150: 名無しさん :2021/05/09(日) 03:00:17 HOST:sp49-98-140-201.msd.spmode.ne.jp
「一週間後の▊月▊▊日、グリニッジ標準時23:59までに資産凍結及び禁輸措置の解除を表明し、対話による解決の意志が示されない場合、我が国は極めて遺憾ながら米、露、中、英、仏の5か国に対し実力を以て状況を打開せざるおえない」


急遽発表された日本政府の公式発表は明確な最後通牒であり、実質的な宣戦布告文だとして全世界に多大な衝撃を与えた。
明らかに無謀な行為だと真意を理解できない者、いよいよもって追い詰められ暴発したかと嘲笑する者など、各国の人間が様々な反応を見せた。


─────────

ハワイ沖
日米の水上戦闘部隊同士が睨み合っている遥か後方。
アメリカ海軍第3,7合同艦隊の中央に位置するのは、10万トンを誇るニミッツ級空母「ロナルド・レーガン」と「カール・ビンソン」の二隻だ。

その二隻の巨大な洋上の城に固く守られている海上司令部たる揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」では、日本の通告時刻を目前に控えた艦隊首脳部が慌ただしく会議を開いていた。

「日本軍に大きな動きはあるか?」

「ハワイの航空基地と空母にて、活発な動きが衛星で確認されています。通信量も増大しており、日本が大規模な軍事行動を起こすのは確実だと思われます」

「現在、当艦隊からは半数の作戦機が防空装備にて空中待機状態にあります。日本軍の動きに合わせてもう半数を出撃させる準備も完了しています」

「ハワイにて日本の物とおぼしきTEL(輸送起立発射機)が確認されており、対艦弾道弾保有の可能性も考慮すべきかと───」


そんな中、予定時刻を迎えると共に唐突な報告が舞い込んでくる。

「高高度!大気圏外より飛翔体が再突入してきます!落着予想地点は……当艦隊!!」

「何っ!?」

対応する暇は無かった。
断熱圧縮により光の球となった再突入体は、まっすぐに空母カール・ビンソンの中央部に着弾。
次の瞬間、船底付近に直径40メートル近い火球が出現する大爆発が発生。
猛烈な衝撃波と爆風、そして海面からの反射波によって船体が真っ二つにへし折られ、大きく持ち上げられる。
やがて、小規模なキノコ雲が揚がると共に、海面に叩きつけられた空母の残骸は、速やかに海中へと没し始めた。

「なっ……」

アメリカ海軍最大の軍艦、分厚い艦隊防空網に守られている筈のそれが、一瞬で轟沈……いや、粉砕される光景。
その、あまりの非現実感に皆が言葉を失った。

しかし、絶句したとしても次の攻撃は待ってくれない。

「再突入体来ます!同軌道!」

「た、対艦弾道弾か!」

「SM-3発射用意、間に合いません!」

「発射は確認されていません!ブースターの赤外線もです!」

「早期警戒システムは弾道弾を捕捉できていません!」

「では何処から……」

その時、驚愕する司令官の脳裏に一つの可能性が思い浮かぶ。

「まさか、衛星軌道から直接───」

直後、空母ロナルド・レーガンに再突入体が着弾、炸裂。
先ほどのカール・ビンソンと同じように前後にへし折られた巨体は、誘爆の炎に包まれながら急速に海面へと没していった。

151: 名無しさん :2021/05/09(日) 03:02:54 HOST:sp49-98-140-201.msd.spmode.ne.jp
──────

インド洋。
中東地域での作戦を急遽取り止め、太平洋へと急行していたアメリカ海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」と「セオドア・ルーズベルト」が、ほぼ同時に大気圏外からの攻撃によって破壊され、護衛艦乗組員が唖然とする中で轟沈する。

────────

ワシントン州キトサップ海軍基地。
真っ二つになって轟沈する停泊中だった空母「ニミッツ」

それを背景に、丁度入港中だっオハイオ級弾道ミサイル原潜が複数、叩き込まれた再突入体の強烈な爆発によって圧し潰されていた。

───────

バージニア州ニューポート・ニューズ造船所

丁度入渠していた空母「ジョン・C・ステニス」に向かって再突入体が落下。
THAADやGBI等の弾道弾迎撃ミサイルも、探知した瞬間にはミッドコースフェイズの過半、突入段階であるという圧倒的な対処時間の不足はどうしようもなく、逃げ惑う職員を尻目に空母はスクラップと成り果てた。

───────



中国河南省、豫西基地。

長距離弾道ミサイルDF-5を擁するミサイルサイロである此処の司令部では、多数の職員が右往左往していた。

「我が方のサイロが次々と攻撃されています!ダミーのサイロには目もくれず、本物だけを選別して!ここも危険です!避難を!」

「駄目だ!持ち場を離れることは許されない!準備作業を……」

ミサイルサイロの蓋を貫通した再突入体は、DF-5をへし折りながら炸裂。
地下基地はその半分以上が潰され、大きなクレーターが残されたのみだった。

─────────

中国 北京 中央軍事委員会官邸

「日本の最後通牒の時刻になりました」

「日本軍の攻勢を確認し次第、反撃の指示を……」

北京の複数箇所で、TNT換算約30トン相当の火球が炸裂。
国家主席を含む共産党の有力人物はその行政施設ごと焼き払われ、攻撃開始から数分と経たずにこの世から消滅した。


───────

ロシア サラトフ州 エンゲリス空軍基地。

核攻撃任務を請け負う重爆撃機部隊の所在するエンゲリス空軍基地では、日本の最後通牒に伴い、爆撃機の空中待機の為の準備が行われていた。

日本に近いハバロフスク州のウクラインカ基地では早いうちから空中待機が行われていたものの、ヨーロッパ方面にあるこちらでは遅れが生じていた。

とはいえ、日本から見ればロシアの奥地にあたる此処にはまだ余裕があるだろう……というのが大部分の考えだった。
東部軍管区司令部と太平洋艦隊司令部、宇宙軍司令部、ウクラインカ基地が壊滅したという情報が舞い込むまでは。

基地司令は焦って爆撃機を早く空に上げるよう指示を出したものの、その指示は達成されぬまま地上待機中の爆撃機部隊のど真ん中に再突入体が着弾、爆発。
機列を薙ぎ倒し、燃料に引火、誘爆。

飛び立つ間も無く、爆撃航空連隊は壊滅した。

─────────

英国 ポーツマス海軍基地沿海

クイーン・エリザベス級空母「プリンス・オブ・ウェールズ」はまだ航海試験中の空母である。
しかし、日本の最後通牒を受け急遽戦力化が急がれ始め、再度の試験航海としてここポーツマス港より出港した。

そして、港の職員が見守る前で空母プリンス・オブ・ウェールズは中央部より破砕され爆発炎上、轟沈した。

同じ大西洋を航行していた仏空母「シャルル・ド・ゴール」
そして、はるか東に居た同型艦「クイーン・エリザベス」と共に。

────────

152: 名無しさん :2021/05/09(日) 03:06:35 HOST:sp49-98-140-201.msd.spmode.ne.jp
世界中で巻き起こっている破壊の渦。
その中心に在ったのが、日本の某所。
多数のモニターやスクリーンに覆われ、多くの職員達がせわしなく働く此処こそが
「大日本帝国宇宙軍 軌道打撃軍団司令部」
である。

モニターでは全地表面上がAIの補助の元リアルタイムで監視されており、今また一つ注目すべきモノをその画面に捉えた。

「インド洋南部で高赤外線反応、中国海軍のSLBMだと推測されます」

「迎撃は」

「レー7が対応します」

海面から飛び出して上昇してくるSLBMを狙うのは、レ型攻撃衛星……高出力の指向性エネルギー兵器、つまりレーザー射撃システムを搭載した衛星兵器だ。
そのレ型7号衛星はSLBMに向けて自由電子レーザーを照射。
SLBMは大気圏を抜ける前にそのブースターが暴発、爆散した。

「SLBM、空中で消滅。迎撃成功です」

「反撃は可能か?」

「射点を特定………10秒後にロー25の攻撃可能圏内に入ります」

「よし、2000キロ弾頭を使え。逃がすな」

「了解しました」

ロ型攻撃衛星……大量の宙対地ロケット弾を搭載する攻撃衛星が、今しがたSLBMを放った潜水艦を狙う。

この衛星は、TNT換算出力30トンの電子励起爆薬を持つ100キロ弾頭、地下施設攻撃用の高速運動エネルギー弾頭、戦略核弾頭など様々な攻撃手段を持つが、今回使うのは2000キロ弾頭という、TNT換算500トン相当の出力を誇る大型弾頭だ。


軌道を調整して衛星から切り離されたロケットは、ロケットモーターによって加速されて大気圏に突入。

海面に激突し、ある程度海中に潜ってから炸裂。

SLBMを放った潜水艦からは多少離れた所に着弾したものの、その圧倒的な爆発威力の前には多少の距離など関係なく、猛烈な水中衝撃波によって潜水艦は叩き潰され圧壊した。






日本宇宙軍の先制軌道爆撃により、米露中英仏の空母と揚陸艦はその殆どが開戦1時間以内に沈没。
同時に各国の重要な軍事施設を破壊して指揮系統の頭を切断。
続いて行われた各国の弾道ミサイルや長距離爆撃機などの核戦力に対する打撃によってこれを半壊させた。

153: 名無しさん :2021/05/09(日) 03:10:13 HOST:sp49-98-140-201.msd.spmode.ne.jp
今回分の投下完了です。
破壊って書いてて気持ちいいですね(スッキリ)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年05月09日 19:51