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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです 幕間



「めっさ暑いわ…。」


向こう側では今となっては懐かしきワイドショーを造成したゼルモニターで流しながら戦艦大和の甲板で女性は呟いた。
極寒の北国の出身である彼女にとって温暖化が叫ばれるこの世界の高温多湿の八月の日本は灼熱地獄である。
向こう側はテラフォーミング技術で温暖化が叫ばれているのは最早過去のものと成りつつあり日本の気温も安定している。
茹で上がったタコの様に顔を赤くし耐えきれず身に付けているPVMCGで空調フィールドを展開する。


「ふぃいいい、生き返るぅ…。」


若干おっさん臭い言葉を口にするがそんな彼女の容姿。
銀色の髪に青い瞳、そして白いドレス、物語に出てくるお姫様という言葉が非情に似合う。
名はアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ、ロマノフ王朝の最後の忘れ形見。
…少々幻想をぶち壊してしまっているかもしれない。


大和は条約調印後ハワイから日本へとやって来た。
しかしまあ大半は海上保安庁に逮捕されてたが大和の進路妨害をしようとする船の多さには辟易する。
大和が回避義務のある右舷から群れ成して来るが急減速可能な大和が急停止するとそのまま通過せず大和の方に向かってきた。
トラクターフィールドでそのまま上空に上げて通過させ左舷に降ろした時の乗員の顔は痛快であった。
その後それらは海上保安庁に御用となった。
航行記録からも停止している船目掛けてやって来たのが丸わかりな以上逮捕は免れないだろう。

そして大和が見える陸地には見物人ばかりだけでなく、
平和団体や護憲団体を名乗る謎な集団が大勢で密集し聞こえるよう大きな声で唾を飛ばし雑音を放つ。
三密回避とかは何処へやら、クラスター待ったなしである。


『戦艦大和が見えました!東京湾へと入ってきます!』

『もっと近づけませんかねえ?』

『自衛隊のヘリコプターから警告があるためにこれ以上は近づくことはできません。
またこれ以上の接近はパイロットの方からも安全確保のため出来ないと言われています。』

『いやいやそこをなんとかしてみてく下さいよ。」


ヘリから生中継がワイドショーに流れる。
司会者はもっと近づけないかなどと勝手な事を言いそれを見て随分とまあ懐かしい光景だと感じアナスタシアはくすりと笑う。

向こう側では事象情報の取り扱い資格や情報伝達の公平性、正確性の観点から駆逐されてしまった番組だ。
同様の番組といえば事象情報解説番組ぐらいかしかしそれも司会者や解説者が憶測や自分の所感のみで語ることは禁止されている。
それぐらいマスメディアというものに対して向こう側は厳しい。
加え先の戦後処理において報道機関内部の総入れ替えが行われたことも大きい。
そしてそれはSNS等にも当てはまる。

さっと電子の海を巡ってみれば出るわ出るわ。
向こう側の日本を軍国主義だの悪の枢軸だのナチスだのとまあ憶測と自分の思い込みだけで好き勝手言えるものだと感心する。
しかもそれをさも真実のように流布するという、向こう側のSNSでは即アカウント停止案件である。
対して此方側のSNSは正確性よりも"社会的に正しいこと"、"自分たちの主張を肯定すること"が求められる。
例えそれが間違っていたとしても…。

そして報道ヘリのカメラ達がアナスタシアの姿を捉える。


『戦艦大和の上のお姫様の様な格好をした女性、あれが駐日大使就任予定のアナスタシアさんでしょうか!?』

『ヘリコプターもっと近づけて!顔がしっかり映ってないよ!』


そうアナスタシアは駐日銀河連合日本・神崎島大使として着任予定なのだ。
しかしまがりなりにも駐日大使をファーストネームで呼ぶのは如何なものかとアナスタシアは呆れて物が言えない。
上空、そして造成されたモニターにも大きな音が響く。


『うわあああ!?』

『どうしたの?ちゃんと撮影してくれなきゃ困るよ、もう。』


司会者の発言にそういう問題ではないとアナスタシアは焦る。
報道ヘリと海自の哨戒ヘリが接触し落下する。
しかし海面に叩きつけられることは無かった。

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『ヘ…?ロボット?』

『もうなにやってんの!映像が途切れたままだよ!!』


ヘリは数機の機動兵器、向こうの陸自でも採用された異性起源炭素工作機械の打ち上げ施設に突入しそう機動兵器、
そして異形な人型機動兵器のトラクタービームで引き上げられていたからだ。


『目がぁ!目がぁ!?』

『パイロットさん!?』

『チョット!リポートは?』


報道ヘリのパイロットに異常があったようだ。
そしてアナスタシアに声を掛ける人物が、


「アナスタシア生体。」

「シビアさん、ということはあのギムス・カルバレータを操っているのはネメアさんでしょうか?」

「肯定である。」


ティエルクマスカ連合加盟国ゼスタール合議体のシビア・ルーラ、
アナスタシアとは先の欧州大戦の東部戦線で遭遇して以来数年来の付き合いがある。


「先程の事象情報報道機関のヘリの墜落の原因と思われるものが判明した。」

「本当?」

「肯定、個人携行可能な違法改造された小型低出力光学照射機器による失明が原因と思われる。」


シビアはゼルモニターを造成、空にレーザーポインターを向ける人物が映し出される。
対比するように報道ヘリが映し出される。


「日本政体における左派系政党の支持母体の政治集団の構成員であると推測される。
この人物の持つ小型光学照射機器が該当するヘリに照射されていた。」

「あいつら…!」


それらの集団はアナスタシアが嫌悪する存在と似た考えの者達、
現在でこそ向こう側では駆逐されつつあるが此方側では未だ健在であることをアナスタシアは思い出す。
そんなことを考えていると衝撃音が二つ、振り向けば陸地より煙が上がる。


「「……。」」

「アナスタシア生体。」

「何かしら?」

「新たに別の報道機関のヘリが二機墜落、原因は小型無人機のローターへの接触と係留気球のローターへの巻き込みと推測する。」

「向こうでも市民団体が在日米軍の基地周辺でして危険とされていた行為よね…。出どころも分かる?」

「肯定である。無線通信の発信元及び気球の係留元は先のと同系の団体のようだ。」

「流石仮想生命体、と言った所かしら。」

「肯定意見として評価する…情報を修正、墜落先は…先の団体の支持する左派系政党の党首ら国会議員達が集会を行っている地点だ。」

「何とも発言に困るわね…。」


ため息を吐くアナスタシアは空を見上げる。


「そういえばもうそろそろかしら?」


その宇宙(ソラ)の果てには"彼女"が本来の役目を果たしている筈だった。

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以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2021年03月25日 23:19