678: モントゴメリー :2021/03/14(日) 00:31:04 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
漆黒の合衆国強化プラン③ ——Universal Projector(万能投射器)

漆黒の合衆国で開発された対戦車兵器。兵士たちからは単語の頭文字を取って「UP」と呼ばれた。
「バネの力で砲弾を撃ちだす」という特異な構造をしているが、発射薬を使わないことで得られた隠密性と
「筒に入るものなら何でも発射できた」という汎用性から日英同盟軍を大いに苦しめた。

本装備の元々の生まれは合衆国ではない。
そもそもの始まりは1930年代までさかのぼる。
英国に潜入していた諜報員が英国軍「最新兵器」の情報を入手したのだ。
帰国した諜報員はその兵器の設計図のみならず(組立前ではあるが)完全な実物まで持ち帰ってきたのである。
合衆国軍上層部は狂喜し、早速評価試験を行った。

察しの良い皆さんならもうお分かりであろうが、この兵器は史実では「PIAT」と呼ばれたものである。
そして、この漆黒世界においては日英同盟軍の標準装備コンペに英国代表として参加したが、ドイツのパンツァーファウストや日本のロケットランチャーに敗北。
不採用が決定した兵器であった。

しかし転んでもただは起きないのが英国紳士。
PIATなど不採用となった兵器を用いた欺瞞情報によって合衆国に対する諜報戦を仕掛けることを提案してきたのである。
これにより同盟軍の「本物の」新兵器を秘匿し、かつ合衆国の技術開発を迷走させようというのである。
つまり、夢幻会の得意技「テクニカル・ハラスメント」を合衆国に仕掛けるということだ。
この提案に日本も賛同(前世やその前にも散々やってきた事である)、早速実行されることとなった。
合衆国の諜報員がこれほど完璧な形で情報を入手できたのも当然である。元々漏洩させるつもりであったのだから。
(それでも「怪しまれないギリギリの手加減」の上手さは正に英国紳士の面目躍如である)

そして評価試験の行った合衆国軍上層部は、その特異な構造から来る装填の困難さを問題視して

「わが軍のM1バズーカの方が優れている」

という結論を下した。
ここまでは同盟軍の思惑通りである。
しかし、ここから悲劇は始まった。

「発射時に生じる音が非常に小さい」という特長に合衆国軍は注目したのである。
また、使用時に後方爆風が発生しないという点も高く評価された。
つまりはバズーカが使えない塹壕や地下要塞の中などの閉所で使用できるということである。
装填が困難という厄介な問題があるが、逆に言えばそれさえ改良すれば良いのだ。
早速改善指令が技術陣に下された。

技術者が提案した改善案はシンプルであった。
バネの圧縮に、クロスボウで用いられる「巻き上げ機」を採用したのである。
巻き上げ機と簡単に言うが、これは精密機械に分類されるものであり量産には本来向かない部品だ。
しかし、合衆国には「素材収集部隊」(日英同盟諸国では「マンハンター」と呼ばれる)の装備としてクロスボウが用いられている。
そのため、クロスボウ用の巻き上げ機も既に生産ラインが確立されていたのである。あとは、これは拡充すれば良かった。
さらに、人力装填という制限が無くなったのでバネがより強力なものに変更された。
これにより発射薬無しでも同じ射程を確保することに成功した。
(発射薬無しでも使用できるように改良されている)
合衆国軍上層部はこの結果に満足し、「Universal Projector(万能投射器)」として制式採用したのである。

679: モントゴメリー :2021/03/14(日) 00:31:37 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
冒頭で本装備を対戦車兵器と呼んだが、合衆国軍の分類では「工具(Tool)」であり「兵器(Weapon)」では無い。
つまりはスコップやつるはし等と同じ扱いであり、そこに「人間」用と「備品」用の区別は存在しなかった。
そのため戦争後半になるにつれ本装備の比率は上昇していき、末期にはM1バズーカを上回っていた。
これは、開発担当者の考えが影響している。
彼は、「人間」用と「備品」用にきっちりと分類されている合衆国軍の装備体系に疑問を持っていたのである。
なるほど、一見すれば確かに効率的ではある。…が、実際の戦場で想定通りにいくだろうか?
もし「人間」の手元に「備品」用の武器しか無かったらどうなるか。もしくはその逆は?
そう考えた彼は「人間」にも「備品」にも使用可能な装備を用意したのである。これは「工具」である、という屁理屈までこしらえて。
合衆国軍上層部にも彼が抱いたのと同じ危惧を憶えている者がいたらしく、この屁理屈は採用された。

開戦時には本装備はM1バズーカの補助兵器として前線に広く配備されていた。
弾速が遅いため移動目標に対する命中率はM1バズーカより劣っていたが、曲射により射程は大きく上回っていたためその方向で活用された。
(バズーカなどの後方爆風が強い兵器は構造上、大きな仰角が取れない)
しかし、本装備が真価を発揮したのは市街戦など視界が効かない戦場である。
バズーカが使用できない屋内や個人用掩蔽壕などからほぼ無音で発射できる本装備は同盟軍にはほぼ必ず奇襲となった。
これにより市街戦における同盟軍戦車部隊の損害は事前想定を大幅に上回るものとなった。
もちろん、歩兵部隊に対しても積極的に使用されたため戦死者もうなぎ登りである。
さらに、地下要塞内の戦闘では合衆国軍が使用できる最大火力として猛威をふるった。
攻略側の同盟軍は無反動砲の類が使えないため軽機関銃や手榴弾だ主力であるが、本装備により分隊単位で吹き飛ばされたのである。

本装備のもう一つの長所に「汎用性の高さ」が挙げられる。
発射薬が必要ないので発射筒の中に入るならば何でも発射できたのである。
工兵隊には発破用爆薬を発射できるように加工するマニュアルが公式に作成されており、前線でも歩兵たちがよく手榴弾を複数束ねて撃ちだしていたという。
(制式砲弾もバリエーションに富んでいたことは言うまでもない)

本装備は、耐久性は要求されるが工作精度はそれほど求められないため合衆国陣営の諸国でも広く使用された。
ソ連では火炎瓶や簡易焼夷弾を投射することが好まれ、バルカン連邦では毒ガス弾を撃ち飛ばした。
またその特長から奇襲に最適であるため、戦後各種テロにも活用された。

680: モントゴメリー :2021/03/14(日) 00:32:25 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
以上です。
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ブリタニアさん「ついにできましたわ!最新式の対戦車兵器です!!」(棒読み)
大陸撫子さん「わあ~。すごいですね!!」()

漆黒合衆国ちゃん「……(じー)」(物陰から見てる)

ブリタニアさん「あっ。手が滑りました」()
(PIATを漆黒合衆国ちゃんの方へ投げる)
漆黒合衆国ちゃん「!!」

ブリタニアさん「どこに行ったのかしら?見つかりませんわ」
大陸撫子さん「まあ大丈夫でしょう。私たちが見つけられないのだから、『彼女』には見つかりませんよ」
ブリタニアさん「それもそうですわね。ではお茶にしましょうか」
(二人が遠ざかる)

漆黒合衆国ちゃん「(シュババババ)」
(PIATを抱えて全力奪取)

漆黒合衆国ちゃん「うーん……。私のM1バズーカの方が優秀ね!彼女たちも大したことないわね!!」
日英コンビ「計画通り……(黒笑)」

漆黒合衆国ちゃん「でも、色々手を加えれば使えそうね。……できたわ!!」
(「UP」完成)
日英コンビ「ヴェアアアアア!!!!」

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最終更新:2021年03月30日 21:52