112: 635 :2021/02/18(木) 00:09:20 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです二十六.五
「対馬の鬼神を鎮める為に太母を呼び出そうとするとはな…。」
まだ生きていた日本政府内部への伝手や諜報員、
報道情報等から作成された報告を受けた中華人民共和国前国家主席、張徳懐はそうボヤく。
張はそれまで中共の実権を握っていた解放軍過激派により幽閉されていた。
しかし政府、軍内部に残存していた穏健派により助け出され、張はそのまま派閥のトップへと担ぎ出された。
ここは穏健派の隠れ家の一つ、その書庫を執務室として張は仕事を行っていた。
見つからぬようにと電気は通らず、蝋燭の灯りを頼りとしていた。
同盟国と自国、上海条約機構は各戦線において敗走を続けており、韓国に至っては北朝鮮に敗北し占領されている。
その為に自国の敗戦も含めた早期の講話が必要と認識し穏健派は行動を起こした。
余り遅かったり、やらかせば韓国の二の舞いになるという恐怖も大きかった。
そして現在中共内部では継戦を主張する過激派と穏健派による抗争が激化しており、このまま内戦に成るのではと危惧されている。
どちらにしても戦後に中華人民共和国という国家が解体されるのは避けられないと張は考えている。
そして戦後のその国家達に少しでもこの国の良きものを残すのが国家首班であった者の務めとも。
「どちらにしても伝統と神話が残っているというものは羨ましいものだ…。」
張は日本という国家そのものを羨んだ。
現在中華という文化圏において道教や民俗宗教というものは風前の灯だ。
張が幽閉されて以降その弾圧は過激さを増し幾つもの廟や寺院、聖堂が潰され、
その担い手の多くは刑務所や思想矯正施設に入るか殺された者も多い。
かつて道教や民俗宗教施設とその担い手などはこの国の霊的防衛の一翼を担っていた。
しかし党是故に弾圧が多く中華民国や清の時代からの劣化は避けられず、現在は元から劣化していた霊的防衛システムは崩壊寸前。
悪しきものが再び市井の影に蔓延り、上海や香港などが魔都となっているのは間違いない。
挙げ句の果にはドイツや韓国に感化され、独製呪詛兵器を導入、
神を神とも思わず、畏れることなく蚩尤塚を荒らし、蚩尤を霊的国防兵鬼として復活運用しようとしていた様子さえあった。
対して日本は悪しきものをどうにかする手段や神に力を借りる術を未だ保持し、中国に比べればその担い手も多く存在している。
そして戦後解体された霊的防衛の専門機関を復活させているという未確認情報も存在する。
これが千年以上に渡り神権を持つ王朝を奉り神に寄り添い続けた国と事あるごとに全てを否定してきた国の違いか。
「戦後は日本、いや神崎島の手を借りなければならないかもしれん…。」
皮肉なことに現在中国国内の民俗宗教において最も信仰されている存在、それは艦娘だ。
艦娘はある艦種の存在から水神である水母娘娘と圧政を受ける民衆同一視しされ、
中国と敵対していることからいつか自分達をこの圧政から解放してくれるという信仰が発生してしまったのだ。
民心の安寧の為には彼女らの力を借りることも必要だろう。
そんな事を張が考えていると大きな音と共にドアが開く。
「張大人!」
「どうした騒々しい…。」
焦った様子で部下が駆け込んできた。
「上海の呪詛兵器管理施設に突入した特殊部隊がドイツより派遣されていた人員の一部確保に失敗、多数の負傷者が出ました!!」
「やはり………例の加藤という太母の遺体を持ち出したとかいう日本人の仕業か?」
「はい、銃で撃っても、身体を切断しても死なず、奇妙な術により多くの者が負傷しましたが、すんでの所で正体不明の術者が介入、加藤と戦い死者は出ませんでした。」
「…何者だ?」
「分かりません、部隊の者は狐の仙女が加藤の身体を消し飛ばし助けられたと言っていますが…、その者は身体半分になった加藤が逃げて直に姿を晦ましたので。」
「そうか…では加藤への追跡部隊を「ただ死人を増やすだけ、やめておかれた方が宜しいかと思いますわぁ。」…!?」
「誰だ!?」
蝋燭の火に照らされる書架の影に紺の着物を着た女が浮かび上がる。
しかしその服は着物と言うにはいささか肌が多い。
そして何より、
「狐の耳に尾…報告にあった仙女とは君か…。」
「Exactly!(その通りでごさいますわ!)」
張の言葉に女は顔の前で人差し指を立てその通りだと答えた。
113: 635 :2021/02/18(木) 00:10:13 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
「さてさて、私は少々張前主席に用事がありましてこうしてご足労を致しました訳なのですが…。」
「自分でご足労と言うのかね…?まあいい、用事というのは魔人とか名乗った加藤という人物についてか?」
「まあ他にもあるんですがそれもあります。
それから言いたいことがあるのですが、まずアレは魔人でも何でもない魔人加藤の名を名乗っているだけの唯の紛い物なのでお間違えなく。
あの不死性っぽいのは世界一ィィィィーーーーッ!なナチスの遺産なサマルカさんの親戚脅威のメカニズム!な生体強化技術、
その粋を凝らして強化した回復力と洋の東西の回復系の術の類、
所謂ホイミやケアル、あらやだメガテン系?それじゃディア?それともメディアラハン?それっぽいのと組み合わせて死に難くしているだけなんですってよ、奥さん。
あらキレイな奥さんですね旦那さんって旦那さん!?旦那さんですってよ!!巫女狐困っちゃいますわ!ミコーン!
あらやだ話が脱線しましたね。まあとにかくモノホンみたいなチーターじゃなくて吹き飛し続ければその内死ぬようなパチモンなのでお間違えなく。
まあ良くある改造人間の類なので。しかしということは何処かに正義のバッタの改造人間が?
アレの術も現代では得意な方なのかもしれませんが私基準ではどんぐりの背比べ。
少しは平安とは言いませんが魔都だった頃のカオスフル上海とか見習って欲しいものですね。
ま、そんなパチモノでも貧弱ゥ!貧弱ゥ!な現代人にとっては驚異となり得るでしょうが。
しかしまあなんであの男は逃げ足だけは早いのでしょうかね?この良妻の術を掻い潜って逃げおおせるとはおどろ木ももの木さんしょの木。
やはり被害気にせず首狙いでサクッと殺っとくべきだったかどうか今でも悩みのタネですわね。」
ワンブレスで話す女に張と部下は「お、おう」と言うしかない。
要約すれば女にとって加藤という術者は逃げ足早いが敵ではないのだろう。
「まあとにかく何が言いたいかと言えば私が中国国内であの紛い物追うので、貴方方のメンツもあるでしょうから許可と情報寄さっさ越せこの野郎!てことです。」
女のもの言いに部下は激高仕掛けるが張はそれを制する。
「君ならばあの男をどうにか出来ると?」
「逃げ足だけは早いので確実に捕まえられるか?と聞かれれば巫女狐こまっちゃうー!ですが、企みは必ずブチ壊すことをお約束しますわ。
一度私に破れて身体半分消し飛んでるのですから今度会う時は正しく再生怪人!ザコキャラと成り果てますから1コマ出番あれば良い方では?」
「…分かった。これが我々が持つ情報だ。後は我々の出来る範囲で君が自由に動けるように取り計らおう。それで良いかな?」
「張大人!?」
「御英断に心より感謝申し上げますわ、張前国家主席。」
張は報告書の束を女へと渡し女は感謝の意を伝える。
そして女は優雅に一礼し、身を翻しその場を後にしようとする。
しかし何か思い出したように張達の方を向き嗤う。
その姿は物語に出る金の毛に白い顔をした者のようで…。
「そうそう言い忘れていましたが今後は人の分際で呪詛や神の類を利用しようなどという愚かな行為はやめて下さいませね?」
これ以上自分達の手を煩わすことなきようにと女が言い終えると蝋燭の火がふと消え、一瞬で再び灯る。
しかしすでにそこに女の姿はなかった。
張の部下は狐につままれたような顔をし、張は女のいた場所をじっと見つめていた。
張の前から姿を消した女の姿は夜の上海を見下ろす高層ビルの屋上にあった。
女はビルの縁に座り、その眼下には上海の夜景が広がる。
美しい未来的な都市の影にはスラムや貧民街が広がっている。
そしてその影より深い闇には悪しきものが蔓延り、光の街並みと薄皮一枚隔て魔都上海が広がる。
座る女の狐耳は半倒れてその背中には瘴気すら漂う。
そして女は足と尾をブラブラさせながら報告書を読みブツブツと独り言を言う。
「あの魔人モドキめ…少しはこう世界観というものを考えろってんだコンチクショー!
SFな銀河連合日本の世界で新婚宇宙旅行して旦那様と一姫二太郎ですねってイゼイラで主星ポダール見ながら語らう筈が…!
なんで私が上海舞台に帝都物語な伝奇ものの主役せにゃならんのですか…。
しかも何なんですか…。
対馬に"まだ"使用されてない呪詛兵器が残ってるとか…名前が獣型とか厄い要素しかねえ…。」
女は溜息を吐き空を見上げる。
しかし空はスモッグで曇り星も見えない。
「はぁ…悩んでもしょうがないですねぇ…。これも旦那様との愛に塗れた生活の為。参りましょうか…。」
独り言を言い終えると女の姿は空気に溶けるように消えた。
114: 635 :2021/02/18(木) 00:11:41 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
時は現代に戻りこちらの日本と向こう側、銀河連合日本との本日の交渉が終わった後のハワイ沖の戦艦比叡の多目的ホール。
そこでは本日、向こう側の映画がこちら側の人員向けに上映されていた。
ホールで映画を見終えた向こうの柏木がこちら側の白木、大見は話に話し掛ける。
「オーちゃんに白木どうだった?山城アニメーションの新作映画『魔都物語』。」
「向こうの京都○ニメーションはヴァイオレッ○・エヴァーガーデン以外に出す余裕あるんだな。」
「向こうでもやらかしたけど速攻で取り押さえられた上に消火されたしな。」
柏木と大見は話をしているが白木は疲れた顔をする。
「帝都物語
シリーズかと思ったらそうっぽいけどなんだよ…魔都上海舞台にキャス狐VS魔人加藤って、面白かったけどよ…。」
「ああ、それは俺も思った版権とかその辺大丈夫なのか?というかFat○とかの話なのかコレ?」
「しかも無駄にリアリティあるし、術の考察も面白いし…。」
白木と大見がそんな話をする脇で柏木は呟く。
「そら全部フィクションて訳じゃねえからな。」
「今聞き捨てならないこと言ってなかったか!?」
115: 635 :2021/02/18(木) 00:13:40 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
何故か魔都上海という言葉に惹かれてこんなのが出来ました。
後最近つべで帝都物語本編を見つけたからか。
最終更新:2021年02月18日 22:52