二式回転翼輸送機に分乗する形で乗り込んでいく。

「隊長、第1小隊全体員の乗り込み終了しました」

ピンク色の髪とハイライトのない目を特徴とし、分隊支援火器を装備する少女(ジドウニンギョウ)は、部隊の指揮をとる黒髪短髪の少女(ジドウニンギョウ)、シロとパイロットにそう報告を上げる。

「OK、管制塔からの離陸許可が降りたらすぐに離陸するわよ」

シロはそう言うと部隊の少女(ジドウニンギョウ)達を席に座らせる。

「それにしても100名近いレンジャーを緊急召集して、出撃させるなんて何があったんでしょうね?」

それは決して長いとは言えない待機時間内でもより多くの情報を集めようとする副官としての性か、それとも憧れの人(ニンギョウ)と少しでも話したいと言う少女の感情かは不明であったが、報告を終えると副官がシロに個人的ないわゆる雑談をかけてきた。

「まだ司令部から情報は降りてきてないわ。ただ、セーラー(水兵)達の作戦行動中に何かの手違いに襲われたらしい」

「・・・と言う事は私達の目的地はシャヒコト峡谷付近ですか」

スクランブルであったがゆえに救援部隊である筈の即応展開部隊にはまだ詳細な情報も作戦も司令部から伝達されておらず、飛行中に伝えられるとされていた。

「 皆さま、今日もレンジャー航空、タクール・ガー行をご利用くださいましてありがとうございます。
この便の機長は私、DP-1000となっております。客室を担当いたしますは皆様の頼れる隊長TD-1811でございます。
まもなく出発いたします。
シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。
タクール・ガーまでの飛行時間は1時間を予定しております。
それでは、ごゆっくりおくつろぎください。」

機長が出撃前に発したジョークで機内は本気なんだがどうだかわからない笑い声に包まれ、三二式回転翼輸送機は100名近い強力な救援部隊を乗せて闇夜の中、タクール・ガーを目指して飛び去っていく。




西暦2008年 グリニッジ標準時11月17日午前0時50分 
アフガニスタン・イスラム首長国 パクティア州 シャヒコト峡谷 タクール・ガー山頂付近

「ノーマッド61よりCPへ。現在目標地点14に接近中」

バグラム空軍基地でレンジャーを中心とした救援部隊の出撃準備が行われている最中、山岳機動部隊司令部はこの通信を受け混乱が訪れる。

『コマンドポストよりノーマッド61へ。目標地点14に接近中だと!?』

なんと退却命令を発した筈の《ノーマッド61》がタクール・ガーに設定した予備着陸地点である目標地点14に接近していたのだ。

「イエス。現在本機は109分遣隊の再投入を命じられ目標地点14に接近中です」

『司令部はそんな命令を出していない。一体誰の命令だ!?』

パイロットとCPがやり取りをしているさなか、109分遣隊隊長を務めるフォーがそこに割り込む。

「私が命令しました。」

『何だと?』

「私が分遣隊隊長権限で目標地点14での109分遣隊の再投入を命令しました。仲間を置き去りすることはできません」

『・・・ノーマッド61および109分遣隊には帰投命令が出ているはずだ。命令違反を起こす気か?』

「ノーです。ノーマッド61は私達を投入後帰投しますので命令違反ではありません。そして私達には帰投命令は出てない筈です」

467: ホワイトベアー :2021/02/16(火) 17:32:53 HOST:157-14-177-16.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
確かにそれはそうだった。山岳機動部隊はノーマッド61には作戦中止命令と帰投命令を発していたが、そこに搭乗している109分遣隊には厳密に言えば帰投命令を出してはいなかった。最も、普通は作戦中止命令が出され、搭乗しているヘリコプターに帰投命令が発せられたら搭乗している部隊も帰投するのが当然であるが、彼女らは今も孤立する仲間を救う為に意図的にその点を無視していた。

『ならいます』

「目標30秒前」

ヘリコプターのパイロットが大きな声でそう言うと、フォーは一方的に通信を切り機内電話を元の位置に戻す。

「全員、準備は良い?」

そう言い隊員の顔を見るがその場にいる全員が笑顔で返してくる

「目標1秒前」

「飛ぶわよ」

パイロットの発言とほぼ同時にフォーが叫びながらそう言い、それを合図に109分遣隊の面々は後部ランプから地面にめがけてジャンブする形で降下、雪をクッションとしつつ、受身をうまく取る事で無傷で地上に展開した。

一方で109分遣隊を投入した《ノーマッド61》は直ちに前線補給地点に向かい進路を変更し飛び去っていく。

「全員、損傷はない?」

フォーは着陸するとすぐに全員に損傷の確認をとる。いくら地面が雪で覆われているとは言ってもヘリコプターからのロープなしでのジャンブ降下と言う無茶をやらかしたらのだからその心配は当然だろ

「フォーツー問題なし」

「ワンファイブも問題ないわ」

「ワンシックスも問題ないぞ」

しかし、彼女の心配は無駄に終わる。大日本帝国が特殊作戦用にコストを無視し、技術の粋を集めて産み出したCAD-011A2Sの身体は通常の人間であったら高確率で大怪我を追うような無茶を行っても、何の問題もなく、作戦行動には一切の支障を来さなかった。

「了解。ならこれから404分遣隊の援護を行う為に山頂に向かいます」

幸いなことに山頂から610m程度離れたこの地点には敵は存在せず、109分遣隊はただ漆黒ときみの悪いほどの静寂、生者を拒むような寒気が支配する山脈の頂上を目指して歩きだした。



西暦2008年 グリニッジ標準時11月17日午前1時00分 
アフガニスタン・イスラム首長国 パクティア州 シャヒコト峡谷 タクール・ガー山頂

タクール・ガー山頂で行われていたタリバーン・アルカイダ連合軍と404分遣隊の戦いは加速的に404分遣隊に不利な状況へとなっていた。

わずか40分の戦闘で20名を超える戦闘員を殺害または負傷させたものの、404分遣隊側もドアガンナー2が負傷し機関部は無事であるが、戦闘不能追い込まれてしまっていた。

「ナイン、私はドアガンを使用してアルカイダ共に7.62mm弾を食らわしてやるからメディックに協力して負傷兵の手当をお願い!」

《エンハンスド》はそう言うとそれまでガンナー2が使用していたドアガンに張り付き、機銃による制圧射撃を開始する。

「了解」

ナインはそう言うとそれまで後部ランプ付近での戦闘を切り上げ、機内の負傷兵の修復に当たった。

外では岩に身を隠したイレブンが数が少なくなっていた貴重なグレネード弾を使用して機銃陣地を沈黙させる一方で、隊長であるフォーファイブはパンツァーシュレックⅣでヘリコプターを狙っていた戦闘員の頭に6.2mm弾を当てていた。

「殺しても殺してもわきででくるよ」

イレブンはそうグチを言いながら銃だけを岩から出し、銃声のする方向に無差別に銃撃を加えていく。

「まるで命のバーゲンセールね。全く私達と違って死んだらそれで終わりなのに、よくここまで頑張れるわね」

流石の物量にフォーファイブまでもが悪態をついてしまう。しかし、そんな絶望的な状況でも404分遣隊は神に見捨てられてはいなかった。

“それ“は突如空から降ってきた。航空機の発する甲高い音と同時に複数の砲弾の雨が空からタリバンの陣地に降り注いだのだ。

468: ホワイトベアー :2021/02/16(火) 17:33:31 HOST:157-14-177-16.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
そう疑問の声を発するのと同時にそれまでひたすら沈黙を続けていた無線機より、音声が発せられる。

『404分遣隊、聞こえているか? こちらはスプーキー01これより貴隊を支援する』

そう男性の声で無線が入る。この攻撃は司令部からの命令を受け緊急展開したガンシップであるリーパー01からのものであった。

「こちら404分遣隊隊長のフォーファイブよ。助かったわスプーキー01。基地に戻れたら隊全員でたっぷりとお礼をしてあげるわね」

フォーファイブは色っぽい艶声で無線に語りかける。

『それは楽しみだ。ならしっかりと生き延びて貰わなければならないな』

そう豪快に言いながらスプーキー01はアルカイダのタコ壺陣地付近に105ミリ榴弾を、タコ壺陣地外の敵集団には30ミリ弾が空から降り注いだ。

この攻撃のよりアルカイダ・タリバン連合軍はそれまでの攻勢姿勢を維持することができず、守勢に入らざるを得なくなった。対して404分遣隊はこの機会を利用して前線組に対してヘリコプターより弾薬を補給するなどの体制の立て直しに走る為の貴重な時間を得ることになった。

しかし、リーパー01も燃料の問題からおよそ15程しか支援を行う事ができず、1時15分頃から404分遣隊は再びアルカイダ・タリバン連合軍の猛攻を受けることになる。


※1 
和製AC-130。航空機としての速度を犠牲として105mm榴弾砲1門と30mm機関砲2門、長時間に渡って火力支援を可能とする大量の弾薬を搭載したバ火力を誇り、敵地上部隊やその支援部隊に対して空から強力かつ精密な砲撃を加える事が可能な機体で、大日本帝国の圧倒的な空軍力と優勢火力ドクトリンを象徴する機体。

現在運用されている機体は対戦車ミサイルや多連装ロケット砲なども装備可能となっており、スタンドオフ攻撃能力も付与されている。

※2
和製リーパー。帝国空軍と中央情報庁が合同で運用している無人偵察攻撃機で、主に敵勢力圏内での長時間の偵察や要人暗殺、無線中継機としてなどで使用される。

469: ホワイトベアー :2021/02/16(火) 17:34:26 HOST:157-14-177-16.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
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最終更新:2022年04月21日 12:10