188: 635 :2021/04/16(金) 07:24:33 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです 幕間 対馬へ至る道
東京八王子市、柏木真人の両親の住む実家。
そこには両親の柏木真男と絹代、妹の山咲恵美とその一家に加え駆けつけることの出来た親類達が集まっていた。
全員が固唾を飲んで恵美のPVMCGで造成した大型ゼルモニターへ視線を向けている。
その視線の先ゼルモニターには公共放送の番組が映り、空中に浮かぶ白い戦艦が巨大な竜のような怪獣と対峙していた。
テレビの解説によれば伊耶那美命と融合した戦艦大和で怪獣の方はティアマトという名前の神様だという。
出てくる人物の解説もありゲームや小説のキャラクターなどもいる。
その一隻と一体の間で重力子の嵐が巻き起こり、空間に穴を開くというここにいる誰も見たこともないような戦いが繰り広げられている。
怪獣の一撃が戦艦を掠め、バリアみたいのに弾かれる度に真男は爪が肌を貫かんばかりに拳を握りしめる。
あの場所には息子と義娘、可愛い孫娘がいる。
同様に絹代も一撃の度に小さな悲鳴を上げる。
その手には赤い糸の結び目が千以上縫われた布が握られている。
息子夫婦よりサルカスとかいう星に飛ばされそこが宇宙怪獣から侵略を受けて、義娘の御両親が生きていたと連絡があり、
同時期に始まったドイツによるヨーロッパ各地への侵攻が開始されたが両親夫妻はどこか別世界の事のように感じていた。
自分たちにとって心配すべきは息子夫婦だったからだ。
しかし…それが、戦争が現実のものとなった。
全ての番組が慌てるアナウンサーの映像に切り替わり対馬に何かあったと告げられた。
その後直ぐに始まった二藤部総理の会見で分かった。
韓国軍による対馬侵攻。
一瞬首相が何を言っているのか分からなかった。
自分たちにとって戦争なんて遠い国の出来事でしかなかったからだ。
息子夫婦のいるサルカスのことに関しても帰国が遅れるかもぐらいしか感じていなかった。
あのティ連がいるのだから。
だがあの場面、自衛官が殺される瞬間と続く夥しい日本人の遺体が家のテレビで流れて漸く現実として認識した。
あの時は真男夫妻と姫迦、妹の恵美とその子供と一緒にテレビを見ていた。
真男は姫迦が、恵美は自分の子がテレビの画面を見ないよう必死に抱きしめ、絹代は映像を直視して失神した。
その後に公共放送で対馬奪還へ自衛隊や神崎島、米軍が動くニュースが流れ一安心したのもつかの間、今度はJ-ALERTが鳴り響いた。
その時公共放送のアナウンサーは急に原稿を押し付けられ困惑しながら原稿に目を通すと固まった。
アナウンサーは震える声を絞り出す。
対馬で原爆が使用されたと…。
そこからは急転直下の連続だった。
日本による衛星兵器による報復攻撃。
対馬と韓国で起きた異変。
対馬にいる何かに敗退した艦娘達。
そして二藤部総理による緊急会見。
「対馬で殺された方達の怨念により新たな深海棲艦、大怨霊ともいうべき存在が誕生しました。」
「その深海棲艦により戦艦大和は行方不明となり、艦娘も大きな被害を受けています。」
怨念?大怨霊?
「その深海棲艦は対州要塞姫と名付けられ、対馬の核兵器にも原因があることが確認されました。」
「対馬の核兵器には伊耶那美命、死を司る神の遺体が使われ対馬の対州要塞姫に降臨していると思われます。」
「またそれが原因かあの世とこの世の間の門が開きかけています。」
「対州要塞姫を止めらない、または完全にあの世の門が開ききった場合世界規模での大災害が予測されています。」
神の降臨、あの世の門。これは現実の総理の会見なのだろうか?
「それに対処するために日本と神崎島、そして何より艦娘達が対応出来る神々に降臨して頂く準備を進めています。」
「国民の皆様におかれましては大和の帰還と神の降臨の成功を神仏に願って頂くようお願い申し上げる次第であります!!」
今まで見たことない程真剣な表情と必死な声で国民に願う総理の姿が全て本当のことだと認識させた。
その会見の最中息子より電話が来た。
189: 635 :2021/04/16(金) 07:25:45 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
自分とフェル、姫迦も対馬に渡ると一言だけ。
頭が真っ白になった。その後は良く覚えていない。
絹代や恵美が必死に息子夫婦と連絡を取ろうとするが繋がらずついに作戦決行が決定された。
真男夫婦は必死に息子夫婦のために今直ぐ何か出来ないかと考え自宅の仏壇のご先祖様に願うことしか思いつかなかった。
集まれる親類に一緒に願うよう頼み込み、集まり自宅の仏壇で全員で息子夫婦の無事と作戦の完了を祈願した。
そして親類の一人戦前生まれのお婆さんの提案で千人針を作り上げることとなった。
そして親類だけでなく近所の人にも頼み込みなんとか完成した千人針、
その布は赤ちゃんの時の初めて息子をくるんだ布を使った思い出のものであった。
しかし完成してから気づいた、連絡もつかないのに息子に渡せるのかと。
結局柏木には渡せず絹代がテレビを見ながら握りしめることとなっていた。
八王子柏木家に集まった全員が固唾を飲んで画面を見守る中、呼び鈴が鳴る。
しばし無視していたが鳴り止まない為に切れた恵美が兄の大事な時に如何なることかと文句を言おうと玄関に向かう。
玄関を開け怒鳴ろうとした恵美は固まった。
そこにいたのは、
「恵美さんお久しぶりなのです。今日はお願いがあってきたのです。」
いつもの女学生の服ではなく機械の鎧を纏った艦娘の電であった。
電はぺこりと頭を下げる。
「お忙しい中申し訳ありません。頼れるのが最早ここだけとイナヅマに聞きまして。」
「な、な、な!?」
そしてもう一人別の人物、金髪碧眼の長身の女性がおり、恵美は指を差し固まる。
「申し遅れました。私はアルトリア・ペンドラゴン、貴女の御家族の元へ行くために貴女方の助力が必要なのです。」
金髪の女性、騎士王は深々と頭を下げる。
白い馬を従え、白銀の鎧を纏い大きな槍を持った女性、テレビの解説に出てきたゲームのキャラクターの一人だった。
「父ちゃん冷蔵庫にケーキあった筈よ!持ってきて!!」
「母ちゃん!一番いいお茶どこ――!?」
「予備の座布団どこだ!」
「仏間のもん全部どかせ!折りたたみでいいから机も持ってこい!」
柏木家はフェルさん来襲事件以来の混乱に見舞われていた。
艦娘に加え、ゲームのキャラクターしかも主役級のいきなりの御登場である。
電がお気になさらずと言っても聞かず家族親類縁者纏めて大騒ぎ。
「ささ、粗茶ですが…。」
電とアルトリアは仏間に通され親類縁者の衆人環視の中、ピンと背筋を伸ばし正座で柏木の家族とテーブル越しに対する。
二人は礼儀として茶に手を付ける、急ぎたい所だが柏木一族も一呼吸置くことが必要だろうだからだ。
しかし日本の民家の仏間でオルテナウス纏った電とランサー・アルトリアが正座して茶をすするというのも凄い光景である。
「本日はお願いがあるということでしたが。」
恐る恐るといった様子で二人に尋ねる真男。
電とアルトリア、二人は互いの顔を見ると頷き合い電が発言する。
「柏木真人さんが愛用していたとか気に入っていたとか縁の深いものを貸して欲しいのです。」
190: 635 :2021/04/16(金) 07:26:16 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
息子と縁の深いものを貸して欲しいという電の言葉に柏木の家族は困惑した。
その反応が分かっていたのだろう電は説明を続ける。
自分と一緒に来たアルトリアが柏木への最後の援軍であること。
柏木の元へ行くために対馬の海域を抜けるには時間が足りないこと。
故に柏木と縁の深いものがあれば強引に繋がりを作り海域を一気に抜けることが出来ると電は言う。
そして出来ればその柏木と縁の深いものは他者と繋がりも深ければ深いほど良いと話す。
人の縁というものは馬鹿に出来ない。
その言葉に恵美がハッと叫ぶ。
「お母ちゃん!あれがあるじゃない!!」
「あれ?」
「お母ちゃんが今持ってる千人針!それ兄貴の生まれた時のおくるみでしょ!!」
「本当ですか!!」
「ええ本当よ電ちゃん。それから親戚一同と近所の人にも千人針縫ってもらったんだから。」
「なる程それならいけそうです。」
その話に破顔する電と深く頷くアルトリア。
柏木家の庭先でこの地を発つ為に白馬、ドゥン・スタリオンに騎乗するアルトリアとその前に座る電。
電は絹代より預かった多くの人々の想いが込められた千人針で羅針盤を包むと大事に仕舞い込む。
柏木家親類一同に加え近所の人々も見送りに来ていた。
「アルトリアさん、電さん。真人を、息子のことをよろしくお願いします。」
「「お願いします。」」
頭を下げる柏木の家族と親類、加えて近所の人々も頭を下げる。
老人などは数珠を手に電とアルトリアを拝んでいる。
それらの人々に対して深く頷く電とアルトリア。
「では行きますよ、イナヅマ!」
「なのです!」
二人の声と共に空より虹の橋が掛かる。
二人を乗せたドゥン・スタリオンは地を蹴り虹を渡り大空へと姿を消した。
柏木の家族達は大空へと消えるその姿を見送る。
「行っちゃったわね。」
「ああ。」
「兄ちゃん、大丈夫かな?」
「大丈夫さ…。」
あれだけ多くの人達が助けてくれるのだから…。
真男は、柏木の父は空を見上げ息子の無事を祈った。
その日空を見上げた人々は、
「お母さん、お馬さんが虹の橋を走ってる。」
「え?…あれは、神様?」
二人の女神を乗せ天を駆け虹の橋を渡る神馬を見たという。
191: 635 :2021/04/16(金) 07:27:10 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
玄界灘、電を乗せアルトリアはドゥン・スタリオンを対馬に向けて走らせる。
湖の乙女の加護で沈むことはない。
ここに来るまでに対馬突入の準備の為に柏木家を含め幾つかの場所に立ち寄り、
最後の場所であった太宰府天満宮に立ち寄った後であった。
ティアマトの覚醒と共に再び対馬を覆った深い夜海と嵐の壁、
それらは天沼矛による神代の結界の外に出ることはないが他者の侵入を拒む。
おかげで東郷平八郎率いる連合艦隊は援護に行けず、
ティアマト覚醒前に突入していたふそうや深海棲艦達が現状最後の援軍である。
二人を乗せたドゥン・スタリオンは通常であれば西に大きく対馬を見える海域まで来た。
だが見えるのは嵐の壁のみ。
そして西、対馬より強い風が本土に向けて吹く。
その光景を見てアルトリアは呟く。
「ここまで来ましたか…。」
「ここまでじゃないのです。ここからなのです。」
電はこれからが本番だという。
電は千人針に包んだ羅針盤を取り出し針の指し示す方向を見るとその針は嵐の一点を指し示す。
それこそが二人が行くべき航路、その先に柏木がいるのだろう。
アルトリアはちらりと自分の腰に目をやる。
そこにあるのは千代田の城を訪れた際に失われた星の聖剣に代わりにとやんごとなき方より貸し出された剣。
それは熱田に祀られる形代ではなく、鎮守府よりこの国に戻されたかつて時の帝と共に海に沈んだ神代のものであるという。
「しかし、いくら王権の象徴で聖剣とはいえ日本のもの、私に扱えるのでしょうか…。」
「その剣は日本最大の龍の化身にして人のいえ神の手にすらよらず生まれた神器なのです。」
長きに渡る日ノ本の民の願いの結晶でもあるソレは星の聖剣と同質ではないが同等のもの。
ブリテンの赤き竜の化身であるアルトリアならば扱えると電は太鼓判を押す。
それにかつてそれを神ではない人が振るった記録が残されていると電は語る。
電とアルトリアはドゥン・スタリオンを降り海面に立つ。
電は懐より道真公に祈願し授かった和紙と木の枝を取り出す。
和紙には和歌が書かれ木の枝には花、梅が咲く。
歌は道真公直筆、加え花は飛梅のもの。
電は神風を呼ぶ歌を読む。
東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ
対馬からの西風が本土からの東風へと変わる。
ここは日ノ本を守る者達が集う地。
歌は日ノ本の守り九州太宰府の員外帥にして嵐の神たる天神菅原道真公のものであり歌われる梅の花もこの場にある。
そして歌を読み風を呼ぶは神鳴るもの、稲妻の名を持つ艦娘。
ならば東風、神の風が吹かぬ理由はない。
192: 635 :2021/04/16(金) 07:27:57 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
アルトリアは腰の剣をすらりと抜くと大きく息を吸う。
今この時だけは彼女の最果ての槍は使えない。
最果ての槍の本質が塔であろうとも、錨であろうとも槍の姿は破壊の具現である。
今この時必要なのは破壊ではなく、道を切り開く力。
体内の魔力炉心が動き出し莫大な力を生み出す。
草を薙ぐ神の風と竜の心臓に呼応し剣が目を覚ます。
剣が叢雲を神鳴りを呼ぶ。
その剣はこの国最大の龍、幾人もの生命を喰らうってきた災禍の具現、
祟り神たる八ツ首の暴龍の内より出現したその化身、後にこの国の最高神へと献上されたもの。
星の聖剣と同様に神と魔双方の属性を持ち合わせる神器。
だが祟り神の側面を持つこの剣は今まで破壊、殺戮に使われたことは一度もない。
ただ一度振るわれたのは持ち主を災禍より守り道を切り開く為のみ。
アルトリアは剣を大上段に構える。
剣士にとって振るう剣とは己と一心同体。
アルトリアは此度龍の血を引く剣と一体となりその化身、龍神へと至る。
ただ一刀、剣が振り下ろされる。
その一振りは八ツ首の巨龍の、赤き竜たる者の息吹、暗雲を吹き払い、空間を穿つ。
全身全霊で扶桑が振るった日ノ本全て掛けた会心の一撃には及ばねど二人が通るには十分な道を開く。
「イナヅマ!!」
「はいっ!」
その瞬間二人はすぐドゥン・スタリオンに乗ると嵐に開いた穴へと突入しその穴は直ぐに閉じた。
後は元のように嵐の壁が全てを阻んでいた。
193: 635 :2021/04/16(金) 07:28:33 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2021年04月19日 10:04