48: 名無しさん :2021/04/28(水) 20:21:58 HOST:sp49-98-149-13.msd.spmode.ne.jp
本日の大津波/令和融合世界を投下します。
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タタール海峡上空
日本海を東に向けて飛行するのは、ロシア空軍所属のTu-95が2機。
彼らは宗谷海峡と千島列島から太平洋へ抜け、日本の東側の領空際を沿うように南へ向かって偵察飛行を行う、通称「東京急行」の為の編隊だ。
ウクラインカ基地を離陸後順調に東進し、その道程でのフライトにおいて特に問題は出なかった。
しかし彼らの周囲…司令部クラスの上層部では、唐突に始まった異変によって状況が錯綜し、大変な騒ぎが起こっていた。
《こちらはウクラインカ基地管制、ビェールィ-1,2,現在の様子を報告してくれ、何か変わった事は無いか?》
「ビェールィ-1、問題無い、順調なフライトだ。何かあったのか?」
《こちらもまだ詳しくは分からない。が、航空軍司令部はサハリン、クリル方面の偵察を大至急で行いたいらしい》
「サハリン?ちょうど差し掛かる所だが…」
《ビェールィ-1,2は日本方面の偵察を中止、サハリン南部からクリル列島に沿うように北上しながらの地上偵察を行ってくれ》
「自国内の偵察とはな……ビェールィ-2、聞いたな。進路を変更する」
2機のTu-95は進路を少し北寄りに変更し、サハリン南部、ユジノサハリンスク上空を通過するルートを取る。
《ビェールィ-1,実は先程からサハリンとの連絡が完全に途絶えているらしい》
「連絡が……何故だ?」
《不明だ。官民総出のあらゆる方法で連絡を行ったらしいものの、どれも繋がらないとの話だ。つまり、この偵察飛行はサハリンで何が起こっているか確かめる為のものという訳だ》
「情報が少なすぎる、危険だ」
とはいえ命令は命令、進路をそのままにサハリン沿岸から13海里まで来た、という所で
「機長、戦闘機です!」
「味方のお出迎えか?」
サハリン方向から飛来した2機の戦闘機。
Su-57に似た……ステルス戦闘機といえばこういう雰囲気の形だろうという……見た目の戦闘機が、大きく旋回してTu-95の後方から横にぴったりと着けてきた。
同時に全周波数帯で流される無線をキャッチする。
《……こちらは日本国空軍……貴機は日本領空に接近しつつある。速やかに針路を変更せよ……》
「んん、なんだって?」
これに混乱したのはTu-95の機長達。
今向かっているのはサハリンであって日本本土ではない。それなのに何故日本の戦闘機が出てくるのか。
「噂のF-35ですかね」
「違うな、F-35は単発、こいつは双発機だ。見たことの無い型だ……新型か?」
こちらが対応に困る中、日本軍機は翼を振り指示に従うよう求めてくる。
《……警告する。貴機は日本領空を侵犯している…速やかに領空から退去せよ……》
いよいよサハリンに近づいた所で、日本領空と言い切った日本軍機。
サハリンとの連絡が途絶えたのにも関係しているのか、と疑問が浮かぶ。
その時、窓の外に閃光が走った。
「わっ、撃ってきた!」
「管制!サハリン上空に日本の戦闘機!迎撃された!」
機体のすぐ側を通りすぎた光の塊。
考えなくとも、それは日本軍機の警告射撃だと判断がついた。
「進路を反転、退避する!いいな管制!」
《くっ!問題ない、すぐに退避しろ!》
2機のTu-95は急いでウラジオストク方面へと大きく反転、離脱を始めた。
日本軍機もそれを追うことはせず、サハリンから離れたことを以て引き返していったのだった。
49: 名無しさん :2021/04/28(水) 20:23:13 HOST:sp49-98-149-13.msd.spmode.ne.jp
アメリカ合衆国、メリーランド州フォート・ジョージ・G・ミード陸軍基地
NSA(国家安全保障局)本部
「……これを見てください」
喧騒に包まれ慌ただしく動く職員達の中、一人の職員が幾つかの写真を持ってくる。
それは、港湾部を真上から撮影した所謂衛星写真であり、その写真は全てほぼ同一地点の物であった。
「こいつは…」
「オアフ島のパールハーバー・ヒッカム統合基地を撮影した衛星写真になります」
太平洋艦隊司令部の所在地、ハワイはオアフ島の空軍・海軍統合基地、つまりは真珠湾軍港の写真である。
しかしその二つの画像は、同じ場所を撮影したというのにも関わらず、それぞれ微妙に様子が違っていた。
「これは先週の録画データで……こっちがついさっき撮影されたものです」
「港湾部や施設の位置が変わっているな…それに、停泊中の艦も見慣れない物だ」
先程撮影された……つまり、この“異変”が起きた後の衛星写真に映る真珠湾は、大まかには同じように見えるが、施設や道路、タンク、ドックの位置や形など、よく見れば数えきれない程の変化が見受けられた。
そして、港湾部の中央には一際大きい艦影が。
「こいつは…空母か?」
「推定350メートル、排水量14万トンのスーパーキャリアです」
平面の甲板には多数の戦闘機が搭載されており、艦橋はクイーンエリザベスの様に二つあり、ステルス性を高める為なのか傾斜面が多い。
甲板前方にはカタパルトと推測できる溝も確認でき、更に排煙口が無い所を見るに原子力空母のようにも見受けられた。
甲板上に露天駐機されている戦闘機群もその全てがステルス機だと思われ、この超大型空母が我が国の空母に匹敵、または凌駕する戦闘能力を持っているだろうとはすぐにでも予想できたのだった。
「カタパルトの所に3本の……何のラインだ?」
「日本語の“シ”です。同じような識別記号は、WW2時の日本海軍の空母「翔鶴」で行われていましたが……」
「確か、ハワイとアラスカを占拠した武装集団も日本軍を名乗ってたって話だよな」
「えぇ、そのようです。現在太平洋艦隊と対峙しているらしいですが……本当に日本軍だと思いますか?」
「分からない、としか言えんな。本当に日本だとしたら、この時期にこんな事をする理由がさっぱりだ。中露にも同時に何かしてるらしいじゃないか、流石に無謀すぎる」
混乱してきた思考を落ち着ける為、コーヒーを口に含む。
「とは言え、日本じゃないとしてもそれは不自然…というより不可能だ。こんなことをする為の人と資金力は国家……それも先進国でもないと用意できないだろう」
日本以外の国の仕業?
だとしてもリスクが高すぎる上に回りくどく、予想されるリターンが全く見合わない。
「それに……こいつは何だ?」
スーパーキャリアの前方を航行する艦。
全体的にのっぺりとした……ズムウォルト級を伸ばして広げたらこんな感じになるのではないだろうかという雰囲気の船体。
スーパーキャリアの印象に隠れているが、この艦も推定250メートルクラスと極めて大型であり、その船体規模に相応しい大量のVLSらしき蓋が見てとれる。
艦前方にあるズムウォルト級に似た砲搭と推測される物も、船体に比例して大きい。
「戦艦……いや、まさかな」
何にせよ、政府はこの異変を受けて緊急の国連安全保障理事会を開くとの事だ。
その後に行われるだろう臨時の国連総会では日本も呼ばれて、そこで事の仔細が判明する筈だ。
50: 名無しさん :2021/04/28(水) 20:25:22 HOST:sp49-98-149-13.msd.spmode.ne.jp
本日の分の投下は完了です。
とりあえず主要な諸外国は書き終わったかな、と思います。
最終更新:2021年04月30日 10:44