395 :ひゅうが:2012/02/06(月) 17:30:12
→381-382 の続き


銀河憂鬱伝説ネタ 閑話――「サジタリウス回廊は…」その3


――同 海賊船「イヴァンのばか」号


「ワープアウト・・・脱落艦なし――なっ!?」

「どうした!?」

「前方3500光秒に巨大な質量反応!数は5・・・それに多数の艦影を確認!」

「バカな!こっちはステルス航行をしているんだぞ!輸送船団の影に隠れて!恒星光を背に受けているわけじゃないんだ!」

元軍属であるレーダー手が頭をかきむしる。
恒星の光を背に受けることで光にわずかな「陰り」や「ムラ」が出ることを利用した艦艇の発見方法は原始的ではあるがわりとポピュラーなものである。

「くそ。待ち伏せか!?それとも――レーダー。目標識別急げ。進行方向は?」

「了解、敵味方識別信号照合・・・ええい遅いなこのポンコツ。――応答出ました。日本帝国宇宙軍連合艦隊所属 機動鎮守府級戦艦「金剛」型「金剛」「霧島」、それに「河内」型「河内」「摂津」、「薩摩」型「薩摩」です。進行方向は、前者4隻が回廊銀河回転方向(銀北)へ30度の角度をとり輸送船団の進路上から離れて行っています。後者の「薩摩」は銀南方向へ移動中。」

「よかった・・・バレてはいないようだな。船団に進路を譲るつもりか。」

明らかにほっとした空気がブリッジに流れた。

「にしても、何という大きさだ――質量250兆トン、全長25キロの人工天体が動いてやがる。」


「一番大きな『金剛』型は40キロ近いですよ・・・何て怪物だ――」

「解析終了。前方の構造物および周囲の艦影は輸送船団経由で受信した識別符号から、日本宇宙軍第2、第4艦隊と判明しました。
周囲の構造物は『機動陣地』や『機動重砲』といわれる防御装備だそうです。」

396 :ひゅうが:2012/02/06(月) 17:31:40

船長といわれた男は、難しい表情で前方の白色輝巨星の中から出てきた「移動要塞」を睨んだ。
円錐形の構造物の艦首には、黄金色の花の紋章らしきものが輝き、アンテナかマストかよくわからない構造物からはご丁寧に立体映像で日本宇宙軍の「軍艦旗」が宇宙空間に描き出されている。


「あれを相手にするには骨が折れそうだな。聞いていた話だとせいぜいが20キロ程度の全長じゃなかったのか?」

「さぁ。渡されたデータは公開済みの古いものでしたし、この空間では測定自体が大変ですから。」

と、その時だった。

コーン!という高い音が船体を打った。
元自由惑星同盟軍の標準型戦艦を改造した船体がぴくりと揺れる。


「なんだ?」

「ソ・・・ソナー!?」

「バカな。ここは宇宙空間だぞ。音波探信なんてできるわけが――」

「船長。重力波です。あいつら、重力波をたたきつけてきやがったんです!」

技術に明るいレーダー員の言葉に船長は絶句した。
そんな馬鹿な。だいたい重力波なんて、超長距離通信用に大型基地の大電力で起こすほかは――大型基地?目の前にあるではないか。
にしても船体が揺れる程度なんて、それこそ艦隊が丸ごとワープする時ぐらいにしか発生しないはずだぞ!?


「船長!あれを!」

そして「船長」は見た。「金剛」のマストにするすると旗が上がっていく様子が描き出されていく様を。

「戦闘旗――」

歴史に詳しい船長は呆然となった。
輝く白色輝巨星の陽のもとであるはずの空間は、彼にとって歴史上の舞台をごちゃまぜにした大海原のように思えたのだった。


「トウゴーやコガ、オザワの後継者たちか。冗談にもほどがあるぞ・・・!」

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最終更新:2012年02月07日 07:22