643: ham ◆sneo5SWWRw :2021/03/15(月) 01:51:55 HOST:sp49-98-143-53.msd.spmode.ne.jp
戦後夢幻会ネタ ham世界線 複葉機の宴 


鈴谷艦長で史実転生者の木村昌福は、夜間雷撃に驚きつつも、内心「やはり」という感情があった。
夢幻会と交流している彼は、転生者たちから英軍の複葉機の優秀さについて聞かされていた。
そんな彼にとって、この攻撃は予想できた。

「『こんなこともあろうかと』と、倉崎と松田が言いそうだな」

彼は誰にも聞こえないようにそう呟きながら、飛行長に艦載機の発進を命じた。


フォーミタブルより発進した機体は、第826飛行隊のアルバコア12機と第829飛行隊のアルバコア5機、ソードフィッシュ4機の計21機だった。
既に遭遇時点で南に退避を開始したフォーミタブルであったが、好戦的な艦長は、地中海での夜間雷撃の例を採り、攻撃を決断した。
第826飛行隊はレパルスを追いかける重巡3隻(第7戦隊)に、第829飛行隊はPOWを攻撃する重巡2隻(鳥海、摩耶)に向かった。

第829飛行隊はアルバコア隊とソードフィッシュ隊に分かれて2隻の重巡に狙いを定めた。
だが、彼らの前に鳥海、摩耶の零式観測機が襲い掛かった。
ただの弾着観測機と油断していた彼らだが、その侮りは血によって償われた。
元々、零式観測機は敵観測機と空戦することを前提に設計された機体だ。
無類の安定性と高い格闘性能を持っており、史実ではF6Fすら墜とした零観にとって、複葉雷撃機は鴨同然だった。
さらに川内の九五式水上偵察機、おまけに三座の鬼怒の九四式水上偵察機も襲い掛かった。
ただでさえ運動性が悪いのに、魚雷を積んでさらに悪化している英軍機は次々と撃墜されていき、ついには射点に着く前に魚雷を捨てて遁走した。

一方、第826飛行隊は先頭に出ようとしている熊野に目標を定めた。
第7戦隊は、前に出る熊野を避けようと鈴谷と三隈が右側にズレて二列となっていた。
このため、左舷方向から雷撃する彼らにとって熊野が手前、鈴谷と三隈が奥にいる形となっていたからだ。
しかし彼らは突如として、第826飛行隊は火の雨に降られた。
鈴谷の零式観測機が落とした二式六番二十一号爆弾一型、いわゆるタ弾である。
たった2発であるが、胴体こそ金属製だが、翼は燃えやすい羽布張りのアルバコアには効果的であり、次々と燃えて墜ちていった。
それでも雷撃目標に向かうアルバコアだが、そこへ鈴谷から発進した瑞雲が襲い掛かった。
この瑞雲は倉崎謹製13.2mm機関銃のガンポッドを翼下に取り付けており、翼内機銃も弾数の多い13.2mm機関銃4門を積んでおり、その弾幕は強力だった。
さらに投弾後に上空に上がって熊野機と三隈機と合流して3機となった零式観測機も襲い掛かる。
それでもなんとか射点に着いた1機のアルバコアが魚雷を落とし、主翼の機銃を撃ち掛けていった。
しかし、彼らが必死に放った魚雷は上手く躱されてしまった。

結果として、彼らは1発も魚雷を当てられずに終わり、逆に第826飛行隊のアルバコア1機を残して、全機撃墜されるという燦燦たる結果に終わった。
仮にも、(英国側の認識として)航空機"後進"国と見なしている"東洋の島国"の"複葉"の"水上機"に空戦で負けたというのは、英国側に大きな衝撃を与えた。
この結果を受けた英海軍は、早々にアルバコアの運用停止を決定し、アメリカのGM社からターポン(TBM(GM社製TBF))を大量購入することとし、アルバコアは42年4月を以て、英海軍から消えた。
しかし、そんなアルバコアがこの攻撃で唯一挙げた戦果は、後世の語り継がれていくことになる。
なぜなら、熊野に雷撃した機が撃った機銃が熊野の艦橋に命中し、第7戦隊司令官、栗田健夫少将を戦死させたからだ。


以上です。
栗田さんには申し訳ないけど、初期設定から戦死してもらうつもりでした。
クリターンがいけない。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年03月16日 11:19