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現代日本大陸化&銀連神崎島クロスSS ある日、日本が『超』大陸と化してしまった件セカンドシーズン?番外編その20 とある馬が超大陸世界のUMAに転生したようです その2


さて、中身がツインターボだったのが発覚したのはさておき、このUMA・トリプルターボ(以下ターボ)をどう育てるか。それが今後の彼の成績に直結するだけに、事は慎重を要する事となった。
取り敢えず調教メニューをこなしつつ、彼の様子を慎重に見守りながら方向を決めていく事にした。
そして分かったのは、前世同様に他のUMAが苦手だという事だ。元々他の馬に対して臆病だった上に、この世界の馬は「UMA」と称される程の巨体を誇るのだ。
前世と違って小柄では無いのだが、ビビる気持ちは分からないでもない。自分達も当初はビビってしまった位だし。
その為、方向性は早々と決まる。前世同様、最初にスタートダッシュでハナに立たせ、そのままゴールまで逃げ切る。先行逃げ切りタイプだ。
彼の性格を考えるとそれが一番であり、何よりもそれこそが彼の生き様だからだ。
そうなると、懸念となるのはダッシュ力と最高速度、そして何よりスタミナだ。ファン達から「逆噴射」と自嘲気味に言われた無様な戦いをさせるわけにはいかない。
それにスタミナをつければ、短距離は勿論長距離でも戦える様になる。
幸いな事に彼の体は肺活量に優れており、しっかりと体を作り上げれば下手なスタミナ馬顔負けの耐久力を身に付ける事も出来る。
何より彼自身も自覚がある為か、前世での小食振りと比べて頑張って食べる様に意識していた。
かくして調教は順調に進み、UMAである事を考慮してもがっしりした体躯になりつつあった。これは前世を超える馬になる。スタッフはそう確信したという。

さて、いよいよデビューが決まり誰を騎手として採用するか。それを決める会議を行っている所に、一人の騎手が直談判にやってきた。
やって来たのは、何と競馬会のレジェンド・武勇 隆(たけゆう たかし)だった。彼が来たという知らせに、一同は顔を渋くする。
当然だ。ファンならご存じの事だが、彼はツインターボに騎乗した時に大逃げをせずに出遅れ、そのまま最下位で惨敗するというやらかしをしているのだ。しかもその際

「最初から逃げるつもりはなかった」

という趣旨の発言を行って、ファン達から「期待に背いた」「生涯逃げ馬じゃなくなった。師匠の経歴に傷をつけた」等と激しい非難を受けている。
今になって、どの面を下げてここに来たのか。そう思いながらも、会うだけ会う事にした旗舘達。
すると・・・・・彼らの姿を見るなり、何と武勇が土下座したのだ。目を白黒させる旗舘達。
武勇曰く、報酬も何もいらないからどうか彼に乗せて欲しい、と。
理由を聞くと、ツインターボの経歴に傷を付けた事をずっと後悔しており、その償いをしたいと。だが・・・旗舘はそれだけでは無いと感じたのだ。
その辺りを問うと、武勇はこう言った。

武勇「自分も50を過ぎ、先が長いとは言えない。その様な事を考えている所に、今回の出来事(師匠の転生)を知り、言い様の無い運命を感じたのだ。騎手人生最後の総仕上げとして、この馬を栄光へと導くのだ、と」

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嘘を言ってるとはとても思えない武勇の顔を見て、旗舘は思う。負けさせる為に騎乗する騎手は居ない。この男は、本気で彼を栄光へと導く気だ。と。
しかし、肝心のターボ本人がそれを許すかどうか。そう思った旗舘は、ターボに乗る条件として

  • 本人が嫌がった場合、騎乗は許可出来ない
  • 一度でもターボの走りに反する勝負をした場合、問答無用で降ろす

という条件を提示。武勇はそれを飲む事を承諾。ターボと面会する事に。
武勇の姿を見たターボは、少々不機嫌そうな顔を見せる。それはそうだ。自分が得意とする戦いをさせてもらえなかったのだ。顔が渋くなるのも当然だ。
だが武勇は引かなかった。そういう反応は織り込み済みだ。ターボの顔を撫でながら、武勇は語り掛ける。

武勇「あの時は本当にすまなかった。お前らしさを潰してしまう無様な戦いをしてしまった。その事は、今更言い訳はしない。あれは、自分が悪かったのだ」

武勇「その上で、お願いしたい。もう一度だけ、俺と共に戦って欲しい。お前が転生したと聞いた時、俺は運命を感じたんだ」

ターボ「・・・・・」

武勇「俺ももう、そう長いとは言い難い。その残りの騎手人生を、お前と共に駆け抜けたいんだ。前の生涯では果たせなかった、栄光への道を。だから、頼む!俺をお前に乗せてくれ!!」


そう言って、ターボに頭を下げる武勇。その様子を黙って見ているターボ。
彼は感じていた。武勇の熱い想いを。伊達に10年以上生きてはいない。だからこそ分かる。本気で何かを成し遂げようとする漢の熱い想いという物を。
それを感じたターボは、武勇の顔をそっと舐める。ターボは賭ける事にしたのだ。この漢の想いに。
かくして騎乗する騎手も決まり、デビュー戦・3歳未勝利戦を迎える事となる。

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~中山競馬場・3歳未勝利戦・ダート2400m~


実況「さぁ、今年もやってまいりました。全国から初デビューを果たす3歳馬達が集結する、この3歳未勝利戦。しかしながら今年は、例年以上の観客達で中山競馬場の観客席が埋め尽くされております」

実況「それもその筈、今回デビューするUMAの中に奇跡の転生を果たしたツインターボが、八番・トリプルターボと名付けられた新たな体を得て参戦しているからです。文字通り生まれ変わった彼は、果たしてどの様な走りを見せるのか」

実況「彼はどう戦うのでしょうか?前世同様に逃げ切りをしていくと思われますか?」

解説「気質等が変わってなければそうなるでしょうね。ただ、他のUMA達がそれを許すかどうか。見事な大逃げを決めれるかが、勝敗の分かれ目になると思います」

実況「騎乗するのは、レジェンド・武勇 隆騎手。これに関してはどう見ますか?」

解説「そうですねぇ。彼は以前、ツインターボの経歴に傷を付けるというやらかしをしていますからね。土下座してまで頼み込んで今回乗る事を頼んだそうですが、果たしてこの馬の持ち味を生かし切れるかどうか」

解説「他にも『カナリハヤイネン』をはじめとする先行逃げ切り型のUMAが六頭も居ますからね。他にもスタミナに定評がある『ハミルトンシンボル』等の追い込み馬も居ますからね。これらをどう躱すかも、勝負のポイントになると思います」

実況「有難うございます。さぁ、各馬ゲートイン完了。係員が離れました。・・・・・・・・スタートしました!!」


BGM・布袋寅泰「スリル」


各馬一斉にスタートを切る。レース序盤から、師匠を含む七頭の逃げ切りUMA達が先頭ポジションを取るべく、熾烈な先頭争いを始める。
だが経験の差か、スルスルとトリプルターボが先頭に出る。


実況「さぁ先頭争い。先陣を切ったのは武勇騎手が騎乗するトリプルターボ!それを躱そうと大外からカナリハヤイネン、そしてハヤテゴーやや遅れてクロジョンソンが追い縋ります」

実況「やや後方からヤマトジャービス、そしてそのやや後ろからハミルトンシンボル等が続きます」

解説「トリプルターボですが、すんなりと先頭に出れましたね。ここはやはり経験の差でしょうか。しかし他のUMA達も追い縋っています。これは、スタミナの消耗は避けられないかもしれませんよ」

実況「三馬身差程の差で後方集団もピタリとマークしています。さぁ第一コーナーを回って第二コーナーへと差し掛かる。この辺りで順番が決まってきます」

実況「先頭を走るのはやはりこのUMA、トリプルターボ。ターボエンジンを全開にして独走態勢に入ろうとしています。三馬身程離れてカナリハヤイネンとクロジョンソン。ハヤテゴーはやや遅れだしているか」

実況「前半のタイムですが、56秒!?何と56秒というかなりのハイペースで突き進んでおります!後方からハミルトンシンボルが追う!先頭を争った逃げ切り型のUMA達は、徐々に順位を落としつつあります!」

実況「ハミルトンシンボルとヤマトジャービスが懸命に逃げるトリプルターボを追う!しかし差が・・・・・差が一向に縮まりません!!これはどうしたというのか!?」

解説「後方集団もバてていますね。トリプルターボのアルティメットハイペースに巻き込まれて、スタミナを消耗してしまったのでしょう」

実況「しかし肝心のトリプルターボは、一向に速度を落としません!そのまま第四コーナーを回り最後の直線に入ろうとしています!」

実況「さぁそれでもハミルトンシンボルとヤマトジャービスが順位を上げてきているが、肝心のトリプルターボとの距離は縮まらない!スタミナを重視したトレーニングを積んでいたと聞きますが、その話は真実だったようです!」

実況「さぁ直線コースに入った!残りは400m余り!トリプルターボ、鞭が入った!ハミルトンシンボルとヤマトジャービス!大外からはラージカップも追い込みをかける!しかしトリプルターボとの距離は縮まらない!」

実況「吼えろトリプルターボ!!増設されたターボエンジンは伊達ではない!!唸りを上げるターボエンジンそのまま大差で逃げ切った!!」

実況「前世同様、いや前世以上の驚異の逃げ足で駆け抜けました!蘇った逃亡者トリプルターボ!!デビュー戦を、貫禄の大逃げで勝利しました!!」


前世を凌ぐ驚異的なスピードで、見事な先行大逃げを決めたターボ。武勇騎手も、何度もガッツポーズをしている。
観客席からは大きな歓声が響いている。多くのファン達が、かつての師匠を凌ぐ豪快な大逃げに惜しみない拍手を送っている。
かくして、ターボと武勇騎のコンビによるデビュー戦は見事な勝利で終わった。そして・・・このコンビによる新たな伝説がスタートしたのである。

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以上です。初めての競馬実況の描写となりましたが、如何だったでしょうか?
実況らしさを少しでも出すべく句点を可能な限り減らしましたが、らしさが出せているか、少々心配です(汗)
で、相方の武勇騎手ですが、元ネタは言うまでも無く武豊騎手です。知ってる現役騎手がこの人だけだったので(ヲイ)。まぁリベンジの機会を与えても、バチは当たらないかなと。
それと、レースで出ていたUMA達ですが、二頭程元ネタが居ます。後半追い上げようとしていたハミルトンシンボル(2着)とヤマトジャービス(3着)の二頭です。それぞれ

  • ハミルトンシンボル→アイルトンシンボリ
  • ヤマトジャービス→ダイワジェームス

となっております。師匠が七夕賞で戦った馬達ですね(汗)
そして「吼えろトリプルターボ!!」のセリフは言うまでも無く、実際の実況で出た「吼えろツインターボ!!」です。これは外せないですからねw
この後も師匠達の戦いを書いていきますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
wiki掲載は、自由です。

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最終更新:2021年03月31日 09:19