381 :ひゅうが:2012/02/06(月) 14:55:07
→364-366 の続きです。




――同 皇紀4249(宇宙暦789)年4月2日 サジタリウス回廊(エア回廊)
  日本帝国宇宙軍 「回廊方面(第1)軍集団 総司令部」 宙京標準時0635


「縮退レーダーに反応。」

「超高速センサーでサーチ。温度変異3条件に絞り込み・・・出ました。目標発見。3梯団に分かれて進行中。前方に通告のあった大型輸送船団を伴っています。」


対馬要塞の中枢部、その司令室には緊張した声が響いていた。
ただし電子的なもので。
現実の司令室で立体スクリーンに模式図とセンサーがとらえた映像が映し出されているのはもちろんだが、そこには「回廊艦隊」と呼称される第2、第4艦隊の司令部の姿もある。
もちろん電子合成で立体映像を映し出しているのでもある。

電脳化された司令部には、予備を兼ねて実際に室内に立体映像を映し出している。


「距離は?」

「およそ150光年。旧第2次防衛線部をすり抜け、直接主要防御区画正面に輸送船団を移動させそれにまぎれて回廊を抜けるつもりのようです。」

なるほど。と第1軍集団司令 大竹三郎大将は頷いた。
「敵」のステルス艦はセンサーの反射を極力抑える曲線で構成され、熱線を吸収し電力に変換する準黒体外板を備えているらしい。
だがその性能はまちまちで、空間のエネルギー密度を精密に測定すれば「お風呂の中の体」をサーモグラフィーで見たときのように平均温度(エネルギー)と違う部分が分かる。

この芸当ができるのは、長年にわたり回廊の調査と整備を行っていた日本側ならではというところだった。

「よし。全管制宙域に第3種防衛態勢(デフコン3)を発令。今村艦隊の現在位置は?」

オペレーターが答えた。

「実験艦隊はワープ試験を兼ねて第1次防衛線宙域へワープを実行。現在回廊の底をふさぐ形で展開を終えています。」

「旗艦『白鷺(しらさぎ)』より入電。『袋の口は閉じた』。」

「了解した。第1軍集団総員に達する。」

大竹は背筋を伸ばした。
彼は、大規模な軍制改革を経てなお要職を歴任している程度には有能な将帥だった。


「日本帝国宇宙軍の初陣だ。こちらで見学されている『お客さん』のためにも無様な戦はできぬと心得よ。総員、第1種戦闘配置!」

「了解、総員、第1種戦闘配置!!」

対馬要塞の総司令部は慌ただしく動き始めた。
指揮席に坐した大竹は白手袋に包まれた手で指揮杖を持ち、それで制帽を直す。

「これでいいのですな。嶋田閣下。」

要塞の補給用であり、回廊内を通過する船舶も使用できる商港にいる「同盟」と「帝国」のものらしいやたら通信機能の高そうな船舶を念頭に置きながら、大竹は帝都で外洋機動艦隊計画のために書類仕事をこなしている「大宰相」その人に向かって独り言を言った。

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最終更新:2012年02月07日 07:20