407 :ひゅうが:2012/02/06(月) 18:40:06
→395-397 の続きです。
――同 戦艦「金剛」 第2艦隊(山本艦隊)司令部 CDC(艦隊戦闘指揮所)
「速力25へ。第4艦隊は?」
「回廊外郭へ到達。汎用艦は第1戦闘序列で全速進行中。あと3分ほどで実験艦隊合流時刻となります。」
「了解した。栗田君に伝達。『所定の攻撃にかかれ』と。総司令部より予定変更の通信はあるか?」
「ありません。間もなく戦闘命令が――来ました。」
よし。と、山本五十六中将は力強く頷いた。
第2艦隊司令をつとめる山本は、軍政と実戦を半々の割合でつとめる嶋田統合軍令本部次長とは違い、教育畑出身の将官だ。ここ10年ほどは将帥が一時的に不足したために現場に復帰しもっぱら実戦畑を歩きつつある。
ボブカットにした黒髪と四角い眼鏡が特徴の山本は、嶋田のように極端に姿かたちが変わった転生者のひとりであったが持ち前の豪胆さでそれを気にした風を見せていない。
「全艦、合戦用意!」
「かっせんようーい!!」
もはや伝統と化した掛け声が響き、電脳空間に忠実に再現された地球時代のシグナルやブザーが艦内に鳴り響いた。
「『霧島』、準備完了。」
「第4艦隊より通信、全艦準備完了。」
「『対馬要塞総司令部』より通信、砲撃準備完了。――砲撃諸元、来ました。」
「確認及び修正完了。」
艦長が報告した。
「よろしい。本艦が砲撃統制艦となる。指揮不能時は所定の手順に従って指揮権を移行する。全艦砲撃準備!」
「全艦砲撃準備、主砲塔旋回開始!」
慣性制御装置がはたらき、砲塔備え付けの重力アンカーとともに巨大な腕のような連装主砲2連装4基8門(上部甲板3基、下部甲板1基)が旋回を開始した。
口径3600センチ(36メートル)に達する巨大な砲塔が旋回し、10秒も経たずに左前方の敵艦隊にあわせられる。
後続の同型艦「霧島」は「金剛」と同じ12門を向け、第4艦隊の「河内」と「摂津」は15門の3200センチ砲を目標に、回廊の反対壁面を航行する「薩摩」は12門の3050センチ砲を目標へと向けている。
さらには、対馬要塞宙域に集結した350門の大型の機動重砲と25門の艦首砲に相当する要塞砲が正面から「目標」を狙い始めた。
「砲撃準備、完了です。」
「よし。第4艦隊汎用艦部隊は射線上から退避したか?」
「完了しております。」
さすがは栗田君。仕事が早い。と山本は満足げに頷く。
さて。
「対馬要塞宙域より全周波数帯に警告信号発信を確認。」
「目標がこちらの停船命令に従わない場合は、5分の猶予をもって直ちに攻撃を開始する。復唱。」
「は。目標が停船せざる場合、5分の猶予をもって砲撃を開始します!」
山本は思った。これが、この空気こそが海軍よ。
さて、海賊ども、どう出る?
最終更新:2012年02月07日 07:24