221: 635 :2021/02/20(土) 22:00:50 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです二十七



人々の祈りを束ねた一撃により切り開かれた対馬への航路を多くの人々の助けを借り柏木達は進む。
通常艦艇は全て陽動の為この場に居らず、艦娘達と艦載機温存の為戦闘は出来ない、
空中には野中率いる陸攻隊と基地航空隊の戦闘機が大鳳らの直掩に付いているが…。


「戦闘機隊残存数、三割を切りました!!」

「陸攻隊約半数が撃墜!!」


悲鳴の様な報告が大鳳のCICに響く。
柏木はその報告を耳にし無力感を感じ唇を噛む。

柏木達の道を切り開くため、顔を知る者達が次々に命を落としていく。
彼らは全員妖精だ、補充されれば直にその見知った顔をまた見ることが出来るだろう。

だがそれでもなお、辛い…。

柏木は思う、ああ、帰らぬ友人を送り出した先人達はこんな気分だったのかと…。




敵の火線を掻い潜り野中の乗る機体は空を駆ける。


『モウ、モウイイデス!!ノナカサン!撤退して下サイ!!』

「残念だがフェルの嬢ちゃん、そりゃ出来ねえ相談だ。」


モニターに映るフェルは涙を流し野中に撤退を訴えるが野中は否と答える。


「俺たちはお前さん方を送り届ける義務がある。そして今度こそ送り届ける権利がある。これはな…。」

『アッ…。』


野中は通信のスイッチを切る。
そうこれはあの戦争であんなクソみたいな戦術するしか無かった自分たちの意地であり贖罪なのだ。
だからこそ柏木の言葉に全てを賭ける。

「これは特攻に非ず、世界の命運を賭けた救出作戦である」、そんな柏木の切った青臭い啖呵を思い出し野中は笑う。

これは特攻に非ず?…いい言葉じゃないか。
世界の命運を賭けた作戦?上等じゃないか!

命を賭けるに値する作戦に命を預けるに値する青臭いが敬愛すべき特務大佐殿、
クソのみたいな戦局でのクソみたいな作戦を指導したクソみたいだった上層部、
挙げ句クソみたいな戦術をやらされたあの戦争とは訳が違う。

敵は海域を覆う程の艦艇達。
腹に抱えたイチモツを叩き込み撃沈する、やることはいつもと変わらない陸攻乗りのお仕事だ。
ただただ、重みが遥かに違う。


「敵機直上!!数四!」


部下が叫ぶ。


「チッ!造成したブラスターで撃墜しろ!」


機体から粒子ブラスターの火線が走り敵機をまとめて撃墜する。
そして野中はマイクを手に取る。


「神雷部隊、生き残った全機に通達…!必ずや柏木の大将達を送り届けるぞ!」

『『『応っ!』』』


世界の未来のために、続く後輩達の為に血路を切り開く。
神雷部隊いや陸攻乗り一世一代の晴れ舞台、野中は舌舐めずりをした。





そして、野中は、



「基地航空隊、神雷部隊最後の一機、野中少佐の機体は敵機特攻より本艦を庇い海面に墜落……。」

222: 635 :2021/02/20(土) 22:02:22 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp





『柏木の大将、この国の未来を頼んだぞ…!ああ、後を託せるってのはいいもん…。』


その言葉を残し野中は散った。
野中始め、多くの者の挺身の果てに柏木達は辿り着いた。
生者として、人として初めて変色海域最深部、姫の座す最も夜海に近いこの地へ。



「ここがそうデスカ…。」

「現世へ溢れ出た夜海ノ海の最奥…最も夜海に近い夜海の門…!!」


黒い光の柱、黒キ陽が昇り血より赤く、夜より黒い死が海と空、その全てを覆いつくす。


『シエはこんな景色見たことあるか…?』

『バカ言ウナ。私ハオロカ、ティ連全体デモコンナ景色見タコトアルヤツナンテイナイゾ…。』


上空で直掩を務める多川とシエの旭龍からもそんな通信が聞こえる。
それは現世の生けるものの存在を許さぬ暗黒の妖域。


「皆さん、機体から出るとか艦から身を乗り出すとかやめて下さいね。」


夜海に堕ちますよと大鳳は言う。
加護を得ている大鳳に乗る柏木達や大鳳の艦載機扱いの旭龍の多川達は大丈夫だが一歩外に出ればそこは完全な異界。
生者が生きていける場所ではない。
加護の内で守られているとはいえ全員の背筋が凍り、嫌な汗が流れ、脳内で警鐘が鳴りつつけている。
ここは自分達がいるべき場ではないと。



この海域は通常の空間どころかディルフィルド航法等の既存ティ連科学で認知されている如何なる空間とも全く違う。
それ故に今回の為に新技術が急遽投入された。

ティ連にヤル研に加え島の技術者や科学者達、某ドヤ顔や交流や直流とかが生み出した脅威のメカニズム、
霊子システム技術と完全に連接されたトーラルシステム、それは科学と神秘の申し子。

名付けられたその名は人々を雨の日も風の日も、
戦火に燃えたあの大戦の最中もその生活の傍らで見守り続けてきた『クエビコ』。

そのシステムはまだ不安定故に専任のスタッフ、島の科学者である香月夕呼が調整の為に大鳳に乗り込んでいる。

その『クエビコ』がセンサーで周囲をスキャンすると倒れている長門の姿を発見した。
長門は伊勢が肩を貸し大鳳に収容された。


「長門!大丈夫!?」

「ああ伊勢…漸く皆来たか…。なんと…か耐えきったぞ…。」


その身体は満身創痍、今にも倒れてしまいそうだ。
しかし姫の姿が見当たらない。


「姫は…対州要塞姫はさらに変質した。あれは…呪詛だけ…が原因じゃない…何が原因だ…?」

「長門?長門!?」


姫がさらに変質した。その言葉を残し長門は気絶した。




そして姫は姿を現す。


『GYAAAAァァァァアアアアア"ア"ア"ア"!!』


海域に獣の咆哮が木霊する。

223: 635 :2021/02/20(土) 22:07:04 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp


「おい…おいおいおい、あの"デカイ"のがあの姫だってのか…?」


大鳳のCICで白木は呻く。
そこにいたのは最早、深海棲艦の女性体や顕現艦とも違う姿。


『あれじゃあまる、軍艦サウルスだぞ!?』


画面の向こうの多川が昔遊んだ荒野を行くゲームを思い出し叫ぶ。
その視線の先にあるのは要塞砲を備えた巨大な要塞を背負う獣。


「アレが姫…。」


言葉を漏らすフェル。
それは四肢で海面を踏みしめ、分かれた幾つもの尾が揺れる。


「でもあれは身体が限界に近い状態で敵を退ける為の高出力状態の『壊』、
大人の姿から更に変わったのだから差し詰め『壊ニ』とでも呼ぶべきかしら…。」


大鳳は呟く。
その身体からは何かが溢れ出ているのかの如くひび割れ赤き光が漏れ出している。


「全員ぼうっとするな!」


柏木は檄を飛ばす。
それは尾を含めれば全長二百メートルを超える人型をした人面の狐。



「蒼龍さん達の配置は!?」

『こちら蒼龍、準備は万端よ!!』

『鳳翔です。火の位置に配置に着きました。』

『雲竜、黄竜の場に来たわ。』

『フン、戦艦石見配置に着いたが、露西亜で西の字付くから白虎と言うのは些か安直ではないか?』

『伊401配置に着きました。ガングートさんは髪も白銀だからいいじゃないですか?それを言ったら私なんてドン亀だからって玄武ですよ?』


姫を中心に円を描くように艦娘とその顕現艦が配置される。
北、水を司る玄武の位置に伊401。
そこから青龍の位置に蒼龍が、朱雀の位置に鳳翔、黄竜に雲竜、白虎にガングート。
その甲板で神祇院の者達が艦娘を五神とし儀式を行う。

各艦から気の流れが生まれ、姫を中央に破魔の星、白く輝く五芒星が現れる。
相剋と相生それを以って海域の五行の気の流れを正し結界と成す。

五隻の艦を結んだ結界が対州要塞姫を抑え込む。
通常ならば十分過ぎる寧ろ過剰とも言える儀式、しかしそれでも呪詛全てを祓い姫を完全に鎮めるまでには至らない。

それは折込済みだ、対州要塞姫の力を削いでその時までの時間を稼げさえすればそれで良い。

224: 635 :2021/02/20(土) 22:07:53 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp



「香月博士、『クエビコ』がスキャンした対州要塞姫の様子は?」


『クエビコ』の調整を行っていた香月が叫ぶ。


「っ!!柏木大臣!異常を検知したわ!来るわよ!!」


『クエビコ』が警告を発する。



――――警告――――

――――対象の発する呪詛の汚染深度、範囲共に急速に再拡大開始――――

――――結界オバーフローまで残り三十秒――――



「総員来るぞ!!動ける艦娘と艦載機は儀式完了まで時間を稼げ!!」



五神の結界にさえ耐えきりそれは立ち上がる。



『GYAAAAァァァァアアアアア"ア"ア"ア"!!』



対州要塞姫・壊ニ、顕現。

225: 635 :2021/02/20(土) 22:10:45 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

次回大和復活(予定)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年02月23日 20:19