364: 弥次郎 :2021/05/29(土) 23:45:28 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

神崎島支援SS 「聖ウァレンティヌスの日エトランゼ」




 さて、2月に入ると艦娘たちも妖精たちも忙しなくなってくる。島の外、昭和の人間達にはまだなじみの薄い行事ではあるがバレンタインデーというのがあるためだ。
無論、送る側の艦娘は深海棲艦含みで600以上いるのに対し、送られる側は提督一人という凄まじいアンバランスさであったが。
 とはいえ、送られる側の神崎提督も送られるばかりでなく、海外出身の艦娘に対して何かしらの品を送ることもあった。
そも、チョコレートを女性が男性に贈るというのはぶっちゃければ製菓メーカーのいんb…ゲフンゲフン。
ともあれ、本来の意味では男性が女性に贈ろうが女性が男性に贈ろうがまったく関係のない話なのである。

 そして、神崎島が現世に帰還してからのバレンタインというのは、それまで以上のイベントと相成ったわけである。
それは、島外から来訪した大日本帝国の人員、殊更に、艦娘たちにとって自分達の艦長や提督となった人物にプレゼントというのも発生したためだ。
一人の艦娘に関わった軍人というのは山のようにいるものだ。軽巡洋艦の五十鈴など良い例であるが、歴代艦長の中には有名な提督や軍人がいる場合も多い。
まあ、彼女の場合、海軍内部でさえも貴族船と揶揄されるレベルで集まっているのがある種異常というか。
実際、神崎島に赴任している堀悌吉中将は五十鈴から直接チョコレートを贈られるという名誉に預かることになった。
 また、単に艦長というだけでなく将官が前線指揮のために座乗するというケースもあり、あるいは艦載機のパイロットというパターンもある。
有名どころのパイロットというのは、それこそのちの戦史においてクローズアップされるようなエースたちはこの時代でも存命であったりするのだ。
 陸軍の所属の艦娘のあきつ丸に神州丸にまるゆらもその例に漏れない。
 そんなわけで、神崎島と本土を結ぶ定期便には多くの荷物---というよりはプレゼントが満載されることになったため、いつもより船足が遅かったことをここに記す。

 しかし、これだけの騒ぎになることを当事者となった堀は大いに戸惑いながらも受け入れることになった。
仮にも軍事組織の中でこういったことを大々的にやることを許可して、日常業務に支障をきたすのではないかと。

「まあ、それはそうですね」

 それを何の気なしに神崎にぶつけたところ、苦笑と共にそんな返事が返ってきた。

「ですが、単なる軍艦ではなく、人の姿と心を持つのですから、そういった方面でのケアも必要なのです」

 艦娘がそういう存在として作られたからか、それとも「軍艦」でありながらも人の「娘」として習慣を自然と持つからか。それは判然とはしない。

「ケア、ですか」
「いかに強力な力を持つといえども、彼女たちは一面『人』でもありますから。
 むしろ、常人離れした力を有しているからこそ、そのコントロールに関わる要素は慎重にならざるを得ません。
 軍務ということで規律を守り、風紀を保つことも重要でしょう。何しろ、国を守る盾であり矛であるというのは国の威信を背負うことですから」

 その言葉には同意しかない。軍艦というのは戦略兵器であり、国家としての実力を測るための目安になるもの。
故にこそ苛烈なまでの訓練を重ね、日々鍛錬を行い、万が一がないように力を磨き続けているのだ。

「ただ……締め付けるだけでは、重荷を背負わせ続けるだけでは、やがて崩れます。
 だからこうして羽目を外させてやるのも、この島を背負う者、艦隊を指揮するものとして必要と考えております」

 さしずめ、締め付けすぎたボルトが割れてしまうように、あるいは、膨らませすぎた風船が破裂してしまうように。
 負荷をかけすぎたものはやがて、限界を超え、来るべき破滅を迎えてしまうことになるのである。

「なまじ人である以上、誰かが不調となれば、それが伝播してしまうものです。殊更、この島ではそれが致命的になりかねませんので」
「なるほど」

 これがただの軍艦ならば、人員を入れ替えればそれで済む話だ。だが、艦娘には限りがある。
 姉妹間や戦隊間あるいはそれ以上の枠組みでの絆で結ばれている彼女らの誰かが欠ければ、それは大きすぎる影響が出るだろう。

「まぁ、お堅いことは抜きとして、今日は楽しみましょう」
「提督も、お気をつけて…」

 堀の目は、執務室の机のわきで山積みとなったチョコレートを見ていた。
 艦娘たちが業務の合間に持ってくるそれは、逐次秘書艦の大淀や妖精さんによって運び出されている。
 だが、汲めども尽きぬ泉のように、あるいは沸き上がる活火山のようにまた積みあがる。
 これを残らず食べてお礼をするという仕事が待ち受けている神崎に、ハレムとは苦労するものだなと、堀は月並みな言葉しか浮かばなかった。

365: 弥次郎 :2021/05/29(土) 23:46:02 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
季節感0で今更な感じですが、書いてみました。
ご笑納ください。

373: 弥次郎 :2021/05/30(日) 00:15:37 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
修正を…

×有名どころのパイロットというのは、それこそのちの戦史においてクローズアップされるようなエースたちは

〇有名どころのパイロットというのは、それこそのちの戦史においてクローズアップされるようなエースたちはこの時代でも存命であったりするのだ。

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最終更新:2023年11月15日 20:50