902: 弥次郎 :2021/04/11(日) 23:02:13 HOST:p2938249-ipngn19601hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS 「不屈なる偶像」
C.E.世界のアイドルや芸能人たちが突如として平成世界の芸能界へと電子上、あるいは現実において殴り込みを敷けたこと。
それは、控えめに言って子供相撲に大人の力士が集団で殴り込みに入るよりもさらにひどいものであった。
まさに鎧袖一触というべきか。積み重ねた芸能に対する知識や経験の差。心理学や社会学、あるいは大衆心理といった学問を盛り込んだ『売れる』マーケティング。
さらには、アイドルたちをケアし、磨き上げるための化粧品や生理用品などの技術の差。さらには、壮絶を通り越した競争の理のC.E.。
なによりも、突き詰めたアイドルというモノが決戦兵器とまでなる故の力の注ぎ方の差。負ける要素は世界間のギャップしかない。
故にこそ、平成世界の人々はそれらに熱狂することになった。
彼ら彼女らの持つのは「突出した個」。
凡人凡俗の及ばぬ高嶺の花。具現化したイデア。まさにアイドル。
届かぬ、届き得ぬ、至高の輝きを放つ綺羅星の如く。あるいは手を潜り抜けてしまう蝶の如く。さながら、手折ることも躊躇う華の如く。
そんなアンビバレントの存在だからこそ、人々はそれに惹きつけられて止まないのだ。恋焦がれ、愛を抱き、他を目にいれなくなる。
だが、それは圧倒的強者の出現であると同時に、それまでニッチを占めていたものを追い立て、決定的な落伍者を生み出すことになった。
言うまでもないことだが、アイドルにお金を費やすのは一般市井の人間であり、得ている糧の中から教養娯楽費としてねん出される有限のもの。
また、アイドルに熱中するための時間もまた有限であるのは言うまでもない。一日は24時間と決まっており、生活を送るとどうしても余暇の時間は限られる。
では対象Aと対象Bが同時に存在し、どちらかを選べと言われたとき、その対価に限りあるモノを費やすとき、人はどちらを選ぶか?
その選択を選ぶのは個人の考えや思考パターン、好みによることだろう。だが、重要なのは離れる客層というモノが存在することだ。
両方を選ぶことなどできるのは少数であり、たいていの場合はどちらかを選ぶことになる。そして、選ばれるモノがあれば、選ばれないモノもある。
長々と語ったが、どういうことか。ひどく生々しいことを言えば、これまで得ていた収益や客層が消えてしまうということだ。
また、『突出した個』という衝撃は、ある種平成世界の客層の感覚を狂わせた。
言い方は悪いが「量産型アイドル」というか、個人だけでなく、グループアイドルという商法が流行りだした頃に、カウンターが浴びせられ、トレンドが回帰したのだ。
ビジネスモデルとしては決して間違ってはいないグループアイドル方式であるが、間違っていないからと言って勝てるとは限らないのである。
まして、C.E.世界はその手のグループアイドルを打ち倒せる個性のアイドルたちが年中戦争をしているようなものだから。
これまでは、いうなればC.E.世界基準で言えば生ぬるいにもほどがある世界であった。無論彼らの観点では必死の争いの場であったのは確か。
けれども、相対的に見て、あるいは絶対的に見て、どちらが上であるかというのは明白。
そしてそこから放たれる刺激の強さというのは、C.E.世界のそれの方が圧倒的に上だ。
そうなれば、一度強い刺激になれてしまえば、次もまたそちらを選ぶというモノ。
903: 弥次郎 :2021/04/11(日) 23:02:55 HOST:p2938249-ipngn19601hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
結果、平成世界の芸能界は阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのである。
無論根強い人気であるとか、固定層を持つとか、同じく個性を持つことでそういった方面で活躍する平成世界のアイドルたちもいた。
だが、そんなのは少数だ。流動的な人気が巡ることで本来ならばキャパオーバーとなる芸能界を購買層が支えていたのだから。
そして、平成世界のアイドルたちは華やかなる首都圏での競争から地方巡業という道へ流れる。
しかし、その地方巡業さえも、キャパシティーオーバーなほどに人があふれてしまっていた。いうまでもなく、その程度の考えは誰しも思いつくものだからだ。
斯くして、少なくはないアイドルや芸能人たちは自らその仕事を離れたり、あるいは別の職へと手を付けることとなる。
彼ら彼女ら平成世界のアイドルたちがその道から遠ざかってしまった理由として最も大きいのは、理解できてしまったことにある。
彼らも彼我の実力差を理解してしまったのだ。立ち方一つ、トーク一つ、あるいは歌唱や演技力に差があるのだと。
理解できてしまったからこそ、どれほどの研鑽を積んでいたのかを把握したからこそ、心おれてしまったのかもしれない。
「あんなものに勝てるわけがない」
「次元が違いすぎる」
「勝負するだけ無駄」
諦めた、あるいは主柱となるものを折られてしまった人間は早々に立ち直れない。
まして、それに心血を注いできた者ほど、それへの依存というモノが大きい。
アイデンティティーであり、自らの肉体の一部であり、もはや精神の、魂の一部とさえいえる。
それが欠けるか欠落してしまえばどうなってしまうかなど、推測する必要も何もない。欠けてしまえば、人は簡単に動けなくなってしまうのだ。
だが、彼ら彼女らも早々に諦めるなどしない。
プライドと誇りと矜持がある。
だから、遥か先を行く先達に追いすがるべく、一歩を踏み出すのだ。
「それでは、次の方、お願いします」
「はい」
地球連合の出資する芸能事務所の主催するオーディションに、また一人平成世界のアイドルやアイドルの卵たちが挑む。
連合の企業が求めるラインは極めて高いハードルだ。生半可なものでは蹴落とされるどころか、見向きさえもされないことがあり得る。
だが、何千何万の果てに、C.E.世界のお眼鏡に叶う逸材が現れることはありうる話だ。
あるいは、今はそこらの石ころであろうとも、磨きぬけば玉石となる原石があるかもしれない。
かもしれない、あるいは可能性の話にすぎない。けれど、あきらめず、立ち上がり、進み続ける者にとっては十分すぎる未来。
その直向きな、あるいは愚直なまでの献身や覚悟こそ、人が諦めを踏破し、新境地に踏み込む際に欲するもの。
C.E.世界の強大なアイドルや芸能人たちに、身一つを以て立ち向かうという勇気、決心、意思。
まさにそれこそ人間の真骨頂。人間賛歌の神髄。
人を惹きつけて止まない、人の美しさ、気高さの結晶。
人はそれを体現したものをこう呼ぶのだ、「Idea(イデア)」、すなわち「アイドル」と。
904: 弥次郎 :2021/04/11(日) 23:04:11 HOST:p2938249-ipngn19601hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
折れるけど折れない話になりました。
お後がよろしいようで(適当
最終更新:2023年10月15日 00:45