558: 635 :2021/04/26(月) 20:03:36 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです 幕間 夢の跡或いは夢のつづき
対馬の騒動から数週間。
カリカリカリと筆記する音が部屋に響く。
男が一人机に向かっていた。
部屋に一つしかないドアがノックされ、男は顔を上げると入室を促す。
すると少女と言っても良い背丈の女性が入ってくる。
「提督、キミがアレを管理することを生き残ってた彼らも納得してくれたよ。」
「そうですか。」
「理由がボクや神妃である彼女の言葉じゃなくて、彼らが自ら考えた末の結果ならば良かったのだけど…。」
「報告書は読みましたが、アレはしょうがないでしょう……。」
男、神崎の言葉にいつもの白いワンピースに青い紐ではなく古代ギリシアのローブ・キトンに青いフードを被る少女は神崎の言葉にプクーと頬を膨らませる。
「しかし提督、ボクに対してどうして敬語なんだい!?」
「ヘスティア神、貴女は神で私は一応ヒトですから。」
「ボクは君の艦娘はだろう!?」
確かに自分を楔とし艦娘として契約してるがその前に貴女機神では?と言い掛けてその言葉を飲み込む。
こんな状態の女性に何言っても無駄だと経験から分かっているからだ。
「それにボクと結婚したじゃないか…。」
「それ貴女が無理やりやったんでしょうが。」
うーといじけた顔をする炉の女神ヘスティアに対し溜息を吐く。
「しょうがないじゃないか…。君をボクの代理にして彼らに認めさせるにはボクの夫にする以外他に方法が思いつかなかったんだから。」
「まあそうなんですが…寝込み襲われて『君がオリュンポスになるんだよ!』とか言われるとは思いませんでした。」
今度はうーと赤い顔をするヘスティア。
嘆息しつつそういえばと神崎は尋ねる。
「しかし貴女は処女神の筈、大丈夫なのですか?」
「提督、訂正するけど処女神"だった"だよ。そこら辺は大丈夫さ。艦娘になってこっちの神になった時オリュンポスの誓約から完全に外してるしね。」
ええんかいと零す神崎にヘスティアはええんやでと言う。ついでに結婚相手として文句ないとか。
今まで迫ってきた男性を思い出したのか憂鬱そうな顔をするヘスティアに神崎は彼女の甥や弟を思い出す。
基準が低すぎる気が、後「これでアレらから迫られることはもうない」とかガッツポーズして言わない。
「それにね。愚弟共のやらかしの後始末任せる訳だから差し出せるものといったらボク自身しかないじゃない。」
ヘスティアは口を尖らせブーたれる。
神崎は彼女が顕現した時を思い出す。
559: 635 :2021/04/26(月) 20:04:16 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
対馬の一週間程後に起きた此度の騒動。
対馬に開いた夜海への門と創造神同士の戦い。
それは地表そのもへの影響こそ抑えられたが漏れた重力波、空間・霊的波動などが地球内部を伝搬。
地表を結界として内部で乱反射を繰り返しアトランティス直下にて収束しあるものを呼び出した。
それは空中と海上に突如として出現したがアトランティスを偶然訪れていた機神アルテミスにより海上への落下は防がれた。
アルテミスがアトランティスにいた理由?旦那(オリオン)と最初で最後の婚前旅行だとか。
余談だが身体貸してるのが艦娘アルテミスなので婚前交渉はないが彼女はアルテミス夫婦のいちゃつき見せつけられ砂糖吐いてたりする。
そしてとある理由うから急遽、オリュンポスの神々の必要が生じたが、
現在降臨しているアルテミスではそのための神格が合なかった為に別のオリュンポスの神々が必要とされた。
白羽の矢が立ったのはトラブルで建造が遅れ艦娘も顕現していなかった試験艦ヘスティア。
その試験艦ヘスティアにアトランティス直下にも出現したものより回収した存在の機構、構造一部が組み込み器とし、
炉の女神ヘスティアを直接降ろすことが決定。
八百万の神々として降ろすには該当する神格である竈神が些か問題がありすぎて取りやめとなった。
神降ろし自体には成功したのだが色々と問題が発生した
艦娘保有してる提督という立場に加え伊耶那美命の降りてる大和の夫、擬似的伊邪那岐命な神崎立ち会いの下、
神崎島の始まりの炉の火に加え、伊耶那美命とティアマトまでも動員し神降ろしをしたのだが、ここで問題が発生した。
オリジナルのヘスティアに近い神格として降りる筈だったのだがそこに無意識に介入してきた神格が存在したのだ。
ヘスティアの神格である竈神と火の神の神格に引き寄せられて恐れていた日本の神格が来てしまったのだ。
そして伊耶那美命にティアマト、日本において創世神が火の神を生むといえば一柱しかあるまい。
迦具土
その神格が逸話に引き寄せられて降臨、赤子の意識そのまま母神としての性質も併せ持つヘスティアを母と求め侵食したのだ。
だが相手が悪かった。
「しかし良く大丈夫でしたね。」
「まーね。まあ、ボクを甘く見過ぎだよ。ボクは国家でありそれはギリシャ、ローマ問わない。ボクを取り込みたかったら人類史全て飲み込むくらいの力がないと。」
神崎の言葉にふふんと得意げなヘスティア。
ヘスティアは古代ギリシャにおいて国家統合のシンボルである各ポリスの彼女の神殿の炉は、国家の重要な会議の場であった。
またローマではウェスタとして信仰され永遠の火が灯されその火は帝国の繁栄そのものである火とされた。
つまりローマとはヘスティアであり、ヘスティアとはローマ(人類史)。
人類史が続く限りヘスティアの火が消えることはない。
つまり人類が存続する限りヘスティアが消えることはないのだ。
そしてヘスティアの神格たる炉と火の女神は大地母神にも匹敵する古き神格であり。
その権能は彼女の祭壇たる現世の炉とオリュンポスを繋ぐ、つまり内と外、現世と異界を隔てる境界を司る塞の神としての側面を持つ。
世界を隔てる彼女を侵食しようというのがそもそも無理な話なのだ。
よって神格による侵食は失敗した。
しかしヘスティアは迦具土を哀れんだ。
孤児の守護者でもある彼女が自身が原因とはいえ親を失った子を見捨てことが出来る筈もなくどうしたかといえば、己に同化させた。
火と火という相性も良かったが、何より母と子という関係性から完全に同化。
結果、炉の女神ヘスティアは八百万の神としての神格も得て降臨することとなった。
降臨したのだが…神崎始め一同の前で見せた姿、
土下座
日本の礼節の極み全面降伏である。
伊耶那美命やティアマト神も気圧されるそれはそれは見事な土下座であった。
愚弟共のやらかしの後始末押し付けて誠に申し訳無いと。
ついでにお詫びにと彼女自身の意思で提督を楔として艦娘化していた。
サーヴァントじゃないんかいと神崎はツッコミを入れた。
しかしこの神本当にあの傍若無人の集団(オリュンポス十二神)の一人なのだろうか?
560: 635 :2021/04/26(月) 20:04:52 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
「しかしあの土下座には驚かされました。」
「忘れてよね、アレ恥ずかしいんだから…。」
そんなことを話ながら二人は窓辺へと移動する。
神崎とヘスティアのいるこの部屋は現在提督の執務室となっているがその執務室のある場所、
それは浮遊大陸アトランティス中央管理都市中央管理センター、通称アトランティスタワーの最上階。
「汎人類史のボクたちは時空間の地滑りで世界が重なった時に流れ着いたけど、対馬での出来事で穴開いたとはいえあんなものまで流れつくとはね…。」
「この世界は他の世界と重なり易く、その世界の影響をまるで音叉が音を受けるが如く受けやすのではないか、でしたか。」
「『重奏世界構造』、ありとあらゆる影響を受けそれ故にありとあらゆる矛盾を許容する。だからあの存在も許された」
アトランティスタワーの執務室から見える景色、中央管理都市アトランティスと何処までも緑の大地が続くのみ筈の視界にそれは存在した。
重力制御による固定及び浮遊大陸からのエネルギー供給、そして試験艦ヘスティアが接続し彼女が内部機構を掌握するすることでどうにか浮かぶソレ。
ヘスティアは呟く。
「しかし皮肉だね、よりによって向こうで汎人類史のヒトに当たる子達が作り上げたこのアトランティスに流れ着くなんてさ。」
ヘスティアの瞳に映るのは元は荘厳であっただろう所々崩れかけ最早残骸か遺構かと言えるような惨状の都市。
その都市をを見ながらヘスティアは血を吐く様に言葉を紡ぐ。
「あの都市の子達、あの有り様は最早ヒトとは言えない。あれじゃ神の家畜か玩具だよ…。」
ヘスティアは否定するように首を振る。
懸命にその日を生きる人々を、時には間違え時には悩み藻掻き苦しみならがも前に進んできた人類史を、
それらを見守ってきた都市を守護し人の営みを見守ってきた炉の女神にとって都市の人々の有り様は断じて容認出来ることではなかった。
ヘスティアは憐れむ様に嘆く様にその都市の残骸を目に映す。
「汎人類史の子らの手で消えたゼウス、キミ達はオリオンの言うように例え傷ついても傷つけられても大地に降りヒトと共に生きるべきだったんだ…。」
そうすれば剪定されることもなかっただろう。
皮肉なのは機神の身体を失い地に降りたヘスティアやアルテミスは本来の使命から解放されたこと。
更にはソラを拓いたヒトの手で新たな真体を得たという事実。
「ボク達は君達のように彼らを家畜にしたりはしない。幾年月掛けようとも彼らをヒトにしてみせる…。」
現在機神ヘスティアにより管理され、その代理として神崎博之提督にその権限が移譲された都市の残骸。
そのかつての名を口にされることはもうないだろう。
星の狭間に在りし都市、神々が座していた山脈の名を。
そういえばとヘスティアは話を続ける。
「あの子達の覚醒が近いそうだよ。アルテミスが様子を見に行ってる。」
「そうですか…、破神をなした子らの為に神に願うのもおかしな話ですが。ヘスティア神、願わくば。」
あの子らに幸多からんことを…。
561: 635 :2021/04/26(月) 20:05:37 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
とある部屋にベッドが二つ置かれている。
それぞれのベッドでは双子と思しき少年、少女と言っても良い見た目の男女が瞼を閉じ安らかな寝息を立てる。
「すぅ…うん…。」
その片方亜麻色の髪をした少年の緑の瞳が開く。
少年はハッと起き上がり辺りを見回し、視界に静かに寝息を立てる少女を見つけるとホッと胸を撫で下ろす。
そしてベッドから立ち上がり少女のベッドに近づく。
少女の亜麻色の髪を撫でるとそれが幻でもなく本物なのだと感触が教える。
一息つくと少年は窓辺へと移動する。
「ここは…。」
開かれた窓の外、テラスにさらに先草原が広がり爽やかな風が吹き込み頬を撫でる。
都市が見える、だが自分の知る都市とは姿形も全く違う。
ゴオオオオっという爆音が外より響き渡る。
慌ててテラスから空を見上げれば見たこともない飛行機械が風を切り空を舞う。
その飛行機械は訓練なのだろうか同じ飛行機械相手に空中戦を行っているようだが次の瞬間には巨人へとその姿を転じていた。
「アレは…。」
「ここは…何処?」
「姉さん!!」
不安げにテラスに出てきた少女。
少年は少女、姉へと抱きつく。
「姉さん、ここは何処か分からないんだ。」
「何で私達は生きてるの…?確かに終わりを迎えたはず…。」
「あら?起きていたのね。」
知らぬ声が二人の耳に届く。
少年は姉を背に下がらせ二人は声の主に目をやる。
白いドレスを纏い月によく似た銀色の髪に青い瞳、
その身からは二人がよく知る"神々"に近い気配を感じるがあの様な女神を自分達は知らない。
警戒した二人の様子に女神は指を口に当てるとうーんと唸り考える。まるで『機械』ではないかのように…。
そして何かに気づいたようにああと声を上げる。
「そっちの『私』は一万年以上宇宙を漂ってた上にオリオンと恋に落ちてない訳だからこの姿を知っている訳ないわね。」
「一万年以上!?まさか!?」
「ウソ!?」
「それじゃあ改めて自己紹介させてもらうわね。まずは『私達』を止めてくれてありがとう。」
その女神は優雅に一礼する。
「私はアルテミス。オリュンポス十二機神の月女神にして八百万の月読の別側面でもある、アルテミス。」
それは二人の世界では失われた筈の機神の名、須らく消えた筈の十二機神。
月女神は唖然とする二人に『ヒト』の様にニコリと笑い掛け二人の名を口にする。
その二つの名は風の音に消され、しかしその唇が紡ぐ二人が渇望していた言葉は確かに二人に届いた。
「ここは浮遊大陸アトランティス。貴方達が望んだ昨日とも今日とも違う、繰り返しではない『明日』よ。」
562: 635 :2021/04/26(月) 20:10:44 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
今回ヘスティアが召喚された理由はヘスティアという女神が世界の中心に座し、神々の中心に座しているという神話にあります。
あの世界の中心でった都市を管理可能なのは世界の中心でありゼウスの姉、そしてオリュンポス十二神でもゼウスに次ぐ権威を持つヘスティア以外になかったからです。
後ゼウスを出すのは色々と問題がありすぎて困るのでw
最終更新:2021年04月30日 10:23