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憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS 「百野栞の優雅な午後」



  • 平成世界 日本国 東京都 某所 私設図書館「言の葉」


 百野栞の仕事は表向きには図書館の司書である。
 とはいえ、その立地から一般市民が訪れることはあまりない。一見して図書館とはわからない建物で、尚且つ私設図書館ということも影響しているのだろう。
 まあ、呪術とか魔術の物品がしれっと混じっている場所に迂闊に一般人が入り込んであらぬことになってしまうよりははるかにましであるのは確かだ。
それに、この図書館の裏の仕事を知る人間たちにしても、ここに来るのはそんなに多くはないのだ。
多くの場合、報告はたやすく破棄が可能な紙の手紙で行われているし、それだけで報告などは事足りてしまうものであるからだ。
 とはいえ、即応する必要があるとはいえ、基本的に言の葉の職員---「ウルスラ」の面々は比較的暇を持て余していた。
 それこそ、トップを務める書架のウルスラこと百野が優雅にアフターヌーンティーを楽しめる程度には。

(おいしい……)

 平成世界の茶葉は、C.E.世界のそれほど品種改良などが行われているわけではない。
 だが、悪く言えば粗雑、よく言えばより自然な味わいを楽しむことができるのはこの世界ならではだ。
美味しさとは、おいしいところだけを抽出すればいいというわけではない。時には、雑味や不味さを交えてこそ際立つこともあるのだから。
 とはいえ、百野の意識は一定程度の緊張と集中を保っている。いつ何時発生するかわからない事態に対応するのだから、当然といえば当然。

「……」

 ふと思い出すのは、ここ最近のウルスラの活動だ。情報漏洩や意図的な情報の持ち出しはそれなりの件数発生している。
 多くは人為的なミス、すなわち、該当資料を他の荷物とまとめて持ち出してしまったというケースがほとんどであった。
殊更、2004年から普及し始めたUSBメモリという存在は情報を簡単に運びやすく、そして紛失しやすくしてしまうツールであった。
そこにちょっと入れて保管してしまえば、魔術的な追跡を受けることになってしまうのだ。
厄介なことに、なりふり構わない情報収集をする人間ならば記録に残るそれをちゅうちょなく行うので、例え凡ミスでも追跡せざるを得ないのだ。
 現在のところは、受動発動型の術式に更新し、警告を無視して外部に流そうとした場合のみに反応するようになっているのでだいぶ楽にはなっているのだが。

「逆に言えば、そうでもしないと完全な遮断は不可能というわけですね」

 まあ、情報というのは絶対にどこかからか漏れてしまうものだ、と聞かされている。
 問題なのは、いわゆる非合法的手段による情報入手を試みる人間が多いことであろうか。
遠隔監視をしていれば出るわ出るわ。個人的な心情やら小遣いを期待してであるとか、縁故で頼まれたことだとかで情報を得て持ち出そうとしている。
見過ごすレベルのものはスルーしている。が、中には呪術による防護が施されている情報にまで手を伸ばしているということが見受けられるのだ。
殊更、特地・地球連合・企業連などに関する情報に対して貪欲に活動が行われている。ダーティーな領域に踏み込んだ諜報活動。
当然、それらに対してはカウンターなり通報を行ってしかるべき対処を行うなどしている。
 しかし、インテリジェンス(諜報)という分野でこの平成世界は大きく制限を受けていることは確かだ。
殊更に、手段も何も選ばない、そして、自らが正しいことをしているのだというある種妄執さえ抱いた人間がいたというのも衝撃だった。

(まるで、狂信者ですね)

 百野はその手の人間に見覚えがある。十字教のために何でもするという覚悟と実行力を備えた信心深い人間。
自分も少なからず目撃したことのあるその手の人間が、この時代にいることは別段おかしくはないことだった。
 だが、同時にそこまでやれるものかと、疑問さえ抱いてしまったのも事実。

(だからこその狂信者というべきなのでしょうが)

 この平成世界の日本。敗戦とその後の国家間のパワーゲームの果てに生まれた平和思想。
 思想に酔うことができるのは、人間の長所か、短所か。
 その時、百野のタブレット端末にアラート。
 どうやら出動案件のようだ。まあ、この程度ならば受動発動型術式と平成世界の日本で何とかなるだろうが、一応の連絡はしておくべきか。
 このような日常が始まってからすでに慣れている自分がいる。
 そう、騒ぎが起ころうとも、結局は何一つ変化などしていない。安寧はそこにあり、世界は正しく乱れ、平穏だった。

「God's in his heaven. All's right with the world.」

 そう呟いた百野は、タブレットに表示された部下の出動報告に了承の返事を返す。
 私設図書館「言の葉」は今日も平穏であった。世界がそうであるように。

146: 弥次郎 :2021/05/18(火) 22:12:21 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。

読む人間を選ぶネタになってしまったなーと反省…
まあ、是非もなし。

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最終更新:2023年11月15日 20:18