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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその三十九(現代ゲート編) 



信任状捧呈式数日前。
全ての制限が解除されかつての日常へと戻ったかつて帝都と呼ばれた眠らない都市(まち)。

仕事が溢れ、遅れを取り戻さんと二十四時間戦えるサラリーマンが行交い、若者達はコンビニの前で談笑に浸り、
幾人もの男や女達がネオンの下へと消え或いはネオンの下より出てくる。
類は郷愁感(ノスタルジー)を覚えさせるような佇まいの老舗のバーより赤顔のいい年の男が千鳥足で出てくる。


そんな取り戻した日常の喧騒より離れた場所に立つ戦前より続く老舗の料亭。
このままの生活が続いていればプライドを曲げ経営方針も曲げなくてはならなかっただろう。
そうなれば天井に薔薇を飾る場が一つ減っていた。



そんな料亭の一室。
客の一人こちら側の内閣の副総理は日本酒をクイと開けると口を開く。


「野党によるニコラエヴナ大使へのネガティブキャンペーンが凄いですな。」

「軍国主義国家の人間を大使として受け入れるのはどうかとか発言してますが…相手が同じ日本だと思ってるんでしょうね…。」

「日本国民の直接的な怒り買うとかケッタイなこと言いやがって…、相手が報復攻撃行える国家だって分かってるのか?」


副総理はケッと吐き捨て会話の相手、内閣総理大臣も頷く。
しかしその後の事を思い出しニヤニヤと笑う、


「しっかしそれに対して質問された就任会見の時の大使のコメント傑作でしたな!」

「『ボルシェヴィキは百年経っても相変わらず粗野、野蛮、横暴、我侭、狡猾で…非民主的なのですね』…でしたか。」

「質問したやつ顔赤くしてましたが『また民衆を動かすつもり?私達の時のように』と言われて押し黙りましたからなあ。」

「大使は犠牲者ですからね…。」


挙げ句の果てに『事象情報を扱う者としてその様な行動質問は如何なものかもっと公平かつ中立的に報道すべし』、
と帝国主義者(記者視点)から諭され顔を赤くして記者会見場を飛び出していく姿が公共の電波に流れた。
副総理は野党機関紙の記者のその姿を思い出し溜飲を下げゲラゲラと笑うがすぐに真剣な顔をする。


「そういえばニコラエヴナ大使は向こう側の日本や神崎島だけでなく他国の元首の親書も持ってくるんでしたか?」

「ええ、米英露等主要国の他に旧ドイツのヘッセン大公国大公とプロイセン王国国王に加え神崎島の保護国…。」


総理と副総理は一枚の写真に目を向ける。
それに映るのは銀髪の朗らかな表情を浮かべた少女。
副総理はその名を告げる。


「『フランス王国』女王"マリー・アントワネット"…。」

「本物ですかね?」

「外務省の白木曰く神崎島や向こう側の日本は除くとして少なくとも英米露は本物としているようですなあ。」

「なんともまあ…女王も国の名前もフランスが騒ぎそうですね…。」

「在フランス大使館からだと向こう側の自国首脳が隣国に根切りされた上甚大な被害を受けたという事実で混乱しそれどころでないと…。」

「在日フランス大使も戦艦リシュリューに乗り込んでいた向こうの『人間』と会話して頭を抱えてるそうで。」

「そりゃそうでしょう…『人間』の政治が信じられないから艦娘や妖精、異星人に政治を委ねるとか…。」


少女、マリー・アントワネットの写真を見ながら副総理は呟く、想像の埒外だと。
向こうの『フランス王国人』曰く主の慈悲によりフランスという国を救うために復活した聖女としてフランス国民により神格化されつつあるとか。
ついでに艦娘リシュリューは女神扱いで神格化されつつあるが両方とも本人と政府により否定されているのが口惜しいと悔しげにしていた。
だが民間では…まあそうなるな…。
副総理は主の慈悲で女神ってどうなのかと問いたいとかなんとか。

824: 635 :2021/05/06(木) 23:11:52 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「女神といえばうち(日本)にとっちゃあっちの方が問題ですな。」

「ええ、日本という国家へではなく陛下宛ですが神々からの親書とか前代未聞です。」

「八百万の神々が実在するとはなあ…。」

「だけではないですが、加えアブラハムの主の存在もあちらは匂わせてるとか。」

「そちらの方が俺にとっちゃ大事ですがね。」

「現在親書の名に挙がってるのが…。」

「既に死んだ筈の『伊耶那美命』、同じく大地の材料と成り果て死んだ筈の古きメソポタミアの創生神『ティアマト』、
オリュンポスの炉の女神『ヘスティア』、そして皇祖神『天照大神』。」

「加えイギリスのアーサー王やギリシャ神話の豊穣神デメテルがこちらに来る、或いは既に来ているとの話もあります。」


それらの言葉、副総理は彼らの意図を理解し息を吐く。


「なる程そのためのあの信任状捧呈式か…。」

「皇居という皇祖神の鎮まる御所へ神使である皇女が向かい着任の挨拶をし…
加えその列を深海棲艦、鬼がその先導をし破魔の武具を持つ騎士や武士、いや兵(つわもの)が同行する。」


唯の行事で在る筈のそれにすら儀式的意味をもたせるとは知らぬものから見れば両国関係を示すものにしか見えない。
二人は思う、彼らから見てそれだけこの国は危ういのかと。
そして副総理は言の葉を零す。



「凶事を祓い国を鎮める…。」



言葉を切り副総理は再度盃を煽り残りの言葉を飲み干す。
全てを忘れるように。



追儺に加え斎宮の群行…か…。

825: 635 :2021/05/06(木) 23:16:21 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2021年05月09日 19:47